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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1002034
審判番号 審判1997-17122  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-11-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-10-08 
確定日 1999-10-13 
事件の表示 平成3年 特 許 願 第130390号「縦型拡散・CVD装置」拒絶査定に対する審判事件〔(平成7年11月1日出願公告、特公平7-101675)、特許請求の範囲に記載された請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許をすべきものとする。 
理由 1.本願の経緯および本願発明の要旨
本願は、平成3年5月1日の出願であって、平成7年11月1日に出願公告されたところ、特許異議の申立てがあり、その特許異議の申立ては理由があるものと決定され、その特許異議決定の理由により拒絶査定されたものである。
本願の請求項1及び2に係る発明は、出願公告後、平成9年11月6日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】反応室と、複数枚のウェーハを保持するボートと、前記ボートとカセットとの間でウェーハを移載する移載機とを収容したロードロック室と、複数枚のウェーハを収納した前記カセットを収容した気密カセット室とを備え、前記反応室とロードロック室間およびロードロック室と気密カセット室間をそれぞれ仕切弁を介して接続してなる縦型拡散・CVD装置において、前記気密カセット室は真空ガス置換を行う気密容器とする一方、前記ロードロック室は真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換する事を特徴とする縦型拡散・CVD装置。
【請求項2】前記ロードロック室は、移載機および移載機エレベータを収容する移載部と、ボートおよびボートエレベータとを収容するボート部とからなり、前記移載部と前記ボート部との間はゲート弁で仕切られている事を特徴とする請求項1に記載の縦型拡散・CVD装置。」
2.原査定の理由の概要
原査定の理由は、概要、「本願請求項1および2に係る発明は、特開平3-55840号公報(以下、「甲第1号証」という)および、「電子材料」(1989年3月)第37〜42頁(以下、「甲第2号証」という)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
3.原査定に引用された刊行物に記載された発明
甲第1号証には、「さらに、ボート18がプロセスチューブ10より完全にアンローディングされた後には、シャッター28が閉鎖駆動され、プロセスチューブ10の下端開口部を密閉するようにしている。さらに、本実施例装置では前記ウエハ20への自然酸化膜の生成を極力低減するために、第2図に示すようなロードロック方式を採用している。すなわち、前記プロセスチューブ10の下方の領域であって、前記ボートエレベータ26の上下動機構等を含む空間は、第1のロードロックチャンバ40内に設定されている。また、この第1のロードロックチャンバ40の第2図の左側には、第2のロードロックチャンバ42が配置され、右側には第3のロードロックチャンバ44が配置されている。前記第1のロードロックチャンバ40は、その内部を真空置換し、その後不活性ガス等によるパージを実施できるようにガス導入管40a、排気管40bが接続されている。同様に、第2,第3のロードロックチャンバ42,44にも、それぞれガス導入管42a、44a及び排気管42b、44bが接続されている。さらに、各ロードロックチャンバ間を気密に遮断し、あるいは大気と遮断するために、各ロードロックチャンバ40,42、44の両側には、ゲートバルブ46〜52が設けられている。そして、本実施例装置では、複数枚のウエハ20を搭載したキャリアを前記第2のロードロックチャンバ42内に設定し、このキャリアより1枚ずつウエハ20を取り出して、第1のロードロックチャンバ40内部に配置されている前記ボート18にウエハ20を移し換えるようにしている。」(第3頁右上欄第14行〜右下欄第5行)、
「同図に示すように、第1のロードロックチャンバ40内部には、ウエハ20の移し換え動作を行うためのハンドラー70が配置されている。」(第3頁右下欄第17〜19行)、
「不活性ガスとしてのN2またはAr、あるいは水素ガスH2を挙げることができる。」(第4頁右上欄第16〜18行)が図面と共に記載されている。
したがって、上記各記載から、甲第1号証には、「プロセスチューブと、複数枚のウエハを保持するボートと、前記ボートとキャリアとの間でウエハを移し換えるハンドラーとを収容した第1のロードロックチャンバと、複数枚のウエハを収納した前記キャリアを収納した第2のロードロックチャンバとを備え、前記プロセスチューブと第1のロードロックチャンバ間をシャッターを介して、また、第1のロードロックチャンバと第2のロードロックチャンバ間をゲートバルブを介して接続してなる縦型処理装置において、前記第2のロードロックチャンバは真空ガス置換を行う気密容器であり、前記第1のロードロックチャンバも真空ガス置換を行う気密容器であることを特徴とする縦型処理装置。」が記載されているものと認められる。
甲第2号証には、「プロセスチャンバの下側でボートの移動する周辺をSUS板で覆い、窒素でパージして酸素を置換する。この方法はわりと簡単にできコストも安いが、雰囲気の遮断が不完全でとてもppmのレベルにはならない。」(第39頁左欄第13〜16行)が図3と共に記載されている。
したがって、上記各記載から、甲第2号証には、「SUS板で覆われた空間を真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該空間内の雰囲気を置換する方法」が記載されているものと認められる。
4.対比・判断
(請求項1に係る発明について)
本願請求項1に係る発明(以下、「第1発明」という。)と、甲第1号証記載の発明とを対比すると、本願第1発明の「反応室」、「ウェーハ」、「カセット」、「移載機」、「ロードロック室」、「気密カセット室」は、それぞれ甲第1号証記載の発明の「プロセスチューブ」、「ウエハ」、「キャリア」、「ハンドラー」、「第1のロードロックチャンバ」及び「第2のロードロックチャンバ」に相当し、また、甲第1号証記載の発明の「シャッター」及び「ゲートバルブ」は共に本願第1発明の「仕切弁」に相当する。
従って、本願第1発明と甲第1号証記載の発明とは、「反応室と、複数枚のウェーハを保持するボートと、前記ボートとカセットとの間でウェーハを移載する移載機とを収容したロードロック室と、複数枚のウェーハを収納した前記カセットを収容した気密カセット室とを備え、前記反応室とロードロック室間およびロードロック室と気密カセット室間をそれぞれ仕切弁を介して接続してなる縦型処理装置において、前記気密カセット室は真空ガス置換を行う気密容器である事を特徴とする縦型処理装置。」である点で一致する。
一方、本願第1発明では、ロードロック室は「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換」する方法でガス置換しており、気密カセット室の「真空ガス置換」とは異なるガス置換の方法を採用しているのに対して、甲第1号証に記載された発明では、ロードロック室内のガス置換の方法として、気密カセット室のガス置換の方法と同一の「真空ガス置換」を採用している。
すなわち、両者は、本願第1発明が、「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換」するロードロック室と、「真空ガス置換」する気密カセット室とを、仕切弁を介して接続する構造を有するのに対して、甲第1号証に記載された発明は、「真空ガス置換」するロードロック室と、同じく「真空ガス置換」する気密カセット室とを、仕切弁を介して接続する構造を有するという点において相違する。
すなわち、甲第1号証には、本願第1発明の構成要件である、前記「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換」するロードロック室と、「真空ガス置換」する気密カセット室とを、仕切弁を介して接続する構造は、開示も示唆もされていない。
次に、本願第1発明と、甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本願第1発明の「ロードロック室」は甲第2号証に記載された発明の「SUS板で覆われた空間」に相当するから、甲第2号証には、「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスによりロードロック室内の雰囲気を置換」するロードロック室が記載されていると認められる。
一方、甲第2号証には、該ロードロック室に接続される気密カセット室は記載されていない。
すなわち、甲第2号証にも、本願第1発明の構成要件である、「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換」するロードロック室と、「真空ガス置換」する気密カセット室とを、仕切弁を介して接続するという構造は、開示も示唆もされていない。
そして、甲第1号証の記載と甲第2号証の記載を組み合わせても、ロードロック室と気密カセット室のガス置換方法を異ならせることを当業者が容易に発明することができたとは認められないし、さらにまた、甲第1号証に記載された発明のロードロック室のガス置換方法を、甲第2号証において「雰囲気の遮断が不完全でとてもppmのレベルにはならない」と評価されている「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換」する方法に変更ことを当業者が容易に想到し得たともいえない。
そして、本願第1発明は、「真空排気せず、大気圧の下でN2ガスにより該ロードロック室内の雰囲気を置換」するロードロック室と、「真空ガス置換」する気密カセット室とを、仕切弁を介して接続したことにより、「N2ガスで充満させたロードロック室内の圧力は大気圧のため薄板構造にでき、装置全体の軽量化と低価格化を図ることができる」という効果と、「ロードロック室は気密構造でN2ガスで充満されているため、酸素の混入を防止することができ、従来の全ての容器を真空ガス置換した場合と同等の低酸素濃度化を図ることができ、自然酸化膜の形成を最小にすることができる」という効果を、同時に達成できるという、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明からは予測されない顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本願第1発明は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(請求項2に係る発明について)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 1999-08-19 
出願番号 特願平3-130390
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 邦夫  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 橋本 武
加藤 浩一
発明の名称 縦型拡散・CVD装置  
復代理人 石戸 久子  
復代理人 石戸 久子  
復代理人 赤澤 日出夫  
復代理人 橋場 満枝  

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