• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  E04H
審判 一部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 一部申し立て 1項1号公知  E04H
管理番号 1002275
異議申立番号 異議1998-70814  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-25 
確定日 1999-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2644199号「パレット落下防止装置」の請求項1、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2644199号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第一 手続の経緯
特許第2644199号の請求項1〜請求項5に係る発明は、平成6年10月24日に特許出願され、平成9年5月2日にその特許の設定登録がなされ、その後、国際電業株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である、平成11年5月17日に訂正請求がなされたものである。
第二 訂正請求について
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
一 訂正事項(1)
特許請求の範囲の請求項1の、
「パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する第1減音部材とを有することを特徴とするパレット落下防止装置。」を、
「パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロックレバーが前記昇降通路から待避するときに前記べース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とするパレット落下防止装置。」と訂正する。
二 訂正事項(2)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
三 訂正事項(3)
特許請求の範囲の請求項4を請求項3とし、請求項:3(新番号)の、
「請求項1乃至請求項3」を、
「請求項1または請求項2」と訂正する。
四 訂正事項(4)
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
五 訂正事項(5)
明細書段落番号【0009】(本件特許公報5欄17〜33行)を、
「前記目的を達成するため本発明のパレット落下防止装置(1)は、パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置であって、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロックレバーが前記昇降通路から待避するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とする構成とされる。」と訂正する。
六 訂正事項(6)
同段落番号【0011】(同5欄49行〜6欄11行)を、
「また、本発明のパレット落下防止装置(4)は、前記(1)または(2)のいずれかのパレット落下防止装置であって、前記第1減音部材の、前記第1停止部位又は前記ベースへの取付位置に嵌持された、前記第1減音部材の高さを調節するスペーサ部材を有することを特徴とする構成とされる。」と訂正する。
七 訂正事項(7)
同段落番号【0012】(同6欄12〜23行)を削除する。それに伴い、段落番号【0013】から段落番号【0045】を各々1づつ繰り上げる。
八 訂正事項(8)
同段落番号【0014】(新番号)(同6欄44行〜7欄7行)を、
「また、ロックレバー駆動手段の取付位置を上下に調整すると、ロックレバーが昇降通路に突出する際の停止装置が調節される。
また、本発明のパレット落下防止装置(4)では、第1減音部材の取付位置に嵌持されるスペーサ部材により、第1減音部材の高さが調節され、ロックレバーの昇降通路からの退避時における停止位置が調整される。」と訂正する。
第三 訂正の適否について
一 訂正事項(1)、(2)及び(4)について
1 訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件請求項1に係る発明」と言う。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロックレバーが前記昇降通路から待避するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とするパレット落下防止装置。」
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項(1)は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」と言う。)の特許請求の範囲の請求項1において、「ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材」、「ロックレバーが昇降通路から待避」及び「減音部材とは異なる」の各構成を加入訂正するものであり、訂正事項(2)及び(4)は、特許明細書の請求項3及び請求項5を削除訂正するものであり、各訂正は、何れも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、特許明細書の発明の詳細な説明における第2減音部材に関連する記載、図1及び図7の記載を参照すると、この訂正事項(1)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、削除訂正に関する訂正事項(2)及び(4)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、これらの各訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 独立特許要件について
(1)取消理由通知で引用した発明
当審で通知した取消理由通知によると、平成11年1月21日に、特許庁審判廷(KKR名古屋三の丸、名古屋市中区三の丸1-5-1)で行われた証人櫻井弘と証人椿井勇に対する証人尋問の結果、及び甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第2号証によると、
「パレットの昇降を行う支持柱に固定して取り付けられるベース板▲2▼と、ベース板▲2▼に設けられた水平のシャフト▲4▼と、シャフト▲4▼を中心に回動可能に取り付けられたレバー▲5▼と、ベース板▲2▼に一体に設けられるとともにレバー▲5▼の動きを規制するストッパー▲8▼と、レバー▲5▼を駆動してレバー▲5▼をパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるレバー▲5▼駆動手段とを有し、レバー▲5▼が昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、レバー▲5▼に形成された、昇降通路に突出するときにストッパー▲8▼に接近する部位Pと、ストッパー▲8▼に設けられた、部位Pとストッパー▲8▼とが接近するときに部位Pに接触して衝撃音を吸収するゴム板▲7▼とを有するパレット落下防止装置。」(以下、「認定発明」と言う。)
が、本件請求項1に係る発明の出願前に日本国内において公然と実施された、又は知られた発明であることが認められる。
(2)本件請求項1に係る発明と認定発明との対比・判断
本件請求項1に係る発明と上記認定発明とを対比すると、認定発明には、本件請求項1に係る発明の一部についての開示はされているものの、
「ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときにベースに接近する第1停止部位と、第1停止部位又はベースに設けられた、第1停止部位とベースとが接近して、ロックレバーが昇降通路から待避するときにベース又は第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する減音部材とは異なる第1減音部材とを有する」との事項は記載されてなく、又、その示唆するところもない。
なお、本件請求項1に係る発明における「パレットの昇降を枢支する支持柱」の「枢支する」の記載は誤記と認められ、「行う」との記載と認定する。
そして、本件請求項1に係る発明は、当該事項により、「ロックレバーがパレットの昇降通路から退避するときには、ロックレバー駆動手段の駆動により、或はロックレバー駆動手段の駆動を解除することにより、ロックレバーが支持軸を中心に回動する。これにより、ロックレバーの第1停止部位が、プレートに設けられたベースに接近する。このとき、第1減音部材がベース又は第1停止部位に接触し、ロックレバーが停止するときの衝撃を吸収して騒音の発生を抑制する。」(本件訂正明細書【0012】参照)、さらには「ロックレバーが突出するときの衝突音を減音部材で減音すると同時に、ロックレバーが退避するときの衝突音を前記減音部材とは異なる第1減音部材で減音する点が特徴であります。本件発明によれば、ロックレバーが突出するときも、退避するときも衝突音を消音しているので、夜間に使用しても騒音の問題が起こりません。」(平成11年5月17日付け特許異議意見書5頁5〜9行参照)との格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、上記認定発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 まとめ
以上、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第2項、同条3項で準用する126条2〜4項の規定に適合する。
二 訂正事項(3)及び(5)〜(8)について
1 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
これらの各訂正事項は、訂正事項(1)による請求項1の訂正、訂正事項(2)による請求項3の削除、さらに訂正事項(4)による請求項5の削除に伴う訂正であって、明りょうでない記載の釈明にあたり、そして、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2 まとめ
上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第2項、同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合する。
三 訂正請求の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正を認める。
第四 特許異議申立てについて
一 申立ての理由の概要
申立人国際電業株式会社は、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された本件発明の出願前に公然知られた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、又、本件請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された本件発明の出願前に公然知られた発明であるから、特許法29条1項1号に該当し特許を受けることができないものであり、上記各発明に係る特許はいずれも取り消すべきものであると主張し、さらに、本件明細書の特許請求の範囲の請求項5の記載に不備があり、請求項5に係る特許は、特許法36条6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたことから、請求項5に係る特許は取り消すべきものであると主張している。
二 判断
1 本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明は、上記「3 独立特許要件について」で検討したように、取消理由通知で示した、本件請求項1に係る発明の出願前に日本国内において公然と実施された、又は知られた発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
2 請求項5に係る発明について
請求項5は、訂正請求における訂正事項(4)により削除され、特許異議の申立ての対象が存在しない。
第五 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1に係る発明を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パレット落下防止装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、
前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、
前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロックレバーが前記昇降通路から待避するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とするパレット落下防止装置。
【請求項2】 請求項1に記載するパレット落下防止装置において、
前記ロックレバーが、
前記支持軸に挿設される軸孔と、
前記軸孔の前方上部に設けられた、昇降通路に突出してパレットを載置する載置面と、
前記軸孔の前方下部に設けられ、ロックレバーが昇降通路から退避しているときに前記ベースに接近する前記第1停止部位と、
前記軸孔の前方上部に設けられ、ロックレバーが昇降通路に突出しているときに前記ベースに当接又は近接する第2停止部位と、
前記軸孔の後方に設けられ、前記ロックレバー駆動手段による駆動を受ける後端部とを有し、
前記第1停止部位と前記第2停止部位と前記後端部とのいずれもが前記軸孔からみて前記載置面より近い位置に設けられ、ロックレバーの重心が前記軸孔の上前方に位置することを特徴とするパレット落下防止装置。
【請求項3】 請求項1または請求項2のいずれか1項に記載するパレット落下防止装置において、
前記第1減音部材の、前記第1停止部位又は前記ベースへの取付位置に嵌持された、前記第1減音部材の高さを調節するスペーサ部材を有することを特徴とするパレット落下防止装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、昇降式立体駐車装置に関し、更に詳細には自動車を載置するパレットの落下防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、限られた場所に多数の自動車を駐車するための立体駐車装置として、自動車を載置する適数段数のパレットを四隅に設置した固定柱に沿って昇降させるものが実施されている。このような立体駐車装置にあっては、上昇させたパレットが昇降用チェーンの切断等の事故により落下すると、パレットに載置した自動車や下段の自動車、更には立体駐車装置自体に多大な損害が発生するばかりか、人的被害を伴うおそれがあり極めて危険である。この危険を回避するため、立体駐車装置には、パレット落下防止装置が備えられている。
【0003】
従来のパレット落下防止装置として、例えば実開平2-121547号公報に開示されているものが挙げられる。同号公報に示されるパレット落下防止装置は、パレット受けレバーであるロックレバーを駆動するソレノイドのプランジャ、リンク、そしてロックレバー止着部をほぼ直線状に連結したことをその要旨とし、スムースな作動を主目的とする。
このパレット落下防止装置では、図12に示すように軸60を中心に回動可能なロックレバー61に、リンク棒67を介して上方に設けたソレノイド62のプランジャ66が連結されている。そして、ソレノイド62が駆動されることにより、パレット昇降通路からロックレバー61が退避する。退避させた状態のロックレバー61Aを一点鎖線で示す。ロックレバー61がパレット昇降通路に突き出しているとき、載置面63が、落下して来るパレットを受け止める。ここで、ロックレバー61は、12〜20mm程度の板厚の鋼板で構成されている。
【0004】
あるいは、特開平2-43469号公報にも類似のパレット落下防止手段が開示されている。同号公報に示されるパレット落下防止装置は、パレットの昇降通路に対し突出・退避可能であり自重により突出するロックレバーを設けその後端をソレノイドで駆動するとともに、ロックレバーの退避を検知するフレキシブルスイッチを設けたことをその要旨とするものであり、フレキシブルスイッチの防水対策を主目的とする。
【0005】
このパレット落下防止装置では、図13に示すように、軸70を中心に回動可なロックレバー71を、下方に設けたソレノイド72により駆動している。そしてロックレバー71は、図13中実線で示す状態では落下するパレットを載置面73上で受け止め、一点鎖線で示す状態(71A)ではパレット昇降通路からロックレバー71が退避する。このパレット落下防止装置は、支持柱75に、ロックレバー71を受ける切り欠き部76を形成して取り付ける。支持柱75としては、通常はH型鋼を用いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の各パレット落下防止装置は以下のような問題点を有していた。
まず、実開平2-121547号公報のパレット落下防止装置の問題点を説明する。このパレット落下防止装置では、ソレノイド62とロックレバー61とが、空間的に直列に連結されているため、このパレット落下防止装置は大型でありまた重量も大きかった。特に、ロックレバー61はそれ自体が重いことから、これを停止させるときに大きな衝撃音が発生した。立体駐車場を必要とするマンション等では夜間や早朝でも使用され、そのとき発生する動作音が大きいため問題であった。更に、近年の環境意識の高まりとともにこの種の動作音、即ち騒音に対する規制も強化されつつあることから、この問題の解決は急務となっていた。
【0007】
次に、特開平2-43469号公報のパレット落下防止装置の問題点を説明する。このパレット落下防止装置では、支持柱75自体に切り欠き部76を形成する必要があるため、設置工事に非常に手間がかかる。そして、切り欠き部76の位置精度はロックレバー71の停止位置の精度に直結するので、四隅の支持柱75間でロックレバー71の高さに不一致が生じやすいという問題があった。かかるロックレバー71の高さの不一致があると、荷重配分が不均一となりパレット落下防止装置の破損につながる場合がある。
【0008】
本発明は、前記従来技術にかかるパレット落下防止装置の問題点を解決するためになされたものであり、ロツクレバー停止時の動作音が小さく、また、ロックレバーの停止位置を容易に調整して高精度に高さ出しができるパレット落下防止装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明のパレット落下防止装置(1)は、パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置であって、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロツクレバーが前記昇降通路から待避するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とする構成とされる。
【0010】
また、本発明のパレット落下防止装置(2)は、前記(1)のパレット落下防止装置であって、前記ロックレバーが、前記支持軸に挿設される軸孔と、前記軸孔の前方上部に設けられた、昇降通路に突出してパレットを載置する載置面と、前記軸孔の前方下部に設けられ、ロックレバーが昇降通路から退避しているときに前記ベースに接近する前記第1停止部位と、前記軸孔の前方上部に設けられ、ロックレバーが昇降通路に突出しているときに前記ベースに当接又は近接する第2停止部位と、前記軸孔の後方に設けられ、前記ロックレバー駆動手段による駆動を受ける後端部とを有し、前記第1停止部位と前記第2停止部位と前記後端部とのいずれもが前記軸孔からみて前記載置面より近い位置に設けられ、ロックレバーの重心が前記軸孔の上前方に位置することを特徴とする構成とされる。
【0011】
また、本発明のパレット落下防止装置(4)は、前記(1)または(2)のいずれかのパレット落下防止装置であって、前記第1減音部材の、前記第1停止部位又は前記ベースへの取付位置に嵌持された、前記第1減音部材の高さを調節するスペーサ部材を有することを特徴とする構成とされる。
【0012】
【作用】
前記構成を有する本発明のパレット落下防止装置(1)では、ロツクレバーがパレットの昇降通路から退避するときには、ロックレバー駆動手段の駆動により、或はロックレバー駆動手段の駆動を解除することにより、ロックレバーが支持軸を中心に回動する。これにより、ロックレバーの第1停止部位が、プレートに設けられたベースに接近する。このとき、第1減音部材がベース又は第1停止部位に接触し、ロックレバーが停止するときの衝撃を吸収して騒音の発生を抑制する。
【0013】
また、本発明のパレット落下防止装置(2)では、ロックレバーがパレットの昇降通路から退避するときには、軸孔の前方下部の第1停止部位がベースに接近し、第1減音部材との接触により停止する。昇降通路に突出するときには、軸孔の前方上部の第2停止部位がベースに当接して、又は近接して停止する。この状態でロックレバーの載置面が昇降通路に突出しており、パレットを載置しうる。これらの動きは、軸孔の後方の後端部がロックレバー駆動手段により駆動され、又はその駆動が解除されることにより行われる。
【0014】
また、ロックレバー駆動手段の取付位置を上下に調整すると、ロックレバーが昇降通路に突出する際の停止位置が調節される。
また、本発明のパレット落下防止装置(4)では、第1減音部材の取付位置に嵌持されるスペーサ部材により、第1減音部材の高さが調節され、ロックレバーの昇降通路からの退避時における停止位置が調整される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を具体化したパレット落下防止装置の一実施例を図面を参照して説明する。
図11に、昇降式立体駐車装置の概略構成を示す。昇降式立体駐車装置は、敷地の四隅に支持柱であるH鋼柱51を立設して自動車53、54の収納空間を区画するとともに、自動車53を載置するパレット52をその内側部分に上下に移動可能に設けたものである。パレット52は、図示しないモータや圧縮空気等の駆動機器とチェーン等の動力伝達手段とからなる昇降駆動装置により、自動車53を載置したままH鋼柱51に沿って昇降移動される。
【0016】
各H鋼柱51には、昇降駆動装置に故障等が起こってもパレット52が落下するのを防止するパレット落下防止装置1が備えられている。図11は、自動車53を載置しているパレット52を上段に上昇させ、下段にも自動車54を駐車している状態を示している。ここで昇降駆動装置が故障しても、パレット52が下まで落ちるのがパレット落下防止装置1により防がれるので、自動車54の損傷その他の事故を起こさないで済む。
【0017】
図1に、パレット落下防止装置1の構造を示す。パレット落下防止装置1は、内部に直流ソレノイド7を備えるカバー17と、カバー17の下部に位置するプレート11と、プレート11に設けられた支持軸5に軸支されるロックレバー2とによりその全体形をなし、一つのユニットを形成している。ロックレバー2は支持軸5を中心に回動して、実線で示す突出状態または二点鎖線で示す退避状態(2A)のいずれかの状態をとる。
【0018】
ロックレバー2について説明する。
ロックレバー2は、その上部に形成されたパレット載置面3にパレット52を載置するものである。ロックレバー2の下部には、軸孔4が形成されており、軸孔4はプレート11の支持軸5に回動可能に嵌合されている。ロックレバー2の後端部には掛合孔6が形成され、掛合孔6には、後述する直流ソレノイド7から延設される連結棒8がソケット12を介して掛合される。ロックレバー2の軸孔4より前方でパレット載置面3より下方の位置には、顎上部9と顎下部10とが形成されている。掛合孔6、顎上部9及び顎下部10の軸孔4からの距離はいずれも、パレット載置面3の軸孔4からの距離より短い。そして、ロックレバー全体の重心は、突出状態、退避状態のいずれでも、支侍軸5より前方にある。
顎下部10には、後述する減音パッド13及び復帰バネ19が取り付けられている。
【0019】
カバー17の内部の直流ソレノイド7について説明する。
直流ソレノイド7は、支持軸5より高い位置に設置されている。直流ソレノイド7は、導線を密に巻回した中空円筒形状の通電コイル23と、その中に保持された固定鉄心14及び移動鉄心15とを有している。固定鉄心14は、通電コイル23に固定されており、円筒形状である。移動鉄心15は、通電コイル23内を上下に移動可能とされており、通電コイル23に通電すると固定鉄心14に吸引され下方に移動する。移動鉄心15は、ロックレバー2のソケット12と連結棒8により連結されている。従って、移動鉄心15の上下動とロックレバー2の回動とは連動している。また、移動鉄心15、連結棒8、ソケット12の合計重量は、ロックレバー2よりも小さい。かかる直流ソレノイド7の取付位置は上下方向に調整可能である。
なお、連結棒8は固定鉄心14を貫通しており、また、後述する減音パッド21が取り付けられている。
【0020】
カバー17の下部のプレート11は、例えば熱延鋼板のような素材を適当な形状に成形したものであって、パレット52や自動車53の重量を保持するに十分な強度を備えでいる。プレート11の前部には、ロックレバー2の顎上部9、顎下部10と当接するベース16が一体に形成されている。ベース16は、ロックレバー2に載置されるパレット52や自動車の重量を受けとめるとともに、ロックレバー2のパレット載置面3を位置決めする役割をも果たす。また前記のようにプレート11には、ロックレバー2の軸孔4を軸支する支持軸5が設けられている。なお、支持軸5と軸孔4との間には、後述する減音カラー18が嵌持されている。
かかるパレット落下防止装置1は、その背面20がH鋼柱51に固定して取り付けられ、前面(ロックレバー2のある側)が自動車の幅方向内側向きに位置する。従って、パレット落下防止装置1の前方がパレット52の昇降通路である。
【0021】
ロックレバー2の顎下部10に取り付けられる減音パッド13及び復帰バネ19について、図2乃至図6を参照して説明する。減音パッド13は、ロックレバー2を退避状態にするときに、顎下部10とベース16とが直接に当接して激しい衝撃音を発するのを防ぐために取り付けられる弾性体である。材質は、ゴム、ウレタン等の弾性材料なら何でもよいが、耐候性や耐油性等の観点からクロロプレンゴムが最も適している。パレット落下防止装置1が使用される立体駐車場では、屋外の紫外線やオゾン、酷暑酷寒、自動車の漏れ油や排気等の厳しい環境に晒されるからである。
復帰バネ19は、減音パッド13の作用を補助するとともに、ロックレバー2の退避状態から突出状態への動き出しをも補助するものである。
減音パッド13は、図3に平面図と側断面図で示すような円筒形状をしている。
減音パッド13の高さをh1、外径をr1内径をr2で示す。
【0022】
減音パッド13は、図4に示す止め具22を介してロックレバー2の顎下部10に取り付けられる。止め具22は、円盤状の鍔部24とゴム止め25と挿入部26とを有している。
ゴム止め25には減音パッド13の内孔が嵌装される。このためゴム止め25の直径r3は、減音パッド13の内径r2よりわずかに大きくしてあり、減音パッド13はやや押し広げられた状態でゴム止め25に取り付けられる。また、ゴム止め25の高さh2は、減音パッド13の高さh1より小さい。挿入部26は、顎下部10に取り付けるための突起であり、顎下部10に穿設された取付孔27に挿入される(図2参照)。鍔部24は、図5に示すように、復帰バネ19を取り付ける役割を有している。このため鍔部24の直径r4は、復帰バネ19の内径よりやや大きい。
なお、復帰バネ19の自由長は減音パッド13の高さh1より大きい。
【0023】
かかる止め具22により減音パッド13と復帰バネ19とを顎下部10に取り付けた状態を図2に示す。図2に示す状態は、ロックレバー2が支持軸5を中心に図中時計方向、すなわちパレット52の昇降通路から退避する方向に回動し、顎下部10に止め具22により取り付けられた復帰バネ19の先端が、ベース16に接触したところである。前記のように復帰バネ19の自由長は減音パッド13の高さh1より大きいので、減音パッド13より先にベース16に接触する。この後、ロックレバー2がさらに回動すれば減音パッド13もベース16に接触する。
【0024】
また、止め具22の鍔部24と減音パッド13との間には、図6に示すようなドーナツ形の高さ調整板28を挟持することができる。高さ調整板28は、0.2mm厚程度の樹脂製の板であり、顎下部10の面からの減音パッド13の高さを調整するためのものである。減音パッド13の高さ調整をする理由は、ロックレバー2が昇降通路から退避したときの停止位置の位置決めを要するからである。すなわち突出状態からの引き込みストローク(図1中にsで示す)が小さすぎると、パレット載置面3の先端がパレット52の昇降通路に残ってしまい、パレット52の昇降に支障を来す。一方、ストロークsが大きすぎると、ロックレバー2全体の重心が支持軸5より後方に来てしまい、突出状態への復帰動作に支障を来す。このため、高さ調整板28の厚さや枚数を調整して、ストロークsを最適にするのである。
【0025】
なお、ロックレバー2を突出状態にしているときには、止め具22ごと減音パッド13を顎下部10から取り外し、容易に高さ調整板28の交換等を行うことができる。また、減音パッド13の取付位置の支持軸5からの距離は、パレット載置面3の先端の支持軸5からの距離より短いので、高さ調整板28のような薄肉のものの調整により、ストロークsをかなり大きく変えることができる。
【0026】
次に、連結棒8に取り付けられる減音パッド21について説明する。減音パッド21は、ロックレバー2を突出状態にするときに、ロツクレバー2の顎上部9とベース16とが直接に当接して激しい衝撃音を発するのを防ぐために、連結棒8に取り付けられる弾性体である。材質は、前記減音パッド13と同様の理由によりクロロプレンゴムが最も適している。
減音パッド21は、図7に平面図と側断面図で示すような円筒形状をしている。減音パッド21の高さh2は、ロックレバー2を突出状態にするときに、ロックレバー2の顎上部9とベース16とが当接するより先に、直流ソレノイド7とソケット12とに接触するように定められる。
【0027】
次に、支持軸5と軸孔4との間に嵌持される減音カラー18について説明する。減音カラー18は、ロックレバー2が回動するときに、支持軸5と軸孔4とが直接に擦れ合って摩擦音を発するのを防止することを目的とする。減音カラー18は、図8に断面図と側面図とを示す略円筒形状の弾性体である。材質は樹脂等の弾性材料であれば何でもよいが、荷重が加わるので、ガラス繊維等を配合して強化したものを用いるのが望ましい。
減音カラー18は、薄肉の内袖部29と、それよりやや厚肉の外袖部31と、それらの間の鍔部30とを有している。減音カラー18は、図9に示す支持軸5の両側にそれぞれ1個、外袖部31を外側に装着される。そして、2個の減音カラー18の鍔部30の間にロックレバー2の軸孔4が保持される。従って、軸孔4の内面は、支持軸5と直接には接触せず、減音カラー18の内袖部29の外面と接する。
【0028】
そして、減音カラー18の内径r6は、支持軸5の直径r7より若干大きく、また、減音カラー18の内袖部29の外径r5は、軸孔4の内径r8より若干小さい。このため、支持軸5と減音カラー18との間、減音カラー18と軸孔4との間、の2箇所にクリアランスが存在するので、ロックレバー2が減音カラー18に対して回転すること、及び減音カラー18がロックレバー2ごと支持軸5に対して回転することがいずれも可能である。このためロックレバー2は非常にスムーズに回転でき、また、支持軸5と軸孔4との摩擦が吸収され、騒音の発生が低減される。
【0029】
支持軸5は、この状態で両端をプレート11に保持されるので、2個の減音カラー18は、外袖部31の端部がプレート11の内面に接する。そして、鍔部30がロックレバー2を横方向に位置決めする。
なお、支持軸5の一端には、ブラケットに圧入するためのローレット加工32が施されている。
【0030】
上記構成を有するパレット落下防止装置1の作用及び動作を説明する。
まずロックレバー2の突出状態を説明する。この状態では、直流ソレノイド7の通電コイル23に電流が印加されていない。従って、移動鉄心15と固定鉄心14とは磁気吸引力を発生していない。このため、ロックレバー2は自重により図中反時計方向に回動し、顎上部9がベース16に近接した位置で停止している。このときロックレバー2はベース16から前方に突出し、パレット載置面3にパレット52を載置しうる状態となっている(図1中の実線参照)。またこのとき、減音パッド21は、直流ソレノイド7とソケット12とに挟持され圧縮されている。また、パレット52や自動車53の重量は、ロツクレバー2の顎上部9を介してベース16に縦向きに印加される。また、前記のように直流ソレノイド7の取付位置を上下に調整すると、この状態でのロックレバー2の停止位置が調節される。なお、この状態でロックレバー2に上向きに外力が加わると、ロックレバー2は上向きに動くことができる。
【0031】
次にロックレバー2の退避状態を説明する。この状態では、直流ソレノイド7の通電コイル23に電流が印加され、従って、移動鉄心15と固定鉄心14とは磁気吸引力を発生している。そして、固定鉄心14が固定されているので移動鉄心15が下方に吸引され、これに伴いロックレバー2は図中時計方向に回動し、顎下部10に取り付けられた減音パツド13がベース16に接した位置で停止している。このときロックレバー2はベース16より前方へはほとんど突出しておらず、パレット52の昇降が可能な状態となっている(図1中の二点鎖線参照)。またこのとき、顎下部10に取り付けられた減音パツド13及び復帰バネ19は、顎下部10とベース16とに挟持され圧縮されている。
なお、このときのロックレバー2の位置は、減音パッド13と止め具22との間の高さ調整板28により調節されることは前記の通りである。
【0032】
続いて、突出状態から退避状態に移る際の動作を説明する。
突出状態で、パレット52を除去しておいて直流ソレノイド7の通電コイル23に電流を通じると、移動鉄心15と固定鉄心14とが磁気吸引力を発生する。この吸引力により、移動鉄心15が下方に移動し、連結棒8を介してロックレバー2の後端部を下方に押す。かくしてロックレバー2は図2中時計方向に回動する。
【0033】
このときロックレバー2の顎下部10がベース16に接近するが、まず、図2に示すように復帰バネ19がベース16に接触するので、復帰バネ19の弾縮反力によりロックレバー2の動きが減速される。そして、復帰バネ19の長さが減音パッド13の高さh1にまで縮むと、減音パッド13もベース16に接触する。このため復帰バネ19と減音パッド13との合計の弾縮反力によりロックレバー2の動きが強力に減速され、退避状態となって停止する。これにより、顎下部10がベース16に直接に当接して大きな衝撃音を発することが防止され、また音質も金属性の耳障りなものでない鈍くて低い音となる。
また、支持軸5と軸孔4との間に嵌持される減音カラー18により摩擦騒音も低減される。
【0034】
ここで、ロックレバー2における後端部(掛合孔6)の軸孔4からの距離がパレット載置面3の軸孔4からの距離より短いことから、突出状態から退避状態に至るまでの、掛合孔6の移動距離はパレット載置面3の移動距離より短い。このため、直流ソレノイド7の作動ストロークが短くて済む。一方、直流ソレノイド7における鉄心間距離と吸引力とは、図10のグラフに示すような関係にあり、鉄心間距離が極めて短く吸引力が強い領域と、鉄心間距離が極めて長く吸引力が弱い領域との間に吸引力がほぼ一定である領域がある。この実施例では、吸引力がほぼ一定となる領域のみを使用することができる。このため、吸引力が強い領域が使用されロックレバー2の回動速度が速くなり衝撃音が大きくなることがない。また、吸引力が弱い領域が使用され、突出状態からのロックレバー2の動きだしが緩慢になることもない。
【0035】
次に、逆に退避状態から突出状態に移る際の動作を説明する。
直流ソレノイド7の通電コイル23への電流を切ると、移動鉄心15と固定鉄心14との磁気吸引力が消滅する。すると、ロックレバー2の重心が支持軸5の直上よりも前方にあるため、ロックレバー2は自重により図中反時計方向に回動する。このとき、復帰バネ19が弾縮状態から復帰しようとするので、ロックレバー2の動きだしがスムーズですばやい。
【0036】
そして、かかる回動運動により、ロックレバー2の顎上部9がベース16に接近するが、これらが当接するより先に、連結棒8に設けられた減音パッド21が直流ソレノイド7とソケット12とに挟持されるので、その弾縮反力によりロックレバー2の動きが減速され停止される。かくして、顎上部9がベース16に当接して衝撃音を発生することが防止される。
また、前記の場合と同様、支持軸5と軸孔4との間に嵌持される減音カラー18により摩擦騒音も防止される。
また、減音バッド21が圧縮されつつ、最終的には顎上部9がベース16に接触しないで停止するが、その停止位置は直流ソレノイド7の取付位置を上下に調整することにより調節できるので、ロックレバー2のパレット載置面3の位置決めが正確である。また、直流ソレノイド7等にはロックレバー2の重量は、支持軸5を中心とした重量の差に相当する分しか掛からない。
【0037】
次に、上記構成及び動作を有するパレット落下防止装置1を各H鋼柱51に備えた昇降式立体駐車装置の操作手順を説明する。
まず、パレット52が下段にあるときに、自動車53を運転してパレット52に乗り入れ、自動車53から乗員は降車する。
そして、各パレット落下防止装置1の直流ソレノイド7の通電コイル23に通電すると、前記のように移動鉄心15と固定鉄心14との磁気吸引力によりロックレバー2が回動してパレット52の昇降通路から退避する。この状態で、昇降駆動装置の駆動により自動車53ごとパレット52を上昇させる。尚、このときパレット52は、ロックレバー2により支持される上段定位置より少し上まで上昇させる。パレット52がロックレバー2の回動の邪魔になるのを防ぐためである。
【0038】
そして、各パレット落下防止装置1の通電コイル23の通電を切ると、前記のようにロックレバー2が自重により回動してパレット52の昇降通路に突出し、パレット52の落下を防止する状態となる。これにより、自動車53が上段に駐車され、下段には別の自動車54を駐車することができる。このとき自動車53及びパレット52の荷重は、昇降駆動装置の図示しないチェーン等に支えられている。
万一駐車中昇降駆動装置の故障等が発生しても、パレット52が各ロックレバー2のパレット載置面3上で停止するので、パレット52が落下することはない。尚、このとき自動車53及びパレット52の荷重は、各ロックレバー2を介してプレート11のベース16に縦向きに印加されることになる。
【0039】
自動車53を出す場合には、まず下段の自動車54を出しておき、パレット52を昇降駆動装置の駆動により少し上昇させる。そして、各パレット落下防止装置1の通電コイル23に通電すると、前記のようにロックレバー2が回動してパレット52の昇降通路から退避する。この状態で、昇降駆動装置の駆動により自動車53ごとパレット52を下段まで下降させたあと、各パレット落下防止装置1の通電コイル23の通電を切ると、各ロックレバー2は再び突出する。この状態で自動車53を運転して昇降式立体駐車装置から出すことができる。
【0040】
以上詳細に説明したように本実施例に係るパレット落下防止装置1によれば、ロックレバー2の顎下部10に減音パッド13及び復帰バネ19を取り付け、突出状態から退避状態に移る際にロックレバー2を減速させると共に顎下部10がベース16に直接に当接するのを防ぐようにしたので、顎下部10のベース16への当接による動作音の発生が防止されている。また、退避状態から突出状態に移る際に、圧縮された復帰バネ19の弾拡により、ロックレバー2が素早く動きだす。また、高さ調整板28により減音パッド13の高さを調節できるので、退避位置におけるロックレバー2の位置決めがしやすい。
【0041】
また、パレット落下防止装置1では、ロックレバー2の後端部と直流ソレノイド7との連結棒8に減音パッド21を取り付け、退避状態から突出状態に移る際に、ロックレバー2の顎上部9とベース16とが当接するより先に、減音パッド21が直流ソレノイド7とソケット12とにより挟持されロックレバー2を減速して停止するようにしたので、顎上部9のベース16への当接による動作音の発生が防止されている。また、このときの停止位置は、直流ソレノイド7の取付位置の調整により調節できるので、突出状態におけるロックレバー2のパレット載置面3の位置精度が高い。
また、パレット落下防止装置1では、ロックレバー2において顎上部9、顎下部10、掛合孔6はいずれも、軸孔4からみてパレット載置面3より近い位置に設けられているので、高さ調整板28による減音パッド13のわずかな高さ調節によりロックレバー2を効果的に位置決めできる。また、直流ソレノイド7の吸引力がほぼ一定である領域のみを使用できる。
【0042】
また、パレット落下防止装置1では、ロックレバー2の軸孔4を、減音カラー18を介してプレート11の支持軸5に軸支し、減音カラー18は支持軸5に対して、ロックレバー2は減音カラー18に対して、共に回動できるようにしたので、ロックレバー2の動きは常にスムースで、摩擦騒音の発生も防止される。
尚、前記実施例は本発明を何ら限定するものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形・改良が可能であることはもちろんである。
例えば、前記実施例では、ロックレバー2の顎下部10に、止め具22により減音パッド13及び復帰バネ19を取り付けることとしたが、これらの取付位置は、ベース16の側面の、顎下部10が接近する位置であってもよい。また、ロックレバー2の後端部を直流ソレノイドにより駆動することとしたが、他の駆動手段、例えばモータや、或は圧縮空気の備えがあればエアシリンダ等を用いてもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように本発明のパレット落下防止装置によれば、ロックレバーがパレット昇降通路から退避するときに相互に接近するロックレバーの第1停止部位とベースとのいずれかに第1減音部材を取り付け、ロックレバーが退避するときの速度を減速させると共に、第1停止部位とベースとが直接に当接するのを防ぐようにしたので、これらの当接による動作音の発生が防止される。
また、ロックレバー駆動手段とロックレバーの後端部とを連結棒で連結するとともに、その連結棒に第2減音部材を設け、ロックレバーが昇降通路に突出する際に、ロックレバーの第2停止部位がベースに当接するより先に、第2減音部材がロックレバー駆動手段に当接するようにしたので、ロックレバーの回動速度が減速して停止され、第2停止部位がベースに当接する動作音が防がれる。
【0044】
また、ロックレバーにおける第1停止部位、第2停止部位、後端部はいずれも軸孔からみて載置面より近い位置に設けられているので、第1減音部材のわずかな高さ調整により退避位置でのロックレバーの位置を有効に調節でき、また、ロックレバー駆動手段の駆動力がほぼ一定の領域のみを使用できる。
また、ロックレバーを突出位置にする際、圧縮された第1減音部材が弾拡するので、ロックレバーの動きだしが素早い。
また、ロックレバーを軸支する支持軸とロックレバーとの間に第3減音部材を設けたので、ロックレバーの動きは常にスムースで、またロックレバーの回動時の摩擦音も低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本実施例のパレット落下防止装置の構造を示す断面図である。
【図2】
本実施例のパレット落下防止装置におけるロックレバーの顎下部付近の構成を示す図である。
【図3】
顎下部に取り付けられる減音パッドの形状を示す図である。
【図4】
止め具の形状を示す図である。
【図5】
復帰バネを止め具により取り付ける様子を説明する図である。
【図6】
高さ調整板を説明する図である。
【図7】
連結棒に取り付けられる減音パッドの形状を示す図である。
【図8】
減音カラーの形状を示す図である。
【図9】
ロックレバーを軸支する支持軸を説明する図である。
【図10】
直流ソレノイドのストロークと吸引力との関係を示すグラフである。
【図11】
立体駐車装置の全体構成を示す図である。
【図12】
従来のパレット落下防止装置の構成を示す図である。
【図13】
別の従来のパレット落下防止装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 パレット落下防止装置
2 ロックレバー
3 パレット載置面
4 軸孔
5 支持軸
6 掛合孔
7 直流ソレノイド
8 連結棒
9 顎上部
10 顎下部
11 プレート
13 減音パッド
16 ベース
18 減音カラー
19 復帰バネ
21 減音パッド
22 止め具
28 高さ調整板
51 H鋼柱
52 パレット
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2644199号発明の明細書を、本件特許異議申立に関連してなされた訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正する。
すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として下記(1)、(2)及び(4)のとおり、また、明りょうでない記載の釈明を目的として下記(3)及び(5)〜(8)のとおり訂正する。
(1)特許請求の範囲の請求項1の、
「パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する第1減音部材とを有することを特徴とするパレット落下防止装置。」を、
「パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレートに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置において、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロックレバーが前記昇降通路から待避するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とするパレット落下防止装置。」と訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)特許請求の範囲の請求項4を請求項3とし、請求項3(新番号)の、
「請求項1乃至請求項3」を、
「請求項1または請求項2」と訂正する。
(4)特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(5)明細書段落番号【0009】(本件特許公報5欄17〜33行)を、
「前記目的を達成するため本発明のパレット落下防止装置(1)は、パレットの昇降を枢支する支持柱に固定して取り付けられるプレートと、プレートに設けられた水平の支持軸と、支持軸を中心に回動可能に取り付けられたロックレバーと、プレ一トに一体に設けられるとともにロックレバーの動きを規制するベースと、ロックレバーを駆動してロックレバーをパレットの昇降通路から退避又は昇降通路に突出させるロックレバー駆動手段と、前記ロックレバーが昇降通路に突出するときの衝撃音を吸収する減音部材とを有し、ロックレバーが昇降通路に突出しているときにはパレットの昇降を規制するパレット落下防止装置であって、前記ロックレバーに形成された、昇降通路から退避するときに前記ベースに接近する第1停止部位と、前記第1停止部位又は前記ベースに設けられた、前記第1停止部位と前記ベースとが接近して、前記ロックレバーが前記昇降通路から待避するときに前記ベース又は前記第1停止部位に接触して衝撃音を吸収する前記減音部材とは異なる第1減音部材とを有することを特徴とする構成とされる。」 と訂正する。
(6)同段落番号【0011】(同5欄49行〜6欄11行)を、
「また、本発明のパレット落下防止装置(4)は、前記(1)または(2)のいずれかのパレット落下防止装置であって、前記第1減音部材の、前記第1停止部位又は前記ベースへの取付位置に嵌持された、前記第1減音部材の高さを調節するスペーサ部材を有することを特徴とする構成とされる。」と訂正する。
(7)同段落番号【0012】(同6欄12〜23行)を削除する。それに伴い、段落番号【0013】から段落番号【0045】を各々1づつ繰り上げる。
(8)同段落番号【0014】(新番号)(同6欄44行〜7欄7行)を、
「また、ロックレバー駆動手段の取付位置を上下に調整すると、ロックレバーが昇降通路に突出する際の停止装置が調節される。
また、本発明のパレット落下防止装置(4)では、第1減音部材の取付位置に嵌持されるスペーサ部材により、第1減音部材の高さが調節され、ロツクレバーの昇降通路からの退避時における停止位置が調整される。」と訂正する。
異議決定日 1999-08-10 
出願番号 特願平6-284062
審決分類 P 1 652・ 121- YA (E04H)
P 1 652・ 531- YA (E04H)
P 1 652・ 111- YA (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊波 猛  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 小野 忠悦
鈴木 公子
登録日 1997-05-02 
登録番号 特許第2644199号(P2644199)
権利者 シーケーディ株式会社
発明の名称 パレット落下防止装置  
代理人 足立 勉  
代理人 奥田 誠  
代理人 山中 郁生  
代理人 山中 郁生  
代理人 田中 敏博  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 富澤 孝  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 奥田 誠  
代理人 富澤 孝  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ