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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1004835
審判番号 審判1998-5635  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-04-16 
確定日 1999-10-18 
事件の表示 平成7年特許願第93120号「熱機械分析装置の試料セッティング方法」拒絶査定に対する審判事件(平成8年10月11日出願公開、特開平8-261965)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年3月27日の出願であって、その請求項1-5に係る発明は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その請求項1-5に記載された次のとおりのものと認める(なお、平成10年4月16日付け手続補正書による補正は、本審決と同日付けで却下された。)。
「【請求項1】試料の上端に検出棒の下端を接触させて検出棒で試料に荷重をかげながら温度変化に伴う試料の寸法変化を検出棒の変位によって測定する熱機械分析装置において、
試料から上方に離れた待機位置に検出棒が待機する第1段階と、
荷重発生器によって検出棒に下向きの荷重が付与されて検出棒が下降を始める第2段階と、
試料の上端に検出棒の下端が接触する第3段階と、
前記下向きの荷重が所定の設定荷重になるまで荷重が増加する第4段階とを備え、
試料セッティング信号を受けて前記第2段階から第4段階までが自動的に実行されることを特徴とする試料セッティング方法。
【請求項2】 操作パネル上のセッティングボタンを押すことによって前記試料セッティング信号が出力されることを特徴とする請求項1記載の試料セッティング方法。
【請求項3】前記第2段階から第4段階までの間に前記下向きの荷重が連続的に増加することを特徴とする請求項1記載の試料セッティング方法。
【請求項4】前記第2段階から第4段階までにおいて、前記下向きの荷重が、最初は小さな一定の荷重に維持されて、所定時間が経過した後に、前記一定荷重から前記設定荷重まで増加することを特徴とする請求項1記載の試料セッティング方法。
【請求項5】試料に対して検出棒から設定荷重を付与しながら温度変化に伴う試料の寸法変化を検出棒の変位によって測定する熱機械分析装置において、
試料から離れた待機位置に検出棒が待機する第1段階と、
荷重発生器によって検出棒に前記設定荷重と方向が等しい荷重が付与されて検出棒が移動を始める第2段階と、
試料に対して検出棒からの荷重がかかり始める第3段階と、
前記設定荷重と方向が等しい荷重が所定の設定荷重になるまで荷重が増加する第4段階とを備え、
試料セッティング信号を受けて前記第2段階から第4段階までが自動的に実行されることを特徴とする試料セッティング方法。」
2,原査定の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1-5に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である、実願平1-38939号(実開平3-119954号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)及び特開平3-61842号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3,引用刊行物
引用例1には次のような記載がある。
2頁12行-3頁2行
「[考案が解決しようとする課題]
熱機械分析装置を自動化するためには試料の設置時必ず検出棒の上昇、下降は自動的に行う必要がある。モータでこれを行うには停止位置に対する検出機構が必要であり、しかも適正な位置に停止させるのは煩雑である。この考案はかかる課題を解決するためになされたものであり、その目的とする所は検出棒の上昇、下降に際し停止位置に対する検出機構を必要とせず、簡単に試料と検出棒とを接触、設置させることの出来る熱機械分析装置を提供することにある。」
即ち、熱機械分析装置を自動化することを前提として、そのために解決すべき課題について記載されている。また、3頁19行以下には、課題を解決するための具体的手段が[実施例]として記載されている。
引用例2には次のような記載がある。
▲1▼1頁左下欄14-16行
「この発明は、試料を加熱し適当な荷重を加えてこの試料の熱的変化に伴う効果を測定する熱機械分析装置に関する。」
▲2▼1頁左下欄18-20行
「熱機械分析装置では、検出棒を試料に直接接触させて加熱し該試料の寸法変化等を測定するようになっている。」
▲3▼2頁右上欄3-11行
「第1図はこの発明にかかる熱機械分析装置の実施例の縦断面図である。この図において1は検出棒であって下端部は試料Mに接触させる。2はバネであって一方は検出棒1の上端に接続し他方は固定ブロック10に接続する。3は検出棒1に付加したフォースコイル、4は永久磁石であって該フォースコイル3に電流を流しこれらの相互作用により検出棒1を介して試料Mに圧縮、引張荷重を加えるようになっている。」
▲4▼2頁左下欄1-9行
「そして上記するようにフォースコイル3に電流を流すと該フォースコイル3と永久磁石4との相互作用により試料Mに適当な荷重がかかるようになっている。また、熱分析の際は試料Mは電気炉8で加熱され試料長が変化するが、この変化量は直ちに差動トランスコア6及び差動トランスコイル5の電気信号の変化として検出され、その変化量によって試料Mの膨張係数等の物理量を知ることが出来る。」
▲1▼〜▲4▼等の記載から、引用例に記載された熱機械分析装置は
「試料の上端に検出棒の下端を接触させて検出棒で試料に荷重をかげながら温度変化に伴う試料の寸法変化を検出棒の変位によって測定する熱機械分析装置」
である。そして、この熱機械分析装置における試料変更について次のように記載されている。
▲5▼2頁左下欄15行-右下欄10行
「第2図及び第3図は試料変更の際の様子を示すこの発明にかかる熱機械分析装置の縦断面の簡略図である。第2図ではフォースコイル3には電流を流さず荷重をゼロの状態としておく。この時のバネ2の長さをL0とする。
次に、第3図においてフォースコイル3に電流を流し上向きにΔFの力が生じるようにする。この時のバネ2の長さをL1とする。従ってバネ定数をkとすると、
ΔF=-k(L1-L0)
となり、フォースコイル3の荷重ΔFを適当な値で増加させることにより、適当な位置で検出棒1を停止させることが出来る。こうして試料変更後は再びΔFをゼロに戻してやれば、第2図に示すような試料Mと検出棒1とが無負荷の状態で接触する状態に戻すことが出来る。」
即ち、試料変更に際し、フォースコイルに上向きにΔFの力を生じるようにすることで、第3図に示すように検出棒が試料から上方に離れた位置に移動し(段階A)、試料変更後、ΔFをゼロとすることにより、第2図に示すように検出棒が下降して試料と無負荷の状態で接触するようにする(段階B)ことが記載されている。
4,対比判断
請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)と引用例2に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを比較すると、引用発明の「フォースコイル」「試料変更」は、それぞれ、本願第1発明の「荷重発生器」「試料セッティング」に相当するものであり、引用発明の段階Aは、本願第1発明の「試料から上方に離れた待機位置に検出棒が待機する第1段階」に相当し、引用発明の段階Bは、本願第1発明の「荷重発生器によって検出棒に下向きの荷重が付与されて検出棒が下降を始める第2段階」と「試料の上端に検出棒の下端が接触する第3段階」とを合わせたものに相当するから、両者は、
「試料の上端に検出棒の下端を接触させて検出棒で試料に荷重をかげながら温度変化に伴う試料の寸法変化を検出棒の変位によって測定する熱機械分析装置において、
試料から上方に離れた待機位置に検出棒が待機する第1段階と、
荷重発生器によって検出棒に下向きの荷重が付与されて検出棒が下降を始める第2段階と、
試料の上端に検出棒の下端が接触する第3段階とを備える試料セッティング方法」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1
本願第1発明が、「前記下向きの荷重が所定の荷重になるまで荷重が増加する第4段階」を備えるのに対し、引用発明では、そのような段階を備えることについて明記されていない点
相違点2
本願第1発明が、「試料セッティング信号を受けて前記第2段階から第4段階までが自動的に実行される」のに対し、引用発明では、そのような構成を有しない点
相違点について検討する。
相違点1について
引用例2の▲1▼、▲3▼、▲4▼等の記載から、引用発明においても、段階A、段階Bでセッティングが終了するものではなく、段階Bの後、フォースコイルにより適当な荷重をかけた状態で試料の変化を測定するものであること、該適当な荷重は、圧縮荷重又は引張荷重であり(引用例2の記載▲3▼参照)、圧縮荷重の場合は当然下向きの荷重となることから、明記はないが、引用発明においても、本願第1発明の前記第4段階に相当する段階を含むものであることは明らかである。
相違点2について
手動でなされていた作業を自動的に実行されるようにすることは、分野を問わず広く行われている周知技術であり、熱機械分析装置においても、試料のセッティングを自動的に実行することは引用例1にも記載されているように何ら新規な発想ではない。したがって、引用発明においても段階A、段階B及び明記はされていないが備えていることが明らかな、下向きに所定の設定荷重を付加する段階を自動的に実行されるようにすることは、当業者にとって格別困難なこととはいえない。また、自動的に実行されるといっても、作業開始のため、作業者による何らかの開始命令が必要であり、そのような開始命令を受けて自動的に実行されるものであることは当然である。したがって、引用発明においても、必要に応じて、相違点2に係る構成を採用することは当業者にとって格別困難なことではない。また、本願第1発明の構成により、引用例1,2あるいは前記周知技術からは予測しがたいほどすぐれた効果が得られるものともいえない。
以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、請求項2-5に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-07-19 
結審通知日 1999-08-13 
審決日 1999-08-17 
出願番号 特願平7-93120
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 阿部 綽勝
橋場 健治
発明の名称 熱機械分析装置の試料セッティング方法  
代理人 鈴木 利之  

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