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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1005091
異議申立番号 異議1999-72260  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-10 
確定日 1999-11-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第2835378号「検眼装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2835378号の特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第2835378号の特許請求の範囲第1項に係る発明についての出願は、昭和60年6月21日に特許出願された特願昭60-136722号に基づき新たに出願された特願平5-307368号に基づき平成8年7月12日に新たに出願されたものであって、平成10年10月9日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、その特許について特許異議申立人株式会社トプコンにより特許異議の申し立てがなされたものである。
そして、本件の特許請求の範囲第1項に係る発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された事項により特定される下記のとおりのものと認める。
「固定の光分割部材を含む観察用光学系を介して前眼部を観察するために用いる撮像手段と、該撮像手段を用いて前記光分割部材を介して被検眼に関する所定の光学的測定を行う測定手段と、前記観察光学系の外部より前記光分割部材を介して前記撮像手段にアライメントマークを投影する投影手段と、前記所定の光学的測定の際に前記投影手段からの光束の投影を止める制御手段とを有することを特徴とする検眼装置。」(以下「本件発明」という。)
2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人株式会社トプコンは、証拠として1)甲第1号証:特開昭59-77827号公報及び2)甲第2号証:特開昭59-125551号公報を提出し、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明と周知事項(参考文献1:特開昭59-91942号公報、参考文献2:特開昭59-91943号公報)とを組み合わせることで当業者が容易に発明しうるものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件発明に係る特許を取り消すべき旨主張している。
3.特許異議申立人が提出した甲各号証の記載事項
1)特許異議申立人が提出した甲第1号証には、「円環状の光源1(例えば蛍光灯)から出た光は、円環状に加工された円環状レンズ2によって光軸1を含む平面内で平行に射出され、被検眼角膜Ecを照明」(2頁左上欄11行目〜14行目)し、「角膜反射像は対物レンズ3、光分割ミラー4,結像レンズ5によって撮像管8に結像され観察可能」(2頁右上欄4行目〜6行目)となり、そして、「角膜反射像の形状は被検眼角膜Ecの形状に応じて変化し、その形状により角膜の曲率、屈折力、乱視度、乱視軸を求めることができる。観察系と分岐する測定系は光分割ミラー4と光位置検出器9とにより構成され」(2頁右上欄9行目〜13行目)、「7は絶対位置指標板で指標投影レンズ6,光分割ミラー4、結像レンズ5を介して撮像管8にて角膜反射像及び前眼部とともに観察可能である。絶対位置指標板7はアライメントのための指標板であり、第3図に示すような円環状開口を有し、この開口中心はレンズ光軸上にある。」(2頁左下欄4行目〜10行目)ことが記載されている。
2)甲第2号証には、「被検眼前眼部照明光路と、被検眼前眼部観察撮影光路と、眼屈折力測定光路とを分離したもの」(3頁右上欄7行目〜9行目)において、「被検眼前眼部を観察するためのランプ101からの光はハーフミラー102,コンデンサレンズ103、対物レンズ105aを経て被検眼Epに至り、前眼部からの光は対物レンズ105、リレーレンズ106を経てR方向に進み観察される。また撮影時にはストロボ113が発光し同様に被検眼前眼部からの光がR方向に進み撮影される。」(3頁右上欄16行目〜左下欄3行目)そして、「本実施例で被検眼前眼部照明光路が、被検眼前眼部観察撮影光路に関し、眼屈折力測定光路と対称的である必要はない。対称的であると前眼部で照明光が直接反射して、眼屈折力測定系へ入ることが考えられるがこの場合には、眼屈折力測定時に、ランプ101、ストロボ113を消灯しておけば良い。」(3頁左下欄13行目〜19行目)ことが記載されている。
4.本件発明と特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明との対比・判断
本件発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲各号証の何れにも、本件発明の「撮像手段を用いて前記光分割部材を介して被検眼に関する所定の光学的測定を行う測定手段」を有し、当該「撮像手段にアライメントマークを投影する投影手段」を有し、前記撮像手段による「所定の光学的測定の際に前記投影手段からの光束の投影を止める制御手段とを有する」構成が記載も示唆もされておらず、本件発明は前記構成をその一部として採用することにより、本件の特許公報に記載された「被検眼に対する光学的測定に際して、不要な光束が撮像手段に達することを防止することにより外乱の混入を防ぎ、処理を容易にする。」(3頁5欄17行目〜19行目)との格別な効果を奏するものである。
これに対して、特許異議申立人は、撮像手段と、前眼部を観察するための撮像手段とが共用されることは参考文献1,2に記載されているように周知の事項であり、所定の光学的測定の際にその測定に不要な光源を消灯することは、甲第2号証により知られており、本件発明にいう「投影手段」も「所定の光学的測定の際に不要な光」であるから、アライメントマークとしての光束の投影を止めることは容易に想到し得たものと主張している。
そこで、参考文献1,2についてみれば、以下の事項が記載されている。
1)参考文献1には、「瞳孔径測定装置として、被検眼前眼部をテレビモニタによって観察し、走査線ごとに明暗の出力信号を検出し(瞳孔部は暗部となる)、直径方向のカーソルマーカーの箇所の走査線による検出より瞳孔径を、更には走査線毎に積分して瞳孔面積を測定するものが知られている。」(2頁左上欄2行目〜7行目)ことが記載されている。また、位置合わせについては、「又計測の初期設定すなわちテレビカメラと、被検眼の位置合わせをする走査が、基準レベルのサンプル点を瞳孔内に確保する走査にもなり、」(5頁右上欄17行目〜19行目)と記載されている。
2)参考文献2には、「眼屈折力を測定するとともに、走査型撮像部を有する観察手段にて前眼部を観察する眼屈折力測定装置において、前記観察手段撮像部の出力信号から被検眼瞳孔の大きさに対応する矩形波を抽出する2値化手段と、該矩形波の幅によって瞳孔の大きさを測定する瞳孔径計測手段を具え、眼屈折力測定とともに、被検眼瞳孔の大きさの測定を行うことを特徴とする眼屈折力測定装置。」(1頁左下欄9行目〜17行目)が記載されており、当該装置においては、「106は屈折力測定部の光源20の点灯回路、107は屈折力測定部のリレーレンズ移送の為の駆動回路をそれぞれ示す。106及び107には前述のトリガー回路105からの出力105aが入力され、105aのトリガーパルスが発生されるタイミングで屈折力測定部の光源20の点灯及びリレーレンズ移送の駆動が開始されるよう構成されている。以上の構成において、被検眼Eの前部をテレビカメラ48で撮像すると、被検眼瞳孔領域の面積及び直径の計測が計測回路100によって行われ、出力68aには瞳孔面積のアナログ信号が出力される。」(6頁右上欄10行目〜左下欄2行目)、「これら一連の信号処理は検者が屈折力測定の為に被検眼をアライメント操作している過程で終始継続して実行されているが、検者が測定スイッチ104を押すまでは、トリガー回路105の中のゲート回路が信号104aによって禁止状態に保たれて、屈折測定開始のトリガーパルス105aは出力されない。検者が被検眼のアライメントを完了して測定スイッチ104を押すとトリガー回路105はイネーブル状態となり、瞳孔面積が極大となったタイミングに一致してトリガーパルス105aが出力され、光源20の点灯とリレーレンズ移送が実行されて屈折力測定が実行される。」(6頁左下欄5行目〜17行目)ことも記載されている。
参考文献1においては、眼屈折力測定に関しては記載されておらず、アライメントについても具体的構成は記載されていないことから、参考文献1に記載された撮像手段による瞳孔径測定の技術を甲第1号証に組み合わせたとしても、アライメント光自体が瞳孔径測定時に不要な光となるとはいえない。また、当業者にとって撮像手段による測定に際しアライメント光が不要な光であるということ自体が自明であるともいえない。
また、参考文献2においては、撮像手段による瞳孔径測定とアライメントとが同時に行われており、また、アライメントが終了され他の測定を開始するスイッチが押されても撮像手段による瞳孔径の測定が継続されることが記載されているものの、アライメント用の光源を消灯することについては記載されておらず、瞳孔径測定時にアライメント光が不要な光となることを示唆するものでもない。
よって、周知技術として提示された前眼部を観察するために用いる撮像手段による測定技術を、甲第1号証に記載された発明に適用するに当たって、前眼部を観察するために用いる撮像手段による測定の際にアライメント光束を止めるということは、甲第2号証に記載された事項を参酌しても当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明は、上記各構成の組み合わせによって前記効果を奏するものであるから、本件発明は、特許異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証と周知事項とから当業者が容易に発明をすることができたものと認められない。
5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許請求の範囲第1項に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許請求の範囲第1項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-10-06 
出願番号 特願平8-203006
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高見 重雄川端 修能美 知康  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 橋場 健治
藤原 敬士
登録日 1998-10-09 
登録番号 特許第2835378号(P2835378)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 検眼装置  
代理人 田村 和彦  
代理人 日比谷 征彦  

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