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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C23C
管理番号 1005549
審判番号 審判1999-397  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-12-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-07 
確定日 1999-11-19 
事件の表示 平成1年特許願第113180号「真空蒸着装置」拒絶査定に対する審判事件(平成2年12月5日出願公開、特開平2-294472)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成1年5月2日の出願であって、その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成8年2月23日付け手続補正書、平成10年10月2日付け手続補正書及び平成11年2月4日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりの真空蒸着装置にあるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は請求項1に記載された次のとおりのものである。
「真空槽内にプラスチックフィルムからなる連続状の基材が配置され、該基材と対面する位置には、連続状の電子ビーム蒸発源、および電子ビーム照射装置を設け、かつ蒸発源を冷却水が通水される構造になっている移動可能なハース本体に取り付けたことを特徴とした真空蒸着装置。」
2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開昭57-47869号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下のア.〜オ.の記載がある。
ア.「1つの回転軸を中心として回転可能な支持台上に脱着可能な状態で保持された2つの同心円が縁となる様なリング状の溝を有するるつぼに蒸着材料を入れ、該支持台を回転することにより該るつぼを回転せしめ、しかして蒸着材料を蒸発部に連続的に供給しながら蒸発させることを特徴とする真空蒸着方法。」(特許請求の範囲)
イ.「本発明に用いるるつぼは、2つの同心円が縁となる様なリング状の溝を有するものである。材質は…無酸素銅が好ましく用いられる。また、蒸着材料の加熱源が電子銃である様な場合には、るつぼが冷却されている事が望ましいが、支持台を水冷することにより、るつぼを冷却することができる。したがって、るつぼの肉厚があまり厚いと冷却が不十分になる。」(第2頁右下欄第11行〜第19行)
ウ.「蒸着材料の加熱源としては、・・・、電子銃が好ましく用いられる。」(第3頁左上欄第8行〜第11行)
エ.「次に本発明を実施した1例を説明する。第1図は平面図、第2図は断面図を示す。支持台1は銅製で内部が空洞になっており、流水により冷却される。支持台1は中心Oを軸として回転する。2は銅製のるつぼで支持台1上に保持されている。るつぼ2の下面は支持台2の上面に密着しており、支持台1の内部を通る水により冷却される。るつぼ2には、幅34mm、深さ15mmのリング状の溝がある。リング状の溝に入った蒸着材料3の表面E部(9cm2)を電子ビームにより加熱して蒸発させる。次にSnO2を5wt%混合したIn2O3の粉末を蒸着材料に用いた場合について説明する。るつぼ2を支持台からはずし、・・・。るつぼ2のリング状の溝内に、充填率35%になる様に上記粉末をプレスした後、るつぼを・・・支持台1上に保持した。次に真空槽の真空度を8×10-5Torrにして、支持台1を0.2回/時の速度で回転させることによりるつぼを回転させながら、電子ビームの出力を360WにしてE部を加熱することにより上記蒸着材料を蒸発させた。・・・シャッターを開き、るつぼの上方30cmの位置を走行するポリェステルフイルムに、3600Å/minの蒸着速度(・・・)で5時間に亘って安定に蒸着することができた。」(第3頁左上欄第19行〜同頁左下欄第4行)
オ.本発明を実施した装置の一例を示す図面であって、リング状の溝を有すると共に、その溝に蒸着材料3が入っている皿状のるつぼ2が、回転軸Oを中心として回転可能な支持台1の上面に嵌着され、側方より弧状の電子ビームが、蒸着材料3のなすリング状の蒸着材料3表面の電子ビーム照射位置Eを照射するように示されている装置の平面図である第1図と第1図の装置の断面図である第2図
3.対比・判断
本願第1発明(以下、「前者」という。)と引用例1に記載された真空蒸着方法で用いる真空蒸着装置(以下、「後者」という。)とを対比すると、▲1▼後者の、真空槽内に配置されていることの明らかな「走行するポリエステルフイルム」(前記摘記事項エ.参照)は、前者の「プラスチックフイルムからなる連続状の基材」に相当し、▲2▼後者の、リング状の溝を有するとともに該溝に蒸着材料3を入れた円盤状のるつぼ2からなり、電子ビームEの照射位置で電子ビームの照射により蒸着材料3が蒸発される、円盤状の電子ビーム蒸発源と呼称されるべき蒸発源は、「円盤状の電子ビーム蒸発源20」が具体例として例示されている前者の「連続状の電子ビーム蒸発源」(本願明細書第4頁第15行〜第5頁第4行及び本願図面の第1図参照)に相当し、▲3▼後者においても、蒸着材料を入れたルツボ(蒸発源)の側方に電子ビーム照射装置のごとき蒸着材料加熱源が設けられていることは前記摘記事項ウ.エ.オ.の記載から明らかであり、また▲4▼中心Oを軸として回転する支持台1が具体例として示されている後者の「回転可能な支持台」(前記摘記事項ア.エ.オ.参照)は、「モーター21により回転可能なリングハース本体22」が具体例として例示されている前者の「移動可能なハース本体」(本願明細書第5頁第1行〜第2行及び本願図面の第1図参照)に相当すると認められるから、両者は、「真空槽内にプラスチックフイルムからなる連続状の基材が配置され、該基材と対面する位置には、連続状の電子ビーム蒸発源、および電子ビーム照射装置を設け、かつ蒸発源を移動可能なハース本体に取り付けたことを特徴とした真空蒸着装置。」である点で一致し、前者は、ハース本体は冷却水が通水される構造になっているのに対して、後者は、ハース本体が冷却水が通水される構造になっていることの明記がない点で相違する。
上記相違点について検討すると、引用例1には、その特許請求の範囲に記載された真空蒸着方法の発明を実施した1例を説明する記載として、その真空蒸着方法で用いる真空蒸着装置に関し、「るつぼ2の下面は支持台2の上面に密着しており、支持台1の内部を通る水により冷却される。」(前記摘記事項工.参照)と、記載されている。
そして、該「支持台1の内部を通る水」はこの水の作用からみて、「冷却水」といえるものであるから、引用例1に記載された真空蒸着装置について、「支持台1を冷却水が通水される構造になっているようにすること」、すなわち「ハース本体を冷却水が通水される構造になっているようにすること」は、当業者が適宜設計できたことと認められる。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、上記引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、本願第1発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-08-27 
結審通知日 1999-09-14 
審決日 1999-09-17 
出願番号 特願平1-113180
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三宅 正之城所 宏  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 能美 知康
唐戸 光雄
発明の名称 真空蒸着装置  

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