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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1005843 |
審判番号 | 審判1998-427 |
総通号数 | 6 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-01-05 |
確定日 | 1999-12-06 |
事件の表示 | 平成5年特許願第135445号「半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔(平成8年1月31日出願公告、特公平8-10765)、特許請求の範囲に記載された請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許をすべきものとする。 |
理由 |
1.本願の経緯および本願発明の要旨 本願は、平成5年5月13日の出願であって、平成7年9月13日に出願公告の決定がなされたところ、特許異議の申立てがあり、その特許異議の申立ては理由があるものと決定され、その特許異議決定の理由により拒絶査定されたものである。 本願発明の要旨は、出願公告後、平成8年12月27日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「半導体基板上にゲート絶縁膜を介して不純物がドープされた非単結晶シリコン膜を形成する工程と、その後ウェハに施される熱処理工程の最高温度以上の温度で熱処理を施して前記非単結晶シリコン膜を多結晶化乃至大粒径化する工程と、形成された多結晶シリコン膜上に高融点金属シリサイド膜を形成する工程と、前記高融点シリサイド膜および前記多結晶シリコン膜をパターニングしてゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板の表面領域内に不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法。」 2.原査定の理由の概要 原査定の理由である異議決定の概要は、「請求項1に係る発明は、特開平4-150018号公報(以下、「甲第3号証」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。 3.原査定の理由である異議決定に引用された刊行物に記載された発明 甲第3号証には、 「(1)Tiポリサイドゲート電極において、Tiポリサイド電極の下地となるN型不純物を含むポリシリコン膜の粒径が0.1μm以下であることを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲)、 「〔実施例〕本発明の半導体装置の製造方法及びその構造の一実施例を示す。第1図(a)〜(f)は本発明によるTiポリサイドゲート電極を持つMOSLSIの製造工程断面図で、第1図(f)は、本発明の半導体装置の断面構造図である。まず、シリコン基板上1に1000℃のウェット酸化で素子分離絶縁膜2を7000Å、900℃のウェット酸化によりゲート酸化膜3を120Åを形成(第1図(a))した後、100%SiH4を30Paの減圧中、560℃で熱分解し、アモルファスシリコン膜4を4500Å堆積する(第1図(b))。次に、POCl3を用いて900℃のアニールによりリンの熱拡散を行い、粒径が0.1μm以下のN型ポリシリコン膜5を形成する(第1図(c))。さらに、このN型ポリシリコン膜5上に、アルゴンスパッタ法によりTi膜6を800Å堆積させ(第1図(d))、850℃、N2雰囲気中でアニールを行い、Ti膜6とN型ポリシリコン膜5の上部を反応させて、Tiシリサイド7を形成する(第1図(e))。最後に、Tiシリサイド7と下地のN型ポリシリコン膜5に、アンモニア+過酸化水素混合液により選択エッチングを行いTiポリサイド電極8を形成する(第1図(f))。」(第2頁左上欄第13行〜右上欄第17行)、 「〔発明の効果〕以上、本発明では、Tiポリサイド電極の下地のN型ポリシリコンをアモルファスシリコンから形成することにより、従来よりも粒径の小さなN型ポリシリコンの形成が可能となり、これによりTiのゲート酸化膜への浸透が防止され、信頼性の高い微細半導体装置の安定供給が可能となった。」(第2頁左下欄第20行〜右下欄第7行)が、第1図(a)〜(f)と共に記載されている。 これらの記載事項によると、甲第3号証には、「シリコン基板上にゲート酸化膜を形成した後、560℃でアモルファスシリコン膜を堆積する工程と、900℃のアニールによりリンの熱拡散を行い粒径が0.1μm以下のN型ポリシリコン膜を形成する工程と、Ti膜を堆積する工程と、850℃でアニールを行いTi膜とN型ポリシリコン膜の上部を反応させてTiシリサイドを形成する工程と、Tiシリサイドと下地のN型ポリシリコン膜に選択エッチングを行いTiポリサイド電極を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法」が記載されていると認められる。 4.対比・判断 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と、甲第3号証に記載された発明とを対比すると、本願発明の「半導体基板」、「ゲート絶縁膜」、「不純物がドープされた非単結晶シリコン膜」、「高融点金属」は、甲第3号証に記載された発明の「シリコン基板」、「ゲート酸化膜」、「N型ポリシリコン膜」、「Ti」に相当する。また、甲第3号証に記載された発明においても、ゲート電極をマスクとして半導体基板の表面領域内に不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成するといえる。 従って、本願発明と、甲第3号証に記載された発明は、「半導体基板上にゲート絶縁膜を介して不純物がドープされた非単結晶シリコン膜を形成する工程と、形成された多結晶シリコン膜上に高融点金属シリサイド膜を形成する工程と、前記高融点シリサイド膜および前記多結晶シリコン膜をパターニングしてゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板の表面領域内に不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法。」である点で一致し、 本願発明が「その後ウェハに施される熱処理工程の最高温度以上の温度で熱処理を施して前記非単結晶シリコン膜を多結晶化乃至大粒径化する工程」を備えるのに対して、甲第3号証に記載された発明はこのような工程を備えない点で相違する。 ところで、甲第3号証に記載された発明は、Tiポリサイド電極の下地となるN型不純物を含むポリシリコン膜の粒径を0.1μm以下とすることにより、Tiのゲート酸化膜への浸透を防止し、信頼性の高い微細半導体装置の安定供給を可能とするものである。してみれば、甲第3号証に記載された半導体装置の製造方法において、「900℃のアニールによりリンの熱拡散を行い粒径が0.1μm以下のN型ポリシリコン膜を形成する工程」の後に、さらに、「その後ウェハに施される熱処理工程の最高温度以上の温度で熱処理を施して前記非単結晶シリコン膜を多結晶化乃至大粒径化する工程」を付加することは、ポリシリコン膜の粒径の増大につながり、甲第3号証に記載された発明の目的に反するから、甲第3号証に記載された発明において、「その後ウェハに施される熱処理工程の最高温度以上の温度で熱処理を施して前記非単結晶シリコン膜を多結晶化乃至大粒径化する工程」を付加することが、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 そして、本願発明は、上記工程を備えることにより、「アモルファス・シリコンの多結晶化工程(または小粒径ポリシリコンの大粒径化)工程およびその後の熱処理工程においてゲート酸化膜に応力が加わらないようにすることができる。したがって、ゲート電極がダメージを受けることがなくなりその耐圧低下を回避することができる。」という顕著な効果を奏するものと認められる。 したがって、本願発明は甲第3号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 1999-10-18 |
出願番号 | 特願平5-135445 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岡 和久 |
特許庁審判長 |
今野 朗 |
特許庁審判官 |
橋本 武 加藤 浩一 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 京本 直樹 |