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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1006074
異議申立番号 異議1998-75292  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-01-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-23 
確定日 1999-09-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2750155号「ハムおよびソーセージの製造法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2750155号の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2750155号は、平成1年6月7日に特願平1-152086号として出願され、平成10年2月20日にその特許の設定登録がなされ、その後、鶴田健二より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月16日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求
1.訂正の内容
▲1▼特許請求の範囲の請求項1
「ケーシングの内面に粉末状または粒状の水不溶性の風・調味素材を施し、ハムまたはソーセージ用原料を前記ケーシングに充填またはケーシングで包み、そのまま燻煙、湯煮または蒸煮することを特徴とするハムおよびソーセージの製造方法」を、
「可食性ケーシングまたは紙、セルロース系材料からなるケーシングの内面に湯や蒸気中に溶け出す結合剤と粉末状または粒状の水不溶性の風・調味素材を施し、ハムまたはソーセージ用原料を前記ケーシングに充填またはケーシングで包み、そのまま湯煮または蒸煮することを特徴とするハムおよびソーセージの製造法」と訂正する。
▲2▼明細書4頁3行「香辛料や・・・調味素材」を、「湯や蒸気中に溶け出す結合剤(以下単に結合剤という)と香辛料やその他の風・調味素材と」と訂正する。
▲3▼同5頁14行「ドライソーセージおよび」の記載を削除する。
▲4▼同6頁1行「ケーシングは、」を、「ケーシングは、可食性ケーシングまたは紙、セルロース系材料からなるケーシング(以下併せてケーシングという)であり、」と訂正する。
▲5▼同6頁6行「その形状・・・問わない。」を、「その形状も問わない。」と訂正する。
▲6▼同8頁13〜末行「そして、・・・その場合に、」を、「ケーシング内面に風・調味素材を付着させる方法としては、」と訂正する。
▲7▼同9頁末行「好ましい。」を、「用いられる。」と訂正する。
▲8▼同12頁10〜14行「必要であり、・・・好ましい。」を、「必要である。」と訂正する。
▲9▼同15頁5〜8行「必要であり、・・・同様である。」を、「必要である。」と訂正する。
▲10▼同16頁10行「上記のドライソーセージにおいて」の記載を削除する。
▲11▼同16頁12〜13行「により、または・・・製造する。」を、「により製造する。」と訂正する。
▲12▼同17頁5〜12行「必要であり、・・・使用されない。」を、「必要である。」と訂正する。
▲13▼同17頁15〜16行「香辛料・・・素材」を、「結合剤と香辛料やその他の風・調味素材と」と訂正する。
▲14▼同6頁14〜16行「および・・・ケーシング」の記載、同11頁19行〜12頁6行「また、・・・行ってもよい。」の記載、同14頁13行〜15頁2行「この後者の場合に、・・・行ってもよい。」の記載及び同15頁末行〜16頁9行「ドライソーセージを・・・製造する。」の記載を削除する。
▲15▼同4頁17行、6頁4行、7頁4、8、12行、8頁1、4行、11頁11行、13頁3〜4行、14頁3〜4、6、10〜11行、及び17頁1行「風・調味素材」を「結合剤と風・調味素材と」と訂正する。▲16▼同22頁8行「愛だ」を、「間」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項▲1▼は、特許請求の範囲の減縮に該当し、訂正事項▲2▼〜▲14▼は、訂正事項▲1▼に伴う訂正である。
そして、上記いずれの訂正も新規事項に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.独立特許要件
当審が通知した取消理由の概要は、請求項1に係る発明は、甲第1号証或いは甲第2号証に記載の発明である、若しくは甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号の規定に該当し、若しくは同条2項の規定に違反し、特許を受けることができないというものであるところ、訂正された請求項1(以下、「本件発明」という。)は、後述の「III.3.判断」の項に記載のように、甲第1号証或いは甲第2号証に記載の発明ではなく、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項、及び同条3項で準用する126条2項から4項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。
III.特許異議申立
1.特許異議申立書の理由の概要
訂正前の本件請求項1に係る発明は、甲第1乃至2号証に記載された発明である、或いは、甲第1乃至2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることがでいたものであるから、特許法29条1項3号或いは同条2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1号証:特公平1-17653号公報
甲第2号証:特公平1-17654号公報
2.甲各号証の記載内容
甲第1号証には、次の記載がある。
「ケーシング用セルロース被膜の内面に、色素、フレーバー、調味料等を含み、かつ耐水性加工を施された可食性被膜形成材からなる内張り層を有することを特徴とするセルロースケーシング。」(特許請求の範囲の項)、
「被膜形成材としては、セルロース膜に対し適度の親和性があり、しかも水に対し容易には分散又は溶解しない可食性材料が好ましく、具体的には、・・・アラビアゴム、グアガム、ゼラチン、カゼインナトリウム、・・・アルギン酸ナトリウム、・・・などが挙げられる。」(2頁3欄16〜24行)、
「この理由から、上の被膜材の耐水性が乏しい場合は、被膜に対し、さらに薄い耐水性被膜を施したり、又は成膜用膜基材中に防水剤を混入したりする手段が採られる。」(2頁3欄29〜32行)、
「(2)調味料及び呈味料(味剤):・・・にんにく、粉末のり、粉末ごま、ペパー、ジンジャー、チリ、ナツメグ、パプリカ、キャラウエー、ハッカ、ワサビ、・・・燻結晶、炒り小麦粉、粉末チーズ、・・・など。」(2頁4欄17〜25行)、
「プルランの1%水溶液中に、・・・このケーシング内に第2図の如くソーセージ材料4を充填し、40分蒸煮後、冷却し、・・・」(実施例1の項)
甲第2号証には、次の記載がある。
「内面に調味料、色素、フレーバー、調味料等を含み、かつ耐水性加工を施された可食性被膜形成材からなる内張り層を有することを特徴とする加工肉調理用フアイブラスケーシング。」(特許請求の範囲の項)、
「ここに被膜構成材としては、セルロース膜に対し適度の親和性があり、しかも水に対し容易には分散又は溶解しない可食性材料が好ましく、具体的には、・・・アラビアゴム、グアガム、ゼラチン、カゼインナトリウム、・・・アルギン酸ナトリウム、・・・などが挙げられる。」(2頁3欄6〜14行)、
「このため、被膜構成材の耐水性が乏しい場合には、本被膜に対しさらに薄い耐水性被膜を施したり又は製膜用膜基材中に防水剤を混入したりする手段が採られる。」(2頁3欄19〜22行)、
「(2)調味料及び呈味料(味剤)として:・・・ニンニク、粉末ノリ、粉末ゴマ、ペパー、ジンジャー、チリ、ナツメグ、パプリカ、キャラウエー、ハッカ、ワサビ、・・・燻結晶、粉末チーズ、・・・小麦粉、大豆類などの炒焼物など。」(2頁4欄8〜16行)
3.判断
A.特許法29条1項3号について
本件発明に係る「結合剤」は、「湯や蒸気中に溶け出す」ものであるところ、上記甲1及び2号証には、湯や蒸気中に溶け出す結合剤について開示するところはない。
すなわち、甲第1及び2号証には、本件発明に係る結合剤と同じアラビアゴム、グアガム、ゼラチン、カゼインナトリウム、アルギン酸ナトリウム等が例示されているが、被膜構成材の耐水性が乏しい場合には、該被膜に対しさらに薄い耐水性被膜を施したり又は製膜用膜基材中に防水剤を混入したりする手段が採られるものであるから、本件発明と相違することは明らかである。
B.特許法29条2項について
上述のように、甲第1及び2号証に係る結合剤は、耐水性加工が施されたものであって、「湯や蒸気中に溶け出す」ものについては、甲第1及び2号証には教示するところがないのであるから、本件発明は、甲第1及び2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ハムおよびソーセージの製造法
(57)【特許請求の範囲】
可食性ケーシングまたは紙、セルロース系材料からなるケーシングの内面に湯や蒸気中に溶け出す結合剤と粉末状または粒状の水不溶性の風・調味素材とを施し、ハムまたはソーセージ用原料を前記ケーシングに充填またはケーシングで包み、そのまま湯煮または蒸煮することを特徴とするハムまたはソーセージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明はハムおよびソーセージの製造法に関する。詳細には表面部分に香辛料やその他の風・調味素材の層を有する風味のよいハムおよびソーセージの製造法に関する。
〔従来の技術〕
表面に香辛料を付着させた肉塊製品は、パストラミビーフ等として知られているが、これは生の肉塊表面に粒コショウ等の香辛料を直接まぶし、それをグリル等により加熱したものである。かかる製品は加熱処理によって香辛料が肉塊中に浸透するため出来上がった製品を薄切りした際にも香辛料が肉塊から分離せず香辛料の風味を保っている。
しかしながら、そこでは香辛料をまぶした肉塊は通常むきだしのまま取り扱われており、そのためにグリル前の運搬時や取り扱い時に香辛料が肉塊から分離し易く、特に香辛料が粒コショウ等の粒度の大きいものの場合には取れ易いという欠点があった。
また、通常、プレスハムは細断し塩漬した小肉塊を結合し成型することにより製造され、そしてソーセージ類は挽肉を筒状のケーシングに充填して製造されており、これらの製品では食味や風味の一層の改良やバラエテイ化が求められている。そして、上記のパストラミビーフにおけるように、プレスハムやソーセージ類の表面に香辛料の層を設けてその風味や食味を向上させることが考えられるが、いずれの場合にも成型前または充填前の原料は小肉塊の集合または挽肉であって保形性がなく、そのためにその表面に香辛料をそのまままぶすことは極めて困難であった。
さらに、ドライソーセージの1種であるサラミソーセージの表面にコショウを付着させたものがペパーサラミソーセージとして知られているが、これはケーシングを剥ぎ取ったサラミソーセージの完成品をゼラチン液に浸し、それに粒コショウをまぶして風乾したものであり、その場合には加熱・乾燥処理により既に蛋白質が変性しかつ極めて硬くなったサラミソーセージ表面にコショウを施すためにコショウのソーセージ中への浸透がほとんどなくしかもコショウがその表面から剥離し易く風味の改良が充分ではなかった。
〔発明の内容〕
本発明者等は、表面部分に香辛料や他の風・調味素材の層が設けられている風味および食味のよいハムおよびソーセージを円滑にかつ簡単に製造し得る方法について研究を続けてきた。
その結果、ハムおよびソーセージを製造する際に通常使用されているケーシングの内面に予め湯や蒸気中に溶け出す結合剤(以下単に結合剤という)と香辛料やその他の風・調味素材とを施しておき、ハムおよびソーセージ用原料を該ケーシング内に充填またはケーシングで包んで、常法によりハムおよびソーセージ類を製造すると、ハムおよびソーセージの表面に香辛料などの風・調味素材を極めて簡単にかつ円滑に付着させることができること、しかも表面に付着した香辛料などの風・調味素材はハムやソーセージの製造工程中および出来上がった製品の貯蔵中に肉中に浸透して風・調味素材の剥離のない風味および食味のよい製品が得られることを見出した。
したがって、本発明は、ハムおよびソーセージ用原料をケーシングに充填するかまたはケーシングで包んでハムおよびソーセージを製造するにあたり、ケーシングの内面に結合剤と風・調味素材とを施しておくことを特徴とするハムおよびソーセージの製造法である。
本発明におけるハムおよびソーセージは、ケーシングを使用して製造されるハムおよびソーセージであればいずれのものも含み原料の種類や製造法のいかんを問わない。本発明でいうハムには、例えばボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ベリーハム、ラックハム等の豚のもも肉、ロース肉、肩肉、ばら肉等の塊を整形して製造するいわゆるハム類ならびに豚、牛、羊、山羊、馬、鶏、兎、魚等の肉の場合によってはかかる動物の内臓肉を細断して小肉塊にしそれを挽肉等の結着剤で結着させて製造するいわゆるプレスハム類が含まれる。また本発明におけるソーセージには、水分含有量の多いドメスチックソーセージおよび水分含量の少ないセミドライソーセージのいずれもが含まれ、例えばポークソーセージ、ウインナーソーセージ、フランクフルトソーセージ、ボロニアソーセージ、リオナソーセージ、レバーソーセージ、ヘッドチーズ、サラミソーセージ、セルベラートソーセージ、モルタデラ等を挙げることができる。
本発明で使用するケーシングは、可食性ケーシングまたは紙、セルロース系材料からなるケーシング(以下併せてケーシングという)であり、ハムおよびソーセージを製造する際にハムおよびソーセージ用原料を直接充填または包むのに使用できるものであって、かつその内面に結合剤と風・調味素材とを施し得るものであればいずれのものでもよく、その形状も問わない。例えば、ケーシングは筒状等の特定の形状を有するものであっても筒状等に形成されていない平坦なフィルム状またはシート状であってもよい。本発明で使用できるケーシングとしては、例えば家畜の腸や人工のコラーゲンタンパク質等からなる可食性ケーシング、ならびに紙、セルロース系材料(ファイブラス、セロファン、セルロースアセテート等)を挙げることができるが、ケーシングへの風・調味料素材の接着安定性や製品の出来栄えの点で和紙にビスコース処理をしたファイブラス系の材質が好ましい。
ケーシングの内面に風・調味素材を施す時点は、ケーシングにハムまたはソーセージ用原料を充填する前、或はケーシングでハムまたはソーセージ用原料を包む前であればいつでもよく、例えば内面に結合剤と風・調味素材とを施したケーシングを予め多数準備しておいてそれを順次使用しても、またはケーシングにハムまたはソーセージ用原料を充填する直前にケーシングの内面に結合剤と風・調味素材とを施してもよい。筒状等に形成したケーシングを使用する場合は、筒状等に形成した後に風・調味素材を施してもよいが、シートまたはフィルム状のケーシング材料の一面に結合剤と風・調味素材とを施し、その後に風・調味素材を施した面が内側になるようにして筒等を形成するのが便利である。その場合にハムまたはソーセージ用原料の筒状ケーシング内への充填は、各々の製造方法に応じて、風・調味素材を施したケーシングを筒状にした後に行っても、または筒状にする前であってもよい。ケーシングを筒状等に形成せずにシート状またはフィルム状のままでハムおよびソーセージの製造に使用する場合は、結合剤と風・調味素材とを施したシートおよびフィルムをそのまま使用すればよい。家畜の腸等のもともと筒状になった直径の小さいケーシングではその内面に結合剤と風・調味素材とを施すのが容易でないが、その内面に風・調味素材を施すのは可能な限りは本発明におけるケーシングとして使用できる。
風・調味素材はケーシングの内面全体に均一に施しても不均一に施してもよく、また風・調味素材を施した箇所と施さない箇所とが存在するようにしてもよく、風・調味素材の施し方によって種々変化に富んだ製品が得られる。
ケーシング内面に風・調味素材を付着させる方法としては、結合剤をまずケーシングの内面に施した後にその上に風・調味素材を施しても、ケーシングの内面に風・調味素材を施した後にその上に結合剤を施しても、または風・調味素材と結合剤を予め混合しておきそれをケーシングの内面に施してもよい。結合剤としては、ゼラチン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、繊維素グリコール酸のカルシウム塩、ナトリウム塩、殿粉グリコール酸ナトリウム、殿粉リン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、カゼインのナトリウム塩、天然ガム類(トラガントガム、ガッテガム、アラビアガム、カラヤガム、グアガム、ローカストビーンガム等)等が使用できるが、そのうちでもゼラチンが製品の出来栄えの点で好ましい。結合剤は、通常、約10〜25%程度の濃度の水溶液、エタノール溶液等の溶液にして使用するのがよい。また結合剤は湯煮や蒸煮工程において湯や蒸気中に溶け出して出来上がった製品に残存しないものが用いられる。
風・調味素材としては、製造しようとする製品等に応じて任意のものを単独でまたは複数種を任意の割合で混合して使用することができる。風・調味素材としては例えばコショウ、マスタード、ローレル、オールスパイス、クローブス、メース、ナツメグ、フェンネル、コリアンダー、キャラウエー、クミン、ディル、セロリー、カルダモン、フェヌグリーク、タイム、セージ、オニオン、ガーリック、パプリカ、ジンジャー、わさび、唐辛子などの香辛料、ドライフルーツ、ドライ野菜、ドライ穀物、各種ナッツ類、各種ドライ畜肉製品、魚肉製品等の他の調味素材を使用することができ、特にコショウの8ツ割程度の大きさのものが製品の出来栄えの点で適している。
風・調味素材は、粉末状、粒状およびペースト状にして使用するのが取り扱い性、ケーシング内面への付着性、ハムおよびソーセージへの浸透性等の点から望ましい。
上記したように本発明ではハムおよびソーセージの製造において採用されている方法のいずれもが採用でき、その製造方法は限定されないが、代表的な製造法を挙げると以下のとおりである。
ボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ベリーハム、ラックハム等のいわゆるハム類を製造する場合は、豚のもも肉、ロース肉、肩肉、ばら肉等の塊を整形し、それを食塩、糖類、発色剤、酸化防止剤、結着補助剤、結着剤、乳化安定剤、化学調味料、香辛料等からなる塩漬剤を使用して塩漬し、次いで内面に結合剤と風・調味素材とを施したケーシングで包み、燻煙しまたは燻煙せずに、湯煮または蒸煮して製造する。この場合に、塩漬肉を内面に風・調味素材を施した非筒状のフィルムやシートからなるケーシングで包み、その後に塩漬肉の形状や大きさに応じて必要に応じて筒状やその他の形状にシールするのが便利である。
かかるハム類の製造において、燻煙処理を伴う場合にはケーシングとして通気性のある紙、セロファン、ファイブラス等からなるものを使用することが必要である。
また、プレスハムを製造する場合は、豚、牛、羊、山羊、馬、鶏、兎等の動物の肉、場合によってはそれらの動物の内臓や魚肉等を細断して小肉塊にした後、これに食塩、亜硝酸ナトリウム、砂糖等からなる混合塩を均一に混合して塩漬し、塩漬の終わった小肉塊に挽肉等の結着剤、香辛料、調味料、その他の添加剤(合成保存料、発色剤、酸化防止剤、コーンスターチ等の填料等)を加えて混合し、この混合物を結合剤と風・調味素材とを内面に施したケーシングに充填し、燻煙しまたは燻煙せずに湯煮または蒸煮して製造する。この場合に、塩漬小肉塊や結着剤等からなる混合物はそれ自体保形性がないので、該混合物をケーシングに充填する際または充填した後にケーシングの外側に断面が角型、丸型、楕円型等をなしたリテーナーをはめて整形するとよい。
そして、その際に使用する肉の種類、その配合割合、塩漬剤の組成やその小肉塊への混合量、塩漬温度や時間、塩漬の終わった小肉塊に配合する結着剤(挽肉)の種類や量、その他の添加剤の種類や量、各成分の混合方法、混合条件、混合装置、ケーシング中への混合物の充填方法、充填量、充填装置の種類、リテーナーの形式、燻煙方法、湯煮や蒸煮方法および条件等は特に限定されず、プレスハムの製造において通常知られているいずれもが採用できる。
かかるプレスハムの製造において、塩漬小肉塊および結着剤等からなる上記混合物を結合剤と風・調味素材とを内面に施したケーシングに充填するに際しては、既に筒状等に形成されその内面に結合剤と風・調味素材とが施されたケーシングの外部にリテーナーを取り付け該筒状のケーシング内に該混合物を充填しても、または平坦なシートまたはフィルムからなるケーシングをリテーナーの内面にその凹形状に沿わせて置き該凹部に結合剤と風・調味素材とを施した後に上記混合物を入れ、次いでケーシングを筒状にシールするようにしてもよい。ここで燻煙処理を伴う場合にはケーシングとして通気性のある紙、セロファン、ファイブラス等からなるものを使用することが必要である。
更に、本発明により水分含量の多いドメスチックソーセージを製造する場合は、豚肉、牛肉、羊肉、山羊肉、馬肉、鶏肉、兎肉、場合によっては魚肉等を細断した後、これを塩漬し、塩漬の終わった小肉塊を肉挽機にかけて挽肉にし、この挽肉に香辛料、調味料、その他の添加剤(合成保存料、発色剤、酸化防止剤、填料等)を冷水または氷雪とともに加えて練合せ、練合せの終わったものを風・調味素材を内面に施したケーシングに充填し、適宜の長さで結束し、乾燥し、燻煙しまたは燻煙せずに湯煮または蒸煮して製造する。また、セミドライソーセージはケーシングに充填し結束したものを、湯煮または蒸煮し、乾燥することにより製造する。ソーセージを製造する際の原料肉の種類やその塩漬方法、添加剤の種類や量、各成分の混合方法、混合装置、ケーシング中への混合物の充填方法や充填装置の種類、乾燥方法、燻煙方法、湯煮や蒸煮方法および条件等は特に限定されず、ソーセージの製造において通常知られているいずれもが採用できる。
そして、かかるソーセージの製造に際しては、既に筒状になりその内面に結合剤と風・調味素材とが施されたケーシング内に充填するのがよい。ここで燻煙処理を伴う場合にはケーシングとして通気性のある紙、セロファン、ファイブラス等からなるものを使用することが必要である。
〔発明の効果〕
本発明ではハムおよびソーセージを製造する際に使用されているケーシングの内面に結合剤と香辛料やその他の風・調味素材とを施しておき、ハムおよびソーセージ用原料をこのケーシングに充填またはケーシングで包むという極めて簡単な操作で、確実にかつ円滑にその表面に風・調味素材の層を有するハムおよびソーセージを製造することができる。
しかも、ケーシングの内面に施された風・調味素材は、ケーシングに充填またはケーシングで包まれたハムおよびソーセージ用原料が、それに続く燻煙、乾燥、湯煮または蒸煮等の処理工程中に、さらに出来上がった製品の貯蔵中に、特に乾燥、湯煮、蒸煮等の加熱工程中に、ハムおよびソーセージ中に浸透し、その結果、出来上がった製品からの風・調味素材の脱落がなくなり、しかも製品表面における風・調味素材と肉との融和によって、まろやかで極めて良好な食感および風味を与える。
さらに、本発明の方法は、細断された小肉塊の集合体や挽肉等のそれ自体では保形性のない原料を使用し、そのために該原料の表面に直接風・調味素材を施すことが困難なプレスハムやソーセージの製造に対して特に適しており、本発明によるときは極めて簡単な操作でプレスハムおよびソーセージ原料の表面に風・調味素材を施すことができ、その結果、風味や食味の改良された変化に富んだ製品を提供することができる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定されない。なお、以下の実施例中、部および%は重量による値を示す。
実施例 1
豚赤肉40部、豚脂肪20部、馬赤肉20部および羊赤肉20部からなる原料肉を約3cm角の立方体に切断したもの1000gに、食塩100部、亜硝酸ナトリウム0.7部および砂糖10部からなる混合塩30gを加えてよく混合し、これを約2℃の温度で4日間冷蔵して塩漬を行った。
別に豚赤肉と氷を100:20の重量割合で混合したもの1000gに上記混合塩30gを加えて糊状になるまでカッテングして結着用挽肉を調製した。
上記の塩漬肉に、該結着用挽肉200g、香辛料(白コショウ、カルダモン、ナツメグ、オニオンおよびメース)30g、化学調味料4g、酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウム)1g、およびコーンスターチ30gを加えて粘りがでるまで均一に混合する。
別に、長さ方向に二つ割りになった断面円形の金属板製リテーナー(内径10cm、長さ30cm)を用意し、その下半型の内面に吸水紙(45cm×55cm;ファイブラス)を沿わせて敷き、これに濃度約14%のゼラチン水溶液を470g/m2の割合で塗布し、この上に黒コショウ(8ツ割)を850g/m2の割合で均一にふりかけて固定させる。
この中に、上記で製造した混合物を隙間のないようにして詰め込み、混合物の上半分にも黒コショウ粉末を850g/m2の割合で直接ふりかける。
リテーナーの下半型からはみ出している吸水紙の残部で混合物の上半分を覆い、リテーナーの上半型を載せてリテーナーを閉じ、リテーナーごと温度75〜80℃の湯に入れて中心温度が68℃に達するまで加熱する。
冷却後、出来上がったプレスハムをリテーナーから取り出し、吸水紙を剥がしたところ、黒コショウはプレスハム表面に強固に付着するとともに一部浸透し、一方黒コショウを吸水紙に付着させるために使用したゼラチンは湯中に溶け出し、美味なプレスハムが得られた。
実施例 2
豚赤肉60部および牛赤肉40部からなる混合肉を約5cm角の立方体に細断した後、これを上記実施例1と同様にして塩漬した。塩漬の終わった細断肉を3mm目のプレートを用いた肉挽機にかけて挽肉にした。
この挽肉1000gに香辛料11g(内訳:コショウ4g、メース2gおよび玉ねぎ汁5g)、豚挽脂肪100gおよび氷水200gを加えて練合せた。
別に、幅25cmの和紙にポリプロピレンをラミネートしてなる長尺フィルムを用意し、その一方の面に濃度14%のゼラチンの水溶液を470g/m2の割合で塗布し、これに黒コショウ(8ツ割)を850g/m2の割合でふりかけた。
ゼラチンからなる結合剤と黒コショウとからなる層が乾いた後、黒コショウ層が内側になるようにしてフィルムをシールして、直径約8cmの円筒状のケーシングを形成した。
上記の円筒状ケーシングに上記の練合せ物を充填し、約30cmの長さに結束した後、燻煙室に移し、まず約50゜Cの温度で約40分間火力乾燥し、ついで約70℃の温度で60分間燻煙した。最後に80℃の湯中に入れて150分間湯煮を行ってソーセージを製造した。
冷却後、表面のケーシングを剥がしたところ、黒コショウ層が表面に強固に付着し、かつその一部が肉中に浸透した風味のよいソーセージであった。
 
訂正の要旨 (1)特許請求の範囲
「 ケーシングの内面に粉末状または粒状の水不溶性の風・調味素材を施し、ハムまたはソーセージ用原料を前記ケーシングに充填またはケーシングで包み、そのまま燻煙、湯煮または蒸煮することを特徴とするハムおよびソーセージの製造方法」
とあるを、
「 可食性ケーシングまたは紙、セルロース系材料からなるケーシングの内面に湯や蒸気中に溶け出す結合剤と粉末状または粒状の水不溶性の風・調味素材とを施し、ハムまたはソーセージ用原料を前記ケーシングに充填またはケーシングで包み、そのまま湯煮または蒸煮することを特徴とするハムおよびソーセージの製造法」
と補正し、それに対応して
(2)発明の詳細な説明
▲1▼明細書第4頁3行
「香辛料や・・・・調味素材」とあるを、
「湯や蒸気中に溶け出す結合剤(以下単に結合剤という)と香辛料やその他の風・調味素材と」と補正、
▲2▼同第5頁14行
「ドライソーセージおよび」の語を削除する。
▲3▼同第6頁1行
「ケーシングは、」とあるを、
「ケーシングは、可食性ケーシングまたは紙、セルロース系材料からなるケーシング(以下併せてケーシングという)であり、」と補正、
▲4▼同第6頁6行
「その形状・・・・問わない。」とあるを、
「その形状も問わない。」と補正、
▲5▼同第8頁13〜末行
「そして、・・・・その場合に、」とあるを、
「ケーシング内面に風・調味素材を付着させる方法としては、」と補正、
▲6▼同第9頁末行
「好ましい。」とあるを、
「用いられる。」と補正、
▲7▼同第12頁10〜14行
「必要であり、・・・・好ましい。」とあるを、
「必要である。」と補正、
▲8▼同第15頁5〜8行
「必要であり・・・・同様である。」とあるを、
「必要である。」と補正し、
▲9▼同第16頁10行
「上記のドライソーセージにおいて」の語を削除する。
▲10▼同第16頁12〜13行
「により、または・・・・製造する。」とあるを、
「により製造する。」と補正、
▲11▼同第17頁5〜12行
「必要であり・・・・使用されない。」とあるを、
「必要である。」と補正、
▲12▼同第17頁15〜16行
「香辛料・・・・素材」とあるを、
「結合剤と香辛料やその他の風・調味素材と」と補正し、さらに
▲13▼同第6頁14〜16行の「および・・・・ケーシング」の記載、
同第11頁19行〜第12頁6行の「また、・・・・行ってもよい。」の記載、
同第14頁13行〜第15頁2行の「この後者の場合に、・・・・行ってもよい。」の記載および
第15頁末行〜第16頁9行「ドライソーセージを・・・製造する。」の記載を削除する。
▲14▼以下の箇所において「風・調味素材」を「結合剤と風・調味素材と」と補正する。
同第4頁17行、
同第6頁4行、
同第7頁4行、8行、12行、
同第8頁1行、4行、
同第11頁11行、
同第13頁3〜4行、
同第14頁3〜4行、6行、10〜11行
同第17頁1行
▲15▼同第22頁8行
「愛だ」とあるを、
「間」と補正する。
異議決定日 1999-09-22 
出願番号 特願平1-152086
審決分類 P 1 651・ 112- YA (A23L)
P 1 651・ 121- YA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植野 浩志  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 郡山 順
田中 久直
登録日 1998-02-20 
登録番号 特許第2750155号(P2750155)
権利者 日清ハム株式会社
発明の名称 ハムおよびソーセージの製造法  
代理人 高木 千嘉  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
代理人 西村 公佑  

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