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審決分類 |
審判 全部無効 特29条の2 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) B66D |
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管理番号 | 1007144 |
審判番号 | 審判1997-20803 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-09-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1997-12-08 |
確定日 | 1999-11-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2607223号発明「レバー式捲上機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2607223号発明の明細書の特許請求の範囲第1項ないし第3項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続きの経緯 (1)本件特許第2607223号の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件特許発明1ないし3」という。)は、平成6年3月7日に出願され、平成9年2月13日に設定登録されたものである。 (2)これに対して、請求人は、本件特許発明1ないし3は、その出願の日前に出願され、その出願後に出願公告された甲第1号証である特願平6-64701号(特開平7-165393号公報)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者及び出願人が上記先願の発明者及び出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものである、また、本件特許発明1ないし3は、その明細書の記載が特許法第36条第4項又は第5項の規定により特許を受けることができないできないものであり、特許法第123条第1項第4号の規定により無効にすべきものであると主張している。 (3)被請求人は、平成10年4月27日に訂正請求書を提出して訂正を求め、同日付けの答弁書において、訂正後の特許発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない旨、及び本件特許明細書の記載が特許法第36条第4項又は第36条第5項第2号の規定にも違反しない旨主張している。 (4)請求人は、平成10年8月4日付で弁駁書を提出し、甲第1号証のストッパー17と操作ハンドル18とが本件発明の回転制限部材に相当する以上、本件特許発明が甲第1号証と相違しているという被請求人の主張は失当であり、また、特許法第36条第4項又は第36条第5項第2号の規定に違反しないという被請求人の主張も失当である旨主張している。 2.訂正の適否についての判断 (1)前記訂正の内容は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち 訂正事項▲1▼ 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。 「歯車電動系列を介してロードシーブに連結される駆動軸と、この駆動軸に固定される重圧部材と、前記受圧部材の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドルによって回動される押圧駆動部材と、前記受圧部材と前記押圧駆動部材との間に介在され、前記駆動軸に対して一方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪と、前記逆転防止輪の両面に配置され、前記押圧駆動部材によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材と、前記押圧駆動部材の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸に直接スプライン結合され、且つ前記駆動軸と一体に回転する回転制限部材と、前記押圧駆動部材と前記回転制限部材のそれぞれに係合又は当接して、前記摩擦部材への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材に作用させる付勢手段とを備えることを特徴とするレバー式捲上機」 訂正事項▲2▼ 同じく特許請求の範囲の請求項2を次のとおり訂正する。 「ロードシーブに挿通されると共に、前記ロードシーブに歯車伝動系列を介して連結される駆動軸と、前記ロードシーブに隣接して軸方向外側に配置され、前記駆動軸に固定される受圧部材と、前記受圧部材の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドルによって回動される押圧駆動部材と、前記受圧部材と前記押圧駆動部材との間に介在され、前記駆動軸に対して一方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪と、前記逆転防止輪の両面に配置され、前記押圧駆動部材によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材と、前記押圧駆動部材の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸に直接スプライン結合され、且つ前記駆動軸と一体に回転する回転制限部材と、前記押圧駆動部材に対向する前記回転制限部材の部位に設けられ、前記押圧駆動部材の一部と係合する係合手段と、前記回転制限部材に対向する前記押圧駆動部材の部位に設けられ、前記係合手段と係合可能に形成された被係合手段と、前記押圧駆動部材と前記回転制限部材のそれぞれに係合又は当接して、前記摩擦部材への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材に作用させる付勢手段とを備えることを特徴とするレバー式捲上機。」 訂正事項▲3▼ 同じく特許請求の範囲の請求項3を次のとおり訂正する。 「ロードシーブに挿通されると共に、前記ロードシーブに歯車伝動系列を介して連結される駆動軸と、前記ロードシーブに隣接して軸方向外側に配置され、前記駆動軸に固定される受圧部材と、前記受圧部材の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドルによって回動される押圧駆動部材と、前記受圧部材と前記押圧駆動部材との間に介在され、前記駆動軸に対して捲上げ方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪と、前記逆転防止輪の両面に配置され、前記押圧駆動部材によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材と、前記押圧駆動部材の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸に直接スプライン結合され、且つ前記駆動軸にスプライン結合された回転制限部材と、前記押圧駆動部材に対向する前記回転制限部材の部位に設けられ、前記押圧駆動部材の一部と係合する回転制限突起と、前記回転制限部材に対向する前記押圧駆動部材の部位に設けられ、一方の突条が前記回転制限突起と係合可能に形成された2つの突条と、前記回転制限突起と他方の突条に係合又は当接して、前記摩擦部材への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材に作用させるコイルバネとを備えることを特徴とするレバー式捲上機。」 訂正事項▲4▼ 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(本件特許公報第2頁第4欄第26行〜第3頁第5欄第6行)を次のとおり訂正する。 「この発明は、歯車電動系列G1〜G4を介してロードシーブ3に連結される駆動軸5と、この駆動軸5に固定される受圧部材6と、前記受圧部材6の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸5上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドル18によって回動される押圧駆動部材7と、前記受圧部材6と前記押圧駆動部材7との間に介在され、前記駆動軸5に対して一方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪10と、前記逆転防止輪10の両面に配置され、前記押圧駆動部材7によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材8,9と、前記押圧駆動部材7の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸に直接スプライン結合され、且つ前記駆動軸5と一体に回転する回転制限部材14と、前記押圧駆動部材7と前記回転制限部材14のそれぞれに係合又は当接して、前記摩擦部材9への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材7に作用させる付勢手段とを備えることを特徴とするレバー式捲上機である。 また、好ましくは、前記押圧駆動部材7に対向する前記回転制限部材14の部位に設けられ、前記押圧部材の一部と係合する係合手段と、前記回転制限部材14に対向する前記押圧駆動部材7の部位に設けられ、前記係合手段と係合可能に形成された被係合手段とをさらに備える前記レバー式捲き上げ機である。 さらに好ましくは、前記係合手段が回転制限突起14aとされ、前記回転制限部材14に対向する前記押圧駆動部材7に2つの突条7b、7cが形成され、この内の一方の突条7b(7c)が前記回転制限突起14aと係合可能な前記被係合手段とされ、他方の突条7c(7b)と前記回転制限突起14aとに係合又は当接して、前記摩擦部材9への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材7に作用させる付勢手段がコイルバネ13とされている前記レバー式捲上機である。」 (2)当審において、平成10年10月15日付けで、「訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ先願明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、この訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない。」との訂正拒絶理由を通知したが、被請求人からは何らの返答もなかった。 (3)被請求人の請求した訂正の適否に対する判断については、上記訂正拒絶理由に記載した内容をここに引用する。 よって、訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ上記先願明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2第1項1の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものと認められ、特許法第120条の4第3項で準用する同126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正を認めない。 3.本件特許発明1ないし3に対する判断 (1)前記のとおり本件訂正は認められないので、本件特許発明1ないし3は、特許された明細書及び図面の記載からみて、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】歯車電動系列を介してロードシーブに連結される駆動軸と、この駆動軸に固定される受圧部材と、前記受圧部材の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドルによって回動される押圧駆動部材と、前記受圧部材と前記押圧駆動部材との間に介在され、前記駆動軸に対して一方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪と、前記逆転防止輪の両面に配置され、前記押圧駆動部材によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材と、前記押圧駆動部材の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸と一体に回転する回転制限部材と、前記押圧駆動部材と前記回転制限部材のそれぞれに係合又は当接して、前記摩擦部材への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材に作用させる付勢手段とを備えることを特徴とするレバー式捲上機 【請求項2】ロードシーブに挿通されると共に、前記ロードシーブに歯車伝動系列を介して連結される駆動軸と、前記ロードシーブに隣接して軸方向外側に配置され、前記駆動軸に固定される受圧部材と、前記受圧部材の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドルによって回動される押圧駆動部材と、前記受圧部材と前記押圧駆動部材との間に介在され、前記駆動軸に対して一方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪と、前記逆転防止輪の両面に配置され、前記押圧駆動部材によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材と、前記押圧駆動部材の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸と一体に回転する回転制限部材と、前記押圧駆動部材に対向する前記回転制限部材の部位に設けられ、前記押圧駆動部材の一部と係合する係合手段と、前記回転制限部材に対向する前記押圧駆動部材の部位に設けられ、前記係合手段と係合可能に形成された被係合手段と、前記押圧駆動部材と前記回転制限部材のそれぞれに係合又は当接して、前記摩擦部材への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材に作用させる付勢手段とを備えることを特徴とするレバー式捲上機 【請求項3】ロードシーブに挿通されると共に、前記ロードシーブに歯車伝動系列を介して連結される駆動軸と、前記ロードシーブに隣接して軸方向外側に配置され、前記駆動軸に固定される受圧部材と、前記受圧部材の軸方向外側の端面に向かい合って、前記駆動軸上を進退可能に螺合されており、必要に応じて操作ハンドルによって回動される押圧駆動部材と、前記受圧部材と前記押圧駆動部材との間に介在され、前記駆動軸に対して捲上げ方向にのみ回転可能に設けられた逆転防止輪と、前記逆転防止輪の両面に配置され、前記押圧駆動部材によって押圧可能に設けられた一対の摩擦部材と、前記押圧駆動部材の軸方向外側に隣接して配置され、前記駆動軸にスプライン結合された回転制限部材と、前記押圧駆動部材に対向する前記回転制限部材の部位に設けられ、前記押圧駆動部材の一部と係合する回転制限突起と、前記回転制限部材に対向する前記押圧駆動部材の部位に設けられ、一方の突条が前記回転制限突起と係合可能に形成された2つの突条と、前記回転制限突起と他方の突条に係合又は当接して、前記摩擦部材への押圧を解く方向の回転力を前記押圧駆動部材に作用させるコイルバネとを備えることを特徴とするレバー式捲上機 (2)これに対して、請求人の提出した甲第1号証(先願明細書)には、 「ロードシーブ3に挿通されると共に、ロードシーブ3に減速歯車機構6を介して連結される駆動軸5と、ロードシーブ3に隣接して軸方向外側に配置され、駆動軸5に固定される従動部材7と、従動部材7の軸方向外側の端面に向かい合って、駆動軸5上を進退可能に螺合されており、必要に応じてレバー16によって回動される駆動部材8と、従動部材7と駆動部材8との間に介在され、駆動軸5に対して一方向にのみ回転可能に設けられた制動用爪車11と、制動用爪車11の両面に配置され、駆動部材8によって押圧可能に設けられた一対の制動板9,10と、駆動部材8の軸方向外側に隣接して配置され、駆動軸5と一体に回転するストッパー17および操作ハンドル18と、駆動部材8に対向する操作ハンドル18の部位に設けられ、駆動部材8の一部と係合する係合突起31と、操作ハンドル18に対向する駆動部材8の部位に設けられ、係合突起31と係合可能に形成された第1および第2規制面33,34および第3規制面36を有する1対の突出部32と、駆動部材8と、ストッパー17または操作ハンドル18のそれぞれに係合又は当接して、制動板9,10への押圧を解く方向の回転力を駆動部材8に作用させる遊転用ばね19または第2ばね50とを備える、レバー式巻上牽引機。」 が記載されているものと認める。 (3)[本件特許発明1に対して] 本件特許発明1と上記先願明細書に記載された発明とを対比すると、該本件特許発明1の「受圧部材」、「操作ハンドル」、「押圧駆動部材」、「逆転防止輪」、「(駆動軸と一体に回転する)回転制限部材」、「摩擦部材」、「付勢手段」、が、それぞれ先願明細書に記載された発明の「従動部材7」、「操作レバー16」、「駆動部材8」、「制動用爪車11」、「(駆動軸と一体に回転する)ストッパー17および操作ハンドル18」、「制動板9,10」、「遊転用ばね19」に相当するから、本件特許発明1は上記先願明細書に記載された発明と同一である。 そして、該本件特許発明1の発明者は上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一のものでも、また、本件出願の出願時の出願人と当該他の出願の出願人とが同一のものでもない。 (4)[本件特許発明2に対して] 本件特許発明2と上記先願明細書に記載された発明とを対比すると、上記[本件特許発明1に対して]の項に記載した対比点に加え、該本件特許発明2の「係合手段」、「被係合手段」、が、それぞれ先願明細書に記載された発明の「係合突起31」、「規制面33,34,36(第1〜3)」に相当するから、結局、本件特許発明2は上記先願明細書に記載された発明と同一である。 そして、該本件特許発明2の発明者は上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一のものでも、また、本件出願の出願時の出願人と当該他の出願の出願人とが同一のものでもない。 (5)[本件特許発明3に対して] 本件特許発明3と上記先願明細書に記載された発明とを対比すると、上記[本件特許発明1に対して]の項に記載した対比点に加え、該本件特許発明3の「回転制限突起」、「2つの突条」、が、それぞれ先願明細書に記載された発明の「係合突起31」、「1対の突出部32」に相当すると共に、先願明細書に記載された発明のストッパー17は駆動軸5にスプライン(セレーション)結合されていて、本件発明の回転制限部材に相当する「ストッパー17および操作ハンドル18」が駆動軸5にスプライン結合されることとなるから、結局、本件特許発明3は上記先願明細書に記載された発明と同一である。 そして、本件特許発明3の発明者は上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一のものでも、また、本件出願の出願時の出願人と当該他の出願の出願人とが同一のものでもない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし3は、先願明細書(甲第1号証)に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件請求項1ないし3に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、他の無効理由について論及するまでもなく、同法第123条第1項の規定により、これを無効にすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-07-27 |
結審通知日 | 1999-08-17 |
審決日 | 1999-08-31 |
出願番号 | 特願平6-64701 |
審決分類 |
P
1
112・
16-
ZB
(B66D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中島 成、松縄 正登 |
特許庁審判長 |
大森 藏人 |
特許庁審判官 |
石川 好文 岩本 正義 |
登録日 | 1997-02-13 |
登録番号 | 特許第2607223号(P2607223) |
発明の名称 | レバー式捲上機 |
代理人 | 小柴 雅昭 |
代理人 | 岡本 寛之 |
代理人 | 小山 方宣 |
代理人 | 福島 三雄 |