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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03B
管理番号 1007466
異議申立番号 異議1999-71504  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-20 
確定日 1999-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2814866号「石英ガラスの製造方法」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2814866号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第2814866号に係る発明についての出願は、平成5年2月10日に特許出願され、平成10年8月14日に特許の設定登録がなされ、その後、平成11年4月20日に特許異議申立人須田武、平成11年4月27日に特許異議申立人堀田雄次(以下それぞれ、「申立人A」,「申立人B」という。)により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月5日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正請求書に記載された訂正の内容は以下のとおりである。
(a)特許請求の範囲の請求項1の「バーナーのガス量を変化させる」を「バーナーの中央部と周辺部のガス量を独立に変化させる」と訂正する。
(b)明細書の【0008】の「バーナーのガス量を変化させる」を「バーナーの中央部と周辺部のガス量を独立に変化させる」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び拡張・変更の否
上記訂正事項のうち、(a)は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、(b)は訂正後の明細書全体の記載事項を整合させて、記載の明瞭化を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、「バーナーの中央部と周辺部のガス量を独立に変化させる」ことは、明細書の【0016】に「中央部ガス量を制御すると同時に、石英ガラスのインゴットを一定の速度で合成するために周辺部のガス量を制御する」と記載され、明細書に添付された図面の【図3】にバーナー中央部と周辺部のガス量をそれぞれ独立に変化させた例が記載されているから、訂正事項(a),(b)はいずれも新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
3.独立特許要件の判断
当審は、引用例1(特開平3-295819号公報),引用例2(特開平3-88743号公報),引用例3(特開平4-240123号公報),引用例4(特開平2-307838号公報),引用例5(特開平4-357129号公報),引用例6(特開昭58-64233号公報)を証拠として、本件特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された発明はこれらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許を取り消すべき旨の取消理由を通知した。
(1)訂正明細書の請求項1乃至2に係る発明
平成11年10月5日付けで提出された訂正明細書の請求項1乃至2に係る発明は、その請求項1乃至2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「訂正後発明1」,「訂正後発明2」という。)。
「【請求項1】Si化合物ガスとO2ガスとH2ガスとをバーナーから噴出して燃焼させ、ターゲット上に石英ガラスを堆積しインゴットを形成する石英ガラスの製造方法において、前記インゴットのヘッド部の温度分布を計測して、得られた情報により前記バーナーの中央部と周辺部のガス流量を独立に変化させることを特徴とする石英ガラスの製造方法。
【請求項2】請求項1に記載の製造方法において、前記バーナーのガス量を変化させる手段としてマスフローコントローラを用いることを特徴とする石英ガラスの製造方法。」
(2)引用例の記載事項
取消理由で引用した引用例1〜6には、それぞしれ次のとおりの事項が記載されている。
引用例1
▲1▼「酸水素炎の中に、石英ガラスの原料ガスを送り込み、火炎加水分解反応により石英ガラスを生成し、それを架台上に堆積させるに際して、堆積する前記石英ガラスの表面の最高温度部位を目標にして、ノズルからF含有ガスを噴出させて吹き付ける、高純度石英ガラスの製造方法。」(第1頁特許請求の範囲)
▲2▼「直径80mmの架台20を20rpmで回転させ、かつ0.1mm/分の割合で下降するようにしておき、酸水素バーナに毎分、H25000cc、O211000cc、SiCl41300ccを供給して、石英ガラスを生成させ;同時に石英ガラスの最高温度の部位にノズル22からF含有ガス24すなわちSF6を毎分80ccの割合で吹き付けて、屈折率の平均化を行ったところ,径方向に均一な屈折率分布を有する石英ガラスができた。」(第2頁左下欄第9〜18行)
引用例2
「合成シリカガラスの製造では、多くの場合四塩化けい素を酸水素炎中で反応させシリカガラスを得る方法が採用されているため、通常これらシリカガラス中にはOH基と共に塩素が含まれている。これらOH基及び塩素の濃度分布は屈折率変動に影響を与える作用がある。」(第3頁左下欄第14〜19行)
引用例3
「反応容器11内の中央に定置されたガラス微粒子生成用バーナー31は、公知ないし周知の多重管構造からなり、これはSiCl4、GeCl4,POCl3,BCl3のごときガラス原料(気相)の供給を受ける原料ガス流路と、水素、メタン、プロパン、ブタンのごとき易燃性ガスの単体または混合体からなる燃料ガスの供給を受ける燃料ガス流路と、支燃ガスとしてO2の供給を受ける支燃ガス流路とを備えており、他に、緩衝ガス用のガス流路を備えていることもある。反応容器11内にあるガラス微粒子生成用バーナ31の各流路には、反応容器11外から導かれた所定の各ガス管がそれぞれ接続されており、これら配管系にマスフローコントローラのごとき流量制御器32が備えられている。」(第2頁第2欄第44行〜第3頁第3欄第7行)
引用例4
▲1▼「石英ガラス系コア用ロッドの回りに、複数本のバーナを用いて外付け法により石英ガラス微粒子を堆積させ、得られる石英ガラス微粒子層をフッ素含有ガス雰囲気で透明ガラス化してフッ素ドープ石英ガラスクラッドとする工程を含む光ファイバ母材の製造方法において、前記各バーナ内へのガス供給量を調整して各バーナによって得られる石英ガラス微粒子層のカサ密度を等しくして体積させることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。」(第1頁特許請求の範囲)
▲2▼「各バーナによって生成されるガラス微粒子の堆積面の表面温度を常に監視して、それらが等しくなるように各バーナ内へのガスの供給量を調整しているので、得られる各ガラス微粒子層のカサ密度は等しくなる。その結果、フッ素のドープ量が一定になるためクラッド内における屈折率に変動がなく半径方向に一定の値が得られる。」(第2頁右上欄第6〜12行)
引用例5
▲1▼「原料シラン化合物を酸水素火炎中で火炎加水分解させて得た合成シリカ粉を回転している坦体上に堆積し、同時に溶融ガラス化して合成石英ガラス部材を製造する方法において、原料シラン化合物の酸水素火炎バーナヘの供給を一定速度で行なうと共に、酸水素火炎中心炎の照射位置を合成石英ガラスの成長面の外周部付近とすることを特徴とする合成石英ガラス部材の製造方法。」(第1頁特許請求の範囲請求項1)
▲2▼「図1に示した合成石英ガラス製造装置を使用し、酸水素火炎バーナー2の水素ガス供給ライン4に水素ガスを20Nm3/時、酸素ガス供給ライン5に酸素ガスを8Nm3/時で供給して酸水素火炎6を形成させ、これを耐熱性坦体1に照射した。ついでこのシラン化合物供給ライン3に四塩化けい素(SiCl4)を1,500g/時(8.8モル/時)の一定速度で供給し、この火炎加水分解で発生した合成シリカ粉を坦体1の上に堆積と同時に溶融ガラス化して合成石英ガラス部材を作った。」(第3頁第4欄第38〜46行)
引用例6
▲1▼「回転する棒状出発材の端面に、火炎加水分解反応によって得られるガラス微粒子を吹きつけ、成長させて光ファイバ製造用多孔質ガラスプリフォームを製造する装置において、多孔質光ファイバ母材の成長面の中心部の最高温度を成長面温度の代表点として検出し、成長面温度を制御する機構を具備したことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。」(第1頁特許請求の範囲請求項1)
▲2▼「多孔質光ファイバ母材1の成長面は燃焼用合成トーチ2により加熱され温度分布を持っている。その中心部の温度を、温度検出器3により検出し、変換器4により電気出力とする。モニタ用および記録用として、記録計5に経時的に温度を記録する。調節計6により、検出された温度と設定した温度との差を読み取り、差が小さくなるような電気出力を送り出す。この電気出力を、制御用水素ガス流量コントローラ8の入力に合致するようにアイソレータ7で電気信号に変換する。これにより制御用水素ガス流量コントローラは、設定温度になるように、水素ガス流量を増減する。」(第2頁左上欄第8行〜右上欄第1行)
(3)対比・判断
訂正後発明1と引用例1〜6に記載の発明とを対比すると、引用例1〜6に記載の発明は、訂正後発明1を特定する事項である「バーナーの中央部と周辺部のガス流量を独立に変化させる」事項を備えておらず、当該事項により訂正後発明1は、「ヘッド部の温度分布を最適値に保つために中央部ガス量を制御すると同時に、石英ガラスのインゴットを一定の速度で合成するために周辺部のガス量を制御することにより、インゴットの径方向(横方向)から見た均質性の向上した石英ガラスを一定の速度で安定して製造することができた。」(本件明細書【0016】)という顕著な効果を奏するものであるから、訂正後発明1が引用例1〜6に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、訂正後発明2は訂正後発明1に更に技術的限定を加えたものであるから、訂正後発明1と同様の理由により、引用例1〜6に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおりであるから、訂正後の本件発明は、特許出願に際して独立して特許を受けることができるものである。
4.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.特許異議申立てについての判断
1.本件発明
本件発明は、訂正明細書の請求項1,2に記載されたとおりのものである(以下、「本件発明1」,「本件発明2」という。)。
2.特許異議の申立て理由の概要
申立人Aは証拠として甲第1乃至5号証(以下、「甲第1号証(A)」〜「甲第5号証(A)」という。なお、甲第1〜4号証(A)は順に取消理由通知で引用した引用例1〜4に相当する。また、甲第5号証は特開昭61-91035号公報である。)、申立人Bは証拠として甲第1,2号証(以下、「甲第1号証(B)」,「甲第2号証(B)」という。なお、甲第1,2号証(B)は順に取消理由通知で引用した引用例5,6に相当する。)を提出し、それぞれ本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであることを主張している。
3.対比・判断
甲第1号証(A)〜甲第4号証(A)及び甲第1号証(B),甲第2号証(B)には、それぞれ順に「II.3.(2)」において引用例1〜6として摘記したとおりの事項が記載されている。
また、甲第5号証(A)には、次のとおりの事項が記載されている。
「回転する種棒にバーナから原料ガスの加水分解反応により合成されるガラス微粒子を付着しスートロッドを形成して光ファイバー用母材を製造する方法において、前記スートロッドの表面温度を測定しその温度分布が一定となるように前記表面温度の測定結果に基ずいて前記バーナの位置を変化させることを特徴とする光ファイバー用母材の製造方法。」(第1頁特許請求の範囲)
そこで本件発明1と甲第1号証(A)〜甲第5号証(A)及び甲第1号証(B),甲第2号証(B)に記載された発明とを対比すると、これらの刊行物に記載された発明のいずれも、本件発明1を特定する事項である「バーナーの中央部と周辺部のガス流量を独立に変化させる」事項を備えておらず、当該事項により本件発明1は、「ヘッド部の温度分布を最適値に保つために中央部ガス量を制御すると同時に、石英ガラスのインゴットを一定の速度で合成するために周辺部のガス量を制御することにより、インゴットの径方向(横方向)から見た均質性の向上した石英ガラスを一定の速度で安定して製造することができた。」(本件明細書【0016】)という顕著な効果を奏するものであるから、本件発明1が甲第1号証(A)〜甲第5号証(A)及び甲第1号証(B),甲第2号証(B)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2は本件発明1に更に技術的限定を加えたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証(A)〜甲第5号証(A)及び甲第1号証(B),甲第2号証(B)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件発明1,2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
石英ガラスの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si化合物ガスとO2ガスとH2ガスとをバーナーから噴出して燃焼させ、ターゲット上に石英ガラスを堆積しインゴットを形成する石英ガラスの製造方法において、
前記インゴットのヘッド部の温度分布を計測して、得られた情報により前記バーナーの中央部と周辺部のガス流量を独立に変化させることを特徴とする石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記バーナーのガス量を変化させる手段としてマスフローコントローラを用いることを特徴とする石英ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は石英ガラスの製造方法に関するものであり、特に高均質性が要求される合成石英ガラス部材を必要とする分野、例えば光リソグラフィー、高精度分光器、レーザー等の精密光学機器に有用とされる高均質な光学用合成石英ガラスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン等のウエハ上に集積回路の微細パターンを露光・転写する光リソグラフィー技術においては、ステッパーと呼ばれる露光装置が用いられている。
このステッパーの光源は、近年のLSIの高集積化にともなってg線(436nm)からi線(365nm)、さらにはKrF(248nm)やArF(193nm)エキシマレーザーへと短波長化が進められている。
【0003】
一般に、ステッパーの照明系あるいは投影レンズとして用いられる光学ガラスは、i線よりも短い波長領域では光透過率が低下するため、従来の光学ガラスにかえて合成石英ガラスやCaF2(蛍石)等のフッ化物単結晶を用いることが提案されている。
このように、紫外線リソグラフィー用の光学素子として用いられる石英ガラスには、紫外域の高透過性と屈折率の高均質性が要求されている。紫外域の高透過性を実現するためには、石英ガラス中の不純物濃度を抑える必要がある。そこで、石英ガラスの原料となるSi化合物ガス(Si化合物ガスを送り出すために、O2、H2等のキャリアガスが用いられる)と加熱のための燃焼ガス(O2ガスとH2ガス)とをバーナーから流出し、火炎内で石英ガラスを堆積させる火炎加水分解法が一般的に用いられている。
【0004】
この方法は、原料、燃焼ガスの不純物を抑えることが容易なため、高純度な石英ガラスを得られることが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の火炎加水分解法により製造された石英ガラスは、不純物濃度が抑えられてはいるが、屈折率の均質性に関しては満足のいくものが得られていなかった。
本発明の目的は、このような問題を解決し、光透過性がよく、かつ屈折率の均質性の高い石英ガラスの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
屈折率の均質性は、ターゲット上にインゴットが形成されるときの径方向(横方向)から見た温度分布に依存すると考えられる。そこで、従来は、バーナーの先端部の形状や、原料ガス、燃焼ガス(O2ガスとH2ガス)の量や比を、あらかじめ均質化の最適な温度分布となるように予測して設定していた。
【0007】
しかしながら、温度分布は必ずしも予測通りにはならず、また、どの程度の均質性の石英ガラスが得られるかは、実際に製造して均質性を測定するまでわからなかった。
本発明者らは、このような状況を踏まえた上で、屈折率の均質性を最適化するようにインゴットのヘッド部の温度分布を調整すべく鋭意研究を重ねた結果、ヘッド部の温度分布を計測し、その情報に応じてバーナーのガス量を変化させることにより上記問題を解決できることを見い出し、本発明を成すに至った。
【0008】
よって、本発明は、Si化合物ガスとO2ガスとH2ガスとをバーナーから噴出して燃焼させ、ターゲット上に石英ガラスを堆積しインゴットを形成する石英ガラスの製造方法において、前記インゴットのヘッド部の温度分布を計測して得られた情報により前記バーナーの中央部と周辺部のガス量を独立に変化させることを特徴とする石英ガラスの製造方法(請求項1)を提供するものである。
【0009】
また、本発明の石英ガラスの製造方法において、バーナーのガス量を変化させる手段として、好ましくはマスフローコントローラが用いられる(請求項2)。
【0010】
【作用】
従来の製造方法においては、屈折率の均質化に最適な条件で石英ガラスのインゴットを一定の速度で安定して合成させるために、バーナーのガス量はほとんど一定であった。ところが、本発明者らが研究した結果、一定のガス量では、ヘッドの温度分布に対する様々な外乱要因により高均質の屈折率分布を持つ石英ガラスが得られないことがわかった。さらに研究したところ、バーナーの中央部の燃焼ガスのガス量がヘッドの温度分布に強く作用することと、周辺部の燃焼ガスのガス量はヘッドの温度分布への影響が少ないことがわかった。したがって、本発明においては、バーナー中央部のガス量をヘッドの温度分布制御に利用し、バーナー周辺部のガス量はインゴットを一定の速度で安定して合成させる制御に利用した。これにより、絶えず合成速度の安定化を考慮しながら屈折率の均質性を保つのに最適なガス量を制御することができた。
【0011】
本発明の石英ガラスの製造方法により製造された石英ガラスは、主としてレンズ、プリズム、反射板等の光学素子の母材として用いられる。この母材の外周部分は削り取られ、必要に応じて切断、再成形されて任意の形状に加工される。そして、内部歪をなくすためにアニール(熱処理)した後、研磨、コーティング工程を経て光学素子となる。
【0012】
【実施例】
以下、火炎加水分解法を用いた本発明の石英ガラスの製造方法の一実施例について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
図1は本発明の一実施例を示す概念図である。
バーナー1は、炉2の上部からターゲット3にその先端部を向けて設置されている。炉壁には観察用の窓4と、IRカメラ観察用の窓5と、排気孔6とがそれそれ設けられている。さらに、炉の下部には、インゴット7形成用のターゲット3が設置されている。
【0013】
図2はバーナー先端部の概略図である。石英管11からSiCl4ガスおよびキャリアガスが、加熱のための燃焼ガスとして中央部の石英管12及び周辺部の石英管13からO2ガスとH2ガスとがそれぞれ流出される。
それぞれのガス量は、バーナー先端部の形状等によっても異なるが、本実施例の場合は、SiCl4ガス5〜50g/min.、O2ガス20〜250l/min.、H2ガス40〜500l/min.の範囲で変化させた。
【0014】
燃焼ガスによる火炎により、SiCl4ガスが酸化されて熔融石英となり、ターゲット上に堆積しインゴットを形成する。インゴットのヘッド部は燃焼ガスによる火炎におおわれている。
インゴットのヘッド部の温度測定にはIRカメラ9を使用し、画面をデータ処理するためのコンピュータ10、および、ガス量を制御するマスフローコントローラ8(MFCと略す)で構成されている。コンピュータは、処理された画面データから最適なガス量を計算し、MFCに信号を送ることにより、オンラインでの制御が可能になっている。
【0015】
図3は実験的にMFCによりバーナーの燃焼ガスのガス量を変化させた時のインゴットのヘッド部の温度分布と屈折率の均質性の結果を示す。
本実施例においては、インゴットを形成している際に径方向(横方向)から見た温度分布を計測し、この情報に応じてバーナーのガス量を調整することにより屈折率の均質化に最適な温度分布を保つことが可能となり、インゴットの径方向の均質性の向上した石英ガラスを製造することができた。
【0016】
さらに、ヘッド部の温度分布を最適値に保つために中央部ガス量を制御すると同時に、石英ガラスのインゴットを一定の速度で合成するために周辺部のガス量を制御することにより、インゴットの径方向(横方向)から見た均質性の向上した石英ガラスを一定の速度で安定して製造することができた。
【0017】
【発明の効果】
以上の様に、本発明の石英ガラスの製造方法によれば、温度分布を計測し、この情報に応じてバーナーのガス量を変化させることにより屈折率の均質性を最適化するような温度分布とすることができ、結果として不純物濃度が低く、かつ均質性の高い石英ガラスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に用いられる石英ガラス製造装置の概念図である。
【図2】図1の製造装置のバーナー先端部の形状を示す概念図である。
【図3】バーナーのガス量を変化させたときのインゴットのヘッド部の温度分布と屈折率の均質性の結果を示す説明図である。
【符号の説明】
1 バーナー
2 炉
3 ターゲット
4 観察用窓
5 IRカメラ観察用窓
6 排気孔
7 インゴット
8 マスフローコントローラ
9 IRカメラ
10 コンピュータ
11 SiCl4ガス用石英管
12 バーナー中央部のO2、H2ガス用石英管
13 バーナー周辺部のO2、H2ガス用石英管
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2814866号発明の明細書を、平成11年10月5日付け審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正する。すなわち、
▲1▼特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「バーナーのガス量を変化させる」を「バーナーの中央部と周辺部のガス量を独立に変化させる」と訂正する。
▲2▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の【0008】の「バーナーのガス量を変化させる」を「バーナーの中央部と周辺部のガス量を独立に変化させる」と訂正する。
異議決定日 1999-10-22 
出願番号 特願平5-22293
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深草 祐一大工原 大二  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 能美 知康
新居田 知生
登録日 1998-08-14 
登録番号 特許第2814866号(P2814866)
権利者 株式会社ニコン
発明の名称 石英ガラスの製造方法  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 藤村 元彦  

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