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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1007576
異議申立番号 異議1999-70883  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-05-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-10 
確定日 1999-12-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第2796761号「長手方向に延びる各部分に分割された吸収性使い捨て物品」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2796761号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.本件特許第2796761号は、平成2年12月14日の国際出願(優先権主張、1989年12月21日、スウェーデン)に係り、その発明は、特許明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「[請求項1]使用時に着用者から遠い側に位置するようにした外側液不透過性ケーシング層(2,12)と、使用時に着用者の身体の側に向くようにした内側液透過性ケーシング層(1,11)と該二つのケーシング層間に包閉された吸収パッド(3,13)とを含むおむつ、失禁防護帯または衛生ナプキンなど吸収性使い捨て物品において、
上記吸収パッド(3,13)の少なくとも股部分、すなわち使用時に着用者の股領域に配置されるパッドの部域が相互に個別の部分(3B-3E,13B-13D)に分割されこれらは部品の長手方向に延び且つ二つのケーシング層(1,2;11,12)の中間の相互に付着された部分(4A-4C,14A-14B)によって、上記股部分において互いに横方向に分けられたことと、
上記相互に接合されたケーシング層の中間部分を引き寄せながら隣接する個別部分の縁を相互に当接させるように横方向の弾性化(6,7;16)が吸収パッドの上記個別部分の部域内に施されたことを特徴とする吸収性使い捨て物品。
[請求項2]前記吸収性パッドの長手方向に延びる個別部分(3B-3E,13B-13D)間の前記引き寄せられ相互に接合されたケーシング層材料(4A-4C,14A-14B)の量が、前記股部分の中央の両側で漸減するように該股部分の中央が最大となるようにしたことを特徴とする特許請求の範囲1項記載の物品。
[請求項3]長手方向に延びる弾性糸またはバンド(5,15)が前記パッドの相互に個別部分の一番外側部分(3B-3E,13B-13D)より外側でケーシング層(1,2;11,12)間に配置されたことを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載の物品。
[請求項4]少なくとも長手方向の一番外側部分において吸収パッド(3,13)の前側部分および後側部分が一つの連続部分として作り上げられていることと、吸収パッドの相互に個別の部分(3B-3E,13B-13D)の端が上記連続部分となって終わっていることとを特徴とする請求の範囲第1項または第2項または第3項に記載の物品。」
2.これに対する本件異議申立人の主張の概要は、本件請求項1〜4の発明は、甲第1号証(米国特許第4,775,375号明細書)及び甲第2号証(西独国出願公開第3205931号明細書)に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、本件各請求項の発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるというものである。
3.そこで、以下、本件異議申立人の主張の適否について検討する。なお、以下においては、本件請求項1の発明を本件発明という。
甲第1号証においては、伸縮性の構造で、解剖学的な形状を備えた使い捨ておむつについて記載され、該おむつは、実質的に長方形のパネルで、合成樹脂からなるバックシート(2)と透過性カバー(3)の間に収容された3層構造の液体吸収構造体(4)とおむつの股部分の横断方向に設けられた弾性手段(9)を有し、複数の溝(10)と膨出部(11)がおむつ長手方向に形成されている旨示されているとともに、該おむつの構造、形状を具体的に示す第1〜4図が記載されている。
しかしながら、本件発明の吸収性使い捨て物品は、上記吸収パッドの少なくとも股部分が、互に個別の部分(3B-3E,13B-13D)に分割され、これらは部品の長手方向に延び且つ二つのケーシング層(1、2;11,12)の中間の相互に付着された部分(4A-4C,14A-14B)によって、上記股部分において互いに横方向に分けられているものであるのに対して、甲第1号証のおむつにおいては、第3図及び第4図から明らかなように、その股部分においては、バックシート(2)と透過性カバー(3)とが相互に付着する部分はなく、液体吸収構造体(4)は連続しているのであるから、本件発明の吸収性使い捨て物品とはその構造において異なるものであることは明らかである。
一方、甲第2号証においては、使い捨ておむつについて、第1図と第2図を参照しつつ、放出された液体が長手方向に分布するという所要の効果を高めるため、おむつの、長手方向に線形の透孔8あるいは全体で一列を形成する複数の間欠的な透孔9を設けること、上下シートは各透孔を介して互いに接合していること及び線形透孔または間欠透孔を形成する透孔列は、吸収パッドの中央部に向かって斂敏させることが好ましい旨記載され、これによれば、甲第2号証にのおむつの股部分においては、上下シートの相互に付着された部分によって、吸収パッドはその股部分において互いに横方向に分けられているということができるが、甲第2号証のおむつは、弾性化手段を伴うものではない点で本件発明とは異なる。なお、線形透孔または間欠透孔を形成する透孔列を収斂させる旨の記載は、これらの透孔の配置の仕方について述べているのであって、弾性化手段について述べているのではない。
本件異議申立人の主張は、この甲第2号証における透孔に関する手段を、甲第1号証のおむつに適用することにより、本件発明は当業者において容易に想到できるというものであるが、甲第2号証における上記透孔に関する手段は、放出された液体が長手方向に分布するという所要の効果を高めるために採用されたものであり、甲第1号証の発明のように、おむつ着用時において、おむつ形状を弾性化手段により身体形状(解剖学的形状)に一致させるものではなく、甲第1号証の発明と甲第2号証の発明とは目的が異なるのである。
さらに、たとえ、甲第2号証のおむつに弾性化手段を介在させたとしても、甲第2号証の上下シートの接合部分は線形あるいは間欠的な透孔列であるから、その部分で折れ曲がるだけである。一方、本件発明においては、接合されたケーシング層の中間部分を引き寄せて隣接する個別部分の縁を当接するものであるから、該個別部分は相互に相当程度離間しているものといえ、少なくとも、甲第2号証のものよりは離間しているとするのが相当であるから、甲第1号証における弾性化手段を伴うおむつにおいて、甲第2号証の透孔に関する上記手段を適用しても本件発明の構成にはならない。
しかも、そもそも、甲第1号証のおむつにおいては、弾性化手段によって3層構造の液体吸収構造体にしわが寄せられることにより、該構造体のの最下層の層とバックシート(2)との間に袋状の空間(12)が生じ、これにより液体吸収構造体において吸収しきれない液体を貯留することを構造上の重要な点として挙げているのである。そして甲第1号証のおむつにおいて、甲第2号証のように、上下のシートを透孔を介して接合してしまえば、このような袋状空間は形成し得なくなることは明らかであるから、この点からみれば、甲第2号証の透孔に関する手段と甲第1号証のおむつに関する手段は相容れないものということができ、甲第1号証のおむつに、甲第2号証の上記透孔に関する手段を当業者が容易に適用できるものとはいえない。
一方、本件発明の効果についていえば、本件発明の吸収性使い捨て物品は、その股部分の構造により、股部分の変形の自由度は大きく、着用時の身体形状に対する追従性は、甲第1号証及び甲第2号証のおむつに比べより優れているということができる。
したがって、以上の点からみれば、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証の発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
また、本件請求項2〜4の発明は、本件発明をさらに限定したものであるからこれら請求項の発明も甲第1号証及び甲第2号証の発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
4.以上のとおりであるから、結局、本件異議申立人の主張は採用できない。
また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-12-08 
出願番号 特願平3-501900
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新海 岳  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 深津 弘
谷口 浩行
登録日 1998-07-03 
登録番号 特許第2796761号(P2796761)
権利者 メールンリユーケ アーべー
発明の名称 長手方向に延びる各部分に分割された吸収性使い捨て物品  
代理人 安達 光雄  

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