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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1007577
異議申立番号 異議1999-70965  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-09-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-16 
確定日 1999-12-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2799206号「即席冷凍スパゲティの製造法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2799206号の特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
本件特許第2799206号の請求項1に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
(2)特許異議の申立ての概要
特許異議申立人は、下記甲第1-3号証を提示して、本件請求項1に係る発明
は、甲第1-3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、取り消されるべきであると主張している。

甲第1号証:特開昭59-213374号公報
甲第2号証:特開昭62-55049号公報
甲第3号証:特公昭56-5503号公報
(3)特許異議申立人の主張の検討
まず、各甲号証をみてみると、甲第1号証には、(イ)「タピオカ澱粉を含有する製粉類を使用して製麺しそしてα化処理後冷凍することを特徴とする、即席冷凍麺類の製造法」(特許請求の範囲1))、(ロ)「常法に従って製麺し茄で上げる。この時の茄で上げ歩留りは通常の麺の茄で上げ歩留りより低めにすることが望ましい。例えばうどん等の大物は260〜330%好ましくは270〜300%、中華麺やそばのような細物は200〜260%好ましくは210〜250%である。この範囲より歩留りが多いと後で解凍して食した場合に弾力性に欠けやわらかすぎる状態になり、これより歩留りが少ないと硬くて芯のある食感になってしまう。次に茄上げ後、水洗いしながら冷却し冷凍する」(第2頁左下欄第2〜13行)、(ハ)「麺類を容器に入れる場合はできるだけ各麺線を平行に密着させないように入り組んだ状態で入れ、隙間を多くとるようにするのが望ましい。こうすることによりやはり凍結および解凍に要する時間が短かくなる。」(第2頁右下欄第8〜12行)(ニ)「本発明方法によれば、うどん、そば、中華麺、わんたん、スパゲティなどの即席冷凍麺類を好適に製造することができる。」(第3頁右上欄第8〜10行)ことが記載されている。
甲第2号証には、(ホ)「押し出し成形して生スパゲッティを得た。次いで、常法により茄上げ(歩留225%)、冷水で水洗した。・・・(略)・・・凍結した。」第3頁左上欄第13行〜同右上欄第8行)、(へ)「実施例1で得られた茄スパゲッティ(常法により茄上げ(歩留225%)、冷水で水洗して得られた。(第3頁右下欄14〜第4頁左上欄第3行)、(ト)「本発明冷凍茄麺は、これを電子レンジにより適宜時間加熱すれば、復元ムラなく解凍することができ、従ってまた好ましい食感を保持した茄麺を得ることができる。」(第3頁左上欄4〜8行)ことが記載されている。
甲第3号証には、(チ)「茄麺線を0〜5℃の温度を保った水で冷水処理して急速冷却し、茄麺線の剛性を増加せしめた後冷凍することを特徴とする冷凍麺の製造方法。・・・(略)・・・本発明は、短時間で解凍できて品質良好なものが得られるようにした冷凍麺の製造法に関するものである。」(第1頁左欄第22〜28行)、(リ)「従来法と同様にして調製した茄麺を3℃の冷水に10分間浸潰して冷却した。・・・(略)・・・このように麺線の物理性が変化したことは、茄麺の玉を作った際に麺線相互の間に内部間隙の多いものとなってくる。これを冷凍すると、麺線表面からの水分蒸発も行われ、また相互付着を起すことがなく、したがって、氷塊のようなブロツクを作ることはない。このことは解凍処理の際に、熱水がまんべんなく麺線の間にうまり、麺線は速やかに解凍するに至る。・・・(略)・・・急冷効果と剛性付与のためには、水温が0〜5℃が最適であり、これより温度が高くなると、急冷効果と剛性付与が充分期待できない。」(第1頁右欄第29行〜第2頁左欄16行)ことが記載されている。
ところで、特許異議申立人は、以下のようにのべ、本件請求項1に係る発明は甲第1-3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものであると主張している。
即ち、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載されている発明とは、▲1▼スパゲッティのα化(茄上げ)の歩留まりを200〜280%とする点、▲2▼α化後の冷却水の温度を0〜5℃とする点、及び、▲3▼麺塊の断層空間率を40〜80%とする点で相違するが、▲1▼については、本件特許に係る出願時の明細書の「麺類」の種類についての記載、及び、それら麺類の歩留まりについての記載からすると、歩留まりを200〜280%となるように調製することは、種々の麺類の中で、スパゲッティのみにおいて特別顕著な効果を奏されるものではないこと、甲第2号証にスパゲッティを茄上げ(α化)して225%の歩留まりに調製した後冷水で水洗し、冷却した後冷凍することが記載されていることからすると、甲第1号証において、いわゆる中華麺等の細ものの歩留まりとして例示された200〜260%に調製することは極めて容易に推考できる、▲2▼については、甲第3号証にはα化した麺線を0〜5℃の冷水で急冷し麺線に剛性を付与し麺線を不定方向に配置して内部間隙の多い麺塊を形成し次いでこれを冷凍すること、及び、それにより、解凍時間が短く品質が良好な冷凍麺が開示されているから、甲第1号証の冷水の温度を0〜5℃にすることは当業者が極めて容易に推考できる、▲3▼については、断層空間率は、本件明細書の記載からすると、上記▲1▼▲2▼に係る構成を採用した結果であり、当該範囲に特定したことにより格別顕著な効果を奏するものではない。
そこで検討するに、甲第1号証に係る発明は、タピオカ澱粉を必須の成分として含む即席冷凍麺類に係るものであり(上記(イ))、実施例はないものの、麺類としてスパゲッティの例示もある(同(ニ))が、第1表における弾力性の評価を見るとタピオカ澱粉を添加すると麺の弾力性が十分良好であることが記載されているから、麺類の弾力性を増す構成である甲第3号証の上記▲2▼に係る構成を採用する動機付けは薄いといわざるを得ない。又、甲第1号証には、比較例として、タピオカ澱粉以外の数種の澱粉及びこれら澱粉が無添加の場合(タピオカ澱粉添加より弾力性が劣ることが記載されている(第1表))が、甲第3号証には、スパゲッティについては、麺の例示、実施例はなく、実施例の原料・製法からすると、甲第3号証に係る技術はうどん、そばの類に係るものと認められ、スパゲッティと、うどん・そばでは、小麦粉の性質が異なることから、スパゲッティの製造にあたり、甲第3号証と同様な条件を採用した場合に同様な効果を奏するかは必ずしも明らかでなく、さらに、0〜5℃の水で冷却後不定方向に配置したものの断層空間率が、短時間で均一に解凍できる本件請求項1で規定する範囲のものとなるかどうかも不明である。
してみれば、甲第1号証のスパゲッティの製造にあたり、▲2▼の構成を採用することが直ちに容易であったとはいえない。
さらに、甲第1号証には、特許異議申立人の指摘する上記▲1▼〜▲3▼の相違点の外、「不定方向に配置する」ことが記載されていない。
なるほど、甲第1号証には、「麺類を容器に入れる場合はできるだけ各麺線を平行に密着させないように入り組んだ状態で入れ、隙間を多くとるようにする」(同(ハ))ことが記載されているが、麺線の如く水分を含む比較的比重も大で表面もなめらかな細長い形状物を全体として不定方向に配置することは容易でないと認められるので、この記載が「不定方向に配置する」ことを意味しているとは直ちにはいえない。同様に、甲第2号証、甲第3号証にも「不定方向に配置する」ことが記載されているとはいえない。
そして、本件請求項1に係る発明は、短時間に且つ均一に解凍ができることを目的とした従来法における種々の試み(例えば、多数のドライアイスの小柱状体間に茄上げた麺類を充填して、凍結して冷凍麺を製造する方法)の経済的、装置的、工程的な問題点を、即席冷凍スパゲッティの製造に際し、α化して歩留まりを200〜280%に調製した後、0〜5℃の冷水で急冷し、麺線を不定方向に配置する構成を組み合わせるというより簡便な構成を採用することで解決し、しかも、良好な食感を与える即席冷凍スパゲッティを提供できるという優れた効果を奏するものであり(特許公報:従来技術の項、第3欄第21-第4欄第11行)、その効果は、明細書に明らかにされている(表1、表2)。
してみれば、本件請求項1に係る発明の進歩性は、甲第1-3号証によって否定されるものではない。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
(4)結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-12-14 
出願番号 特願平1-338361
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 引地 進  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 田中 久直
大高 とし子
登録日 1998-07-03 
登録番号 特許第2799206号(P2799206)
権利者 マ・マーマカロニ株式会社 日清製粉株式会社
発明の名称 即席冷凍スパゲッティの製造法  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  

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