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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1008543
審判番号 審判1997-12534  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-07-24 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 平成6年特許願第312220号「液晶表示素子」拒絶査定に対する審判事件(平成8年6月25日出願公開、特開平8-167608)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は平成6年12月15日の出願であって、その請求項にかかる発明の要旨は、平成9年8月25日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1〜2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】基板上に走査電極線と該走査電極線に接続したゲート電極とが設けられ、これらを覆うように絶縁層が積層され、更に前記ゲート電極上方であって前記絶縁層上にシリコンからなる半導体層が設けられ、該半導体層にはソース電極とドレイン電極とが形成されており、前記ドレイン電極に接続するインジウム錫酸化物からなる画素電極を有する液晶表示素子であって、
前記半導体層上の一側と他側に各々イオンをドープしたアモルファスシリコンからなるオーミックコンタクト層を介してドレイン電極とソース電極とが積層され、前記半導体層とドレイン電極とソース電極とこれら以外の部分の絶縁層を覆って更に別の絶縁層が積層され、この絶縁層上に画素電極が形成されるとともに、前記ドレイン電極上まで延びた前記画素電極の一部が前記ドレイン電極上の絶縁層に形成されたコンタクトホールを介してドレイン電極に接続される一方、前記ドレイン電極がSnO2の標準生成エンタルピーよりもマイナス側の標準生成エンタルピーの酸化物にならない導電体からなることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】前記導電体が、銅、銀、セレン、ゲルマニウム、テルル及び亜鉛のうちのいずれか、あるいはこれらの合金からなることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子。」
一方、原査定において周知例として引用された特開平4-253342号公報(以下「第1引用例」という。)には、「本発明に係るTFTアレイ基板は、透明の絶縁性基板と、上記絶縁性基板上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、上記ゲート絶縁膜上に形成された半導体膜と、上記半導体膜上に形成されたドレイン電極及びソース電極と、上記ドレイン電極及び上記ソース電極上に形成されたパッシベション膜と、上記ソース電極上のパッシベーション膜に形成されたコンタクトホールと、上記パッシベーション膜上に形成され、上記コンタクトホールを介して上記ソース電極に接続された画素電極とを有し、上記ゲート電極に所定の信号が印加されたときに、上記ドレイン電極に印加されるドレイン信号を上記半導体層と上記ソース電極とを介して上記画素電極に印加する薄膜トランジスタアレイ基板において、上記ソース電極が、Alを含む層と、この層の上に形成されて上記画素電極に接続される酸化されにくい導電性の金属層とを有することを特徴としている。」(段落【0005】)、「本実施例のTFTアレイ基板には、SiNx膜上に形成された半導体膜としてのノンドープアモルファスシリコン(n-a-Si)膜4と、このn-a-Si膜4上に形成されたリンドープアモルファスシリコン(n+a-Si)膜5と、このn+s-Si膜5上に形成されたドレイン電極6及びソース電極7とが備えられている。ここで、ドレイン電極6は、Crからなる第一層6aとアルミニウム(A1)からなる第二層6bとCrからなる第三層6cとを、下から順に積層させて形成されている。また、ソース電極7は、Crからなる第一層7aとAlからなる第二層7bとCrからなる第三層7cとを、下から順に積層させて形成されている。」(段落【0009】)、「コンタクトホール8a内でソース電極7に接続するITOからなる画素電極9が備えられている。」(段落【0010】)という記載がなされ、これらの記載と図1によれば、同引用例には、「基板上にゲート電極が設けられ、これらを覆うように絶縁層が積層され、更にゲート電極上方であって前記絶縁層上にシリコンからなる半導体層が設けられ、該半導体層にはソース電極とドレイン電極とが形成されており、前記ドレイン電極に接続するインジウム錫酸化物からなる画素電極を有する液晶表示素子であって、前記半導体層上の一側と他側に各々イオンをドープしたアモルファスシリコンからなるオーミックコンタクト層を介してドレイン電極とソース電極とが積層され、前記半導体層とドレイン電極とソース電極とこれら以外の部分の絶縁層を覆って更に別の絶縁層が積層され、この絶縁層上に画素電極が形成されるとともに、前記ソース電極上まで延びた前記画素電極の一部が前記ソース電極上の絶縁層に形成されたコンタクトホールを介してソース電極に接続される一方、上記ソース電極が、Alを含む層と酸化されにくい金属層とからなる液晶表示装置」が記載されているものと認められる。
また、原査定の拒絶理由に引用された特開平1-171282号公報(以下「第2引用例」という。)には、「このような光起電力装置は、透明電極として用いられた金属酸化物の酸素原子および非晶質半導体層のパターン化により端面に生成される酸化物の酸素原子が使用中に裏面電極を構成する金属中に拡散し、接続界面において裏面電極が酸化されるという問題を生じる。………本発明は、上記のような問題点を改善するため、裏面電極が酸化されにくく、出力低下をおこさない光起電力素子を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第13行〜右上欄第8行)、「本発明は、絶縁表面を有する透明基板上に透光性導電膜からなる透明の電極と、光照射により光起電力を発生する非晶質半導体層と、該非晶質半導体層上に形成される金属からなる裏面電極とを有する光起電力素子を複数個互いに電気的に直列接続されるように配設された光起電力装置に用いられる光起電力素子であって、裏面電極に用いられる金属の酸化物標準生成エネルギーが前記透明電極の主成分を構成する元素および前記非晶質半導体の主成分を構成する元素の少なくとも一方の酸化物標準エネルギーより小さいことを特徴とする光起電力素子に関する。」(第2頁右上欄第10行〜同頁左下欄第2行)、「本発明に用いる透明電極(2)としては、たとえばITO、SnO2、In2O3、CdSnOなどの金属酸化物が代表例としてあげられるが、これらにとくに限定されるものではない。」(第2頁左下欄下から第2行〜右下欄第2行)、「本発明に用いる裏面電極(4)を構成する金属としては、その金属の酸化物標準生成エネルギーが透明電極(2)の主成成分を構成する元素および非晶質半導体層(3)の主成分を構成する元素のうち少なくとも一方の酸化物標準生成エネルギーより小さい金属が選ばれる。」(第3頁左上欄下から第4行〜右上欄第2行)、「たとえば透明電極(2)の主成分を構成するSnやInの酸化物標準生成エネルギーより小さい酸化物標準エネルギーをもつ金属としてはNi、Co、Fe、Cuなどの金属があげられ、また非晶質半導体層(3)の主成分を構成するSiの酸化物標準生成エネルギーより小さい酸化物標準生成エネルギーをもつ金属としては、Cr、Ni、Fe、V、Co、Wなどの金属があげられる。
これらの金属のうちではIn、Sn、Siの酸化物に対してより小さい酸化物標準生成エネルギーをもつという点ではNiなどが好ましいが、本発明においてはもとよりこれらにかぎられるものではない。」(第3頁右上欄下から第5行〜左下欄第8行)という記載がなされている。これらの記載によれば、同引用例には、光起電力素子において、ITOなどからなる透明電極と接する裏面電極の酸化を防止し、かつ非晶質半導体層と接する裏面電極の酸化を防止するために、裏面電極に用いられる金属の酸化物標準生成エネルギーが、透明電極の主成分を構成する元素及び非晶質半導体層の主成分を構成する元素の酸化物標準エネルギーより小さい、たとえば、Ni、Co、Fe、Cuなどの金属で裏面電極を構成するようにしたことが記載されている。
本願請求項1〜2記載の発明と上記第1引用例記載の発明とを比較すると、本願請求項1〜2記載の発明における「ドレイン電極」は上記第1引用例記載の発明における「ソース電極」に相当するから、本願請求項1〜2記載の発明と上記第1引用例記載の発明とは、「基板上にゲート電極が設けられ、これらを覆うように絶縁層が積層され、更に前記ゲート電極上方であって前記絶縁層上にシリコンからなる半導体層が設けられ、該半導体層にはソース電極とドレイン電極とが形成されており、前記ドレイン電極に接続するインジウム錫酸化物からなる画素電極を有する液晶表示素子であって、前記半導体層上の一側と他側に各々イオンをドープしたアモルファスシリコンからなるオーミックコンタクト層を介してドレイン電極とソース電極とが積層され、前記半導体層とドレイン電極とソース電極とこれら以外の部分の絶縁層を覆って更に別の絶縁層が積層され、この絶縁層上に画素電極が形成されるとともに、前記ドレイン電極上まで延びた前記画素電極の一部が前記ドレイン電極上の絶縁層に形成されたコンタクトホールを介してドレイン電極に接続される一方、上記ドレイン電極が、酸化を受けにくい導電体からなる液晶表示素子」という点で一致する。しかしながら、本願請求項1〜2記載の発明と上記第1引用例記載の発明とは次の各点で相違する。
1,本願請求項1〜2に係る発明が、ゲート電極に接続された走査電極線を有するものであるのに対して、第1引用例記載の発明には、走査電極線は示されていない(第1相違点)。
2,本願請求項1〜2に係る発明における、酸化を受けにくい導電体からなるドレイン電極が、SnO2の標準生成エンタルピーよりもマイナス側の標準生成エンタルピーの酸化物にならない導電体、たとえば、銅、銀、セレン、ゲルマニウム、テルル及び亜鉛のうちのいずれか、あるいはこれらの合金からなるものであるのに対して、第1引用例記載の発明における該ドレイン電極は、Al層と酸化されにくい金属層とからなっている(第2相違点)。
よって、上記各相違点につき以下検討する。
1,第1相違点について
通常、液晶表示装置においてはゲート電極に走査電極線が接続されており、したがって、第1引用例記載の液晶表示装置におけるTFTアレイにおいても、ゲート電極には走査電極線が接続されることが技術常識であると認められるので、この点で本願発明請求項1〜2記載の発明と上記第1引用例記載の発明との間に差異はない。
2,第2相違点について
上記第2引用例には、光起電力素子における透明電極と接する裏面電極の酸化を防止するために、裏面電極に用いられる金属の酸化物標準生成エネルギーが透明電極の主成分を構成する元素の酸化物標準エネルギーより小さい、たとえば、Ni、Co、Fe、Cuなどの金属で裏面電極を構成するようにしたことが記載されている。第2引用例における光起電力素子と本願発明における液晶表示素子とは対象物が異なるが、インジウム錫酸化物などからなる透明電極と金属電極との接触によって発生する酸化を防止するという点では、課題が共通するものであり、したがって、第1引用例記載の液晶表示装置において、第2引用例記載の技術内容を採用して、ドレイン電極(ソース電極)を、Al層と酸化されにくい金属層で構成することに代えて、同電極を、標準生成エネルギーが透明電極の主成分を構成する元素の酸化物標準エネルギーより小さい、即ち、金属の酸化物SnO2の標準生成エンタルピーよりもマイナス側の標準生成エンタルピーの酸化物にならない導電体、たとえば、銅で構成するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
以上のとおりであるから、本願請求項1〜2記載の発明は第1引用例〜第2引用例の技術内容に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-09-30 
結審通知日 1999-10-15 
審決日 1999-10-28 
出願番号 特願平6-312220
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧内 健夫  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 加藤 浩一
左村 義弘
発明の名称 液晶表示素子  
代理人 志賀 正武  
代理人 成瀬 重雄  
代理人 渡邊 隆  

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