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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1008788
異議申立番号 異議1999-72006  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-08-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-21 
確定日 1999-12-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第2828511号「表面被覆TiCN基サーメット」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2828511号の特許を維持する。 
理由 1、手続の経緯
特許第2828511号の請求項1に係る発明は、平成2年12月27日に特許出願され、平成10年9月18日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、三菱マテリアル株式会社より特許異議の申し立てがなされ、その後取消理由通知がなされたものである。
2、本件発明
本件特許第2828511号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものでる。
「【請求項1】Tiの炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を50乃至80重量%、周期律表第6a族元素の炭化物を10乃至40重量%の割合で含有するとともに、(窒素/炭素+窒素)で表される原子比が0.4乃至0.6の範囲にある硬質相成分60乃至95重量%と、鉄族金属を主成分とする結合相成分5乃至40重量%とから成るとともに、表面から50μmの間にビッカース硬度2000kg/mm2以上の部分が存在するTiCN基サーメットの表面に、該TiCN基サーメットよりも多くのTiを含有し、平均粒径0.4μm以下、鉄族金属の含有量が100ppm以下のTi含有硬質膜を被覆してなることを特徴とする表面被覆TiCN基サーメット。」
3、引用刊行物の記載内容
当審が通知した取消理由に引用された刊行物1(特開平2-93036号公報)には、TiCN基サーメットおよびその製法が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(a)「Tiを炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物換算で50乃至80重量%、周期律表第VIa族元素を炭化物換算で10乃至40重量%の割合で含有するとともに、(窒素/炭素+窒素)で表される原子比が0.4乃至0.6の範囲にある硬質相成分70乃至90重量%と、鉄族金属を主成分とする結合相成分10乃至30重量%とから成るTiCN基サーメットにおいて、表面から50μmの間にビッカース硬度2000以上の部分が存在することを特徴とするTiCN基サーメット。」(請求項1)
(b)「これに対し、本発明品No1〜6はいずれも2000以上のビッカース硬度を有する部分が形成され、鋳鉄切削に対し優れた耐摩耗性を示した。」(第5頁右下欄第15〜17行)
同じく刊行物2(特開昭63-134654号公報)には、高速切削用表面被覆炭窒化チタン基サーメットが記載されており、特に次の事項が記載されている。
(c)「炭窒化チタン基サーメット基体の表面に、炭化チタン、窒化チタン、および炭窒化チタンのうちの1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層を0.5〜10μmの平均層厚で形成してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメットにおいて、前記硬質被覆層の平均粒径を0.5μm以下としたことを特徴とする高速切削用表面被覆炭窒化チタン基サーメット。」(請求項1)
(d)「この発明は、例えば鋼の切削に切削工具として用いた場合、切削速度が250m/min以上の高速切削でも、すぐれた耐摩耗性と耐欠損性を示す表面被覆炭窒化チタン(TiCNで示す)基サーメットに関するものである。」(第1頁左欄最終行〜右欄第4行)
4、対比・判断
本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)の表面被覆TiCN基サーメットは、母材として特定のTiCN基サーメットである「Tiの炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を50乃至80重量%、周期律表第6a族元素の炭化物を10乃至40重量%の割合で含有するとともに、(窒素/炭素+窒素)で表される原子比が0.4乃至0.6の範囲にある硬質相成分60乃至95重量%と、鉄族金属を主成分とする結合相成分5乃至40重量%とから成るとともに、表面から50μmの間にビッカース硬度2000kg/mm2以上の部分が存在するTiCN基サーメット」を採用し、該母材の表面に、「該TiCN基サーメットよりも多くのTiを含有し、平均粒径0.4μm以下、鉄族金属の含有量が100ppm以下のTi含有硬質膜を被覆してなる」構成を有することにより、「表面の耐摩耗性に極めて優れたものであり、特に鋳鉄用の切削工具として優れた切削特性を示し、且つ被覆材の切削加工後の表面の平滑性に優れ、工具としての長寿命化を達成することができる。」(本件特許公報第6頁段落【0045】)という明細書の効果を奏すると云える。
これに対して、刊行物1に記載の発明のTiCN基サーメットは、含有成分、含有量の数値範囲、表面から50μmの間にビッカース硬度2000以上の部分が存在することから、本件発明の表面被覆TiCN基サーメットの母材であるTiCN基サーメットに相当するが、刊行物1に記載の発明のTiCN基サーメットは上記3(b)の「2000以上のビッカース硬度を有する部分が形成され、鋳鉄切削に対し優れた耐摩耗性を示した」という記載からみても明らかなように、さらに被覆することは意図されておらず、したがって、刊行物1には、さらに表面を被覆することについては何も記載も示唆もされていないと云える。
刊行物2には、TiCN基サーメット基体の表面に、TiC、TiN、TiCNのうち1種の単層または2種以上の複層からなる硬質被覆層を形成し、硬質被覆層の平均粒径を0.5μm以下とする表面被覆TiCN基サーメットが記載されているが、刊行物2には硬質被覆層における鉄族金属の含有量が100ppm以下であることについても何も記載も示唆もされておらず、加えて、刊行物2には表面被覆TiCN基サーメットの母材であるTiCN基サーメットについては何も限定されていないところがらみて、刊行物2には表面から50μmの間に硬質部分が存在するTiCN基サーメットをさらに被覆することについては何も記載も示唆もされていない。
したがって、刊行物1に記載の発明と、刊行物2に記載の発明を結びつけ、本件発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
5、特許異議申立てについて
5-1、申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1、2号証を提出し、本件請求項1に係る発明の特許は、甲第1、2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。
5-2、甲号各証の記載内容
甲第1号証は、上記3の刊行物1に同じ。
甲第2号証は、上記3の刊行物2と同じ。
5-3、特許法第29条第2項違反の主張について
上記4で述べた理由により、本件発明は、甲第1、2号証に記載の発明を組み合わせても当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
6、むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。、
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-12-01 
出願番号 特願平2-416054
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 正博北村 明弘  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 能美 知康
野田 直人
登録日 1998-09-18 
登録番号 特許第2828511号(P2828511)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 表面被復TiCN基サーメット  
代理人 富田 和夫  
代理人 鴨井 久太郎  

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