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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1008876
異議申立番号 異議1998-71751  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-15 
確定日 1999-12-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第2663901号「半導体ウェハの処理方法及び半導体ウェハ・キャリアの立替え機」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2663901号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2ないし5に係る特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
本件特許第2663901号の発明(平成7年3月15日出願、平成9年6月20日設定登録)は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】所定のピッチで配列された溝に半導体ウェハを収納したキャリアをウェット処理液中に浸す工程を備えた半導体ウェハの処理方法において、前記半導体ウェハの主表面と対向した前記キャリアの内側壁から最も近い位置にある溝に、ダミーウェハを挿入した状態で前記工程が施されることを特徴とする半導体ウェハの処理方法。
(以下、本件第1発明という)
【請求項2】所定のピッチで配列された溝に半導体ウェハを挿入して収納するキャリアを載置するステージと、前記溝に収納された半導体ウェハを押し上げて、前記所定のピッチを維持しつつ前記溝から前記半導体ウェハを解放する押上げ機とを備えた半導体ウェハ・キャリアの立替え機において、前記半導体ウェハの主表面が前記キャリアの内側壁から離れるように、少なくとも1ピッチ移動した状態に前記半導体ウェハを設定する制御手段と、前記制御手段により移動した前記半導体ウェハを前記キャリアに再収納する手段とを設けたことを特徴とする半導体ウェハ・キャリアの立替え機。(以下、本件第2発明という)
【請求項3】前記制御手段による前記半導体ウェハの移動により生じた空溝にダミーウェハを挿入する手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の半導体ウェハ・キャリアの立替え機。(以下、本件第3発明という)
【請求項4】前記制御手段が、前記ステージ又は前記押上げ機に備えられている請求項2記載の半導体ウェハ・キャリアの立替え機。(以下、本件第4発明という)
【請求項5】所定のピッチで配列された溝に半導体ウェハを収納する第1,第2のキャリアと、前記第1のキャリアから前記第2のキャリア内に前記半導体ウェハを立替える押上げ手段及び把持手段を備えた半導体ウェハ・キャリアの立替え機において、前記半導体ウェハの主表面が前記第2のキャリアの内側壁から離れる方向に、少なくとも1ピッチ移動した状態に前記半導体ウェハを設定する制御手段が、前記第1,第2のキャリアを各々載置するステージ、前記押上げ手段、前記把持手段のうちのいずれかに設けられていることを特徴とする半導体ウェハ・キャリアの立替え機。(以下、本件第5発明という)」
(2)申立ての理由の概要
申立人北村二郎は、甲第1号証(特開平6-84868号公報、以下引用例1という)、甲第2号証(特開平5-175179号公報、以下引用例2という)及び参考資料1(特開平4-233729公報)を基に本件第1発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、本件第2乃至第5発明は、甲第1号証と甲第2号証に記載された発明と実質的に同一であるか甲第1〜2号証(引用例1〜2)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件第1乃至第5発明は、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定に違反してなされたものであり特許を取り消すべきものであると主張している。
(3)引用例1〜2及び参考資料1記載の発明
引用例1には、半導体基板の洗浄方法が、図1、2とともに開示されている。
また特許請求の範囲には、「半導体基板を鏡面研磨加工した後、該基板を洗浄する工程において、洗浄用搬送容器中に収納する該基板の列の前後にダミ-基板を少なくとも1枚以上装填することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。」と記載され、段落0013〜0014には、「【実施例】本発明の提供する半導体基板の洗浄方法を、GaAs基板の洗浄に応用した例により説明する。
4インチGaAs基板の洗浄において、ダミ-基板を用いた例と従来のダミ-基板を用いていない洗浄方法を同一の工程に並行して実施した。本比較実験においては、基板搬送容器の形状の影響を除くため、図1に示す市販のテフロン製の搬送容器(ウエハキャリア)を用いた。同容器は、基板25枚を収容可能であるため、GaAs基板を23枚を1回の工程(バッチ)で処理をおこなった。ダミ-基板は上記の23枚の基板を面方向を揃えて、搬送容器に収容した後、搬送容器の両端に各1枚を入れ合計25枚とした。ダミ-基板を用いていない従来法では、搬送容器の両端に各1枚分の空きができている。ダミ-基板として、材質が結晶石英(クオ-ツ)の両面鏡面研磨基板を用いた。」と記載されている。
引用例2には、ウエハ処理方法およびその装置が、図1乃至9とともに開示されている。
また特許請求の範囲には、「【請求項1】(a)n枚のウエハを等ピッチでそれぞれ整立収納する2つのキャリアから当該ウエハを抜き出し、第1のウエハ群と第2のウエハ群とを形成する工程と、(b)第1のウエハ群のウエハ間の各隙間に第2のウエハ群の各ウエハを相互に接触しない状態で挿入し、2n枚のウエハからなる第3のウエハ群を形成する工程と、(c)第3のウエハ群を一括して処理槽内の処理液に浸漬させ表面処理する工程と、を備えるウエハ処理方法。
【請求項2】ウエハをキャリアから取り出して搬送手段で搬送し、所定の薬液が満たされた処理槽内に浸漬させることにより当該ウエハの表面処理を行なうウエハ処理装置において、(a)n枚のウエハを等ピッチで整立して収納するキャリアから当該ウエハを挿出入させるウエハ挿出入手段と、(b)前記ウエハ挿出入手段により、2つのキャリアからウエハを挿出させて第1のウエハ群と第2のウエハ群を形成し、第1のウエハ群のウエハ間の各隙間に第2のウエハ群の各ウエハを相互に接触しない状態で挿入することにより、2n枚のウエハからなる第3のウエハ群を形成するウエハピッチ変換手段と、(c)前記ウエハピッチ変換手段によって形成された第3のウエハ群を一括して処理槽に搬送する搬送手段と、を備えたことを特徴とするウエハ処理装置。」と記載され、段落0015〜0020には、「ウエハ2は,ウエハ搬送用のキャリア3に収納されたまま図示しないロボットにより搬送されて、ウエハ処理装置1のロード部4上に載置される。このキャリア3は、たとえば、図2に示すような形状になっており、その内面にはn本のガイド溝3aが一定のピッチPで平行に刻設されており、ウエハ2の外縁がこのガイド溝3aに挿入されて、一定の間隔をおいて垂直に整列したまま収納されるようになっている。キャリア3の上面部には、側方に広がる鍔3bが設けられており、この部分に搬送手段のアームなどを係合させてキャリア3の搬送を容易に行なえるようになっている。また、底面部には開口部3cが形成されており、後述のウエハ挿出入装置53、54で内部のウエハ2のみを押上げてキャリア3から上方に挿出するようになっている。
ロード部4上に載置されたキャリア3は後述するキャリア搬送装置120(図4参照)によってウエハ挿出入部5の移し変え位置51および52上に順次移送され載置される。
この移し変え位置51および52の下方には、挿出入装置53および54が配設されている。
挿出入装置53、54は、それぞれ上面にピッチPでn本のガイド溝が平行に刻設された保持板531、541と、これらを支持するアーム532、542、及びこのアーム532、542を上下駆動させるためのアクチュエータ533,543から構成されている。上記保持板531、541は、アクチュエータ533、543の駆動によりキャリア3の開口部3cを通過して上方に押し上げられるようになっており、ウエハ2の下部外縁を保持板531、541のガイド溝に挿入させてそのままの状態でウエハ2を上方に押し上げ、キャリア3からウエハ2を抜き出して第1のウエハ群21を形成する。
移し変え位置51の上方には、前記第1のウエハ群21を保持して次のウエハピッチ変換部6に移送するための第1の搬送装置55が待機している。
この第1搬送装置55は、ウエハ2を保持する保持部材551とこれを支持するアーム552と、このアーム552を開閉自在に保持するヘッド553とからなっている。」と記載され、段落0027には、「ピッチ変換用保持板61をスライド装置62によりP/2だけスライドさせた後、第1搬送装置55を下降させ、第1のウエハ群21の各ウエハ間に第2のウエハ群22の各ウエハを挿入し、ピッチ変換用保持板61のガイド溝に整立保持させる。この際、第1搬送装置55における保持部材551には上述のように通過溝551aとガイド溝551bが形成されており、第2のウエハ群22のウエハ2の外縁は、ガイド溝551bに保持され、すでにピッチ変換用保持板61に載置されている第1のウエハ群21のウエハ21の外縁は、挿入の際通過溝551a内を通過するので、保持部材551が第1のウエハ群21のウエハに接触することなしに第2のウエハ群22のウエハ2がスムーズに挿入され、ピッチ変換用保持板61に整立保持される。」と記載され、段落0035には、「第2搬送装置73は、ウエハピッチ変換部6に移動し、ピッチ変換用保持板61に整立された第3のウエハ群23を保持部材731で保持し、ウエハ処理部7の上方に移動して停止する。するとガイド板712が、図示しない垂直駆動装置によって上方に移動される。ガイド棒711のガイド溝が第3のウエハ群23の各ウエハ2の下部外縁に挿入されるとアーム732を開放して、第3のウエハ群23をガイド棒711に移し変える。」と記載されている。
参考文献1には、ウエハ処理方法およびその装置が、図1乃至5とともに開示されている。
また特許請求の範囲には、「【請求項1】洗浄処理部への被洗浄体の搬入口及び搬出口を兼ねる搬入出口の近傍の移し換え位置にて、搬送用容器に搭載された上記被洗浄体を洗浄用容器に移し換え、洗浄終了後に上記移し換え位置にて上記洗浄用容器内の上記被洗浄体を上記搬送用容器に移し換える洗浄装置における被洗浄体移載機において、上記搬送用容器及び上記洗浄用容器をそれぞれ上記移し換え位置に搬送する搬送手段と、上記移し換え位置の下方に配置され、上記移し換え位置に配置された上記搬送用容器または洗浄用容器内の被洗浄体を押し上げる押上機と、上記移し換え位置の上方に並設配置され、上記搬送用容器より上記洗浄用容器への被洗浄体の移し換え時に上記押上機で押し上げられた被洗浄体を上方にて支持する搬入用チャック、及び上記洗浄用容器より搬送用容器への被洗浄体の移し換え時に上記押上機で押し上げられた被洗浄体を上方にて支持する搬出用チャックと、を有することを特徴とする洗浄装置における被洗浄体移載機。
【請求項2】請求項1において、上記押し上げ機は、上記搬入用チャック及び搬出用チャックと対向する位置にそれぞれ被洗浄体の押上部材を有することを特徴とする洗浄装置における被洗浄体移載機。
【請求項3】請求項1又は2において、上記搬入用チャック及び搬出用チャックは、それぞれ一度に複数容器内の被洗浄体を支持可能としたことを特徴とする洗浄装置における被洗浄体移載機。」と記載されている。
(4)対比・判断
<本件第1発明について>
本件第1発明については、平成11年4月28日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。
そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件第1発明に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
<本件第2発明について>
本件第2発明と引用例1、2記載の発明とを対比すると、引用例1、2には本件第2発明の必須の構成要件である、半導体ウェハ・キャリアの立替え機において、「前記半導体ウェハの主表面が前記キャリアの内側壁から離れるように、少なくとも1ピッチ移動した状態に前記半導体ウェハを設定する制御手段と、前記制御手段により移動した前記半導体ウェハを前記キャリアに再収納する手段」を設ける点について記載も示唆もない。そして本件第2発明は上記の点により明細書記載の作用効果を奏するものである。
よって、本件第2発明は、引用例1又は2に記載された発明と同一であるとも引用例1〜2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることはできない。
<本件第3乃至第4発明について>
本件第3乃至第4発明は、本件第2発明をその構成の一部とするものであるから、本件第2発明についてと同様の理由により、引用例1又は2に記載された発明と同一であるとも引用例1〜2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることはできない。
<本件第5発明について>
本件第5発明と引用例1、2記載の発明とを対比すると、引用例1、2記載の発明には本件第5発明の必須の構成要件である、半導体ウェハ・キャリアの立替え機において、「前記半導体ウェハの主表面が前記第2のキャリアの内側壁から離れる方向に、少なくとも1ピッチ移動した状態に前記半導体ウェハを設定する制御手段が、前記第1,第2のキャリアを各々載置するステージ、前記押上げ手段、前記把持手段のうちのいずれかに設けられている」点について記載も示唆もない。そして本件第5発明は上記の点により明細書記載の作用効果を奏するものである。
よって、本件第5発明は、引用例1又は2に記載された発明と同一であるとも引用例1〜2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることはできない。
なお上記の判断に当たって参考資料1を参酌しても結論は変わらない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本件第1発明は引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、本件第1発明の特許は取り消されるべきものである。
また本件第2乃至第5発明の特許については、取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-11-25 
出願番号 特願平7-55468
審決分類 P 1 651・ 113- ZC (H01L)
P 1 651・ 121- ZC (H01L)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 小田 裕  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 酒井 正己
影山 秀一
登録日 1997-06-20 
登録番号 特許第2663901号(P2663901)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 半導体ウェハの処理方法及び半導体ウェハ・キャリアの立替え機  

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