• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1008877
異議申立番号 異議1998-75282  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-28 
確定日 1999-12-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第2746811号「剥離性シリコーン硬化皮膜の形成方法」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2746811号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2746811号は、平成5年3月5日に出願され、平成10年2月13日に設定登録され、その後、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社及び荒川化学工業株式会社から特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、特許異議意見書が提出されたものである。
2.特許異議申立の概要
特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社は、甲第1号証(特開昭64-51466号公報)、甲第2号証(特開平5-5063号公報)、甲第3号証(特開平5-50036号公報)、甲第4号証(特開平3-10058号公報)を提出して、特許第2746811号の請求項1-2に係る発明は、前記甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により(申立理由1)、
特許異議申立人 荒川化学工業株式会社は、特許第2746811号の請求項1-2に係る発明の特許は、その明細書が特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により(申立理由2)、
特許を取り消すべき旨主張をしている。
3.異議申立についての判断
(1)申立理由1について
〔請求項に記載の発明〕
特許第2746811号の請求項1-2に係る発明は、特許明細書の記載からみて、その許請求の範囲の請求項1-2に記載されたとおりのもので、請求項1には、次のとおり記載されている。
「a)1分子中に少なくとも2個のけい素原子に直結したビニル基を有するオルガノポリシロキサン、
b)1分子中に少なくとも2個のけい素原子に直結した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び
c)付加反応制御剤からなるA)組成物40〜60重量部と、
d)1分子中に少なくとも2個のけい素原子に直結したビニル基を有するオルガノポリシロキサン及び
e)白金族金属系触媒からなるB)組成物60〜40重量部とを連続的に混合し(但し、A)組成物とB)組成物の合計は100重量部)、混合物をただちに基材に塗工し、続いて硬化被膜を形成させることを特徴とする剥離性シリコーン硬化被膜の形成方法。」(以下、本件発明という。)
〔甲各号証の記載の事項〕
甲第1号証には、次の記載がされている。
「(A)1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 0.2〜50重量部、
(C)下記一般式・・・で表されるアセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン 0.1〜10重量部、および
(D)白金系化合物 前記(A)成分に対して白金として1ppm以上
を含有してなる剥離性シリコーン組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は、剥離性シリコーン組成物に関し、特に保存安定性に優れる低温硬化性の剥離性シリコーン組成物に関する。」(第1頁右下欄第11行〜第13行)
「このように、低温硬化性と保存安定性を兼ね備えた剥離性シリコーン組成物を得ようとすると、硬化皮膜の剥離性の経時安定性など他の特性が損なわれるという問題があった。そこで、本発明の目的は、得られる硬化皮膜の剥離性、その経時安定性などが良好であるとともに、優れた保存安定性と低温硬化性とを兼ね備えた剥離性シリコーン組成物を提供することにある。」(第2頁左下欄第16行〜右下欄第3行)
「本発明の組成物では、(C)成分のアセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサンが常温においては(A)成分と(B)成分との付加反応の抑制剤として働くために高い保存安定性が得られるが、加熱時には前記付加反応を阻害しないため低温硬化性が達成するものと考えられる。また、この(C)成分は、(A)、(B)成分オルガノポリシロキサンと良好な相溶性を有するため均一な特性及び剥離性の経時安定性を有する硬化皮膜が得られるものと考えられる。」(第5頁左上欄末行〜右上欄第9行)
甲第2号証には、次の記載がされている。
「【請求項1】(A)平均単位式:
R1aR2bSiO(4-a-b)/2
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、R2はアルケニル基であり、aは1.90-2.05の数であり、bは0.0005-0.1の数であり、かつa+bは1.91-2.06の数である。)で表されるオルガノポリシロキサン100重量部、
(B)白金系触媒を白金金属原子として0.01重量%以上有する熱可塑性樹脂から構成される球状微粒子触媒(熱可塑性樹脂の軟化点は50-150℃であり、球状微粒子触媒の平均粒子径は0.01-10μmである。) 0.005-10重量部、
(C)1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジエンポリシロキサン[(C)成分の添加量は、(C)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数と(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.5:1-20:1となる量である。]
および
(D)ヒドロシリル化反応阻害性化合物 0.005-10重量部
からなる複合成形用液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】(A)成分と(B)成分からなるオルガノポリシロキサン組成物と、(A)成分、(C)成分および(D)成分からなるオルガノボリシロキサン組成物とに分けてなる2液包装型オルガノポリシロキサン組成物である、請求項1記載の複合成形用液状シリコーンゴム組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は複合成形用液状シリコーンゴム組成物に関し、詳しくは、軟化点の低いプラスチックに対する高速複合成形方法(一体化成形方法)に好適に使用され得る複合成形用液状シリコーンゴムに関する。」(段落【0001】)
「本発明の目的は、チラーによる冷却温度(約5℃)において貯蔵安定性に優れ、80〜110℃の低温での硬化特性に優れる複合成形用液状シリコーンゴム組成物を提供することにある。」(段落【0006】)
「本発明の複合成形用液状シリコーンゴム組成物は上記(A)成分〜(D)成分を均一に混合することによって得られ、その混合方法および混合順序等は特に限定されないが、・・・(A)成分および(B)成分からなるオルガノポリシロキサン組成物と(A)成分、(C)成分および(D)成分からなるオルガノポリシロキサン組成物とに分割して貯蔵してなる2液包装型の液状シリコーンゴム組成物であることが最も好ましい。」(段落【0022】)
甲第3号証には、次の記載がされている。
「主剤と硬化剤からなる2液タイプ反応硬化型シリコーンゴム組成液からシリコーンゴム薄層膜を製造する方法において、2液を塗布直前に混合し、基体上に塗布後硬化させることを特徴とするシリコーンゴム薄層膜の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
「また、紙などの種々の材料に離型性を付与するためにコーティングされるシリコーンゴム薄層膜の製造方法に関する。」(段落【0001】)
「主剤と硬化剤からなる2液タイプ反応硬化型シリコーンゴム組成液からシリコーンゴム薄層膜を製造するには、主剤および硬化剤を混合させ、塗布し、60〜150℃に加熱し硬化させればよい。」(段落【0006】)
「硬化反応のスピードは、硬化剤の種類、主剤と硬化剤の混合比、加熱条件などによりかわってくるが、生産性を考えると硬化反応の速い組成にしたほうが、生産スピードをアップでき、加熱設備のゾーン長を短くできる、設備投資額が少なくてよい、等のメリットがある。しかしながら硬化反応が速い組成の場合には、主剤と硬化剤を混合後、塗布するまでの間に混合したタンクの中で、あるいは塗布するための送液パイプの途中で粘度が上昇あるいはゲル化してしまい、塗布できなくなるという問題があった。」(段落【0007】)
「また、粘度上昇やゲル化までいかなくても、一部硬化反応が進むことにより塗布硬化後、できあがったシリコーンゴム薄層膜の硬化の進み具合が一定でないため、期待するシリコーンゴム薄層膜としての性能が得られないことがあった。・・・」
(段落【0008】)
「従って本発明の目的は、硬化反応が速く生産性の良いシリコーンゴム組成液でも常に安定に塗布することができ、また、常に一定性能のシリコーンゴム薄膜層を製造する方法を提供することである。」(段落【0009】)
「本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、主剤と硬化剤からなる2液タイプ反応硬化型シリコーンゴム組成液からシリコーンゴム薄層膜を製造する方法において、2液を塗布直前に混合し、基体上に塗布後、硬化させることにより前記の目的が達成できることを見いだし本発明を完成するに至った。」(段落【0010】)
「・・・塗布直前の混合方式としては、いわゆる「バッチ式」でも、「連続方式」でもいずれでもよいが、調液後塗布までの経時による塗布液のゲル化や粘度上昇を防止しまたゲル化や粘度上昇までいかなくても一部硬化反応が進むことを防止し、硬化後のシリコーンゴム薄膜層の性能を一定にするという目的からは連続方式がより好ましい。」(【段落0012】)
「本発明で用いられる2液タイプ付加反応硬化型シリコーンゴム組成液は、大別して2通りの構成が可能である。即ち、不飽和基を有するベースポリマーと付加反応触媒を含有する液と、不飽和基に付加反応し得る官能基を有する架橋剤を含有する液の2液による構成、および不飽和基を有するベースポリマーと不飽和基に付加反応し得る官能基を有する架橋剤を含有する液と、付加反応触媒からなる液を含有する液の2液による構成のいずれであっても良い。」(段落【0017】)
「その他の成分として、シリコーンオイル等の充填剤、硬化反応を抑制する付加反応抑制剤、有機溶剤等を含んでも良く、これらは2液のいずれに加えても良いが、好ましくは付加反応抑制剤は触媒を含有しない液に加える構成が選ばれる。不飽和基を有するベースポリマーとしては、通常・・・直鎖状ポリシロキサンが用いられる。」(段落【0018】)
甲第4号証には、次の記載がされている。
「(1)成分(A):1分子中に少なくとも2個のケイ素結合不飽和基を有するオルガノポリシロキサン100重量部、
成分(B):1分子中に少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジエンポリシロキサンa重量部〔但し、a重量部はオルガノハイドロジエンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子の合計量と成分(A)中の全不飽和基のモル数が0.5:1-20:1となる量である。〕、
成分(C):帯電を防止もしくは抑制し得る液状物質を担持した微小細孔を有する多孔性無機微粉体0.1-40重量部、
成分(D):白金系化合物0.1-500ppm、
を有するシリコーンゴム組成物において成分(A)、(B)、(D)を同一パッケージ内に含まず、かつ成分(C)と成分(D)を同一パッケージ内に含まない少なくとも成分(A)及び成分(D)とから構成されるA液と少なくとも成分(A)、成分(B)、成分(C)から構成されるB液の二液より構成されることを特徴とする帯電防止能を有するシリコーンゴム製造用二液型付加反応型液状シリコーンゴム組成物キット。
(4)請求項第1項の組成物キットのA液とB液とを特定混合比により混合せしめ加熱硬化反応によりゴム状弾性体を得ることを特徴とする帯電防止能を有する付加反応型シリコーンゴムの製造方法。」(特許請求の範囲1,4)
「上記(A)、(B)、(C)、(D)成分からなる組成物において、特に(A)成分と(B)成分、(D)成分を同一パッケージ内に含有することを避ける。また、(C)成分は(D)成分と同一パッケージ内に含まないこととする。これは、(A)、(B)、(D)成分を同一パッケージ内に含むと、(D)成分の触媒作用ににより(A)成分のケイ素原子結合不飽和基と(B)成分のケイ素原子結合水素とが徐々に付加反応を起こしゲル化していくために、長期間の液状の状態での保存が困難であるためである。また、(C)成分は(D)成分と同一パッケージ内に含まない。これは(C)成分と(D)成分を同一パッケージ内に含んだ場合、長期間の液状の状態での保存において硬化性の低下が見られるため・・・」(第6頁左上欄第7行〜第20行)
〔判断〕
(i)本件発明と甲各号証に記載された発明とを対比検討する。
本件発明は、請求項1に記載の「A)組成物40〜60重量部と、B)組成物60〜40重量部とを連続的に混合し(但し、A)組成物とB)組成物の合計は100重量部)、混合物をただちに基材に塗工し、続いて硬化被膜を形成させる剥離性シリコーン硬化被膜の形成方法」からなる構成を採用することにより、付加反応制御剤の量を少なくできるので低温での速硬化が可能で、さらに成分がほぼ等量で供給されるので流量制御が容易で混合効率もよく、塗工直前に成分が混合されるので塗工用組成物の経時変化の影響をほとんど受けないものである。
甲第1号証に記載の発明は、(A)1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと、さらにアセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサンおよび白金系化合物を含有してなるものであって、低温硬化性と保存安定性を兼ね備えた剥離性シリコーン組成物で、硬化皮膜の剥離性、その経時安定性などが良好であるとともに、優れた保存安定性と低温硬化性とを兼ね備えた剥離性シリコーン組成物を得ることを目的とするものである。そして、前記組成物において、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサンを配合することにより、常温において(A)成分と(B)成分との付加反応を抑制するので高い保存安定性が得られ、また、加熱時には前記付加反応を阻害しないため低温硬化性が達成できるというものである。
即ち、甲第1号証に記載の発明は、剥離性シリコーン組成物を構成する各成分を一つにした場合に、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサンを加えることにより、保存安定性、低温硬化性に優れた組成物を得ることができるというものであり、組成物を構成する各成分を特定の成分に2分割し、これを使用時に混合して塗工する皮膜の形成方法について記載されているものではない。
甲第2号証に記載の発明は、シリコーンゴム組成物を構成する成分を特定の成分に2分割し、使用する方法であるが、これは、軟化点の低いプラスチックに対する高速複合形成方法(一体化成形方法)に好適に使用され得る複合成形用液状シリコーンゴムに関するもので、チラーによる冷却温度(約5℃)において貯蔵安定性に優れ、80〜110℃の低温での硬化特性に優れる複合成形用液状シリコーンゴム組成物を提供することにより、高速複合形成方法とするものであるから、発明の目的が本件発明の目的である剥離性シリコーン硬化皮膜の形成方法とは異なるものである。
甲第3号証に記載の発明は、主剤と硬化剤からなる2液タイプ反応硬化型シリコーンゴム組成液からシリコーンゴム薄層膜を製造する方法において、2液を塗布直前に混合し、基体上に塗布後硬化させるシリコーンゴム薄層膜の製造方法であり、不飽和基を有するベースポリマーと不飽和基に反応し得る官能基を有する架橋剤、付加反応触媒、付加反応抑制剤からなる組成物を2分割で使用する点で本件発明と共通するものであるが、前記主剤と硬化剤は、▲1▼不飽和基を有するベースポリマーと付加反応触媒を含有する液と、不飽和基に付加反応し得る官能基を有する架橋剤を含有する液の2液による構成、▲2▼不飽和基を有するベースポリマーと不飽和基に付加反応し得る官能基を有する架橋剤を含有する液と、付加反応触媒からなる液を含有する液の2液による構成のいずれかであり、これらの▲1▼又は▲2▼からなる組成物も本件発明のA)組成物とB)組成物、即ち2分割されているA)、B)両方にけい素原子に直結したビニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有し、A)組成物40〜60重量部と、B)組成物60〜40重量部とを連続的に混合(但し、A)組成物とB)組成物の合計は100重量部)し、使用する組成物とは相違している。
甲第4号証に記載の発明は、成分(A)として1分子中に少なくとも2個のケイ素結合不飽和基を有するオルガノポリシロキサン、成分(B)として1分子中に少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジエンポリシロキサン、成分(C)として帯電を防止もしくは抑制し得る液状物質を担持した微小細孔を有する多孔性無機微粉体、成分(D)として白金系化合物を有するシリコーンゴム組成物からなるもので、前記成分(A)、(B)、(D)を同一パッケージ内に含まず、かつ成分(C)と成分(D)を同一パッケージ内に含まない少なくとも成分(A)及び成分(D)とから構成されるA液と少なくとも成分(A)、成分(B)、成分(C)から構成されるB液の二液より構成される帯電防止能を有するシリコーンゴム製造用二液型付加反応型液状シリコーンゴム組成物キットである。そして、(A)、(B)、(D)成分を同一パッケージ内に含むと(D)成分の触媒作用により(A)成分のケイ素原子結合不飽和基と(B)成分のケイ素原子結合水素とが徐々に付加反応を起こしゲル化していくために、長期間の液状の状態での保存が困難であり、また、(C)成分と(D)成分を同一パッケージ内に含んだ場合、長期間の液状の状態での保存において硬化性の低下が見られるため(C)成分は(D)成分と同一パッケージ内に含まないようにするものである。そして、甲第4号証に記載のものは、帯電を防止もしくは抑制し得る液状物質を担持した微小細孔を有する無機微粉体を配合することにより長期の保存における硬化性の低下を防止しうるというものであり、甲第4号証に記載のシリコーンゴム組成物を構成する成分は本件発明の組成物を構成する成分とは異なり、しかも、両発明の解決すべき目的も相違するものである。
そして、本件発明は、前記構成を採用することにより、明細書記載のとおり、付加反応制御剤の量を少なくできるので低温での速硬化が可能で、さらに、成分がほぼ等量で供給されるので流量制御が容易で混合効率もよく、塗工直前に成分が混合されるので塗工用組成物の経時変化の影響をほとんど受けないという格別の効果を奏するものである。 したがって、甲第2〜4号証に2液型シリコーンゴム組成物からなる硬化方法が記載されているとしても、2液型シリコーンゴム組成物を構成する成分が異なり、これにより奏する効果も異なるものであるから、本件発明の剥離性シリコーン硬化皮膜の形成方法については、前記甲第1〜4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
(ii)請求項2に係る発明は、本件発明を限定したものであるから、本件発明で示したと同様の理由で、前記甲第1〜4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
(2)申立理由2について
請求項1に記載の「A)組成物とB)組成物とを連続的に混合し、混合物をただちに基材に塗工し、」にある「ただちに」とは、対象が不明確であり、その説明が詳細な説明中になく、また、時間的な幅が不明確であり、さらに、対応する比較が、不適当なため範囲が不明であり、本発明を容易に実施できないというものである。
しかしながら、明細書段落【0004】の「低温での速硬化が可能であってかつ安定した塗工が可能な」との記載、段落【0005】の「両成分を等量に近い量、急速に混合、塗工すれば、低温での速硬化と安定した塗工が可能なことを見出して」との記載、段落【0015】の「スタティックミキサー等により連続的に混合し、ただちに紙、プラスチックフイルム等の基材に常法により塗布し、」との記載、段落【0027】の「塗工直前に成分が混合されるので塗工用組成物の経時変化の影響をほとんど受けない。」との記載から見れば、前記の「ただちに」とは、A)組成物とB)組成物とを混合した直後の混合物が変化しない状態の塗工できる時間を意味するものであることは明らかであるから、「ただちに」との記載が不明確であるとまでは言えず、明細書の記載に不備があるとはいえない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張及び提示した証拠によっては本件請求項1-2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-11-30 
出願番号 特願平5-45375
審決分類 P 1 651・ 534- Y (C08L)
P 1 651・ 121- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮坂 初男  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 柿沢 紀世雄
谷口 浩行
登録日 1998-02-13 
登録番号 特許第2746811号(P2746811)
権利者 信越化学工業株式会社
発明の名称 剥離性シリコーン硬化皮膜の形成方法  
代理人 荒井 鐘司  
代理人 久保田 芳譽  
代理人 山本 亮一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ