• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1009760
審判番号 審判1998-20248  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-04-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-17 
確定日 2000-02-04 
事件の表示 平成5年特許願第239685号「磁気抵抗効果型磁気ヘッド」拒絶査定に対する審判事件(平成7年4月7日出願公開、特開平7-93724)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年9月27日に出願されたものであって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「基板と、前記基板上に設けられた磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜上に互いに接触しないように設けられた一対の硬質磁性膜と、前記一対の硬質磁性膜上に設けられるとともに先端部を前記磁気抵抗効果膜に接合させしかも互いに接触させずさらに前記磁気抵抗効果膜にセンス電流を供給する一対のリード層とを備え、前記一対のリード層の先端部の間隔を、前記硬質磁性膜の先端部の間隔よりも狭くするとともに、リード層間の間隔を5μm以下としたことを特徴とする磁気抵抗効果型磁気ヘッド。」
II.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、請求人が従来技術として引用したものでもある特開平2-220213号公報(以下、「引用例1」という。平成2年9月3日出願公開)には、磁気抵抗読取りトランスデューサに関し、
「中央能動領域によって分離された受動先端領域を有する、磁性体から形成した磁気抵抗導体層の薄膜、及び受動先端領域内のみで前記磁気抵抗層と平行であるが、前記磁気抵抗層と隔置されている硬磁性体の薄膜を含み、縦方向バイアスが、前記磁気抵抗層の前記能動領域を単磁区状態に維持するところの、前記磁気抵抗層の受動先端領域で縦方静磁気バイアスを発生させる手段を含む磁気抵抗読取りトランデューサ。」(第1頁左下欄欄特許請求の範囲第1項参照)、
「簡単に言うと、上記の発明は、MR層の先端領域内だけに直接、適切な単磁区状態を発生させるものである。これは、MR膜の先端領域内だけに縦方向のバイアス磁化を発生させることによって実現できる。その結果、先端領域内に単磁区状態が誘導される。この概念の特定の実施例では、縦方向バイアスは、反強磁性体と軟磁性体との間の交換結合によって実現される。
米国特許第4639806号は、縦方向バイアスが強磁性体の層によって実施されるというMRセンサを記述している。その強磁性体の層は、電気リード線と同じ広がりをもつ先端領域でMR素子と接し、強磁性体の層とMR素子の間の交換結合によって縦方向バイアスを実現する。したがって、MR素子が、その長手方向に沿った特定の方向で磁化される。しかし、この方法は、バイアスの永続性に問題がある。というのは、軟磁性MRセンサと交換結合したとき、硬バイアス・フィルムの固有保持力が実質上消滅するからである。第2の問題は、硬バイアス・フィルムからの磁束によって生ずる。というのは、追加の磁束が、横方向感度プロフィルに悪影響を与える縦方向バイアスを生じ、したがって、この方法の狭いトラックヘの適用が制限されるからである。」(第2頁左下欄第1行〜右下欄第6行参照)、
「磁気抵抗(MR)読取りトランデューサは、MRセンサ10(第1図、第2図、第3図)を利用したもので、MRセンサ10は実際のデータ感知を行なう中央能動領域12と、先端領域14の2つの領域に分割できる。本発明は、この2つの領域を異なる形でバイアスする、すなわち先端領域14にだけ縦方向バイアスをかけ、能動領域12には横方向バイアスをかけるべきことを認識したものである。横方向バイアスは、薄い非磁性体スペーサ層22によってMR層11から分離されている、軟磁性体層20によって発生させる。スペーサ層22の目的は、中央能動領域12内で、MR層11と軟磁性体薄膜層20の間の磁気交換バイアスを防止することである。導線24及び26は、バイアス電流を電流源28からMRセンサに伝え、出力信号を外部感知手段30に伝えるための電気経路である。導線24と26の内端の間に、能動領域12の、出力信号がそこで検知される部分がある。」(第3頁左上欄第13行〜右上欄第14行、第1〜3図参照)、
「第4図に示したように、本発明の硬磁性体分路バイアスは、矢印38で表した,MR素子11の先端領域14からの磁化(1に正規化されている)が、矢印38で表すように、硬バイアス層磁化hから差し引かれるので、この問題を伴わない。矢印37で表す、軟磁性体層20の先端領域14からの磁化tも、硬バイアス層16によって発生する磁化から差し引かれる。この場合、MRセンサ10の先端領域14内の磁化は、h-1-tである。この実施例を使用することによって、硬磁性体層16の厚さを適当に選択して、望ましい縦方向バイアスを実現することができる。先端領域14内の縦方向バイアスのレベルは、MR素子の中央領域を単磁区状態に維持するのに充分な程度とすることが好ましい。」(第3頁左下欄第13行〜右下欄第7行、第4図参照)、
と記載されている。
これらの記載からすると、引用例1には、「MR(磁気抵抗)層と、前記MR層上に互いに接触しないように設けられた一対の硬磁性体層と、前記一対の硬磁性体層上に設けられ互いに接触させずさらに前記MR層にセンス電流を供給する一対の導線とを備えた磁気抵抗読取りトランスデューサ。」の発明が記載されていると同時に、硬磁性層が単磁区領域の制御に用いられること、及び反強磁性体も硬磁性体と同様に軟磁性体と交換結合して単磁区領域の制御に利用されることが記述されているものと認める。
同じく特開平4-149812号公報(以下、「引用例2」という。平成4年5月22日出願公開)には、磁気ヘッドに関し、
「1.磁気抵抗効果膜に磁区構造を制御するための反強磁性膜が接続されており、上記磁気抵抗効果膜と反強磁性膜に不可避な不純物を含むNbからなるリード線が接続されていることを特徴とする磁気ヘッド。
2.前記反強磁性膜およびリード線が前記磁気抵抗効果膜の両端に形成されており、前記磁気抵抗効果膜に接する反強磁性膜の一部分または全部がリード線で覆われていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の磁気ヘッド。」(第1頁左下欄特許請求の範囲第1項、第2項参照)、
「磁気抵抗効果を利用した磁気ヘッドでは、磁気抵抗効果膜の磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ発生を抑えるために、磁気抵抗効果膜の一部または全部に反強磁性体を設けて、交換バイアス磁界を印加して磁区を制御している。」(第2頁左上欄第9〜13行参照)、
「第1図に本発明の第1の実施例を示す。同図は磁気抵抗効果型薄膜ヘッドの断面を示す。基板1の上に磁気抵抗効果素子2を形成し、その両端に反強磁性膜3を形成してある。電極4は反強磁性膜を覆うようにして形成されている。」(第2頁右下欄第2〜6行、第1図参照)、
「また本実施例では反強磁性膜よりも内側に電極を形成しており、感磁部と反強磁性膜との位置が離れている。このため、反強磁性膜との交換結合による感磁部感度の低下はほとんどみられず、再生出力の低下は生じないという効果もある。」(第3頁左上欄第15〜19行参照)と記載され、その第1図によれば一対の電極4の先端部は磁気抵抗効果膜に接合していることが認められる。
III.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、磁気抵抗効果型磁気ヘッドにおいて磁気抵抗効果膜は基板上に設けられるものであり、引用例1のMR層(磁気抵抗効果膜)も基板上に設けられることは明らかであるから、両者は、「基板と、前記基板上に設けられた磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜上に互いに接触しないように設けられた一対の硬質磁性膜と、前記一対の硬質磁性膜上に設けられるとともに互いに接触させずさらに前記磁気抵抗効果膜にセンス電流を供給する一対のリード層とを備えた磁気抵抗効果型磁気ヘッド。」で一致する。
しかしながら、本願発明は、「一対のリード層がその先端部を磁気抵抗効果膜に接合し、一対のリード層の先端部の間隔は、硬質磁性膜の先端部の間隔よりも狭くするとともに、リード層間の間隔を5μm以下とした」と規定しているのに対して、引用例1に記載の発明にはそのような規定がない点で相違する。
IV.相違点についての判断
そこで、この相違点について検討する。
引用例2には、磁気抵抗効果膜を用いた磁気ヘッドにおいて、一対の電極(リード層)をその先端部が磁気抵抗効果膜に接合するように反強磁性膜を覆い、反強磁性膜よりも内側に電極を形成することで(この場合、当然一対の電極の間隔は一対の反強磁性膜の間隔より狭くなる。)、感磁部と磁気抵抗効果膜に交換バイアス磁界を印加する反強磁性膜との位置を離し、反強磁性膜との交換結合による感磁部感度の低下を抑制し得ることが開示されている。
そして、引用例1に記載の磁気抵抗読取りトランスデューサ(磁気抵抗効果型磁気ヘッド)においても、感磁部である中央能動領域と硬磁性体層とは近接していることから、MR層(磁気抵抗効果膜)にバイアス磁界を印加する硬磁性体層との交換結合により感磁部の感度が低下することは予測されることである。
してみれば、反強磁性体、硬質磁性体が共にMR素子の単磁区領域の制御に用いられ、交換結合に伴う感度低下、不安定さ等の共通の技術課題を有することから、その共通の課題の解決のために、引用例1に記載される磁気抵抗読取りトランスデューサにおいて、引用例2に記載の事項の教示に従い、一対の導線の先端部がMR層に接合するように導線(リード層)で硬磁性体層(硬質磁性膜)を覆い、一対の導線の先端部の間隔を硬磁性体層の先端部の間隔より狭くするように設計する程度のことは、当業者は容易に想起することである。
また、磁気抵抗効果膜を用いた磁気ヘッドにおいて、一対の導線間の間隔は狭いほど高密度記録に有利であることは明らかであり、さらに、磁気ヘッドを設計するに当たってどのような間隔において使用が可能であるかについては常に検討され実験により容易に決定し得ることであるから、一対の導線間の間隔を5μm以下に設定する点にも格別の困難性は認められない。
現実に磁気抵抗効果型磁気ヘッドにおいて、請求人が従来技術として引用している特開平5-135332号公報では導線間の間隔を4μmとしており、他にも特開平5-73831号公報(5μm)、特開平4-167211号公報(5μm以下)、特開平4-123307号公報(5μm)、特開平2-14009号公報(1μm前後も可)に示されているように、すでに普通に利用されている設計条件内のものである。(言い換えれば、請求人がこの数値範囲外では本願発明の磁気ヘッドは有効に作動しないことを発見したという類の数値を示すものではない。)
したがって、上記相違点をもって本願発明に進歩性を認めることはできない。
(蛇足ながら、請求項1に関しは、特開昭5-175572号公報、請求項2に関しては、特願平4-208792号(特開昭6-6033号公報、図6参照)にも留意されたい)
V.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-11-25 
結審通知日 1999-12-10 
審決日 1999-12-15 
出願番号 特願平5-239685
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 豊  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 小川 謙
及川 泰嘉
発明の名称 磁気抵抗効果型磁気ヘッド  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ