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審決分類 |
審判 審判種別コード:80 2項進歩性 H01B |
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管理番号 | 1010169 |
審判番号 | 審判1998-13801 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1987-01-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-09-07 |
確定日 | 2000-03-13 |
事件の表示 | 昭和61年特許願第151345号「ケ-ブル充填用コンパウンド」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 1月29日出願公告、特公平 8- 8019 昭和62年 1月 8日出願公開、特開昭62- 2410 発明の数1〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
(手続の経緯・発明の要旨) 本願は、昭和61年6月26日に出願されたものであって、その発明の要旨は、平成11年11月30日付け手続補正書によって補正された明細書の記載よりみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。 「水非混和性無極性有機液体成分を含んで成る、電気および/または光学ケーブルおよび端子板の長手方向封止用充填剤であって、室温で炭化水素液体の溶液中にポリマー系有機増粘剤を含有し、この溶液中に熱分解法シリカを分散させてなり、 炭化水素液体として、流動点が0℃を越えず、20℃における動粘度が2〜600cSt(mm2・s-1)の鉱油を含有し、 有機増粘剤として、190℃における溶融粘度(ブルックフィールド粘度)が30〜70Pasであり、軟化点が90〜160℃であるポリオレフィンを含有し、 ならびに ミクロクリスタリンワックスを含まない、 塑性流れ挙動を示す充填材。(以下、「本願発明」という。)」 (原査定の理由) 原査定の拒絶の理由である特許異議の決定の理由の概要は、本願発明は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 (引用例) 原査定で引用された本出願前頒布された甲第1号証(米国特許第3893839号明細書、以下「引用例1」という。)には、電話ケーブル充填材に関し、 「本発明の目的の1つは、ケーブルの外装に対する機械的電気的損傷の際に、電話ケーブルの中に浸水することを本質的に防止するか、少なくとも最小限とするケーブル充填材を提供することである。」(第3欄15〜20行) 「これらの目的は、概括的に(1)ブライトストックオイルのような高粘度鉱油、(2)ミクロクリスタリン・ワックス、(3)少なくとも他の1つの種類の異なるワックス、(4)低分子量液体ポリブテン、(5)細かく分割されたシリカから成る組成物を提供することにより達成され得る。」(第3欄25〜30行) 「ブライトストックオイルは、高いV.I.(粘度指数)の鉱油であり、前述した一般仕様に合致するものである。即ち、 粘度 98.8℃ 120SUS〜220SUS 粘度 37.8℃ 2000SUS〜3500SUS」(第4欄11〜15行) 「このような組成物はチクソトロピック特性を示すが、これは、例えばポンピングによって同組成物が移動させられ、または、攪拌されたとき、その粘度が低下することである。」(第7欄20〜22行) 「本発明における使用に好適なシリカ粉としてCAB-O-SIL(商標)を挙げることができる。CAB-O-SILは、商業上利用することができる最も純度の高いシリカの1つである。」(第7欄31〜36行) 「CAB-O-SILは、気相プロセスで製造される。1100℃における四塩化シリコンの加水分解により製造される。」(第7欄59〜61行) 「典型的試験データ 粘度(ブルックフィールド)98.8℃ 300cps (ASTM D 2669) ・・・ 粘性/-40℃ クラックは観測されず ・・・」(第11欄40〜52行) とそれぞれ記載されている。 同じく引用された本出願前頒布された甲第3号証(小野木重治著「レオロジー要論」4版、1959年5月20日、槇書店、第38頁、以下「引用例2」という。)には、 「せん断によって、固体としての性質を完全に失うものをチクソトロピーと呼び、その一部を消失し、一部を残留するものをfalse-bodyと呼んで区別している。一方、BurgersおよびScott Blairは、チクソトロピーという語を広く使用する立場をとり、上記のチクソトロピーおよびfalse-bodyに相当する名称として、それぞれチクソトロピー性塑性流体挙動(・・・)およびチクソトロピー性塑性挙動(・・・)を使用している。」(第38頁5〜11行) と記載されている。 (対比・判断) 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された「ブライトストックオイルのような高粘度鉱油」は水非混和性無極性有機液体であるから、両者は、「水非混和性無極性有機液体成分を含んで成る、電気ケーブルの封止用充填剤であって、室温で炭化水素液体の溶液中にポリマー系有機増粘剤を含有し、この溶液中に熱分解法シリカを分散させてなる充填材」である点で一致し、本願発明が、「室温で炭化水素液体」を「流動点が0℃を越えず、20℃における動粘度が2〜600cSt(mm/s-1)の鉱油」と限定し、有機増粘剤を「190℃における溶融粘度(ブルックフィールド粘度)が30〜70Pasであり、軟化点が90〜160℃であるポリオレフィン」と限定するとともに、「ミクロクリスタリンワックスを含まない」点を構成要件としているのに対し、引用例1に記載された発明は、炭化水素液体が「ブライトストックオイルのような高粘度鉱油」であり、有機増粘剤が「低分子量液体ポリブテン」であり、ミクロクリスタリンワックスを必須に含有する点で少なくとも相違する。 上記相違点について検討する。 引用例1には、ブライトストックオイルとして、98.8℃における粘度が120SUS〜220SUS(24〜50cSt)、37.8℃における粘度が2000SUS〜3500SUS(400〜600cSt)という高粘度のものが示されているにすぎず、20℃における粘度は400〜600cStよりも高くなることは明らかであるから、本願発明における「20℃における動粘度が2〜600cSt(mm/s-1)の鉱油」が示唆されているとは認められない。 また、本願発明におけるポリオレフィンは、「軟化点が90〜160℃」であり、90℃未満では「固体」であるのに対して、引用例1には、ポリオレフィンとして「液体」ポリブテンを使用することが記載されているだけで、「液体」ではない「固体」ポリオレフィンを使用することは示唆されていない。 さらに、引用例1に、上記充填材がチクソトロピック特性を示すものであることが記載され、引用例2に、チクソトロピーが塑性流体挙動を意味することが示唆されているとしても、上記のとおり、引用例1には、本願発明の構成要件である特定粘度の鉱油及び特定軟化点の固体ポリオレフィンは何ら示唆されていないから、「塑性流れ挙動を示す充填材」を得るために、本願発明の上記構成要件を採用することを当業者が容易に想到し得たとは認められない。 そして、本件発明は、上記構成要件を具備することにより、電気および/または光学ケーブルおよび端子板の長手方向封止に用いた場合に、汚染物(特に水分)の浸透から保護することができるという明細書記載の格別な作用効果を奏するものである。 (むすび) したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2000-02-17 |
出願番号 | 特願昭61-151345 |
審決分類 |
P
1
80・
121-
WY
(H01B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長 由紀子、辻 徹二、広岡 浩平 |
特許庁審判長 |
松本 悟 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 刑部 俊 |
発明の名称 | ケ-ブル充填用コンパウンド |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 柴田 康夫 |