• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E06B
管理番号 1010353
異議申立番号 異議1998-74982  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-08 
確定日 1999-11-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2758370号「断熱形材」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2758370号の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2758370号に係る出願は、平成6年12月14日の出願であって、平成10年3月13日に特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間である平成11年10月12日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の要旨
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の記載を特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。
「【請求項1】アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」
訂正事項b:特許明細書の段落番号【0005】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側部材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする。」
訂正事項c:特許明細書の段落番号【0017】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、次のように訂正する。
「上記実施例においては、室外側部材9と室内側部材10との間に2本の断熱材11が設けられる場合について示したが、1本の断熱材11をかしめ付ける場合、すなわちかしめ穴12が1つの場合にも本発明を適用でき、また断熱材11を一体成形する場合にも適用できる。また、本発明は、出窓が、辷り出し窓以外に、開閉窓、回転窓等の他の窓を構成する場合にも適用でき、また出窓以外に、開口部構成部材に枠としての断熱形材が固定される他の建具にも適用できる。その他本発明を実施するに当たり、各構成部材の具体的な形状、構造や組合せ等については、種々の変更、付加が可能である。」
III.訂正の適否
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
また訂正事項bおよび訂正事項cは、明瞭でない記載の釈明に該当し、願書に添付された明細書の記載の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
2.独立特許要件
(1)訂正後発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正後発明」という。)は、訂正明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」
(2)引用文献
当審が先の取消理由に引用した特開平4-323486号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
▲1▼屋内側部材3Aと屋外側部材3Bとの間には断熱部材3Cが配設されている。(第3頁左欄第16〜17行)
▲2▼断熱部材3Cが躯体24の室外側の面及び見込み面に対して非平行である。(図5)
▲3▼又、屋外側部材3Bにはフランジ3Bが一体に形成されており、屋外側部材3Bはこのフランジ3bにて躯体24にビス締めされて固定されている。屋内側部材3Aにはポケット3C及びポケット3Cから連続するフランジ3dが一体に形成されており、屋内側部材3Aは、このポケット3Cにて躯体24に固定された屋内造作材25に保持されると共にフランジ3dにて躯体24にビス締めされて固定されている。(第3頁左欄第22〜29行)
同じく先の取消理由に引用した実公昭60-28769号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
▲1▼本考案二重窓用上枠材Aは、外窓上枠1と内窓上枠4とが断熱材7によって連結されているが、その連結の仕方は外窓上枠の後面板1bと、内窓上枠の前面板4aとが対向し、それら各面板の上・下2辺において断熱材7・7によって両上枠が接触することのないよう、換言すれば離隔的に連結せられている。(第2頁左欄第7〜13行)
▲2▼本考案下枠材Bは、上枠材Aにおける符号1を2、符号4を5に読みかえればよい。(第2頁右欄第2〜3行)
▲3▼第2図に示した右の竪枠材Cは、同様に符号1を3に、符号4を6に読みかえればよい。(第2頁右欄第10行〜11行)
同じく先の取消理由に引用した特開平6-146725号公報、特開平6-146736号公報、実願昭60-193537号(実開昭62-101983号)のマイクロフィルム(以下、「周知例」という。)には、断熱形材を構成する室外側部材および室内側部材をアルミ合金製押出型材で構成することがそれぞれ記載されている。
また本件の出願前に頒布された、異議申立人三協アルミニウム工業株式会社が提出した甲第2号証:実願昭60-204471号(実開昭62-110492号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、室外枠4は広幅の面によって開口部構成部材である柱に対して接しており、室内枠5は2つの突条によって開口部構成部材である柱に対して接してなる竪枠12’’が記載されている。(図5)
(3)対比
訂正後発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における、「屋内側部材」、「屋外側部材」、「断熱部材」、「フランジ」および「躯体」が、それぞれの機能に照らし、それぞれ訂正後発明における、「室内側部材」、「室外側部材」、「断熱材」、「広幅の面」および「開口部構成部材」に対応するものであるから、訂正後発明と刊行物1記載の発明とは、「室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」という点で一致し、次の点で両者の構成は相違する。
相違点1:訂正後発明においては、室外側部材と室内側部材がアルミニウム合金製押出形材からなるのに対し、刊行物1記載の発明においては、屋外側部材と屋内側部材が前記構成を有していない点。
相違点2:訂正後発明においては、室内側部材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しているのに対して、刊行物1記載の発明においては、屋内側部材が前記構成を有していない点。
(4)判断
前記相違点1について検討する。
断熱形材を構成する室外側部材および室内側部材をアルミニウム合金製押出形材で構成することは、上記周知例に記載されている。
前記相違点2について検討する。
刊行物2記載の「外窓上枠、外窓下枠および外窓竪枠」、「内窓上枠、内窓下枠および内窓竪枠」、「合成樹脂発泡体」および「建家窓用開口部」が、それぞれの機能に照らし、それぞれ訂正発明の「室外側部材」、「室内側部材」、「断熱材」および「開口部構成部材」に対応するものであるから、刊行物2には、室外側部材と室内側部材の相互の対向部問を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材が記載されている。
また刊行物3には、室内枠4は広幅の面によって開口部構成部材である柱に対して接しており、室内枠5は2つの突条によって開口部構成部材である柱に対して接してなる竪枠12’’が記載されている。
しかし、刊行物2、3および周知例のいずれにも、前記相違点2である「室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有している」という構成(以下、「構成A」という。)に関する記載はなく、前記構成Aを示唆する記載もない。
してみると、刊行物2、3記載の発明および周知例は、訂正後発明と刊行物1記載の発明との前記相違点2である構成Aを充足することを示唆する発明であるとは認められず、刊行物1〜3記載の発明および周知例をいかなる組合せをしても訂正発明の構成に想到できたとは認めることができない。
また訂正後発明は、特に前記構成Aにより明細書記載の効果を奏するものであるから、訂正後発明は、刊行物1〜3および周知例記載の発明とも、あるいは刊行物1〜3記載の発明および周知例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。また、他に訂正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。よって訂正後発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。
3.訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用される特許法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
IV.異議申立について
1.異議申立の理由の概要
異議申立人ワイ ケイ ケイ ア-キテクチュラルプロダクツ 株式会社は、証拠として甲第1、2号証を提出し、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定に違反してなされたものであり、また異議申立人三協アルミニウム工業株式会社は、証拠として甲第1、2号証を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定に違反してなされたものであり、その特許を取り消されるべきものであるとそれぞれ主張している。
2.甲各号証
異議申立人ワイ ケイ ケイ ア-キテクチュラル プロダクツ 株式会社の提出した甲第1号証:特開平4-323486号公報および甲第2号証:実公昭60-28769号公報は、それぞれ取消理由に引用した刊行物1、2と同一の刊行物であり、甲第1、2号証には、上記記III.訂正の適否の2.独立特許要件のところで示したとおりのものが記載されている。
また異議申立人三協アルミニウム工業株式会社の提出した甲第1号証は、取消理由に引用した刊行物1と同一の刊行物であり、また甲第2号証は、上記刊行物3と同一の刊行物であり、甲第1、2号証には、III.訂正の適否の2.独立特許要件のところで示したとおりのものが記載されている。
3.異議申立ての理由についての判断
上記III.2.(4)において示したように、本件訂正後発明は、刊行物1(異議申立人ワイ ケイ ケイ ア-キテクチュラル プロダクツ 株式会社および三協アルミニウム工業株式会社が提出した甲第1号証)、刊行物2(異議申立人ワイ ケイ ケイ ア-キテクチュラル プロダクツ 株式会社が提出した甲第2号証)、刊行物3(異議申立人三協アルミ工業株式会社が提出した甲第2号証)に記載された発明とも、あるいは記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件訂正後発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
断熱形材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部問を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を断熱材により結合してなるサッシ用断熱形材に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は実開昭56-121866号公報に開示された出窓における縦枠の取付け構造を示す横断面図であり、出窓の縦枠aは室外側部材bと室内側部材cとを合成樹脂製等でなる断熱材dにより結合してなり、室外側部材bと室内側部材cとの間に押縁eを介して嵌め殺し窓用障子fを装着した例を示す。室内側部材。は柱gに固定具hにより固定される。iは建物外壁を構成するモルタル、jはコーキング材である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示す公知の出窓においては、室外側部材bにかかる風圧や窓構成部材の荷重等は、断熱材dを介して室内側部材cに加わることになる。このため、アルミニウム合金製の部材b、cに比較して強度の低い合成樹脂製の断熱材dが破損するおそれがあり、また、この外力や荷重に耐える強度を持たなければならないために、断熱材dが不厚いものとならざるを得ないという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、室外側部材と室内側部材とが断熱材により結合されて建物の開口部構成部材に固定される枠材において、断熱材にかかる応力が軽減され、断熱材の破壊のおそれがなく、取付け強度が高く、寿命の長い断熱形材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には、迂り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする。
【0006】
【作用】
本発明においては、上述のように、断熱材の両側の室外側部材と室内側部材が開口部構成部材に双方とも固定されると共に、それぞれの部材に対して間隔を開けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって接してなるので、室外側部材にかかる荷重や外力は開口部構成部材により受けられ、室外側部材にかかる外力や荷重は断熱材にほとんどかからない。
【0007】
【実施倒】
図1は本発明による断熱形材の一実施例を出窓の縦枠について示す横断面図、図2は図1の縦枠を有する出窓の全体構成を示す平面図である。本例の出窓は、図2に示すように、左右の方立2、2間に障子3が固定されて嵌め殺し窓を構成し、左右の方立2と縦枠4との間に縦辷り出し窓を構成する障子5が装着された例について示す。6は出窓を取付ける建物開口部7を構成する柱、8は柱6に固定した額縁である。
【0008】
図1に示すように、縦枠4は、アルミニウム合金製室外側部材9と室内側部材10との間を、合成樹脂製の断熱材11をかしめ付けて結合することにより構成される。室外側部材9には室外側に突出させた取付け部9aを形成し、該取付け部9aの先端に形成した突条9fとこれに間隔を開けて設けた突条9gとを、開口部7の構成部材である柱6の室外側の面6aに当接させ、釘やねじ等の固定具13により固定する。
【0009】
一方、室内側部材10には、室内側に突出した突条10cと、これに対して間隔を開けて設けた取付け部10aとを有し、該取付け部10aを額縁8、すなわち開口部構成部材における見込み面8aに面接触させ、前記突条10cの先端を柱6の室外側の面6aに接触させ、取付け部10aを固定具14により固定する。このように、間隔を有する突条9f、9g、あるいは突条10Cと取付け部10aの広幅の面10rとを柱6や額縁8に接触させ、室外側部材9と室内側部材10の双方を固定具13、14によって固定することにより、室外側部材9や室内側部材10にかかる荷重をこれらの開口部構成部材6、8でそれぞれ受けることができ、断熱材11に依存しない。従って、断熱材11にかかる応力が軽減され、断熱材11の外力や荷重による破損のおそれがなくなる。
【0010】
さらに、本実施例においては、室内側部材10の固定具14による取付け部10aによる固定部より離れた断熱材11近傍の箇所に、断熱材取付け部10dより延長させて突条10cを設け、該突条10cを柱6の室外側の面に当接させることにより、室内側部材10にかかる圧力が突条10cを介して柱6で受けられ、断熱材11にかかる力がさらに軽減される。室内側部材10は固定具14を額縁8の対向面に固定し、離れた箇所において突条10cを室外側の面に当接させ、しかも額縁8のコーナー部を囲むように取付けられるため、取付け強度が大となり、また、固定具14による取付けが室内側から行われるので、取付けが容易となる。また、断熱材11と突条10cと室外側部材9と柱6との間に空隙部21を形成したことにより、該断熱形材を縦枠4に用いた場合には、対流が減少し、断熱性能が向上する。
【0011】
ここで、縦枠4は傾斜方立2に対向するものであって、障子5が柱6の室外側の面に対して垂直ではなく、傾斜しており、断熱材11が柱6の室外側の面および見込み面に対して非平行をなす。前記室内側部材10の前記突条10cを断熱材11の内外方向に対して直角に形成している。
【0012】
前記断熱材11のかしめ付けは、かしめ穴12に断熱材11の端部を入れ、かしめローラによって断熱材11を両側から押圧することによってかしめることにより行うが、かしめ付け強度を上げるために、図3に示すように、かしめ付けの前に、かしめ穴12の入口に凹凸を付ける。すなわちナーリングを施す。この凹凸は、図3に示すように、断熱材11の取付け面側に設置した回転歯15等のナーリング回転体をかしめ穴12に入れ、かしめ穴12を設けた面の反対側の面に受けローラ16を当接させ、回転歯15を回転させ、受けローラ16を従動または駆動させながら室内側部材10となる形材を移動させつつ、ナーリングを施す。
【0013】
このようなナーリングを行うため、前記突条10cを、受けローラ16を当てる手段として兼用できるように、該突条10cを断熱材11の内外方向に対して直角をなすように形成し、その反対側に突出させた障子5との間の気水密材18の取付け片(または気水密材の受け片)10bとを面一に構成し、該取付け片10bもナーリング受け部として兼用できるようにしている。これらのナーリング受け部10b、10cは、室内側部材10に設けた2つのかしめ穴12間の中間を通るかしめ穴12の深さ方向の面19の両側にあり、受けローラ16の当接を可能にするため、これらのナーリング受け部10b、10cは、取付け部10aよりもさらに両側に突出するように設けられる。
【0014】
また、室外側部材9についても、複数の外面9b、9cが角度をなすため、互いに面一をなすナーリング受け部9d、9e(一方のナーリング受け部9dは障子5に取付けた気水密材20の受け片を兼ねている)、面19を跨ぐようにあるいは一部が交差するように形成する。このように構成することにより、通常の角型の断熱形材と同様に、外周面が平らな通常の受けローラ16を用いて、安定した状態でナーリングを行うことができ、安定した品質のナーリングが行える。
【0015】
図4(A)は本発明の他の実施例を示す横断面図であり、本実施例は、室外側部材9と柱6との接触を、広幅の面9hにおける面接触により行い、取付け辺9iを固定具13により固定するようにしたものであり、このように広い面積で断開口部構成部材に接触させることによっても室外側部材9等の安定した支持が行える。また、本実施例は、室内側部材10を柱6および額縁8の見込み面6b、8aに突条10e、10f、10hを当接させ、また、額縁8の先端に面10iを当接させ、固定具14に固定した例を示す。9jは気密材取付け部である。
【0016】
図4(B)の実施例は、非傾斜面に取付ける断熱形材4Aを、傾斜縦枠4に組合わせることにより、断熱形材4Aを傾斜縦枠と非傾斜縦枠とで共用できるようにしたものである。本例の縦枠4は、広い面9hと突条9fとを柱6の室外側面6aに当接させて固定具13により固定し、室内側部材10は突条10c、10hにおいて柱6の室外側面6a、見込み面6bに当接させて固定具14により固定し、非傾斜縦枠4Aは、それぞれ室外側部材9、9Aの係合部9k、9mと、室内側部材10、10Aの係合部10j、10kにおいて係合させて固定具17により相互に固定している。
【0017】
上記実施例においては、室外側部材9と室内側部材10との間に2本の断熱材11が設けられる場合について示したが、1本の断熱材11をかしめ付ける場合、すなわちかしめ穴12が1つの場合にも本発明を適用でき、また断熱材11を一体成形する場合にも適用できる。また、本発明は,出窓が、辷り出し窓以外に、開閉窓、回転窓等の他の窓を構成する場合にも適用でき、また出窓以外に、開口部構成部材に枠としての断熱形材が固定される他の建具にも適用できる。その他本発明を実施するに当り、各構成部材の具体的な形状、構造や組合わせ等については、種々の変更、付加が可能である。
【0018】
【発明の効果】
請求項1によれば、断熱材が開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行をなし、断熱形材を構成する室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接触させたので、室外側部材および室内側部材にかかる荷重や外力は突条や接触面を介して開口部構成部材により受けられ、室外側部材および室内側部材にかかる外力や荷重は断熱材にほとんどかからず、断熱材の破壊のおそれがなく、取付け強度が高くなり、断熱形材の延命化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を出窓の縦枠に適用した一実施例を示す横断面図である。
【図2】本実施例の出窓の全体構成を示す横断面図である。
【図3】図1の実施例の室外側部材におけるナーリング作業状態を示す端面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ本発明の他の実施例を示す横断面図である。
【図5】公知の出窓の縦枠を示す拡大図である。
【符号の説明】
4、4A:縦枠、6:柱、6a:室外側の面、6b、8a:見込み面、8:額縁、9、9A:室外側部材、9a:取付け部、9f、9g、10c、10e、10f、10h:突条、9h、10r:(広幅の)面、10、10A:室内側部材、10a:取付け部、10d:断熱材取付け部、11:断熱材、12:かしめ穴、13、14:固定具、21:空隙部
 
訂正の要旨 本件特許第2758370号の訂正事項は、以下のとおりである。
1.特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の、
「【請求項1】アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の
の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開ロ部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開□部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」を、
「【請求項1】アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開□部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開ロ部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」と訂正する。
2.明りょうでない記載の釈明を目的として、
(1)特許明細書の段落番号【0005】(特許公報第2頁左欄第11〜20行)の、
「【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開ロ部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開ロ部構成部材に対して接してなることを特徴とする。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開ロ部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開ロ部構成部材に対して接してなることを特徴とする。」と訂正する。
(2)特許明細書の段落番号【0017】(特許公報第3頁左欄第39行〜同頁右欄第10行)の、
「上記実施例においては、室外側部材9と室内側部材10との間に2本の断熱材11が設けられる場合について示したが、1本の断熱材11をかしめ付ける場合、すなわちかしめ穴12が1つの場合にも本発明を適用でき、また断熱材11を一体成形する場合にも適用できる。また、本発明は、出窓が、嵌め殺し窓や辷り出し窓以外に、開閉窓、上げ下げ窓、回転窓等、他の窓を構成する場合にも適用でき、また出窓以外に、開口部構成部材に枠としての断熱形材が固定される他の建具にも適用できる。その他本発明を実施するに当り、各構成部材の具体的な形状、構造や組合わせ等については、種々の変更、付加が可能である。」を、
「上記実施例においては、室外側部材9と室内側部材10との間に2本の断熱材11が設けられる場合について示したが、1本の断熱材11をかしめ付ける場合、すなわちかしめ穴12が1つの場合にも本発明を適用でき、また断熱材11を一体成形する場合にも適用できる。また、本発明は、出窓が、辷り出し窓以外に、開閉窓、回転窓等の他の窓を構成する場合にも適用でき、また出窓以外に、開口部構成部材に枠としての断熱形材が固定される他の建具にも適用できる。その他本発明を実施するに当り、各構成部材の具体的な形状.構造や組合わせ等については、種々の変更、付加が可能である。」と訂正する。
異議決定日 1999-11-10 
出願番号 特願平6-333499
審決分類 P 1 651・ 113- YA (E06B)
P 1 651・ 121- YA (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 齋藤 利久
富田 哲雄
登録日 1998-03-13 
登録番号 特許第2758370号(P2758370)
権利者 トステム株式会社
発明の名称 断熱形材  
代理人 高橋 邦彦  
代理人 浜本 忠  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 土井 育郎  
代理人 秋吉 達夫  
代理人 秋吉 達夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ