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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効とする。(申立て全部成立) B22F
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B22F
管理番号 1012016
審判番号 審判1998-35629  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-14 
確定日 2000-01-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第2676570号発明「水アトマイズ金属球状粉末およびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2676570号発明の明細書の請求項第1項ないし第2項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
特許第2676570号(平成3年12月5日出願、平成9年7月25日設定登録。)の請求項1及び請求項2に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】平均粒径25μm以下、充填密度比50〜60%の球状形状を有することを特徴とする水アトマイズ金属球状粉末。(以下「本件請求項1に係る発明」という。)
【請求項2】金属溶湯より水アトマイズにより製造された金属粉末を高速気流により、粉末粒子同士および粉末粒子と衝突体とを高速衝突させることにより、異形状粒子を球状化し、平均粒径25μm以下、充填密度比50〜60%の球状形状とすることを特徴とする水アトマイズ金属球状粉末の製造方法。(以下「本件請求項2に係る発明」という。)」
2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件請求項1及び請求項2に係る発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて、また、本件請求項2に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件請求項1に係る発明については、後述するとおりのことを認めているが、本件請求項2に係る発明については、無効の主張は理由のないものであるから、本件審判の請求は成り立たない旨主張している。
4.甲第1号証ないし甲第4号証
甲第1号証(特開平2-163302号公報)には、
「水アトマイズ法によって得られた粉末は、微粉末ではあるが、粒子形状が不定形であるために、組成物のバインダー量が45容量%以上の多量を添加する必要があり、脱バインダー処理後の成形体の強度が弱く、・・・という問題がある。」(第2頁左上欄第1行〜第7行)、
「本発明は、形状が不定形で平均粒径が50μm以下の金属粉末を機械的球状化処理し、得られた球状化した金属粉末11容量部に対して9容量部以下のバインダーを混合-混練する射出成形粉末冶金用組成物の製造方法である。
本発明において使用する形状が不定形の金属粉末としては、たとえば、水アトマイズ法によって得た金属粉末であって、平均粒径が50μm以下、好ましくは、20μm以下の金属粉末を使用する。しかして、平均粒径を50μm以下と限定したのは、50μmを超えると、金属粉末の焼結活性度が低下し、高密度の焼結体が得られないからである。
機械的球状化処理とは、たとえば、ジェットミル、ピンミル、ハンマーミルなどのような衝撃式粉砕機のような機械的手段によって、形状が不定形の金属粉末を、粉末同志あるいは硬度が高い部材の面に金属粉末を衝突させることによって、不定形の金属粉末を球状化する手段であって、この球状化処理を1回行なうだけでもバインダー量を低減できるが、数回繰返しても粒度分布に変化を及ぼすことがなくバインダー量を低減し得るものである。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第12行)、
「実施例1
水アトマイズ法によって製造された市販のSUS 316 L粉(・・・)を、ピンミルを使用して、1回30分間づつの球状化処理を1〜5回繰返し行なった球状化SUS 316 L粉を調整した。」(第2頁右下欄第12行〜第17行)、
「次に、球状化処理前(比較例に相当する)及び各球状化処理回ごとの金属粉末について、容器中に振動を加えながら金属粉末を充填したときの密度としてタップ密度を求め、球状化処理回数との関係を第2図に示し、球状化処理回数と組成物のバインダー量との関係を第2図に示す。」(第3頁右上欄第5行〜第10行)
「実施例2
ジェットミルを使用して球状化処理を1〜3回行なうようにした以外は、実施例1と同様にして組成部を調製し、焼結体を製造した。・・・ジェットミルによる球状化処理前後の粒度分布を表3に示し、球状化処理前後における粒子形状を走査電子顕微鏡によって撮影した結果を第3図に示し、球状化処理回数に対する金属粉末のタップ密度及びバインダー量との関係を第4図に示す。」(第4頁左上欄第12行〜右上欄第2行)
と記載され、
表3には、原料粉は、粒径20.1μm以下の体積分率が91.1%、粒径20.2〜25.3μmの体積分率が7.8%、粒径25.4〜31.9μmの体積分率が1.1%であること、球状化処理3回後の粉末は、粒径20.1μm以下の体積分率が95.0%、粒径20.2〜25.3μmの体積分率が5.0%であることが示されており、
第2図には、タップ密度について、原料粉は約3.6g/cm3、球状化処理2回目の粉末は約4.5g/cm3、球状化処理3回目の粉末は約4.75g/cm3であることが示されており、
第4図には、タップ密度について、原料粉は約3.6g/cm3、球状化処理2回目の粉末は約4.12g/cm3、球状化処理3回目の粉末は約4.25g/cm3であることが示されている。
甲第2号証(「最新粉流体プロセス技術集成<資料編>」株式会社産業技術センター、昭和49年3月15日発行、第1-18頁)には、
日本ニューマチック工業株式会社の超音速ジェットミルI式について、
「I式ミルは当社の気流粉砕機(P.J.M)の超音速ノズルを単独にとり出して応用した強制衝突式粉砕機で、マッハ2.5以上の気流を発生させる超音速ノズルに原料粉体を連続的に供給し、超音速ノズル内での気流の攪拌による粒子相互間の衝突粉砕を促進すると同時にノズル前方に設置した衝突板(通常はセラミック板あるいは超硬合金)に固気混合流を強制的に衝突させて粉砕を行なうものであります。I式ミルでは粉砕ノズル一本当りの空気量を多くすることにより超音速区間(粒子加速距離)を長くとり粉砕粒子の速度エネルギーを大きくし、さらにすべての粒子を衝突板に超高速で衝突させ粉砕を行なうため、従来の気流粉砕機では粉砕困難である繊維性物質、プラスチックス、金属粉等の粉砕の他、数μ以下の超微粉を得たい場合等広く応用されます。」(左欄下から第1行〜右欄第6行)
と記載され、
図には、衝突板を設けた上記ジェットミルの構造が示されている。
甲第3号証及び甲第3号証の1(甲第3号証の翻訳文)には、MPIF規格46に基づく金属粉のタップ密度試験方法について、甲第4号証には、日本粉末冶金工業規格に基づく金属粉のタップ密度試験方法について記載され、いずれも、粉末を入れた容器を体積減少が起こらなくなるまで振動させるという方法であることが示されている。
5 対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明について
平成11年7月29日に特許庁審判廷で行った口頭審理において、被請求人は、本件請求項1に係る発明が甲第1号証に記載された発明と一致していることを認めている(第1回口頭審理調書参照)。
したがって、本件請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明である。
(2)本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明における「水アトマイズ法によって得た金属粉末」及び「形状が不定形の金属粉末」は、それぞれ、本件請求項2に係る発明における「金属溶湯より水アトマイズにより製造された金属粉末」及び「異形状粒子」に相当し、また、甲第1号証に記載された実施例2を参照すると、球状化処理3回後の粉末は、粒径20.1μm以下の体積分率が95.0%、粒径20.2〜25.3μmの体積分率が5.0%で、平均粒径25μm以下であることは明らかであり、タップ密度(甲第3号証及び甲第4号証の記載からみて、本件請求項2に係る発明における充填密度と差異はないと認められる)は約4.25g/cm3で、充填密度比は約52.9%(SUS 316 Lの真密度を8.03g/cm3として計算)となるから、両者は、「金属溶湯より水アトマイズにより製造された金属粉末を、粉末粒子同士および粉末粒子と部材とを衝突させることにより、異形状粒子を球状化する水アトマイズ金属球状粉末の製造方法。」である点で一致し、球状粉末の平均粒径、充填密度比も重複し(なお、本件請求項2に係る発明における平均粒径、充填密度比の規定は、甲第1号証に記載された発明と一致していることを被請求人が認めている本件請求項1に係る発明における規定と同一である)、本件請求項2に係る発明は、上記部材が衝突体であり、「高速気流により、粉末粒子同士および粉末粒子と衝突体とを高速衝突させること」を構成要件としているのに対して、甲第1号証には、「粉末同志あるいは硬度が高い部材の面に金属粉末を衝突させる」と記載されているだけで、部材が衝突体であること、高速気流により、高速衝突させることが示されていない点で相違する。
上記相違点について検討する。
甲第2号証には、ジェットミルとして、マッハ2.5以上の気流(本件請求項2に係る発明における「高速気流」に相当)を発生させる超高速ノズルに原料粉体を連続的に供給し、超音速ノズル内での気流の攪拌による粒子相互間の衝突粉砕を促進すると同時にノズル前方に設置した衝突板(本件請求項2に係る発明における「衝突体」に相当)に固気混合流を強制的に衝突させて粉砕を行なうものが記載されており、ジェットミルを用いて「高速気流により、粉末粒子同士および粉末粒子と衝突体とを高速衝突させること」は周知技術であると認められる。
ところで、甲第1号証の実施例2に記載されたジェットミルが上記衝突板を有するものかどうかは明らかでないが、甲第1号証には、硬度が高い部材(該部材をピンミル、ハンマーミルなどにおける回転衝撃体や被請求人が主張するジェットミルの器壁等の部材に限定する根拠はない)の面に金属粉末を衝突させて球状化することが示されているのであるから、高速気流を発生させるジュットミルを使用して球状化する場合に、硬度が高い部材として衝突板(衝突体)を採用して、粉末粒子と衝突体とを高速衝突させることは上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものと認める。
また、本件請求項2に係る発明の実施例においては、衝突体を有するジェットミルを使用して、充填密度3.6g/cm3(充填密度比44.8%)のSUS 316を60分間処理した後の充填密度は4.3g/cm3(充填密度比53.5%)であるのに対して、甲第1号証に記載された発明の実施例2においては、ジェットミルを使用して、同程度の充填密度のSUS 316 Lを2回球状化処理(60分)した後の粉末は約4.12g/cm3(充填密度比約51.3%)、3回球状化処理(90分)した後の粉末は約4.25g/cm3(充填密度比約52.9%)であり、本件請求項2に係る発明の実施例の方が充填密度比がやや高いものの、いずれも充填密度比は50〜60%(被請求人は、平成11年8月3日付けの上申書における参考資料5として、ジェットミル 日本ニューマチック製 PJM-450を用いた実験結果を提出しており、これには、4時間処理しても充填密度比が50%に達しないことが示されているが、甲第1号証に記載された発明の実施例2においては、2時間で充填密度比が50%に達しているのであるから、ジェットミルを使用した場合に、機種、処理条件によっては充填密度比は50〜60%となることは明らかである。)であり、充填密度比を高くしたことにより粉末の射出成形において有機バインダーの配合率を低減し得る点でも相違はない。さらに、甲第1号証に記載された発明においても、ピンミルのような回転衝撃体を有する衝撃式粉砕機(実施例1)を用いた場合には、60分間処理した後の充填密度は約4.5g/cm3(充填密度比56.0%)、90分間処理した後の充填密度は約4.75g/cm3(充填密度比59.2%)であり、同程度の処理時間で本件請求項2に係る発明の実施例よりも高い充填密度比を達成しており、ジェットミルを使用して球状化する場合にも、衝突体を採用することにより、短時間で高い充填密度比を達成し得ることは予測可能であるから、本件請求項2に係る発明の効果が甲第1号証に記載された発明に比べて格別に顕著なものであるとは認められない。
なお、被請求人は、平成11年4月23日付けの答弁書において、水アトマイズ金属粉はその製法上の特徴から洩液状の細い先端部が生じており、これを通常の粉砕手段にかけても程良い球形度合の金属粉末は得られにくいが、本件請求項2に係る発明においては、高速気流と衝突体とを併用し、まず、高速気流にのせて水アトマイズ金属粉を移動させ、これを衝突体に衝突させることによって洩液部を有効に除去して、球形度合の適切な粉末を有効に得ることを見出したものである旨の主張をしているが、甲第2号証には、衝突板を有するジェットミルを使用すると、粒子を衝突板に超高速で衝突させ粉砕を行なうため、従来の気流粉砕機では粉砕困難である繊維性物質、金属粉等を粉砕できることが記載されており、上記洩液状の細い先端部も衝突板(衝突体)に衝突させることによって有効に除去し得ることは予測可能なものと認められる。
以上のとおりであるから、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 むすび
したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり(なお、請求人は、特許法第29条第2項の規定に違反する旨の主張をしているが、被請求人は、本件請求項1に係る発明が甲第1号証に記載された発明と一致していることを認めているから、特許法第29条第1項の規定を適用する)、また、本件請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-07-29 
結審通知日 1999-08-17 
審決日 1999-09-30 
出願番号 特願平3-321900
審決分類 P 1 112・ 113- Z (B22F)
P 1 112・ 121- Z (B22F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁志  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 山岸 勝喜
金沢 俊郎
登録日 1997-07-25 
登録番号 特許第2676570号(P2676570)
発明の名称 水アトマイズ金属球状粉末およびその製造法  
代理人 加々美 紀雄  
代理人 上野 登  
代理人 畠山 文夫  
代理人 旭 宏  
代理人 小松 秀岳  
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