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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A23K
管理番号 1012025
審判番号 審判1999-39049  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-10-05 
種別 訂正の審決 
審判請求日 1999-06-22 
確定日 2000-01-14 
事件の表示 特許第2636409号発明「幼動物用顆粒状飼料」に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 特許第2636409号(平成1年3月24日特許出願、平成9年4月25日設定登録)に係る本件審判の請求の要旨は、明細書を審判請求書に添付したとおりに訂正しようとするものであり、当該訂正明細書の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「粒径が1.68mm以上2.38mm未満の範囲にある顆粒が80〜100重量%含まれるように篩分けされた子豚用顆粒状飼料」
2.これに対して、訂正拒絶理由で引用された下記刊行物1には、「豚餌付け用飼料粉末を硬度0.3〜15Kg/cm2のペレット状、クランブル状または顆粒状などの固形状態にしてなる豚餌付け用固形飼料」が記載されている(特許請求の範囲)。
また、刊行物1には、「通常哺乳豚の餌付用飼料は生後5〜20日令から離乳後1〜2週間まで給与されるが、・・・(略)・・・」(第1頁下から6行-同下から5行)、「粉末状態のものは、餌付け時の嗜好性が劣り、かつ飼料のこぼしが多く、経済的にも衛生的にも問題がある。また、それらの問題のない固形飼料については未発達な胃腸をもつ哺乳期の仔豚が消化吸収することは不可能であり、消化不良等の支障が当然起こると予想され、このようなことは到底考えられ得ないことであった。・・・(略)・・・上記事情に鑑み、本発明者は、・・・(略)・・・嗜好性が向上し、増体のうえにもきわめて良好な結果を与える新しい形態の餌付用飼料を発明するに至った」(第1頁第6行-第2頁第2行)、「顆粒の場合は直径0.5〜5mmの粒状で、好ましくは直径1〜3mmであること」(第2頁右上欄最下行-同右上欄第2行)が、実験例1〜4には、生後7〜14,15〜21及び22〜28日令の豚に、フルイJIS8801開目2.83m/m通過、同1.19m/m不通過の顆粒を給与した結果(第1〜4表)が、実施例2には、上記顆粒の製造に際し、粗顆粒を上記粒径のものにそろえることが、記載されている。
同刊行物2は、顆粒状飼料に係るものであり、その実施例7には、8〜14メッシュのものが収率78%で得られ、このものは子豚の人工乳として適していることが記載されている(8メッシュは、2.362mmであり、14メッシュは1.168mmに相当する)。
同刊行物3には、動物用軟質飼料に係るものであり、水分含有量が比較的高くても、顆粒形態を安定に保持し、嗜好性が良好であり、かつ、長時間保蔵することができる顆粒状の動物用飼料を提供することを目的とするものである(特許請求の範囲、第2頁左下欄第1-4行)。また、その実施例2には、顆粒状哺乳期子豚用人工用飼料が記載され、当該顆粒の粒度分布測定結果として、2.33mmを超えた粗大粒3.3%,2.33〜2.00mm区分が32.5重量%,2.00mm〜1.00mm区分が39.3重量%であることが示されている。
さらに、その実施例3には、直径4mm以上の顆粒状飼料が体重25kg以上の子豚の育成用飼料として、嗜好性が高く良好な飼料であることが記載されている。

刊行物1:特開昭52-88178号公報
刊行物2:特開昭53-98299号公報
刊行物3:特開昭57-198054号公報
3.ところで、子豚用顆粒状飼料は、当業者に周知のものと認められ(例えば、上記刊行物1-3参照)、子豚の大きさ等に相応の粒径(範囲)があることも周知であると認められる(例えば、刊行物3には、上述のように、哺乳期子豚と25Kg以上の子豚とは粒径の異なる顆粒状飼料を与えている。)。
そして、上記刊行物1-3に記載されている好ましいとされる粒径、具体例の顆粒の粒径をみると、1〜3mmの範囲、特に2mm前後の粒径を採用しており(請求人の提出した平成11年10月8日付け意見書第4頁の表I参照)、この程度の粒径のものは、当業者が、子豚の成長度、大きさ等から、通常選択する範囲のものと認められる。
4.訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記周知技術と比較して、顆粒の粒径を2mm前後の特定の範囲に限定している点で相違しているが、その数値は、子豚用飼料において、当業者が通常選択する範囲の中から、より好ましい範囲を設定しているにすぎず、このことは、当業者の通常の創作能力を発揮すれば足りることである。また、その含有率を80-100%とする点にも、好ましい粒径のものを多くするのは当然のことであるから、格別の創意工夫を要したとは認められない。
もっとも、請求人は、意見書において、▲1▼刊行物1-3の粒径は、実施例であるか又は好ましい旨記載された数値であるから、たとえ当業者がこれらの刊行物に接したとしても、それら粒径範囲をベースとしてさらに狭い範囲の最適値を設定しようとすることはしないであろうこと、上記意見書第4頁表Iからも明らかなように、訂正明細書請求項1で規定する粒径範囲は、2mm±約0.4mmと非常に狭小の範囲であり、当業者の通常の創作能力の発揮の域を明らかに超えるものであること、▲2▼刊行物1-3を見れば、下方値については、それぞれ1.19、1.168、1.00であり、刊行物1-3に接した当業者は、仮にさらに狭小の最適値を設定を試みたとしても、下方値は、訂正明細書の請求項1で規定する1.68mmよりさらに下方の1〜1.2mm付近で線引きを行うものと考えるであろう旨述べている。
しかしながら、▲1▼については、「好ましい」粒径範囲があるということは、「より好ましい」範囲があっても不思議ではなく、むしろ、当業者が通常経験するところであり、「より好ましい」範囲を検討することは必要に応じ適宜当業者が行うことである。そして、「より好ましい」範囲は、「好ましい」範囲より当然狭くなるのであり、その範囲が非常に狭いかどうかは、その結果にすぎない(刊行物3に、「25kg以上の子豚」に「4mm以上」程度の顆粒を与えることからして、2ヶ月令までの豚の場合の顆粒の最適範囲が狭いことは格別予想外ではない)。▲2▼については、請求人は、「1〜1.2mm付近で線引きを考える」と述べているが、その値は刊行物1-3に示されている数字と同じか、ほぼ同じであり、さらに狭小な最適値を設定しようとしたならば、その下方値は、「1〜1.2mm」ではなく、より大きい値を設定するのが通常である。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
また、訂正明細書の請求項1においては、粒径をそろえるべく「篩分けする」ことを規定しているが、この点には、訂正明細書の請求項1に係る飼料の成分を規定するにあたって、格別の技術的意義は見いだせないが、たとえ、そうでないとしても、好ましいとされる粒径がある以上、当業者が採用を考慮することであり(例えば、刊行物1では、上述のように、粒径をそろえることが記載されている。)、この点に格別の創意工夫を要したとはいえない。
そして、本件訂正に係る請求項1の発明の奏する効果は、格別予想外のものではない。
してみれば、本件訂正に係る請求項1の発明は、周知技術及び刊行物1-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
従って、本件審判請求は、特許法第126条第4項の訂正に関する規定が、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされることから適用される、平成5年改正特許法第126条第3項に規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-11-08 
結審通知日 1999-11-26 
審決日 1999-11-22 
出願番号 特願平1-70598
審決分類 P 1 41・ 856- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 大高 とし子
佐伯 裕子
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2636409号(P2636409)
発明の名称 幼動物用顆粒状飼料  
代理人 高木 千嘉  
代理人 佐藤 辰男  
代理人 西村 公佑  
代理人 新井 信輔  

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