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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1013901 |
審判番号 | 審判1996-18864 |
総通号数 | 11 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-11-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1996-11-07 |
確定日 | 2000-03-10 |
事件の表示 | 平成5年特許願第106560号「高エネルギーイオン注入による半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件(平成6年11月15日出願公開、特開平6-318559)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本件発明 本願は平成5年5月7日の出願であって、その発明の要旨は、平成8年6月17日付け、平成8年11月27日付けおよび平成10年6月26日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものと認める。 「単結晶基板からなるシリコン基板に不純物導入用のイオンを200KeVからMeV領域のエネルギーで加速して所定の量だけ注入し、その後に前記不純物導入用のイオンとは別の希ガスイオンであるクリプトン、もしくはネオンイオンを周波数可変RFQ加速装置を使いmA級イオンビームに加速し前記不純物導入用のイオン注入時のエネルギーとは異なる別のエネルギーで前記シリコン基板に注入して該シリコン基板表面から前記不純物導入用イオン注入深さまでの領域を非晶質化し、かつ、前記クリプトン、もしくはネオンイオンの注入量の合計量の基板深さ方向の分布がシリコン基板表面から不純物注入領域まで一様になるように注入量を制御し、その後シリコン基板を熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。」 2.引用例に記載された発明 当審において拒絶の理由に引用した特開平2-35715号公報(以下、引用例5という。)には、「以上述べたように高エネルギーでイオン注入を行ない半導体基板深部へ不純物層を形成する場合においては低エネルギーでイオン注入を行なった場合と異なり表面側と基板側の両面から固相成長がおこるため欠陥が内部に閉じ込められてしまう。」(第2頁左上欄第6ー11行)、「本発明は上記問題点を解決するため半導体基板中深部に所望不純物のイオン注入を行なう行程と前記イオン注入領域の深さよりも浅く導電型を決定しない原子のイオン注入を行なう行程とを行なった後熱処理を行なうものである。」(第2頁右上欄第12-16行)、「本発明は、前記した構成により所望不純物のイオン注入層より浅い位置に導電型を決定しない原子のイオン注入層を設けることにより基板中のダメージ層と基板表面まで到達させることにより、熱処理による結晶の固層成長による欠陥回復が基板側からのみ行なわれ欠陥の閉じ込めがなされないため、2次欠陥発生が生ずる不純物濃度のしきり値低下を防ぐことが可能となる。」(第2頁右上欄第18行ー同左下欄第5行)、「第1図は本発明の所望不純物層より浅く導電型を決定しない原子のイオン注入を行なった場合の一実施例における半導体装置の製造方法を示す図である。シリコン基板11に所望導電型不純物のイオン注入を行ない、所望不純物層12を得る。前記イオン注入直後シリコン基板表面付近には前記イオン注入によるダメージを受けていない完全結晶相13が残されたままである(第1図a)。しかる後、・・・・注入後ダメージのない層が前記イオン注入層12と、導電型を決定しない原子のイオン注入層14との間に残らないような注入エネルギーで導電型を決定しない原子、例えば、Si,Ge,N,Ar等のイオン注入を行ない新たにイオン注入によるダメージ層14形成する(第1図b)。導電型を決定しない原子のイオン注入はイオン注入によるダメージ層が基板表面に達するまで行なう。従がって複数回のイオン注入を行なっても良いことは言うまでもない。次に熱処理を施し、所望導電型不純物の活性化及びイオン注入によるダメージを固相成長により基板側からのみ回復させる。(第1図c)」(第2頁左下欄第7行ー同右下欄第9行)と記載されている。 したがって引用例5には、完全結晶層から成るシリコン基板に不純物導入用のイオンを高エネルギーで加速して所定の量だけ注入し、その後に前記不純物導入用のイオンとは別の希ガスであるArを前記シリコン基板に注入し、該シリコン基板表面から不純物導入用イオン注入領域の上端までをダメージ層化し、その後シリコン基板を熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法が記載されている。 同じく、伊藤糾次 他3名著「イオンプランテーション理論と応用」、昭晃堂(昭和51年10月25日)発行、P142,167(以下、引用例4という。)には、ネオンイオンをシリコン基板に注入することにより非晶質領域を形成することが記載されている。 同じく、特開平1-137549号公報(以下、引用例7という。)には、周波数可変RFQ加速装置を用いたイオン注入装置が記載されている。 3.対比・判断 本件発明と引用例5記載の発明とを対比すると、引用例5記載の発明の「完全結晶層からなるシリコン基板」は、本件発明の「単結晶基板からなるシリコン基板」に相当するから、両者は、単結晶基板からなるシリコン基板に不純物導入用のイオンを高エネルギーで加速して所定の量だけ注入し、その後前記不純物導入用のイオンとは別の希ガスイオンを、前記シリコン基板に注入して結晶欠陥層化し、その後シリコン基板を熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法の点で一致し、下記の点で相違する。 (1)不純物イオン加速の高エネルギーが、本件発明では200KeVからMeV領域であるのに対し、引用例5記載の発明では具体的数値が不明な点。 (2)希ガスイオンが、本件発明ではクリプトンもしくはネオンイオンであるのに対し、引用例5記載の発明ではアルゴンイオンである点。 (3)イオン注入装置が、本件発明では周波数可変RFQ加速装置であるのに対し、引用例5記載の発明ではどの様な装置なのか不明な点。 (4)イオンビームの電流値が、本件発明ではmA級であるのに対し、引用例5記載の発明では不明な点。 (5)希ガスイオンの注入エネルギーが、本件発明では不純物導入用のイオン注入時のエネルギーと異なっているのに対し、引用例5記載の発明ではそのような限定がない点。 (6)結晶欠陥層化が、本件発明では非晶質化であるのに対し、引用例5記載の発明ではダメージ層化である点。 (7)希ガスイオン注入による結晶欠陥層が、本件発明ではシリコン基板表面から不純物導入用のイオン注入深さまでの領域であるのに対し、引用例5記載の発明ではシリコン基板表面から不純物導入用のイオン注入領域の上端までである点。 (8)本件発明では希ガスイオン注入量の合計量の基板深さ方向の分布がシリコン基板表面から不純物注入領域まで一様になるように制御しているのに対し、引用例5記載の発明ではその様な限定がない点。 そこで、上記各相違点について検討する。 相違点(1)について 高エネルギー不純物イオン注入がMeV領域で行われることは技術常識であり、引用例5記載の発明も高エネルギーで基板深部にイオン注入することが記載されている以上、引用例5記載の発明も当然MeV領域で不純物イオン注入しているものと認める。 相違点(2)について シリコン基板をイオン注入により非晶質化するためにネオンイオンを用いることは引用例4に記載されているから、引用例5のアルゴンイオンにかえて、同じ希ガスイオンである引用例4のネオンイオンを採用することは当業者にとって容易なことである。 相違点(3)について 引用例7には、周波数可変RFQ加速装置を用いたイオン注入装置が記載されているから、引用例5記載の発明においてイオン注入装置として引用例7の周波数可変RFQ加速装置を採用することに、格別の困難性は認められない。 相違点(4)について イオンビームの電流値が大きい程、イオン注入速度が速くなり、基板の処理枚数が増えることは当然のことであるから、実用的な処理枚数を得るためにイオンビームの電流値をmA級とすることは当業者が適宜設定する設計的事項である。 相違点(5)について 引用例5記載の発明でも、不純物のイオン注入層より浅い位置に希ガスイオンを注入しているから、当然、希ガスイオンの注入エネルギーは不純物導入用のイオン注入のエネルギーと異なっているものと認める。 相違点(6)について 本件発明の非晶質化も引用例5記載の発明のダメージ層化も、熱処理による再結晶化で二次欠陥を除去するためにおこなうものであり、かつダメージ層化は非晶質化の意味をも含むものであり、非晶質化に特定したことの意義も認められないから、引用例5記載の発明においてダメージ層化の一つとして非晶質化を選択することは当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない。 相違点(7)について 引用例5記載の発明では希ガスイオン注入による結晶欠陥層が第1図を参照するとシリコン基板表面から不純物導入用イオン注入領域の上端までとなっているが、希ガスイオン注入による結晶欠陥層を正確に不純物導入用イオン注入領域の上端までとすることは実際上難しいことを鑑みれば、引用例5記載の発明においても不純物導入用イオン注入深さ領域までとすることは当然考えられることであるものと認める。 相違点(8)について 希ガスイオン注入量の合計量の基板深さ方向の分布がシリコン基板表面から不純物注入領域まで一様でないと、単結晶部分が不均一に残り、その部分からも熱処理により再結晶化するため、二次欠陥が生じることは当然予測できることであるから、二次欠陥をなくすために、希ガスイオン注入量の合計量の基板深さ方向の分布がシリコン基板表面から不純物注入領域まで、一様になるように制御することは当業者が容易に想到しうることである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、上記引用例4,5,7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-11-25 |
結審通知日 | 2000-12-07 |
審決日 | 1999-12-10 |
出願番号 | 特願平5-106560 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
今野 朗 |
特許庁審判官 |
松田 悠子 小田 裕 |
発明の名称 | 高エネルギーイオン注入による半導体装置の製造方法 |
代理人 | 鵜沼 辰之 |