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審決分類 審判 審判種別コード:80 2項進歩性  H01L
管理番号 1014481
審判番号 審判1998-16288  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-10-22 
確定日 2000-05-15 
事件の表示 平成 4年特許願第103746号「被膜作製装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 3月27日出願公告、特公平 8- 31420、特許請求の範囲に記載された発明の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、昭和56年11月30日に出願された特願昭56-192293号の一部を平成4年3月30日に新たな特許出願としたものであって、平成8年3月27日に出願公告(明細書誤載につき平成8年11月6日に訂正公報が発行された。)されたところ特許異議の申立があり、その特許異議の決定の理由により拒絶査定されたものである。
2.本願発明の要旨
本願発明の要旨は、出願公告後の平成10年11月20日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「それぞれ独立して設けられた加熱手段とガス供給手段とによって基板上に異なる被膜を成膜する複数の反応室と、上記各反応室内に付着した不要反応生成物を除去するために、それぞれ独立して上記各反応室に備えられたエッチング手段と、上記複数の反応室の全てに、それぞれ独立して連結される一つの出入り口と、減圧手段と、基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成されることを特徴とする被膜作製装置。(以下、「本願発明」という。)」
3.原査定の理由
原査定の拒絶の理由となった特許異議の決定に記載した理由の概要は、本願発明は、本願出願前に頒布された甲第1、2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
4.引用例
甲第1号証として引用された、特開昭55-78524号公報(以下、「引用例1」という。)には、「基板上の半導体に異種導電型または同種導電型の半導体層を多層に自動かつ連続的に形成するための装置」(5頁右上欄20行〜5頁左下欄2行)に関し、「この装置は(50)の入口側より基板上に基板(51)を挿着し、チアンバー(64)の開閉にて容器(65)に移動させたものである。この後この基板に対し・・・反応性気体(60)、(61)、(62)をバルブ(58)を開閉して励起室(52)に導入する。この(52)においては高周波誘導エネルギ(53)により反応性気体を化学的に励起、活性化または反応せしめ、その後ホモジナイザー(54)を経て容器(65)に導入させる。この容器内には基板(51)が挿着されており、必要に応じてこれが毎分3〜30回転例えば6回/分で回転している。これは、形成される被膜の均一度を高めるためである。さらにこの基板はヒーター(55)により加熱され、不要の反応生成物およびキャリアガスは真空ポンプ(56)より排気される。以上のようにして系Iにおいて所定の厚さ例えば10Å〜10μの炭化珪素被膜が形成され、かつその場合においてSi1-XCX(0≦X<1)の化学量論比で定められたエネルギギャップを有しかつ、I型、P型またはN型の導電型を示す不純物が被膜形成と同時に基板上にディポジットして被膜中に混入される。系Iの処置が終わった後、この系の反応性気体および飛翔中の反応生成物を除去した。この後系IIに基板、ボートを移動する。この移動においての系I、系IIの容器の圧力は同一でなければならない。この後系IIにおいても系Iと同様にSi1-XCX(0≦X<1)の炭化珪素が設計に従って形成される。この時系IIの基板は系IIIに、系IIIの基板は系IVに、系IVの基板は出口(59)に移動する。」(5頁左下欄3行〜5頁右下欄14行及び第5図)と記載されている。
甲第2号証として引用された、特開昭55-141570号公報(以下、「引用例2」という。)には、「複数個のエッチング室で基板を一枚づつエッチング処理する」(2頁左上欄17〜18行)乾式エッチング装置に関し、具体的には、「第1図は・・・複数個のエッチング室からなるエッチング装置の真空室の構成を示すもので、エッチング室30,40,50,60を直線上に配置した例である。高真空室10は隔離弁12,23,33,43,53,63を有し、弁12は高真空室を10-4Torr以下の高真空に排気するための油拡散ポンプ11の起動・停止時にポンプ11と真空室10を隔離するために用いられる。また弁23は予備室20に配置された基板22を収納した基板ホルダ21を弁24を開閉して大気に取り出しさらに新しい基板ホルダを送入する場合に高真空室10を高真空状態に維持するのに寄与する。一方、弁33,43,53,63はエッチング室30,40,50,60の中に配置された平面電極31,41,51,61に基板32,42,52,62を配置しエッチング処理する際に、高真空室10及び予備室20へエッチング室からのガス流出による汚染を防止するため閉じられるが、エッチング終了後エッチング室に残留するガスを排出後再び弁33,43,53,63は開かれただちに10-4Torr以下の高真空に保持される。・・・なお本実施例における高真空(10-4Torr以下)時における基板の平面電極上への脱着搬送機構は真空吸着方式(大気中でのみ使用可)を除き大旨既存の技術の組合せで使用可能であるが、これら技術とても大気中での動作を前提とし開発されたものであるので本発明への導入には、高真空中で使用できるよう改善するのが望ましい。」(2頁左上欄20行〜2頁左下欄14行)と記載されている。
5.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された「この装置」は、本願発明における「被膜作製装置」に相当し、また、引用例1に記載された「反応性気体(60)、(61)、(62)をバルブ(58)を開閉して励起室(52)に導入する。」、「この(52)においては高周波誘導エネルギ(53)により反応性気体を化学的に励起、活性化または反応せしめ、その後ホモジナイザー(54)を経て容器(65)に導入させる。この容器内には基板(51)が挿着されており、必要に応じてこれが毎分3〜30回転例えば6回/分で回転している。これは、形成される被膜の均一度を高めるためである。」及び「この基板はヒーター(55)により加熱され、」は、それぞれ本願発明における「ガス供給手段」、「基板上に被膜を成膜する反応室」及び「加熱手段」に相当するので、引用例1に記載された「系Iにおいて所定の厚さ例えば10Å〜10μの炭化珪素被膜が形成され、・・・I型、P型またはN型の導電型を示す不純物が被膜形成と同時に基板上にディポジットして被膜中に混入される。系Iの処置が終わった後、この系の反応性気体および飛翔中の反応生成物を除去した。この後系IIに基板、ボートを移動する。この移動においての系I、系IIの容器の圧力は同一でなければならない。この後系IIにおいても系Iと同様にSi1-XCX(0≦X<1)の炭化珪素が設計に従って形成される。この時系IIの基板は系IIIに、系IIIの基板は系IVに・・・移動する。」は、本願発明における「それぞれ独立して設けられた加熱手段とガス供給手段とによって基板上に異なる被膜を成膜する複数の反応室」に相当することになる。そうすると、両者は、「それぞれ独立して設けられた加熱手段とガス供給手段とによって基板上に異なる被膜を成膜する複数の反応室から構成される被膜作製装置」である点で一致し、本願発明においては、各反応室内に付着した不要反応生成物を除去するために、それぞれ独立して各反応室に備えられたエッチング手段を有するのに対して、引用例1に記載された発明においては、そのようなことが記載されていない点(相違点1)、また、本願発明においては、複数の反応室の全てに、それぞれ独立して連結される一つの出入り口と、減圧手段と、基板を移動する移動機構とを備えた共通室を有するのに対して、引用例1に記載された発明においては、そのようなことが記載されていない点(相違点2)で相違する。
上記相違点について検討する。
相違点1について、原審が周知例として引用した特開昭56-110236号公報及び特開昭56ー15044号公報には、それぞれCVD装置やプラズマエッチング装置の反応室内に付着した不要反応生成物を除去するために、その反応室にエッチング手段を設けることが記載されているが、該エッチング手段は、単独の反応室に設けられているにすぎず、本願発明におけるような、基板上に異なる被膜を成膜する際に、複数の反応室の内壁に付着した不要反応生成物を除去するために、それら反応室にそれぞれ独立してエッチング手段を設けることまで開示したものとはいえないし、示唆したものともいえない。また、更に本願発明におけるような、基板上に異なる被膜を成膜する際に、複数の反応室の内壁に付着した不要反応生成物を除去するために、それら反応室にそれぞれ独立してエッチング手段を設けることが本願出願前に周知であるという根拠も見出せないから、引用例1に記載された発明において、基板上に異なる被膜を成膜する際に、複数の反応室の内壁に付着した不要反応生成物を除去するために、それら反応室にそれぞれ独立してエッチング手段を設けることは、当業者といえども容易に想到し得たものとすることはできない。
相違点2については、引用例2には、エッチング室30,40,50,60(本願発明における「複数の反応室」に相当する。)に連結される隔離弁33,43,53,63(本願発明における「それぞれ独立して連結される一つの出入り口」に相当する。)と、油拡散ポンプ11(本願発明における「減圧手段」に相当する。)と、基板の平面電極上への脱着搬送機構(本願発明における「基板を移動する移動機構」に相当する。)とを備えた高真空室10(本願発明における「共通室」に相当する。)が記載されているものの、該共通室は、複数の反応室で基板を一枚づつエッチング処理するために用いられるものであって、本願発明におけるような、複数の反応室で基板上に異なる被膜を形成するために用いられるものではないから、引用例2に記載された発明における共通室と本願発明における共通室とは、その使用目的において全く異なったものであり、更に、引用例2全体の記載をみても、該共通室が本願発明におけるような被膜作製装置に使用されることは、開示も、示唆もされていない。しかも本願明細書によれば、本願発明は、「プラズマ気相法に対し多量生産を可能にする横型反応方式を採用し、さらにそれらに共通室を設け連続的に製造する構造とすることによりバッチ方式と連続方式とを結合させることが可能となった。このため、この思想を基礎とし、2つの反応系、4〜8の反応系等を作ることができ、初めてPCVD装置で大量生産可能な方式を開発することができた。」(本願公告公報【0019】欄)という事実の認識に基いてなされたことは明らかであり、一方、前記引用例1及び2には、該事実は記載されていないし、示唆するところもない。
してみると、前記引用例1及び2に記載された発明から、当業者が本願発明を容易に想到し得たものとすることはできない。
そして、本願発明は、特許請求の範囲に記載された構成を採用することにより、「反応室に残された僅かな反応性気体等が互いに混じり合わないので、品質の高い被膜を作製することができる。」、「温度が一方の反応室から他方の反応室に移ることがなく、反応室の温度を正確に制御することができる。」、「従来より反応室を大型にしても、品質の高い被膜を同時に大量に作製することができる。」及び「異なる反応処理を行う反応室どうしにおける反応性気体等の混合がなく、不純物制御が正確にできると共に、大量の基板を一度に素早く作製することができる。」(本願公告公報【0020】欄)という引用例1及び2に記載された発明からは予測できない効果を奏するものである。
6.むすび
したがって、本願発明は、前記引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-02-16 
出願番号 特願平4-103746
審決分類 P 1 80・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 邦夫山本 一正朽名 一夫加藤 浩一  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 能美 知康
影山 秀一
発明の名称 被膜作製装置  
代理人 加藤 恭介  

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