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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23K
管理番号 1014690
異議申立番号 異議1998-70385  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-10-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-01-29 
確定日 1999-01-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第2636409号「幼動物用顆粒状飼料」の特許について、次のとおり決定する。 
結論 特許第2636409号の特許を取り消す。 
理由 I.手続きの経緯
本件特許2636409号は、平成1年3月24日に出願された特願平1-70598号の特許出願に係り、平成9年4月25日に設定登録がなされたところ、協同飼料株式会社外1名、浅野一良、及び日本農産工業株式会社からそれぞれ特許異議申立がなされたもので、その後、当審において取消理由が通知され、その期間内に意見書と訂正請求書が提出され、さらに当審において訂正拒絶理由の通知がされ、その指定期間内に意見書と訂正請求書の手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.手続補正の可否
当該手続補正は、訂正明細書の「粒径が1.68mm以上3.36mm未満の範囲にあり、かつ硬度が5kg/cm3以下である顆粒の含有量が50重量%以上であることを特徴とする子豚用顆粒状飼料。」を、「粒径が1.68mm以上2.38mm未満の範囲にある顆粒が80〜100重量%含まれるように篩分けされた子豚用顆粒状飼料。」に補正することを含むものである。
当該補正は、請求項1の記載において、目的とする顆粒状飼料中の、粒径が1.68mm以上3.36mm未満の範囲にある顆粒の硬度について「5kg/cm3以下」という要件を取り除く補正であるから、明らかにこの点で訂正明細書の特許請求の範囲を拡張もしくは変更するものであり訂正明細書の要旨を変更するものと認める。
したがって、上記補正は特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用しない。
2.訂正の適否
本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1の記載において、子豚用顆粒状飼料中に50重量%以上含有される「粒径が1.68mm以上3.36mm未満」の範囲にある顆粒の硬度を、「硬度が5kg/cm3以下」のみに限定することを含む訂正を求めるものである。
しかしながら、訂正前の本件特許明細書には顆粒の硬度に関して、顆粒状飼料全体の硬度として、「約5kg/cm3以下の硬度のものが好ましいと記載されているだけで、当該飼料中に50重量%以上含有される特定粒径範囲の顆粒の硬度を「5kg/cm3以下」に設定することについては記載されておらず、そもそも顆粒の硬度が実際に測定されているわけでもない。
そうであるから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲を逸脱する新規な事項である。
なお、顆粒の硬度を「5kg/cm3以下」とすることは、胃腸や歯が未発達な子豚に対して与える飼料が硬ければ食いつきも悪く、消化吸収も悪いであろうことは当業者ならずとも当然に想到できることであって、下記刊行物4に、餌付時の豚用固形飼料の好ましい硬度として、「0.5〜7kg/cm3」の数値範囲が示されていることからみても、子豚用顆粒状飼料に配合する特定粒径範囲の顆粒の硬度を「5kg/cm3以下」に設定する点に格別の困難性は見いだせない。即ち、例え前記訂正事項が新規事項に相当しないとしても、訂正後の請求項1に記載された発明は、下記刊行物1〜6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到できるものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けるものができないものである。

刊行物1:特開昭57-198054号公報
刊行物2:特開昭53-98299号公報
刊行物3:特開昭61-152248号公報
刊行物4:特開昭52-88178号公報
刊行物5:全国農業協同組合連合会資料部「ミニペレの特徴と使い方」(昭和59年9月、第1版発行)第1〜4頁
刊行物6:特開昭63-173545号公報
3.したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項の訂正に関する規定が、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされることから適用される、平成5年特許法第126条第1項ただし書きの規定する要件を満たしていないため、当該訂正は認められない。
III.本件特許に係る発明について
本件特許に係る発明は、前記訂正が認められないので、特許明細書の請求項1に記載された事項により特定される下記の通りのものである。
「【請求項1】粒径が1.68mm以上3.36mm未満の範囲にある顆粒の含有量が50重量%以上であることを特徴とする幼動物用顆粒状飼料。」
これに対して、当審の前記取消理由において引用した前記刊行物1には、幼弱動物飼育に適し、且つ長期間品質を安定に保持することのできる、嗜好性の高い顆粒状動物用飼料が記載されており、実施例2として2.33mmを超えた粗大粒3.3重量%,2.33〜2.00mm区分が32.5重量%,2.00〜1.00mm区分が39.3重量%(即ち2.33〜1.00mmの範囲の粒径の顆粒含有量が71.8重量%)の顆粒状哺乳期子豚用人工飼料が例示されている。
また、同刊行物2には、実施例2として6〜8メッシュ36.9%、8〜14メッシュ34.6%の粒度分布(即ち、粒径1.168〜3.327mmが71.5%)を有する顆粒状飼料が記載されており、実施例6及び7の記載からみて、当該飼料を授乳中のラット、子豚等幼動物用に用いることが示唆されているといえる。
さらに、同刊行物3及び4には豚幼畜用固形飼料の好ましい直径が1〜3mmであることが、刊行物5には子豚用の嗜好性に優れた造粒人工乳「ミニペレ」の直径が2mmであることがそれぞれ記載されている。
ここで、本件請求項1に記載される「幼動物」のうちには、牛、馬などの大きな動物と、ラット、マウスなどの小動物が含まれ、且つ生まれて間もない動物と、成長直前の動物が包含されており、極めて幅広い広範な動物が対象となっている。
そもそも各種動物が好む飼料の粒径は、動物ごとに、また成長と共に異なると考えられるから、「幼動物」用顆粒状飼料の粒径は、対象となる幼動物本来の大きさと成長度にあわせて当業者が適宜選択する事柄にすぎないものであり、上記刊行物1〜5の記載からみても請求項1に記載される「粒径が1.68mm以上3.36未満の範囲内にある顆粒の含有量が50重量%以上」という数値範囲は通常の幼動物用顆粒状飼料が有している粒径の数値範囲を逸脱するものではない。
そして、本件特許明細書の記載を検討しても、広範な全ての「幼動物」に対して請求項1に記載される数値範囲において顕著な効果を奏するということはできない。
してみれば、本件請求項1に係る発明は上記刊行物1〜5に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
IV.結語
以上のとおりであるから、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願についてされたものと認める。
よって、本件発明についての特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116条)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-11-19 
出願番号 特願平1-70598
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A23K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 佐伯 裕子
大高 とし子
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2636409号(P2636409)
権利者 日清製粉株式会社
発明の名称 幼動物用顆粒状飼料  
代理人 藤野 清也  
代理人 木戸 伝一郎  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
代理人 富田 幸春  
代理人 木戸 一彦  

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