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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特29条の2  C08L
管理番号 1014799
異議申立番号 異議1997-73896  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-08-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-08-19 
確定日 2000-04-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2582275号「シリコーンゲル組成物並びにこれを含有する化粧料」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2582275号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2582275号は、昭和63年1月30日に出願され(優先権主張 昭和62年10月15日 日本国)、平成8年11月21日にその特許の設定登録がなされ、その後に、特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知に対し、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。
2.本件訂正請求について
(1)訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるもので、その具体的内容は以下のとおりである。
[1]特許請求の範囲の請求項1における、「(a)(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」を「(a)(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有し、かつ、ケイ素原子に結合した水素原子の量が、分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合1〜20モル%、環状のものの場合1〜50モル%であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に訂正する。
[2]明細書第7頁7〜10行(特許公報4欄22〜25行)の、「すなわち本発明は、(a)(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」を「すなわち本発明は、(a)(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有し、かつ、ケイ素原子に結合した水素原子の量が、分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合1〜20モル%、環状のものの場合1〜50モル%であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に訂正する。
(2)訂正請求の可否
上記[1]の訂正は、特許請求の範囲の請求項
1において、オルガノポリシロキサン重合物を構成するオルガノハイドロジェンポリシロキサンをケイ素原子に結合した水素原子の量において限定するものであり、特許明細書第9頁3〜12行(特許公報5欄2〜9行)に「オルガノハイドロジェンポリシロキサンに於けるケイ素原子に結合した水素原子・・・の量は分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合、通常1〜20モル%、環状のものの場合1〜50モル%であることが望ましく・・・」と記載されているから、当該訂正は訂正前の明細書に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
上記[2]の訂正は、上記の特許請求の範囲の訂正に伴って生じる明細書の明りょうでない記載の釈明を目的とするものと解され、上記[1]の訂正と同様に訂正前の明細書に記載された事項の範囲内のものである。
そして、いずれの訂正も実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではなく、しかも後記するように、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができない発明とも認められない。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項第1号および第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項から第4項の規定を満たすものであり、本件訂正は適法なものと認めることができる。
3.本件発明の認定
訂正された明細書に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1および2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】(a)(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有し、かつ、ケイ素原子に結合した水素原子の量が、分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合1〜20モル%、環状のものの場合1〜50モル%であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと
(ロ)1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンとを付加反応させたオルガノポリシロキサン重合物と、
(b)50cs以下の低粘度シリコーン油と
からなるシリコーンゲル組成物。
【請求項2】請求項1記載のシリコーンゲル組成物を含有する化粧料。」
4.特許異議申立について
(1)特許異議申立理由の概要
特許異議申立人西村干夫は、甲第1号証ないし甲第3号証を提示し、本件請求項1および2に係わる発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号および同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに、本件請求項1に係わる発明は、先願に係わる甲第2号証に記載された発明と同一であるから、同法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は取り消されるべきである旨を主張している。
(2)甲各号証の記載事項(本件発明との関連事項を摘記)
甲第1号証(特開昭61-194009号公報)には、「オルガノポリシロキサン硬化物粉体を含有してなることを特徴とするメークアップ化粧料。」(特許請求の範囲)、「両末端ジメチルビニルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン・・・両末端トリメチルシリル基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン・・・および・・・塩化白金酸イソプロパノール溶液を均一に混合し・・・硬化させた。・・・得られたオルガノポリシロキサン硬化物粉体・・・次にこのオルガノポリシロキサン硬化物粉体を使用して、第1表に示すような組成で油性アイライナーを製造した。」(第3頁左上欄〜右上欄)と記載され、その第1表(第4頁左上欄)にはデカメチルシクロペンタシロキサンや両末端トリメチルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン[粘度2センチストークス(25℃)]が油性アイライナーに配合されることが示されている。
甲第2号証(先願に係わる特願昭62-239747号の願書に最初に添付した明細書;特開昭64-81856号公報参照)には、「・・・シリコーン油含有シリコーン粉粒状物」(特許請求の範囲)、「シリコーン油の分子量は液状であれば特に限定されないが25℃における粘度が100〜10000センチストークスの範囲内にあるものが好ましく・・・シリコーン粉粒状物を形成するシリコーンとしては・・・ケイ素原子結合ビニル基を有するジオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを白金系化合物触媒の存在下で付加反応させ硬化させてなる付加反応硬化型シリコーンゴム」(上記公報第2頁左下欄〜右下欄)と記載されている。
甲第3号証(中島功外1名編著「プラスチック材料講座[9]けい素樹脂」日刊工業新聞社 昭和45年4月20日 24〜28頁、47〜51頁)には、「メチルシリコーンオイル・・・25℃における粘度はそれぞれ0.65,・・・2.07センチストークスである)」(第49頁)と記載されている。
5.特許異議申立てについての当審の判断
(1)本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるか否か
上記の摘記事項からして、甲第1号証に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)は、「(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(ロ)1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンとを付加反応させたオルガノポリシロキサン硬化物」に両末端トリメチルシリル基封鎖ジメチルポリシロキサンなどの低粘度シリコーン油が配合された化粧料であるから、本件請求項1に記載された発明(以下、「本件発明1」という。)と引用発明1とを対比すると、両発明は、「(a)(イ)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(ロ)1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンとを付加反応させたオルガノポリシロキサン重合物と、(b)50cs以下の低粘度シリコーン油とからなるシリコーンゲル組成物。」である点で一致する。
しかし、本件発明1が「ケイ素原子に結合した水素原子の量が、分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合1〜20モル%、環状のものの場合1〜50モル%であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン」と規定するのに対して、引用発明1はこの規定がなされていない点において、両発明は相違している。
そして、この相違点である規定により、本件発明1は、明細書に記載され特に実施例により明らかにされているところの、組成物への低粘度シリコーン油の混和性が良好で構造粘性も大きく、組成物の経時安定性に優れるという、格別に顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は引用発明1と相違し、本件発明1が甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
本件請求項2の発明は、本件発明1の組成物を主たる構成とする化粧料であるから、本件発明1についての上述の理由と同じ理由により、甲第1号証に記載の発明とは異なるものである。
よって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易になしえたものであるか否か
本件発明1と甲第1号証に記載の発明(引用発明1)とは、上述のとおり、引用発明1において「ケイ素原子に結合した水素原子の量が、分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合1〜20モル%、環状のものの場合1〜50モル%であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン」と規定されていない点で相違している。
そして、上述のとおり、本件発明1はこの点を含む前記認定の構成を採用することにより、明細書記載の格別に優れた効果を奏すものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証の記載の発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるということはできない。
更に、本件請求項2の発明は、上述のとおり、本件発明1の組成物を主たる構成とする化粧料であるから、本件発明1についての理由と同じ理由により、甲第1号証の記載の発明に基づいて当業者が容易になしえたものであるということはできない。
よって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になしえた発明ではない。
(3)本件特許発明は、先願に係わる甲第2号証に記載された発明と同一のものであるか否か
上記の摘記事項からして、甲第2号証に記載された先願に係わる発明(以下、「先願発明」という。)は、「ケイ素原子結合ビニル基を有するジオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを白金系化合物触媒の存在下で付加反応させ硬化させてなる付加反応硬化物に、シリコーン油を含有せしめたもの」であるから、本件発明1と先願発明とを対比すると、両発明は、「(a)(イ)ケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(ロ)ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとを付加反応させたオルガノポリシロキサン重合物と、(b)シリコーン油とからなるシリコーンゲル組成物。」である点で一致する。
しかし、本件発明1が「ケイ素原子に結合した水素原子の量が、分子構造が直鎖状、分岐状のものの場合1〜20モル%、環状のものの場合1〜50%モルであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン」と規定し、さらに、「50cs以下の低粘度シリコーン油」と規定するのに対して、先願発明はこれらの規定がなされていない点において、両発明は相違している。
上記の摘記事項から、先願明細書には、「シリコーン油の分子量は液状であれば特に限定されないが25℃における粘度が100〜10000センチストークスの範囲内にあるものが好ましく・・・」と記載され、先願発明は、むしろ「50cs以下の低粘度シリコーン油」の使用を排除しているといえる。なお、甲第3号証は、上記の摘記事項のとおり、低粘度シリコーン油が一般に汎用されていることを示すものであるが、先願発明が本件発明のような低粘度シリコーン油を使用することを示すものではない。
したがって、本件発明1は、これらの相違点において先願発明と相違し、本件発明1が甲第2号証の先願に係わる発明と同一であるとはいえない。
よって、本件特許発明は、先願に係わる甲第2号証に記載された発明と同一のものではない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項および同法第29条の2第1項の規定に違反して特許されたものではなく、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2000-04-04 
出願番号 特願昭63-20036
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08L)
P 1 651・ 113- YA (C08L)
P 1 651・ 16- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷口 浩行宮坂 初男  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 小島 隆
柿崎 良男
登録日 1996-11-21 
登録番号 特許第2582275号(P2582275)
権利者 株式会社コーセー
発明の名称 シリコーンゲル組成物並びにこれを含有する化粧料  

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