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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1016347
異議申立番号 異議1997-74640  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-11-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-09-26 
確定日 2000-04-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2602085号「ガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウム基浄化剤並びにガス及び廃ガスの浄化方法」の請求項1乃至17に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2602085号の請求項1乃至13に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許2602085号は、昭和63年5月18日(優先日1987年5月18日 ドイツ(DE))に特許出願され、平成9年1月29日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、その後吉沢石灰工業株式会社、長谷川和音、奥多摩工業株式会社及び奥田一夫より本件請求項1乃至17に係る発明について特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成10年9月3日に訂正請求がなされたが、この訂正請求に対し2回の訂正拒絶理由通知がなされ、それぞれ平成11年12月27日付け及び平成12年3月21日付けで手続補正がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求書の補正の適否について
この補正は、特許請求の範囲の減縮とその減縮に伴う明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とするものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(2)訂正事項
特許権者が求めている訂正事項は、平成11年12月27日付け及び平成12年3月21日付け手続補正書によって補正された全文訂正明細書のとおり、すなわち次の(i)及び(ii)のとおりである。
(i)「特許請求の範囲」の欄
特許請求の範囲の減縮と明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、次のとおり訂正請求されている。
(イ)「【請求項1】ガスおよび廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウムの基浄化剤において、消化前または消化中、消化に必要な水と共に、あるいは消化後、水酸化カルシウムの反応性を高める物質ならびに水銀、ダイオキシン、ヘキサクロロベンゾールおよびポリ縮合芳香族炭化水素の少なくとも1つに結合する物質として、活性炭及びかつ炭-平炉コークスから選ばれる少なくとも1つの表面活性物質を微細分散状態で添加することからなるプロセスにより製造されたことを特徴とする反応性水酸化カルシウム基浄化剤。
【請求項2】酸性汚染物質と結合するために、反応性を高める物質として、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ及び/又は炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリをさらに添加したことを特徴とする請求項1記載の浄化剤。
【請求項3】高温下に水和物の水の一部又は全量を放出する、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウム等の水和物形成性化合物を、水酸化カルシウムの反応性を高める物質として添加し、水和物を含有するCa(OH)2は廃ガスの浄化に使用する前に、水和物の水の全量又は一部を放出させるための熱処理に必要に応じて付したことを特徴とする請求項1又は2記載の浄化剤。
【請求項4】それ自身50〜450℃の温度範囲において脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)-及び/又は(III)‐塩及び/又はアルミニウム塩等の化合物を、添加し、脱水は、全体としてか又は部分的に、廃ガス浄化のために使用する前に熱処理して行なったことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項5】廃ガスから水銀を分離するために、硫化水素、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、トリメルカプト‐s‐トリアジン等の水銀と結合する物質をさらに添加したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項6】酸化剤、還元剤、触媒、中和作用物質及び重金属結合性物質の1種以上を添加したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項7】還元作用及び/又は酸化作用をする、亜鉛、錫、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、マンガン、ニッケル及び/又はコバルト等の重金属を消化水に添加し、金属含有水酸化カルシウムに、必要に応じて、酸化又は還元処理を施したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項8】ガス又は廃ガスからの酸性汚染物質、重金属、窒素酸化物、一酸化炭素及び有機物質の1種以上の分離のため、請求項1〜7のいずれかに記載の浄化剤を使用することを特徴とするガス浄化方法。
【請求項9】バナジウム、タングステン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト及びチタンの各化合物から選択される1種以上の触媒作用物質及び/又は硫化ナトリウム、メルカプタン及びトリメルカプト-s-トリアジンから選択される1種以上の汚染物質結合性物質を水銀との結合のため前記活性炭又はかつ炭‐平炉コークスに施したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項10】前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスを生石灰に添加した後に消化工程を実施したことを特徴とする請求項1〜7、9のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項11】前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスを水酸化カルシウムに添加し、微細分散させたことを特徴とする請求項1〜7、9のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項12】塩化水素、弗化水素、二酸化硫黄、青酸等の酸性作用ガス、窒素酸化物、炭化水素、塩素化炭化水素、有機化合物及び、水銀、砒素、アンチモン、カドミウム及びタリウム等の揮発性金属が除かれるようにガス及び廃ガスを浄化する方法において、請求項1〜7及び9〜11のいずれかに記載された浄化剤を、ガス又は廃ガスに添加し、20℃〜1200℃の温度範囲において、浄化を実施し、固形物の分離を粉塵分離装置において行うことを特徴とする浄化方法。
【請求項13】前記浄化剤の定置層又は移動層を経て、浄化すべきガス又は廃ガスを導くことを特徴とする請求項12に記載の浄化方法。」
(ロ)請求項14乃至17を削除する。
(ii)「発明の詳細な説明」の欄
特許請求の範囲の滅縮に伴う明りょうでない記載の釈明と誤記の訂正を目的として、次のとおりに訂正請求されている。
(イ)特許明細書(特許公報第5欄第44行と第45行)に次の事項を挿入する。
「水酸化カルシウムの反応性を高める物質としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ、高温下に水和物の水の一部又は全量を放出する、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の水和物形成性化合物、50〜450℃の温度範囲において、脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)または(III)-塩、特に塩化物、あるいはアルミニウム塩等が挙げられる。上記したアルカリ化合物は、消化水に添加され、消化工程の間に生成する水酸化カルシウムの粒子中に入り込む。その際、水酸化カルシウムとの追加の反応が起こりうる。これらアルカリ化合物は、特に強塩基性に作用することによって優先的に酸性汚染物質と結合する。水和物含有水酸化カルシウムを熱処理して、水和物の全部又は一部を放出させると、水酸化カルシウムの表面を所望のように変更できる。また、水酸化カルシウムの分子中に水和物含有化合物が存在すると、水酸化カルシウムの反応性がはっきりと向上する。脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)または(III)-塩、特に塩化物、あるいはアルミニウム塩等の完全な、又は部分的な脱水により、水酸化カルシウムの活性の表面は、はっきりと増大し、反応性が向上する。」
(ロ)「消化全」(第5欄第29行及び第30行)を「消化前」と、「Ca(OH)2」(第5欄第47行)を「Ca(OH)2は」と、「SO2」(第6欄第44行)を「SO2に」と、「廃ガス浄化自身おいて」(第7欄第38行)を「廃ガス浄化自身において」と、「Ca(OH)2」(第10欄第27行)を「Ca(OH)2を」と、「廃ガス粒」(第10欄第37行及び第38行)を「廃ガス流」と、「物理適性質」(第10欄第43行)を「物理的性質」と、それぞれ訂正する。
(ハ)[実施例](第11欄第38行)を[実験例]と、第11欄第39行、第12欄第13行及び第27行の「実施例1」を「実験例1」と、「実施例2」(第12欄第1行)を「実験例2」と、「実施例3」(第12欄第15行)を「実験例3」と、「実施例4」(第12欄第29行)を「実験例4」と、「実施例5」(第12欄第41行)を「実験例5」と、「実施例6」(第13欄第6行)を「実験例6」と、それぞれ訂正する。
(ニ)特許明細書(特許公報第14欄第7行以下)に次の事項を挿入する。
「実験例1は、CaOを消化して得られる水酸化カルシウムによるHClの吸収を示す。実験例2は、塩化カルシウムを添加した水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムは、実験例1で得られる水酸化カルシウムよりもHClの吸収が改善されることを示す。実験例3は、FeCl3を添加した水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムのHCl吸収能がさらに改善されることを示す。実験例4は、活性炭を懸濁させた水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムは、ガス中に含まれるHgCl2の76.5%を吸収することを示す。実験例5は、鉄(III)-硫酸塩×7H2Oと鉄(III)-塩化物×6H2Oによる消化の抑制と加速を示す。実験例6は、硫酸アルミニウムに鉄(III)- 塩化物×6H2Oを添加すると生石灰の消化時間が短縮されることを示す。以上、実験例1、2、3及び4の結果から、塩化カルシウム、FeCl3等の水酸化カルシウムの反応性を高める物質に表面活性物質である活性炭を組み合わせるとガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウムの基浄化剤が得られることが明らかである。」
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(2)(i)(イ)の請求項1の訂正は、「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」を必須成分とすると共に、表面活性物質が結合する汚染物質を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、他の請求項の訂正も、請求項の減縮(削除)や明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正に該当するものである。
また、上記(2)(ii)の訂正事項についても、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明や誤記の訂正に該当するものであるから、これら訂正事項は、いずれも特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであり新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4)独立特許要件の判断
(本件訂正発明)
本件訂正明細書の請求項1乃至13に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1乃至13」という)は、平成11年12月27日付け及び平成12年3月21日付け手続補正書で補正された訂正明細書の上記(2)(i)(イ)に示す請求項1乃至13に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(引用刊行物)
当審が取消理由通知及び訂正拒絶理由通知において引用した刊行物1乃至6には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:特開昭51-136574号公報
(イ)「1.ガスを固形の収着剤と接触させ且つ収着後に再び分離する形式の、特に排ガス、煙道ガス及び有効ガスから有害物質を除去するための、ガス浄化法において、収着剤として有害物質と反応するダスト状の物質を使用し、これをガス流内へ入れ、ガス流と一緒にベンチュリー帯域内を通過させ且つガスから分離することを特徴とするガス浄化法。」(第1頁左欄)
(ロ)「7.収着剤としてダスト状の反応性のアルカリ金属及び(又は)アルカリ土類金属の化合物を使用する特許請求の範囲第6項記載の方法
8.収着剤として消石灰及び(又は)炭酸カルシウム特にドロマイト粉を使用する特許請求の範囲第7項記載の方法
・・・
12.収着剤がダスト状の活性炭を含んでいる特許請求の範囲第11項記載の方法」(第1頁右欄乃至第2頁左欄)
(ハ)「収着剤としてはダスト状の反応性のアルカリ金属及び(又は)アルカリ土類金属の化合物を使用することができる。殊に適しているのはダスト状の消石灰及び(又は)炭酸カルシウムであって、炭酸カルシウムはドロマイト粉の形であるのが有利である。この収着剤により二酸化硫黄を殆んど完全に、硫化水素及び窒素酸化物を極めて十分に被浄化ガスから除去することができる。」(第4頁上段左欄)
(ニ)「上記の収着剤はそれぞれ単独にか又は混合して使用することができる。」(第4頁上段右欄)
(ホ)「これらの供給管は処理帯域内へ収着剤を供給するために役立ち且つ・・・これらの噴射ノズルを通って収着剤はガス流内へ入る。収着剤は圧力密の貯槽24〜29内にあり、」(第5頁下段左欄)
(ヘ)「収着剤として市販の消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)2)が使用された。」(第6頁下段右欄)
引用例2:特開昭54-86488号公報
(イ)「まず炭酸カリウムを水に投入し、溶解させる。この時炭酸カリウムは従来の配合比で完全に溶解する。また炭酸カリウムが水に溶解する時、炭酸カリウムは水和熱を発生して発熱するため、常温まで冷却放置する。次に水酸化カルシウムとセメント材と粉末活性炭とを混合するとともに、この混合物と前記溶解液とを捏和機により捏和する。次に・・・押し出し造粒し、次いでこの造粒物の乾燥を行ない、所望の製品を得る。」(第2頁上段)
(ロ)「本発明は・・・窒素酸化物を除去するガス浄化用組成物、・・・の製造法に関するもので、・・・工業的に製造するためのより効率的な製造法を提供しようとするものである。」(第1頁左欄)
引用例3:欧州特許公開第208490号公報
(イ)「この発明は、水銀蒸気と有毒なポリクロロジベンゾダイオキシン(PCDD)及びポリクロロジベンゾフラン(PCDF)とを熱煙道ガス流から酸性成分の除去と同時に、効率的に除去するための新規な方法であり、噴霧吸収法で噴霧乾燥さるべきアルカリ性原料懸濁液中に比較的少ない量の活性炭を添加して、水銀、PCDD及びPCDFを除去する方法の能力を高めることを目的としたものである。」(第4頁及び第5頁)
(ロ)「噴霧される液体中にフライアッシュを加え、フライアッシュの吸収能力を利用して活性炭の必要量を減じうること、及びケイ酸塩のような他の吸収剤を噴霧すべき液体に加えて活性炭の必要量を減じうる。」(第7頁)
(ハ)「この噴霧吸収法で形成され、典型的には亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム及び活性炭とおそらくフライアッシュからなる細粒状物質は、この細粒状物質と煙道ガスとの延長された接触を可能にするバッグハウス中で煙道ガスから分離するのが好ましい。」(第7頁)
(二)「活性炭を加えた消石灰の水性懸濁液又は炭酸ナトリウムの水溶液を噴霧機の供給原料として用い、煙道ガスをこの噴霧機に通して処理し、水銀やPCDDやPCDFの含有量を低下させた実験結果が示されている。」(第8頁乃至第11頁)
引用例4:特開昭61-183119号公報
(イ)「微細塊状の、または破砕された、軽度に焼成された石灰を、水と反応を遅延せしめる有機溶剤とからなる消和液体に強力かつ均一に混合することにより上記石灰を消和することによって、乾燥水酸化カルシウムを製造する方法において、水30ないし50容量部および有機溶剤50ないし70容量部よりなる消和液体と石灰との混合を・・・45℃以下の温度において行ない・・・上記乾燥水酸化カルシウムの製造方法」(第1頁)
(ロ)「本発明の解決すべき課題は、・・・著しい粗粒の形成なしに大規模にも使用され、そしてその際特に大きな比表面積を有する水酸化カルシウムが生ずるように調整することにある。」(第3頁上段右欄)
(ハ)「更に、消和水に有機溶剤を添加することによって消和過程の速度を遅延させうることが知られている。特に好適なものは、メタノール、エタノール、・・・のようなアルコール、ならびにケトン、エーテルおよびアルデヒドである。」(第3頁上段右欄)
(ニ)「脱ガス工程においては、仕上げられた水酸化カルシウムから付着している溶剤が真空および/またはパージガスを用いることによって除去される。冷却器(7)において水酸化カルシウムを冷却した後、でき上った生成物は、貯蔵サイロ(8)において貯蔵される。」(第4頁上段右欄乃至下段左欄)
引用例5:特開昭55-104633号公報
(イ)「他の成分のほかにHClおよび場合によりSO2を含有する、とくにごみ焼却装置から発生する約80℃〜500℃、特に80℃〜300℃の高温燃焼ガスから乾燥状態でHClを吸着剤に吸着させて分離する・・・方法において、アルカリ金属、アルカリ士類金属または重金属元素特に、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄および、銅から選ばれた1種またはそれ以上の元素の酸化物または水酸化物を添加した多孔質吸着剤、とくに、活性炭であって、かつ、上記金属元素の塩の水溶液を含浸させ、ついで乾燥し・・・得られた吸着剤を使用すること・・・を特徴とする、燃焼ガス中の塩化水素の分離方法」(第1頁左欄)
(ロ)「塩化水素により塩化物が生成され、この塩化物が吸着剤に結合状態で固着することにより、添加化合物により塩化水素の分離が促進される。同時に発生した水または水蒸気は吸着除去され、吸着剤から分離される。このような反応の一例を示せば次の通りである:Ca(OH)2 +HCl→CaCl2+2H2O
・・・さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属または重金属元素の上記の酸化物または水酸化物のうち、特定の添加化合物がHClの分離にとくに効果的な機能を有することが認められた。かかる添加化合物として下記のものを挙げることができる:Ca(OH)2、MgO、NaOH、MnO、Mn2O3、MnO4、Fe2O3、CuO」(第3頁上段右欄乃至下段左欄)
引用例6:特開昭50-87961号公報
(イ)「酸性媒塵を含有する排ガスを排出する燃焼機構の排ガス出口にアルカリ又はアルカリ土類の金属塩を主成分とする粉末を供給し、排ガス中の酸性煤塵を該粉末に吸着させる様にしたことを特徴とする排ガスの処理法」(第1頁左欄)
(ロ)「本発明で使用することができるアルカリ又はアルカリ土類の金属塩を主成分とする粉末としては酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、過酸化バリウム等の酸化物若しくは過酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、・・・の一種又は二種以上の混合物、さらにシリカ、アルミナ、ホワイトカーボン、カーボンブラック等を担体として上記金属塩との混合物、又は・・・金属セッケンを上記坦体に吸着させたものである。」(第2頁下段)
(対比・判断)
(i)新規性進歩性について
(イ)訂正発明1について
上記引用例1には、「収着剤をベンチュリー帯域内に導入するガス浄化法及び装置」に関し、有害物質の収着剤として、「ダスト状の消石灰、炭酸カルシウム、ダスト状の活性炭」等が例示され、またこれら収着剤を混合して使用することができる旨記載されているから、そこには「消石灰、炭酸カルシウム、活性炭」の収着剤混合物が記載されていると云える。
しかしながら、この混合物の上記各収着剤はあくまで収着機能を有する物質というだけのものであり、また炭酸カルシウムは本件訂正発明1の炭酸アルカリとは云えないから、この混合物は本件訂正発明1の必須成分である「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」を有するものではない。また、この証拠には、「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」を添加するという技術思想についても一切記載されていないから、本件訂正発明1は、上記引用例1に記載された発明とすることはできないし、上記引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
次に、上記引用例2について検討すると、この引用例2には、「窒素酸化物の浄化用組成物の製造法」の課題(強度)や解決策について専ら記載されている中で、この製造法によって得られる浄化用組成物が「炭酸カリウム、水酸化カルシウム、セメント材及び粉末活性炭からなる組成物」であると記載されているが、この組成物は本件訂正発明1のものとセメント材を含む点で別異のものである。 また、上記引用例2には、窒素酸化物を浄化する上記組成物の抗折強度の改善について記載されているだけで、上記粉末活性炭が、本件発明の表面活性物質の如き「水銀、ダイオキシン、ヘキサクロロベンゾールおよびポリ縮合芳香族炭化水素の少なくとも1つに結合する物質」であるとする示唆はなく、また炭酸カリウムが「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」であるとする示唆すらないから、本件訂正発明1は、上記引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
上記引用例3について検討すると、この証拠には、噴霧吸収法によりダイオキシン等を除去する方法やそのための浄化材料について記載されているが、この浄化材料は、「活性炭を加えた消石灰の水性懸濁液又は炭酸ナトリウムの水溶液を噴霧機の供給原料として用い」ると記載されている如く、「活性炭と消石灰」の組合せからなるものであるから、そこには、本件訂正発明1の必須成分である「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」を含有させた「反応性水酸化カルシウム基浄化剤」を示唆する記載は一切ない。また、この浄化材料は「活性炭を加えた消石灰の水性懸濁液」として使用されるものであり、本件訂正発明1の「反応性水酸化カルシウム基浄化剤」とその形態も別異のものであるから、本件訂正発明1は、上記引用例3に記載された発明であるとすることはできないし、また上記引用例3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
さらに、上記引用例4乃至6について検討すると、上記引用例4は、「高い比表面積とより大きな反応性を有する乾燥水酸化カルシウムの製造方法」に関するものであり、この製造工程において、アルコールなどの有機溶剤が使用されてはいるが、この有機溶剤は本件訂正発明1の「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」というものではなく、しかもこの有機溶剤は最終的にはでき上がった乾燥水酸化カルシウムから除去されているから、この証拠に記載の「乾燥水酸化カルシウム」は、「水酸化カルシウムの反応性を高める物質や表面活性物質」を有するものではなく、本件訂正発明1とは別異のものである。
上記引用例5について検討すると、この引用例5は、アルカリ金属やアルカリ土類金属などから選ばれた1種又はそれ以上の酸化物又は水酸化物を添加した活性炭などの多孔質吸着剤を使用する「燃焼ガス中の塩化水素の分離方法」に関するものであり、そこには、水酸化カルシウムを活性炭に添加した浄化剤が記載されているとしても、この浄化剤は、活性炭をベースとするものであるから、本件訂正発明1の「反応性水酸化カルシウム基浄化剤」とは基本的に別異のものである。また、この引用例5には、水酸化アルカリや水酸化カルシウムを活性炭の添加剤として混合する選択肢が示唆されてはいるが、この場合の水酸化アルカリはあくまで塩化水素の分離剤として機能するものであり、本件訂正発明1の如き「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」とは云えないから、本件訂正発明1は、上記引用例5に記載された発明であるとすることはできないし、また上記引用例5に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
上記引用例6について検討すると、この引用例6には、アルカリ又はアルカリ土類金属塩を主成分とする粉末が記載され、これら金属塩の中には水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムなどが例示されているが、これらは全て酸性煤塵の「吸着物質」として列挙されているものであり、そこには、「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」については一切記載がない。また、活性炭などの表面活性物質を含む反応性水酸化カルシウム基浄化剤についても一切記載がないから、本件訂正発明1は、上記引用例6に記載された発明であるとすることはできないし、上記引用例6に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
そして、上述したとおり、上記引用例1乃至6号証には、本件訂正発明1の主要な構成である「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」の添加やこれに関連する技術思想については何ら記載されていないから、本件訂正発明1は、これら証拠に記載の発明を組み合わせても当業者が容易に発明をすることができないとするのが相当である。
(ロ)訂正発明2乃至13について
これら発明は、少なくとも請求項1の構成を引用してなるものであるから、訂正発明1について上記(i)(イ)で述べたと同様の理由により、上記引用例1乃至引用例6のいずれかに記載された発明であるとすることはできないし、また上記引用例1乃至引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
(ii)特許明細書の記載について
訂正後の特許明細書には、本件訂正発明1を構成する「水酸化カルシウムの反応性を高める物質」と「表面活性物質」との両者が添加された「反応性水酸化カルシウム基浄化剤」の実施例に相当する記載はないが、特許明細書の実験例1乃至6の中には、本件訂正発明1の添加物質である上記両物質のいずれか一方が添加された実験例がそれぞれ記載されているから、これら両物質を添加する程度の本件訂正発明1の構成であれば、その具体的な実施例が示されていなくとも当業者がこの発明を容易に実施することができると云える。
また、その効果についても、上記両物質のいずれか一方が添加された場合には添加されない場合に比べて、所望の効果が発揮されていることは明らかであるから、上記両物質が添加されれば少なくとも相加程度の効果が発揮されることも容易に予想することができる。さらには、特許権者が提出した平成11年12月27日付け訂正請求意見書に示された追加の実験例からも、本件訂正発明1が所望の効果を奏するものであると云うことができる。
してみると、本件特許明細書には、本件訂正発明1の実施例の開示がないものの、他の記載がこれを補うに足るものであるから、本件特許を取り消す程の記載不備はないとするのが相当であると云える。
したがって、上記(i)及び(ii)で述べたとおり、本件訂正発明1乃至13は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(5)むすび
以上のとおり、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立ての理由の概要
(3-1)特許異議申立人吉沢石灰工業株式会社について
特許異議申立人は、本件特許明細書には、本件請求項1に係る発明の実施例に関する記載がないから、本件請求項1乃至17に係る特許は、特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきであると主張している。
(当審の判断)
この主張については、上記2.(4)(ii)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

(3-2)特許異議申立人長谷川和音について
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(上記引用例1と同じ)を提出して、本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきであると主張している。
(当審の判断)
この主張については、上記2.(4)(i)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
(3-3)特許異議申立人奥多摩工業株式会社について
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(上記引用例2と同じ)、甲第2号証(上記引用例3と同じ)及び甲第3号証(上記引用例4と同じ)を提出して、本件請求項1、8、11及び12に係る発明の特許は、次の(イ)及び(ロ)の理由により、取り消されるべきであると主張している。
(イ)本件請求項1、8及び11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また本件請求項1、8、11及び12に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してなされたものである。
(ロ)本件特許明細書には、本件請求項1に係る発明の実施例に関する記載がないから、本件請求項1に係る特許は、特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反してなされたものである。
(当審の判断)
特許異議申立人の上記(イ)の主張については、上記2.(4)(i)で述べたとおりであり、また上記(ロ)の主張についても、上記2.(4)(ii)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
(3-4)特許異議申立人奥田一夫について
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(上記引用例5と同じ)及び甲第2号証(上記引用例6と同じ)を提出して、本件請求項1、8及び11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また本件請求項1、8、11及び12に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、さらに本件請求項1、8、11及び12に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきであると主張している。
(当審の判断)
この主張については、上記2.(4)(i)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウム基浄化剤並びにガス及び廃ガスの浄化方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガスおよび廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウムの基浄化剤において、消化前または消化中、消化に必要な水と共に、あるいは消化後、水酸化カルシウムの反応性を高める物質ならびに水銀、ダイオキシン、ヘキサクロロベンゾールおよびポリ縮合芳香族炭化水素の少なくとも1つに結合する物質として、活性炭及びかつ炭-平炉コークスから選ばれる少なくとも1つの表面活性物質を微細分散状態で添加することからなるプロセスにより製造されたことを特徴とする反応性水酸化カルシウム基浄化剤。
【請求項2】 酸性汚染物質と結合するために、反応性を高める物質として、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ及び/又は炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリをさらに添加したことを特徴とする請求項1記載の浄化剤。
【請求項3】 高温下に水和物の水の一部又は全量を放出する、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウム等の水和物形成化合物を、水酸化カルシウムの反応性を高める物質として添加し、水和物を含有するCa(OH)2は廃ガスの浄化に使用する前に、水和物の水の全量又は一部を放出させるための熱処理に必要に応じて付したことを特徴とする請求項1又は2記載の浄化剤。
【請求項4】 それ自身50〜450℃の温度範囲において脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)-及び/又は(III)-塩及び/又はアルミニウム塩等の化合物を、添加し、脱水は、全体としてか又は部分的に、廃ガス浄化のために使用する前に熱処理して行なったことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項5】 廃ガスから水銀を分離するために、硫化水素、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、トリメルカプト-s-トリアジン等の水銀と結合する物質をさらに添加したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項6】 酸化剤、還元剤、触媒、中和作用物質及び重金属結合性物質の1種以上を添加したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項7】 還元作用及び/又は酸化作用をする、亜鉛、錫、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、マンガン、ニッケル及び/又はコバルト等の重金属を消化水に添加し、金属含有水酸化カルシウムに、必要に応じて、酸化又は還元処理を施したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項8】 ガス又は廃ガスからの酸性汚染物質、重金属、窒素酸化物、一酸化炭素及び有機物質の1種以上の分離のため、請求項1〜7のいずれかに記載の浄化剤を使用することを特徴とするガス浄化方法。
【請求項9】 バナジウム、タングステン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト及びチタンの各化合物から選択される1種以上の触媒作用物質及び/又は硫化ナトリウム、メルカプタン及びトリメルカプト-s-トリアジンから選択される1種以上の汚染物質結合性物質を水銀との結合のために前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスに施したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項10】 前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスを生石灰に添加した後に消化工程を実施したことを特徴とする請求項1〜7、9のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項11】 前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスを水酸化カルシウムに添加し、微細分散させたことを特徴とする請求項1〜7、9のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項12】 塩止水素、弗化水素、二酸化硫黄、青酸等の酸性作用ガス、窒素酸化物、炭化水素、塩素化炭化水素、有機化合物及び、水銀、砒素、アンチモン、カドミウム及びタリウム等の揮発性金属が除かれるようにガス及び廃ガスを浄化する方法において、請求項1〜7及び9〜11のいずれかに記載された浄化剤を、ガス又は廃ガスに添加し、20℃〜1200℃の温度範囲において、浄化を実施し、固形物の分離を粉塵分離装置において行うことを特徴とする浄化方法。
【請求項13】 前記浄化剤の定置層又は移動層を経て、浄化すべきガス又は廃ガスを導くことを特徴とする請求項12に記載の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明はガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウム基浄化剤並びにガス及び廃ガスを浄化方法に関する。
【技術的背景】
廃ガス浄化技術には、多くの方法が使用されている。湿式の廃ガスの浄化のほかにも乾式の廃ガス浄化が用いられている。乾式の浄化法は、浄化しようとする廃ガス流中に、粉末状の水酸化カルシウムを吹込む方法であり、その目的は、廃ガス流中に存在する酸性の汚染(有害)物質例えば二酸化硫黄、塩化水素又は弗化水素を中和し、生成した中和塩を、適宜の分離装置例えば電気集塵機又は布フィルターのところで分離することにある。
乾式の廃ガスの浄化は、いろいろの異なった形態において実施される。基本的な使用分野は、石炭及びかつ炭を用いる火力発電所、ごみ焼却装置、特殊ごみ焼却装置並びに種々の装入物による燃焼装置の廃ガスの浄化である。
乾式の廃ガス浄化によると、汚染物質を含有する廃ガスは、広汎に浄化される。しかしこの場合には、水酸化カルシウムの消費量が非常に多くなるという欠点が付随する。一般に化学量論的ファクタは3.5〜6である。例えば、廃棄物の焼却装置の場合には、必要な10〜12kgの水酸化物の代りに、30kgよりも多くの量の水酸化カルシウムが必要とされる。乾式の廃ガス浄化の効果が中程度なのは、個々の水酸化カルシウムの粒子が完全には反応しないためである。水酸化カルシウムの上には、反応生成物の層が形成され、この層が分離しようとする酸性の汚染物質が更に入りこむことを阻止する。
水酸化カルシウムの大きな消費量を少くする試みは、従来からなされている。その1つの方法は、沈澱した生成物(未反応の水酸化カルシウムと反応生成物とから成る)を、廃ガスの浄化の後に機械的に磨砕によって再処理をすることに存する。磨砕は、外側の非反応性の層を除去することを目的としている。別の方法は反応生成物を一時的に貯留し、1〜2日間貯留した後に再使用することである。
しかし、これらの全ての方法においては水酸化カルシウムの反応性の向上についての有効性が十分ではない。
Ca(OH)2の反応性が高くなることは、酸性の汚染物質の処理の除去率を達成するに必要なCa(OH)2の量が減少することと理解される。化学量論的なファクタCa(OH)2/(酸性汚染物質)の比が低いことは、反応性が比較的高いことを意味する。
【目的】
従って、廃ガスの酸性汚染物質に対して高反応性を示す水酸化カルシウム化合物を製造することには、大きな関心がもたれており、本発明はこの課題に応えることを基本的目的とする。また廃ガスの酸性汚染物質以外の物質を廃ガスから分離することにも関心がもたれている。これらの物質は、特に、窒素酸化物と、揮発性の重金属としての水銀である。この場合、これらの物質の分離を別々の工程で行なわずに、酸性の汚染物の除去と一緒に単一の工程で行なうようにすると有利である。
また酸性の汚染物質の分離と同時に、CO及び/又は総C量を減少させることも有利となろう。本発明はさらにこれらの第2、第3の課題にも応えることを目的とする。
【発明による解決手段】
請求の範囲第1項に示された基本的な発明思想は、消化前及び/又は消化中において、消化に必要な水と共に、水酸化カルシウムの反応性を高める物質、汚染物質と結合する及び接触作用物質の1種以上を添加し、及び/又は消化後において、水酸化カルシウムの反応性を高める物質、汚染物質の結合する物質及び触媒作用物質の1種以上を添加して成ること、及び前記工程のいずれかにおいて活性炭、かつ炭-平炉コークスの1種以上から成る表面活性物質を微細分散状態で添加することに存する。即ち、特定の表面活性物質の微細分散含有によって汚染物質との反応・補集性を一層高めることができる。
【好適な実施態様及び作用・効果】
本発明による方法の特に有利な実施態様によれば、生石灰の消化に必要な水に、水酸化カルシウムの反応性を高める物質及び/又は汚染物質と結合する物質が添加される。
水酸化カルシウムの反応性を高める物質としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ、高温下に水和物の水の一部又は全量を放出する、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の水和物形成性化合物、50〜450℃の温度範囲において、脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)または(III)-塩、特に塩化物、あるいはアルミニウム塩等が挙げられる。上記したアルカリ化合物は、消化水に添加され、消化工程の間に生成する水酸化カルシウムの粒子中に入り込む。その際、水酸化カルシウムとの追加の反応が起こりうる。これらアルカリ化合物は特に強塩基性に作用することによって優先的に酸性汚染物質と結合する。
水和物含有水酸化カルシウムを熱処理して、水和物の全部又は一部を放出させると、水酸化カルシウムの表面を所望のように変更できる。また、水酸化カルシウムの分子中に水和物含有化合物が存在すると、水酸化カルシウムの反応性がはっきりと向上する。
脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)または(III)-塩、特に塩化物、あるいはアルミニウム塩等の完全な、又は部分的な脱水により、水酸化カルシウムの活性の表面は、はっきりと増大し、反応性が向上する。
このように添加された物質によって、水酸化カルシウムの反応性が変えられる。
またCa(OH)2は他の汚染物質を結合する物質のためのキャリヤとしても利用できる。
添加される物質としては、それ自身汚染物質に作用する化合物でも、水酸化カルシウムの内部組織、構造及び表面を変更する物質でもよい。
本発明による方法の有利な実施態様によれば、酸性の汚染物質例えばHCl、HF、SO2、S
これらの物質としては、特に強塩基性に作用することによって優先的に酸性汚染物質と反応するO3、NO2、HCN、フェノール、カルボン酸等との結合を助ける物質を添加する。物質がある。
そのため、本発明の有利な実施態様によれば、反応性を高くする物質として、炭酸水素アルカリ、アルカリ水酸化物及び/又はアルカリ炭酸塩を添加する。この目的のためには、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び又は炭酸ナトリウムが特に適している。
これらの物質は、消化水に添加され、消化工程の間に生成する水酸化カルシウム粒子中に入りこむ。その際に、水酸化カルシウムとの追加の反応が起こりうる。例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、水酸化カルシウムとそれぞれ反応して、水酸化ナトリウムを遊離させつつ炭酸カルシウムを生成するであろう。従って、これらの物質を使用する場合、非常に多くの種類の塩基性物質の複雑な混合物が現出される。
本発明による方法の別の実施態様によれば、水和物形成化合物が反応性を高める物質として添加される。ここに水和物とは、付加錯化合物の形で水が付加している無機塩を意味する。ここで、水和水の水の一部分又は全量を昇温時に放出する水和物生成化合物が好ましくは使用される。その場合脱水は、廃ガス流中で行うことができる。
本発明による方法の有利な実施態様によれば、廃ガスの浄化に作用する前に、水和物含有水酸化カルシウムを熱処理に付し、水和物の水の全部又は一部を放出させる。これによりCa(OH)2の性状例えば表面を所望のように変更することができる。
水酸化カルシウムの分子中に、水和物含有化合物が存在すると、水酸化カルシウムの反応性がはっきりと向上する。
水和物形成化合物としては、特に、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが添加される。
塩化カルシウムは、いろいろの水和段階に水を付加させることで知られている。既知の水和物の1つは、塩化カルシウムの六水塩である。このものは、260℃を超える温度に加熱することによって、段階的に脱水して無水の塩化物とすることができる。水を含まない塩化カルシウム自身は、再び水を吸収しようとするので、廃ガスの浄化において反応中も、水酸化カルシウムの内部に水が吸収されることはなく、例えばSO2に対する反応性は著しく向上する。
水和物形成物質が消化水に添加される場合、水和物の形成に必要な水を消化水に添加することが好ましい。
本発明による方法の別の実施例によれば、50〜450℃の温度範囲においてそれ自身脱水可能な水酸化物を消化工程の間に形成する化合物が添加される。
消化水に添加されるほとんど全ての金属塩は、消化工程の際に水酸化物を形成する。しかし全部の水酸化物が50〜450℃の温度範囲において脱水可能なわけではない。脱水可能な水酸化物は例えば重金属の水酸化物を生成させる。
本発明による方法の実施に当って、水酸化物含有水酸化カルシウムが直接使用されるようにしてもよい。他方では廃ガスの浄化に使用する前に、全量又は一部の脱水のために、水酸化物を含有する水酸化カルシウムを熱処理にかけてもよい。
完全な、又は部分的な脱水によって、水酸化カルシウムの活性の表面は、はっきりと増大し、それによって反応性が向上する。
最高で450℃の温度で脱水が行なわれる水酸化物が好ましくは使用される。水酸化カルシウムの脱水は450℃から生ずる。
本発明によれば、水酸化物を形成する化合物として水溶性の鉄(II)-及び/又は鉄(III)-塩が、特に塩化物として使用される。鉄(II)-及び鉄(III)塩は、アルカリ性の領域において、水酸化鉄を生成させる。これらの水酸化鉄は、それ自身段階的に脱水可能である。その場合脱水は、廃ガスの浄化中に廃ガス流中において行なうことができる。この水の分離を、廃ガスの浄化のための使用の前に、完全にか又は部分的に行なうようにしてもよい。このようにして、乾燥粉末の形ではあるが、所望の含水性かつ水放出性を有する水酸化カルシウムが製造できる。
鉄含有の水酸化カルシウムは、窒素酸化物の除去に、また酸性有害物質との同時除去のために、用いられることが好ましい。
水酸化物を含有する水酸化カルシウムの粉末も、水和物を含有する水酸化カルシウムの粉末も、非接着性で搬送し易くガス流中に容易に取入れることの可能な粉末である。
廃ガスの浄化の別の問題は、酸性の汚染物質のほかに重金属特に水銀も廃ガス流中に存在していることである。水銀の分離のためには、いろいろの方法が使用される。乾式の廃ガス浄化自身において、所定の限界値が確実が保たれるように、水銀の分離を高めることは、従来は可能ではなかった。廃ガスの水銀含量を低減せる従来の方法は、水酸化カルシウムヘの水銀の結合がなされる程度に、水の添加によって、廃ガスの温度を低下させることに存する。
しかしこの方法にも、前記の方法と同様に、或る顕かな量の水銀がガス中に残留し、その際に、制御されない水の添加によって、後段の分離装置中にじょう乱が起こりうるという欠陥があった。
本発明によれば、生石灰の消化のために必要な消化水には、水銀を結合する物質特に硫化水素、硫化水素ナトリウム及び/又はトリメルカプト-s-トリアジン(TMT)等が添加される。TMTは、ナトリウム塩として有利に使用される。
水酸化カルシウムと水銀結合性物質との組合せによって、特徴的な臭気をもった物質である硫化水銀と硫化水銀ナトリウムとを、無臭の硫化カルシウムの形で使用されると共に、酸性汚染物質の中和を水銀の結合と共通に行なうことが可能となる。これにより余分な廃ガス浄化工程がさけられる。
水酸化カルシウム中に鉄化合物を存在させたことによって、窒素酸化物を、より高度の窒素酸化物となるように酸化させると共に、その際に水酸化カルシウムと結合させることができる。従って、本発明の方法を使用することによって、多くの汚染物質を廃ガス流から除去できる。本発明による方法の有利な実施態様によれば、或る物質群だけでなく、種々の分離すべき汚染物質のための完全な組合せを、消化水に添加する。本発明に従って特に有利に使用すべき組合せは、炭酸水素ナトリウム、鉄(III)-塩化物及びトリメルカプト-s-トリアジン(TMT)である。この種の組合せを使用すると、酸性の汚染物質だけでなく、窒素酸化物及び易揮発性の重金属特に水銀も分離できる。
従って、本発明の一実施態様によれば、酸結合性物質及び窒素結合性物質だけでなく、重金属結合性物質も一緒に、消化水に添加し、このようにして変性された水酸化カルシウムを調製する。
従って、本発明の方法によれば、酸化剤、還元剤、中和剤及び/又は重金属含有物質を含む水酸化カルシウムも調製できる。従って例えば消化水に、塩化錫又は塩化亜鉛を添加し、このものを次に水酸化カルシウムに組込むことが可能となる。金属塩は、例えば水素によって、亜鉛又は錫に還元できる。この水酸化カルシウム上において微細に分散された金属は、次に、廃ガス流から水銀を吸着するために特に使用される。
酸化剤又は還元剤としては重金属が有利に使用される。この重金属は、いろいろの酸化段階において存在する。バナジウム、タングステン、マンガン、チタン、銅、及びクロムである。
これらの重金属は、水溶性の塩の形で消化水に添加され、水酸化カルシウム中に受入れられた後に、還元又は酸化にかけることができる。
重金属を含有する水酸化カルシウムは、慣用される廃ガスの脱酸のほかに、広範な廃ガス浄化のためにも使用できる。例えば一酸化炭素は二酸化炭素に酸化できる。廃ガス中に存在する炭化水素も酸化できるため、廃ガス中の総C量を低減できる。
表面活性物質には、前記の物質即ち活性炭、かつ炭-平炉コークスの1種以上があり、これらを、微細に分散された形で使用する。これらの表面活性物質の作用は、廃ガス流から、有機物質、塩素化炭化水素例えばダイオキシン、ヘキサクロロベンゾール、ペンタクロロフェノール等、並びにポリ縮合芳香族炭化水素例えばベンゾ(a)ピレン、ジベンズ(a,h)アントラセン等の残留分を分離することに関係している。これらの物質は、ガス及び廃ガス流中に、一般には非常に低い濃度において存在している。これらの物質が、慣用される分離装置、例えば洗浄器、静電式分離装置又は布フィルターに沈着すると、問題が生ずる。表面活性物質を更に含有する水酸化カルシウムを使用すると、これらの痕瘍跡物質は、表面活性物質と結合するため、廃ガス流から除去される。
環境に対して有害に物質の分離の別の問題は、重金属である。これらの重金属の例としては、20〜200℃の温度範囲において既に非常に揮発性となる。水銀、砒素、アンチモン及びタリウムがある。従来の技術によれば、これらの重金属を廃ガスから分離する場合、水の凝縮が生ずる程度に廃ガス流を強く冷却する。この冷却には、専用の装置と共に、エネルギーも必要とされる。
表面活性物質によって、易揮発性の重金属は、100〜200℃の温度においても結合・分離される。
本発明による方法の好ましい実施態様によれば、表面活性物質として、活性炭、かつ炭-平炉コークス等(さらに任意成分として、活性化された酸化アルミニウム、ケイ酸ゲル等を)を微細に分散された状態で生石灰の消化水に添加する。
この表面活性物質は、本発明による方法を実施する上に、特に適している。活性炭は、有機物質及び水銀の結合に特に適している。ケイ酸ゲル及び酸化アルミニウムは、極性物質例えば酸化された有機化合物及び無機有害物質例えば塩化水素及び二酸化硫黄に特に適している。
本発明による方法の実施に当って、生石灰のための消化工程にかける前の表面活性物質に、触媒物質又は汚染物質結合性物質で処理するようにしてもよい。この実施に際して、触媒作用物質又は汚染物質結合剤を消化水中に存在させ、表面活性物質を消化水に添加するようにしてもよい。何時間か放置すると、表面活性物質は、消化水の内容物質を吸着する。消化工程の終了後に、水酸化カルシウムと表面活性物質とは、微細に分散され、最も良く混合された状態になっている。
本発明の発明思想は、有利には、消化前に表面活性物質に、水銀を結合する物質例えば硫化ナトリウム、メリカプタン又はトリメルカプト-s-トリアジン及び/又はバナジウム、タングステン、モリブデン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム及び/又はチタンの各化合物で処理することによって実現される。廃ガスの浄化のためには、触媒作用物質又は水銀結合性物質は、大きな表面積をもって存在し、その効力を特に発現させることができる。
本発明によれば別の有利な実施態様によれば、ガス及び廃ガスの浄化のために反応性の水酸化カルシウムを調製するために、表面活性物質例えば活性炭、かつ炭-平炉コークス(さらに任意成分として酸化アルミニウム、ケイ酸ゲルその他)を、生石灰に混合し、その後に始めて、消化工程を実施する。
この混合は、混合装置又はミルにおいて行なうことができる。
本発明の更に別の実施態様によれば、酸性作用ガス例えば塩化水素、弗化水素、二酸化硫黄、青酸等の酸として作用する汚染(有害)物質、窒素酸化物、炭化水素、塩素化炭化水素、有機化合物及び揮発性重金属例えば水銀、砒素、アンチモン、カドミウム及びタリウム等の揮発性重金属が除かれるようにガス及び廃ガスを浄化する方法において、ガス又は廃ガス流に、表面活性物質、例えば活性炭、かつ炭-平炉コークス、(ケイ酸ゲル及び/又は活性の酸化アルミニウム)を含有する微細な粉末状の水酸化カルシウムを、ガス又は廃ガス流に添加し、汚染物質を吸着した水酸化物を粉塵分離装置において再び分離する浄化方法が提供される。
ここで、ガスの浄化工程は、20〜1000℃の広い温度範囲において実施できる。400℃を超える温度では、表面活性物質として、活性化された酸化アルミニウム又はゲイ酸ゲルを用いることが適切である。比較的低温の場合には、前記の全ての表面活性物質が適切である。
前記のようにして作製されるCa(OH)2から成る定置層又は移動層に、浄化しようとするガス又は廃ガスを導くことも可能であり、有利となる。
定置層には、粒状のCa(OH)2が挙げられる。粒状材料上にCa(OH)2を配設して浄化に使用することももちろん可能である。
使用する物質の量については、これは、分離しようとする汚染物質の量と、当該物質の水への溶解度に従って定められる。それぞれの添加される物質の上限は、水へのその溶解度に従って定められる。
本発明の方法に従って調製される水酸化カルシウムを用いると、Ca(OH)2の反応性を著しく高めること、即ち、酸性汚染物質を分離するためのCa(OH)2消費量を相当に低減させることができる。それと同時に、なおも揮発性の重金属例えば水銀、カドミウムその他が、廃ガス流から分離される。別の大きな利点は、酸性の汚染物質及び窒素酸化物が同時に分離され、即ち、その濃度が減少することであり、この分離には、これと同時に重金属の分離がされることもできる。
また、消化水への添加物によって、表面性質、流動性、廃ガス中の分布能力その他のような物理的性質を変更したり、適宜調整したりすることができる。
アニオンとして塩化物と共に塩を使用すると、消化過程が著しく加速される。これにより、場合によっては水及びそれに含まれる物質との生石灰の混合が保証され難しくなることがある。その場合、ガス及び廃ガスの浄化のために変性水酸化カルシウムを使用すると、分離効率の大きな変動を生ずるおそれがある。
他方は、アニオンとしての水酸化物及び硫酸塩と共に塩を添加すると、消化工程が抑制されることがある。消化工程が抑制されると、消化装置の性能が劣化し、即ち、単位時間内に調製される水酸化カルシウムの量が減少する。また、消化工程が大きく遅延すると、消化温度が低くなるため、ガス及び廃ガスの浄化について十分に活性でない生成物が生成する。
従って、本発明の対象に更に別の構成として、消化速度を高くする塩又は物質の使用に当り、消化速度を遅らせる塩又は物質を添加することが、本発明に従って提案される。
硫酸塩の抑制作用が例えば塩化物の添加によって再び除かれることが見出された。ここで、混合比を抑制したり加速したりする塩は、所望による消化時間が生ずるように、広い範囲内において変化させ、そのように設定することができる。
本発明の更に別の有利な実施態様によれば、消化工程を促進するアニオンとして、塩化物、亜硝酸塩及び/又は硝酸塩を使用する場合に、消化工程を抑制するアニオンとして、硫酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及び/又は水酸化物と共に金属塩を添加する。
一例として塩化カルシウムは、消化過程を著しく加速する。消化反応の急激な推移は、鉄の硫酸塩との組合せによって抑制し、選択的に消化時間を設定することができる。加速性のある塩の選択並びに抑制性のある塩の選択は、消化水中の溶解に際して沈澱反応が生起しないように行なうべきである。
消化工程を抑制する塩として、硫酸鉄及び/又は硫酸アルミニウムと共に、アルカリ、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム及び鉄の各塩化物を使用することが有利なことも明らかになっている。
消化速度を高くしたり抑制したりする塩を重量比で1:5ないし5:1の割合で使用すると、本発明による方法が特に有利に適用される。
本発明に従って調製された、変性Ca(OH)2化合物は、汚染物質の結合のためだけでなく、酸化及び還元過程のための触媒としても使用される。
【実験例】
実験例1
CAO25gを水13.5gによって消化した。白色の微細に粉末が得られた。
ガラス製反応器中において、この粉末253mgに、170℃において、次の組成
窒素 80 容積%
酸素 20 〃
水分 262 mg/l
HCl含量 22.1 〃
を有する廃ガス11.9リットルを導いた。
添加したHClの21.1%がCa(OH)2によって吸収された。
実験例2
CaCl2 1.4gを添加した水16.56gによってCAO 28gを消化した。
微細な粉末が得られた
ガラス製の反応器において、純Ca(OH)2253mg相当する前記粉末274mgに、167℃において、次の組成
窒素 80 容積%
酸素 20 〃
水分 235 mg/l
HCl含量 19.8 〃
の廃ガス12.75リットルを導いた。
添加したHClの23.7%がCa(OH)2によって吸収された。これは、HClの分離が実験例1に比べて約12.3%改善されることを意味する。
実験例3
FeCl3×6H2O 2.3gを添加した水15.2gによって、CaO28gを消化した。
淡紅色の微細な粉末が得られた。
ガラス製の反応器において、Ca(OH)2253mgに対応する前記粉末277mgに、166℃において、次の組成
窒素 80 容積%
酸素 20 〃
水分 250mg/l
HCl含量 21 〃
の組成の廃ガス12リットルを導いた。
添加したHClの28.1%がCa(OH)2によって吸収された。これは、実験例1に比べてHClの分離効率が約33%改善されることを意味する。
実験例4
活生化表面が700m2/gの活性炭1.4gを懸濁させた水15.2gによって、消石灰28gを消化した。流動性のすぐれた灰色の粉末が得られた。
この粉末の定置層252mg上に、次の特性
水分 0.26g/l
HCl含量 22.5 mg/l
HgCl2含量 1.29 μg/l
を有するガスを、149℃の温度において導いた。
全量で11.2リットルを、変性されたCa(OH)2上に導いた
全量で14.4μgのHgCl2のうち76.5%が、活性炭に吸収された。
実験例5
約1か月貯蔵したとき生石灰28gを水15.2gと反応させた。40秒の反応後に温度を測定したところ、90℃であった。
鉄(III)-硫酸塩×7H2O 1.4gを消化水に添加した。90℃の温度に到達したのは、120秒が経過した後であった。他方では、鉄(III)-塩化物×6H2O 2.3gを消化水に添加したところ、ほぼ自発的反応が生起した。5秒後に既に90℃の温度に到達した。次に、鉄(III)-塩化物×6H2O 0.4gと鉄(III)-硫酸塩×7H2O 0.2gとを消化水に添加したところ、90℃の温度に到達するまでの時間は約50秒であった。
この例は、消化水中の金属塩の抑制作用と加速作用とが対応した組合せによって制御されうることを示している。
実験例6
新しく調製された生石灰28gを水18gによって消化した。
90℃の温度に到達するまでの時間は13秒である。消化水に、硫酸アルミニウム×18H2O 0.4gを添加すると、90℃の温度に到達するまでの必要な時間は18秒である。前記の量の硫酸アルミニウムに更に鉄(III)-塩化物×6H2O 0.2gを添加すると、消化時間は50%以上短縮することができる。この場合、90℃に到達するまでに必要な時間はわずか11秒である。
実験例1は、CaOを消化して得られる水酸化カルシウムによるHClの吸収を示す。実験例2は、塩化カルシウムをこ添加した水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムは、実験例1で得られる水酸化カルシウムよりもHClの吸収が改善されることを示す。実験例3は、FeCl3を添加した水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムのHCl吸収能がさらに改善されることを示す。実験例4は、活性炭を懸濁させた水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムは、ガス中に含まれるHCl2の76.5%を吸収することを示す。実験例5は、鉄(III)-硫酸塩×7H2Oと鉄(III)-塩化物×6H2Oによる消化の抑制と加速を示す。実験例6は、硫酸アルミニウムに鉄(III)-塩化物×6H2Oを添加すると生石灰の消化時間が短縮されることを示す。以上、実験例1,2、3及び4の結果から、塩化カルシウム、FeCl3等の水酸化カルシウムの反応性を高める物に表面性物質であるこ活性炭を組み合わせるとガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウム質の基浄化剤が得られることが明らかである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第2602085号発明の明細書を手続補正書により補正された全文訂正明細書のとおり、すなわち特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、次の(i)及び(ii)のとおり訂正するものである。
(i)「特許請求の範囲」の欄
特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、次のとおり訂正する。
「(イ)「【請求項1】ガスおよび廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウムの基浄化剤において、消化前または消化中、消化に必要な水と共に、あるいは消化後、水酸化カルシウムの反応性を高める物質ならびに水銀、ダイオキシン、ヘキサクロロベンゾールおよびポリ縮合芳香族炭化水素の少なくとも1つに結合する物質として、活性炭及びかつ炭-平炉コークスから選ばれる少なくとも1つの表面活性物質を微細分散状態で添加することからなるプロセスにより製造されたことを特徴とする反応性水酸化カルシウム基浄化剤。
【請求項2】酸性汚染物質と結合するために、反応性を高める物質として、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ及び/又は炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリをさらに添加したことを特徴とする請求項1記載の浄化剤。
【請求項3】高温下に水和物の水の一部又は全量を放出する、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウム等の水和物形成性化合物を、水酸化カルシウムの反応性を高める物質として添加し、水和物を含有するCa(OH)2は廃ガスの浄化に使用する前に、水和物の水の全量又は一部を放出させるための熱処理に必要に応じて付したことを特徴とする請求項1又は2記載の浄化剤。
【請求項4】それ自身50〜450℃の温度範囲において脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)-及び/又は(III)-塩及び/又はアルミニウム塩等の化合物を、添加し、脱水は、全体としてか又は部分的に、廃ガス浄化のために使用する前に熱処理して行なったことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項5】廃ガスから水銀を分離するために、硫化水素、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、トリメルカプト‐s‐トリアジン等の水銀と結合する物質をさらに添加したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項6】酸化剤、還元剤、触媒、中和作用物質及び重金属結合性物質の1種以上を添加したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項7】還元作用及び/又は酸化作用をする、亜鉛、錫、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、マンガン、ニッケル及び/又はコバルト等の重金属を消化水に添加し、金属含有水酸化カルシウムに、必要に応じて、酸化又は還元処理を施したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項8】ガス又は廃ガスからの酸性汚染物質、重金属、窒素酸化物、一酸化炭素及び有機物質の1種以上の分離のため、請求項1〜7のいずれかに記載の浄化剤を使用することを特徴とするガス浄化方法。
【請求項9】バナジウム、タングステン、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト及びチタンの各化合物から選択される1種以上の触媒作用物質及び/又は硫化ナトリウム、メルカプタン及びトリメルカプト-s-トリアジンから選択される1種以上の汚染物質結合性物質を水銀との結合のため前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスに施したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項10】前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスを生石灰に添加した後に消化工程を実施したことを特徴とする請求項1〜7、9のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項11】前記活性炭又はかつ炭-平炉コークスを水酸化カルシウムに添加し、微細分散させたことを特徴とする請求項1〜7、9のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項12】塩化水素、弗化水素、二酸化硫黄、青酸等の酸性作用ガス、窒素酸化物、炭化水素、塩素化炭化水素、有機化合物及び、水銀、砒素、アンチモン、カドミウム及びタリウム等の揮発性金属が除かれるようにガス及び廃ガスを浄化する方法において、請求項1〜7及び9〜11のいずれかに記載された浄化剤を、ガス又は廃ガスに添加し、20℃〜1200℃の温度範囲において、浄化を実施し、固形物の分離を粉塵分離装置において行うことを特徴とする浄化方法。
【請求項13】前記浄化剤の定置層又は移動層を経て、浄化すべきガス又は廃ガスを導くことを特徴とする請求項12に記載の浄化方法。」
(ロ)請求項14乃至17を削除する。」
(ii)「発明の詳細な説明」の欄
明りょうでない記載の釈明と誤記の訂正を目的として、次のとおり訂正する。
(イ)特許明細書(特許公報第5欄第44行と第45行)に次の事項を挿入する。
「水酸化カルシウムの反応性を高める物質としては、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ、高温下に水和物の水の一部又は全量を放出する、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の水和物形成性化合物、50〜450℃の温度範囲において、脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)または(III)-塩、特に塩化物、あるいはアルミニウム塩等が挙げられる。上記したアルカリ化合物は、消化水に添加され、消化工程の間に生成する水酸化カルシウムの粒子中に入り込む。その際、水酸化カルシウムとの追加の反応が起こりうる。これらアルカリ化合物は、特に強塩基性に作用することによって優先的に酸性汚染物質と結合する。水和物含有水酸化カルシウムを熱処理して、水和物の全部又は一部を放出させると、水酸化カルシウムの表面を所望のように変更できる。また、水酸化カルシウムの分子中に水和物含有化合物が存在すると、水酸化カルシウムの反応性がはっきりと向上する。脱水可能な水酸化物を消化過程の間に生成させる、水溶性鉄(II)または(III)-塩、特に塩化物、あるいはアルミニウム塩等の完全な、又は部分的な脱水により、水酸化カルシウムの活性の表面は、はっきりと増大し、反応性が向上する。」
(ロ)「消化全」(第5欄第29行及び第30行)を「消化前と、「Ca(OH)2」(第5欄第47行)を「Ca(OH)2は」と、「SO2」(第6欄第44行)を「SO2に」と、「廃ガス浄化自身おいて」(第7欄第38行)を廃ガス浄化自身において」と、「Ca(OH)2」(第10欄第27行)を「Ca(OH)2を」と、「廃ガス粒」(第10欄第37行及び第38行)を「廃ガス流」と、「物理適性質」(第10欄第43行)を「物理的性質」と、それぞれ訂正する。
(ハ)[実施例](第11欄第38行)を[実験例]と、第11欄第39行、第12欄第13行及び第27行の「実施例1」を「実験例1」と、「実施例2」(第12欄第1行)を「実験例2」と、「実施例3」(第12欄第15行)を「実験例3」と、「実施例4」(第12欄第29行)を「実験例4」と、「実施例5」(第12欄第41行)を「実験例5」と、「実施例6」(第13欄第6行)を「実験例6」と、それぞれ訂正する。
(ニ)特許明細書(特許公報第14欄第7行以下)に次の事項を挿入する。
「実験例1は、CaOを消化して得られる水酸化カルシウムによるHClの吸収を示す。実験例2は、塩化カルシウムを添加した水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムは、実験例1で得られる水酸化カルシウムよりもHClの吸収が改善されることを示す。実験例3は、FeCl3を添加した水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムのHCl吸収能がさらに改善されることを示す。実験例4は、活性炭を懸濁させた水でCaOを消化して得られる水酸化カルシウムは、ガス中に含まれるHgCl2の76.5%を吸収することを示す。実験例5は、鉄(III)一硫酸塩×7H2Oと鉄(III)-塩化物×6H2Oによる消化の抑制と加速を示す。実験例6は、硫酸アルミニウムに鉄(III)-塩化物×6H2Oを添加すると生石灰の消化時間が短縮されることを示す。以上、実験例1、2、3及び4の結果から、塩化カルシウム、FeCl3等の水酸化カルシウムの反応性を高める物質に表面活性物質である活性炭を組み合わせるとガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウムの基浄化剤が得られることが明らかである。」
異議決定日 2000-03-30 
出願番号 特願昭63-504089
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C04B)
P 1 651・ 113- YA (C04B)
P 1 651・ 531- YA (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 野田 直人  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 新居田 知生
山田 充
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2602085号(P2602085)
権利者 エフテーウー ゲーエムベーハー フォルシュング ウント テヒニッシェ エントヴィックルング イム ウムヴェルトシュッツ
発明の名称 ガス及び廃ガス浄化用の反応性水酸化カルシウム基浄化剤並びにガス及び廃ガスの浄化方法  
代理人 阿形 明  
代理人 大屋 憲一  
代理人 花輪 義男  
代理人 石井 貞次  
代理人 平木 祐輔  
代理人 平木 祐輔  
代理人 大屋 憲一  
代理人 石井 貞次  
代理人 須賀 総夫  

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