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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C23C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1016353
異議申立番号 異議1999-70743  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-06-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-03 
確定日 2000-04-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2792558号「表面処理方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2792558号の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第2792558号(昭和62年12月7日出願、平成10年6月19日設定登録)は、安藤純男により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月8日に訂正請求がなされた後、平成12年3月21日に訂正拒絶理由通知がなされ、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

[2]訂正の適否についての判断
(1)訂正請求書に対する補正の適否について
1)訂正請求書の訂正の要旨(a)について
「特許法第126条第2項ないし第4項の規定にも違反しないものであると思料いたします。」を追加する補正は、訂正明細書の請求項1、2の削除が同法第126条第2項ないし第4項の規定に違反にしないことを明らかにしたものである。
2)訂正請求書の訂正の要旨(b)について
請求項3に記載の「パルス」に関して、新請求項1として、「アクテイブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、」と限定する補正は、訂正明細書の特許請求の範囲の減縮に該当する補正にともない、その補正との整合を保つためのものである。
3)訂正請求書の訂正の要旨(c)について
「特許法第126条第2項ないし第4項の規定にも違反しないものであると思料いたします。」を追加する補正は、発明の名称の補正が同法第126条第2項ないし第4項の規定に違反にしないことを明らかにしたものである。
4)訂正請求書の訂正の要旨(d)について
「特許法第126条第2項ないし第4項の規定にも違反しないものであると思料いたします。」を追加する補正は、訂正明細書第1頁第17、18行に記載の補正が同法第126条第2項ないし第4項の規定に違反にしないことを明らかにしたものである。
5)訂正請求書の訂正の要旨について
訂正明細書第4頁第5〜6行に記載の誤記の訂正に該当する補正にともない、訂正の要旨(e)を追加する補正をしている。
6)訂正請求書の訂正の要旨について
訂正明細書第4頁第18〜19行に記載の誤記の訂正に該当する補正にともない、訂正の要旨(f)を追加する補正をしている。
7)訂正明細書の訂正の要旨について
訂正明細書第6頁第12行に記載の誤記の訂正に該当する補正にともない、訂正の要旨(g)を追加する補正をしている。
そして、上記補正1)〜7)は、いずれも、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
そこで、以下、補正された訂正請求書に基づいて検討する。
なお、補正された訂正請求書の請求の理由において、訂正の対象を「訂正明細書」としているが、訂正の対象は訂正前の明細書であるから、「特許明細書」の誤記であると認め、以下、「訂正明細書」を「特許明細書」と記載することとした。

(2)訂正の要旨
1)訂正の要旨(a)について
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、2を削除する。
2)訂正の要旨(b)について
特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を、新請求項1として、以下のとおりに訂正する。
「被処理物にプラズマを接触させて前記被処理物の表面を処理する表面処理方法において、
前記プラズマを発生させるために供給する電力をパルス電力として供給し、
前記パルスは、アクテイブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第1の群と、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第2の群とを有し、
前記第1の群及び前記第2の群の前記所定の幅は1ミリ秒未満であって、
前記第1の群及び前記第2の群では、パルス電力を供給することにより発生したプラズマが消滅する前に次のパルス電力が供給されることを特徴とする表面処理方法。」
3)訂正の要旨(c)について
特許明細書の発明の名称を「表面処理方法」と訂正する。
4)訂正の要旨(d)について
特許明細書(特許掲載公報第2欄第18〜19行:訂正明細書第1頁第17行)に記載の「表面改質などを行う・・・に係り」を、「表面改質などを行う表面処理方法に係り」に、また、特許明細書(同公報第2欄第20行〜第3欄第2行:訂正明細書第1頁第18行)に記載の「各処理に用いる・・・に関する」を、「各処理に用いるプラズマ表面処理方法に関する」に、それぞれ訂正する。
5)訂正の要旨(e)、(f)について
特許明細書(特許掲載公報第5欄第2行:訂正明細書第4頁第5〜6行)、及び特許明細書(特許掲載公報第5欄第21行:訂正明細書第4頁第18〜19行)に記載の事項の訂正は、訂正明細書の補正に関する事項であり、誤載したものと認める。
6)訂正の要旨(g)について
特許明細書(特許掲載公報第6欄第44行:訂正明細書第6頁第12行)に記載の「電局極」を、「電極」と訂正する。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
1)訂正の要旨(a)、(b)について
上記訂正の要旨(a)は請求項1、2を削除したものであり、また、上記訂正の要旨(b)は、特許明細書の請求項3の「パルス」の構成をさらに減縮して、新請求項1として、「アクテイブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、」と限定したものであり、それぞれ特許請求の範囲の減縮に該当する。
2)訂正の要旨(c)、(d)、(g)について
上記訂正の要旨(c)、(d)は特許明細書の請求項1、2の削除にともなうものであり、明りょうでない記載の釈明に該当し、上記訂正の要旨(g)は誤記の訂正に該当する。
そして、上記訂正の要旨(a)〜(d)、(g)については、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
なお、上記[2](1)〜(3)における特許請求の範囲の項については、訂正請求書の記載に整合させて「請求項〜」と記載したが、本件特許に係る出願は昭和62年12月7日に出願されたものであり、「第〜項」と記載すべきものであるので、以下、「第〜項」と記載することとした。

(4)独立特許要件
1)本件発明
訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載の発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲第1項に記載のとおりのものである(上記[2](2)2)の項参照。)。
2)特許法第29条の2違反について
訂正前の同第1、2項に記載の発明に対し、当審が通知した取消理由において、本件出願日前の出願であって、その出願後に公開された特願昭62-230610号の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「先願明細書」という。:甲第1号証)を引用したものの、その後、訂正請求において、訂正前の同第1、2項は削除されたため、同法第29条の2違反について検討をする必要はなくなった。
3)同法第29条第2項違反について
(a)引用刊行物
刊行物1:訂正前の同法第1〜3項に記載の発明に対し、当審が通知した同取消理由において引用した刊行物1(特開昭59-171491号公報:甲第2号証)には、マイクロ波により加熱あるいはプラズマを発生させて試料を処理するマイクロ波処理方法及び装置に関する発明が、第1〜9図とともに開示され、さらに、
「第3図は本発明のマイクロ波の発生方法の第1の実施例に用いるマグネトロンの駆動回路のブロック図であり、第4図は本発明の方法によるマグネトロンの出力波形と作動時間の関連図、」(第1頁右下欄第11〜15行)、
「図示するようにSi基板設置台21上には、SiO2膜およびパターニングされたレジスト膜を有するSi基板22が設置されており、・・・マイクロ波プラズマ処理室30内へ平行するようになっている。・・・
更に、第2の実施例として第6図に示すように200Vの交流電圧を直流の高圧電源41を用いて4〜7KVの高圧の直流となし、このようにして得られた高圧の直流を高圧のパルス発生回路42を用いて高圧の直流パルスとする。一方該高圧パルス発生回路42を構成する四極管のグリッド回路へパルス布1〜10msecでくり返しパルスを10〜500パルス/secとし、-20〜-140Vの電圧のグリッドバイアスをパルス発生器43により印加し、出力電流値を所望の値に変化させ、かつ、所定の時間単位で出力電流値を所望のパルス状態の形にしてオン・オフさせマグネトロンに入力する。このようにしたマグネトロンの出力電流値は第7図に示すようになりパルス状の出力電流値のパルス巾、およびパルスの発生するピッチおよび出力電流値を所定の値で制御することで、マグネトロンより出力されるマイクロ波の発生を精密に制御することができる。更に第1の実施例と第2の実施例とを組み合わせて第3の実施例として第8図のようなパルス幅およびパルス振幅を制御してマイクロ波を発生することも可能である。」(第3頁右上欄第5行〜右下欄第5行)、
「以上述べたように本発明の方法を用いてマイクロ波を発生させ、該発生したマイクロ波を用いてSiO2膜等の被膜をプラズマエッチングすれば、エッチング時間が短縮される。」(第4頁左上欄第12〜15行)
が、それぞれ記載されている。
刊行物2:同じく引用した刊行物2(特開昭62-50472号公報:甲第3号証)には、基板表面のパルス的プラズマ処理装置及び方法に関する発明が記載され、さらに、
「ガス又はガス混合物の完全な解離を生ずるに十分な、またエッチングの場合は特定の解離度を与える10〜500マイクロ秒の範囲のパルス幅。」(第3頁左下欄第8〜10行) .
が記載されている。
(b)対比・判断
本件発明(訂正前の同第3項に記載の発明に対応する。)と上記刊行物1に記載の発明とを、以下、対比・検討する。
刊行物1には、第1実施例として、第4図のようにマグネトロンの出力電流値が一定の矩形波を示すこと、第2実施例として、第7図のように出力電流値のパルス巾、パルスの発生するピッチ及び出力電流値を所定の値で制御すること、第3実施例として、第1の実施例と第2の実施例とを組み合わせて、第8図のようにパルス巾及びパルス振幅を制御することにより、マグネトロンより出力されるマイクロ波の発生を制御することがそれぞれ記載され、とくに、第7、8図には、複数の種類のパルスを作動時間の経過とともに発生させていることが記載されている。
しかしながら、本件発明のように、アクテイブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、パルスが、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第1群と、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第2群をそれぞれ有することは記載されていないし、示唆もされていない。
すなわち、刊行物1の第7、8図の記載からみて、パルスが発生している作動時間ではアクテイブプラズマが発生し、パルスとパルスの間の作動時間においてはアフターグロープラズマが発生していることは推認できるものの、刊行物1に記載のものは、あくまで、マイクロ波の発生を精密に制御するために、出力電流値のパルス巾、ピッチ、パルス振幅等を所定の値に制御するものであって、本件発明のように、アクテイブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、パルスが、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる2つの群を有するものではない。
そうしてみると、刊行物2には、エッチングを行う場合に、10〜500マイクロ秒の範囲のパルス巾の電力を供給することが開示され、また、参考資料1(特開昭61-28215号公報)には、マイクロ波パルス源のパルス幅を1ms以下とすることが記載されているにしても、本件発明は、刊行物1、2に記載のものから、容易に想到することはできない。
そして、本件発明は、反応室中のイオン、ラジカル、フォトン等の種類、密度、エネルギーおよびこれらの比、さらにプラズマポテンシャルやシースポテンシャルを時間的、空間的に任意に制御できるので、低電圧、低温で、デポジション、重合、酸化、窒化、エッチング、焼結あるいは表面改質等のプラズマ反応プロセスを最適条件で行うことができ、屈折率、応力、抵抗率、耐酸化性、方向性、ダメージあるいは架橋性等の諸特性や、スループットの向上が達成できるという、訂正明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、上記刊行物1、2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項の規定、及び同条の4第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

[3]特許異議の申立て
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人安藤純男は、訂正前の特許請求の範囲第1〜3項に記載の発明は、甲第1号証に記載の発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、また、同第1〜3項に記載の発明は、甲第2、3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、上記発明に係る特許は、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

(2)同法第29条の2違反について
訂正前の特許請求の範囲第1、2項に記載の発明については、上記[2](4)2)に記載のとおりである。
本件発明(訂正前の同第3項に記載の発明に対応する。)については、甲第1号証(上記[2](4)2)に記載の先願明細書)には、本件発明の構成要件である、「パルスは、アクテイブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第1の群と、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第2の群とを有し、」の点については何らの記載もないし、上記の点は単なる設計的事項にすぎないとすることもできないから、本件発明は甲第1号証に記載の発明と同一であるとすることはできない。

(3)同法第29条第2項違反について
本件発明は、上記[2](4)3)で示したように、取消理由で示した上記刊行物1、2(甲第2、3号証)に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表面処理方法
(57)【特許請求の範囲】
1.被処理物にプラズマを接触させて前記被処理物の表面を処理する表面処理方法において、
前記プラズマを発生させるために供給する電力をパルス電力として供給し、
前記パルスは、アクティブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第1の群と、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第2の群とを有し、
前記第1の群及び前記第2の群の前記所定の幅は1ミリ秒未満であって、
前記第1の群及び前記第2の群では、パルス電力を供給することにより発生したプラズマが消滅する前に次のパルス電力が供給されることを特徴とする表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、プラズマを用いて、デポジション、重合、酸化、窒化、エッチング、焼結、あるいは表面改質などを行う表面処理方法に係り、特に、これらの各処理に用いるプラズマ表面処理方法に関する。
〔従来の技術〕
従来の表面処理装置としてのプラズマ反応装置は、例えば、特開昭59-47733号公報に記載されている。
第2図(A)は、上記文献に記載された従来のプラズマ反応装置の構成を概略的に示す図である。1はマイクロ波発振器、2は高圧電源、3は振幅変調器、4は導波路、5は反応室、6は試料、7は磁場コイル、8は排気装置、9はガス導入装置である。
同図(B)は、同図(A)に示した従来の装置のマイクロ波電力を示す図である。この図では、マイクロ波電力と時間との関係が示してある。
同図(B)から明らかなように、従来の装置では、振幅変調器3を用いて、プラズマ生成用のマイクロ波電力を、プラズマが発生する最小電力Wmin(時間幅t2)と、プラズマを発生させるための最大許容電力Wmax(時間幅t1)とを周期的に供給する振幅変調方式を用いている。
従って、t1期間では高温、高密度の強プラズマが、t2期間では低温、低密度の弱プラズマが生成されている。発生されたプラズマ中には、イオン、ラジカルおよびフォトンが存在するが、例えば、プラズマエッチングプロセスにおいては、t1期間において主として生成されるイオンと、t2期間において主として生成されるラジカルとを用い、振幅変調を行わない定常プラズマ、すなわち、印加するマイクロ波電力が時間的に一定であるプラズマを用いた場合に比べ、非等方的特性などの向上を図っていた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上記従来技術は、イオン、ラジカルおよびフォトンの種類、密度、エネルギー、およびこれらの比をより広範に制御することについては、十分配慮されておらず、種々のプラズマ反応プロセスヘの応用には限界があった。
本発明の目的は、プラズマ発生用電力の新しい供給法(いわば、パルスの幅-周波数-振幅-個数組合せ変調方式)により、イオン、ラジカル等の中性粒子およびフォトンの種類、密度、エネルギー、およびこれらの比などの物理量などを時間的、空間的に任意に制御できるようにすることにより、上記従来技術の問題点を解決すると共に、新しい材料の創製や表面改質等を可能にすることにある。
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的は、反応プラズマをパルスとして生成すると共に、パルス電力印加期間中に発生するアクティブプラズマと、パルス電力を印加しない期間において、上記アクティブプラズマが自然に減衰する期間のアフターグロープラズマを形成し、少なくともアフターグロープラズマを用い、あるいはこれらのアクティブプラズマおよびアフターグロープラズマとを組合せることにより、プラズマ反応に重要な上記物理量をはじめ、プラズマポテンシャルエネルギーや、イオンシースポテンシャルエネルギー等の時間的、空間的な制御を任意に可能とすることにより達成される。
すなわち、本発明はパルス幅が1ミリ秒未満のパルス電力を用いてプラズマをパルス的に生成し、パルス電力を供給することにより発生したプラズマが消滅する前に次のパルス電力を供給することを特徴とする。
〔作用〕
上記のように、プラズマをパルス電力を用いてパルス的に生成し、パルス電力を印加した後、パルス電力を印加せず上記パルス電力の印加により形成されたアクティブプラズマが自然に減衰する期間に形成されるアフターグロープラズマでは、上記従来技術の弱プラズマに比べ、非常に豊富なラジカル等の中性粒子やフォトン(主に紫外線)の源として作用する。また、この期間はパルス電力による電界が存在しないので、この電界による試料のダメージ(欠陥)等の問題がなくなる作用を有する。さらに、上記アクティブプラズマも上記従来技術の強プラズマに比べ、非線形効果により、より高電離、高密度、高エネルギーのイオン等の電荷粒子源として作用し、種々の反応を助長する効果がある。
従って、上記アクティブプラズマとアフターグロープラズマとを、印加パルス電力のパルスの幅、周期、振幅および個数を用いると共に、適当に組合せて制御することによるパルスの幅-周波数-振幅-個数組合せ変調方式により、上記物理量等を時間的、空間的に広範かつ任意に制御できる。
これによって、デポジション、重合、酸化、窒化、エッチング、焼結あるいは表面改質等の各プラズマ反応プロセスに最適な条件に上記物理量等を設定することができ、特性やスループットの向上をはじめ、新しい材料の創製等も可能となる。
〔実施例〕
実施例 1
以下、本発明の第1の実施例を第1図および第3図を用いて説明する。第1図は、プラズマ発生用電力としてマイクロ波(1〜100GHz)を用いたときの基本構成を示す図である。第1図において、1はマグネトロン、クライストロン、ジャイラトロン等のマイクロ波発振器、2はパルスを出力する高圧電源、4は導波管(整合器、電力計等を含む。同軸ケーブルでも可)、5は反応室(放電管、共振器等を含む)、6は試料(試料台、加熱器等を含む)、7は磁場コイル(永久磁石でも可)、8は排気装置、9は反応ガス導入装置、10は電気回路で構成され、パルスの幅、周期および個数制御装置、11は電気回路で構成されたパルスの振幅制御装置である。
次に、動作について説明する。まず、反応室5内を排気装置8によって高真空に排気した後、特定の反応ガス(例えば、SiH4、CF4、Ar、O2、N2など)を適当な圧力(10-6〜760Torr)になるよう導入する。次に、プラズマ発生用のマイクロ波電力は、マイクロ波発振器1から、パルス幅t(0<t<1ms)、周期T(T≦10sec)および個数N(N>0)を制御する制御装置10とパルス振幅(W)を制御する制御装置11と高圧電源2を用いて、例えば、第3図に示すようにパルス的に発生させる。ここで、t、TおよびNは各プラズマ反応およびプロセスに応じて適宜最適化する。なお、Tは通常アフターグロープラズマの減衰定数との関係から設定し、プラズマが完全に減衰しない前に、次のパルス電力を印加することを基本とする。この電力を導波管4を通じて反応室5に導入すると、上記反応ガスは電離し、上記パルス電力に対応して上記アクティブプラズマ(第3図のt1とt2の期間)と、上記アフターグロープラズマ(第3図のT1-(マイナス)t1とT2-(マイナス)t2の期間)が形成される(パルスの幅-周波数-振幅-個数組合せ変調方式)。
第3図は、パルスの幅t1、周期T1、振幅W1、個数N1のパルスP1と、幅t2(t2>、=、<t1)、周期T2(T2>、=、<T1)、振幅W2(W2>、=、<W2)、個数N2のパルスP2(N2>、=、<N1)とを組合せた場合を示すが、3種類以上のパルスPq(q≧3)を組合せてもよい。さらに、例えばプロセスを3段階に分け、上記パルスをP1→P2→P1またはP2→P1→P2のように組合せてもよい。これら組合せの選定は、デポジション、酸化、エッチング等各プラズマ反応およびそのプロセスの内容に応じて行う。例えばエッチングの場合には、プロセスの前半でアクティブプラズマが、後半でアフターグロープラズマが主に作用するようにP1とP2を設定するとよい。
実施例 2
別の実施例を第4図に示す。本実施例は、プラズマ発生用電力として、高周波(rf)電力または直流電力を用いた場合の基本構成と出力波形の2例(第3図も可)を示す。なお、第4図の出力波形の例の上の図は周波数変調を、下の図は振幅変調を示すものである。1は高周波発振器(直流動作のときは直流パルス発生器)、2は高圧電源(パルス出力)、10はパルスの幅、周期および個数制御装置、11はパルスの振幅制御装置、12は電極を示す。その他の構成は第1図と同様である。本実施例によっても、第1図の実施例と同様の作用、効果を奏することができる。
新しい材料の創製、例えば、酸化物超伝導体は、反応室5にガス導入装置9か
ら少なくともO2ガスを導入すると共に、例えばBaCO3、Y2O3、CuOを微粒子として、またrfスパッタや電子ビームで蒸発させて導入し、実施例1で説明したような制御された反応プラズマを生成し、基板上に薄膜として作製できる。また、反応プラズマ中のイオンを例えばSi基板にドーピングし、表面を改質することもできる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内で種々の変形、改良があり得ることは言うまでもない。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、反応プラズマをパルス的に発生させて、アクティブプラズマとアフターグロープラズマを生成し、これらプラズマの比を印加パルス電力のパルスの幅、周期、振幅および個数で組合せ制御する、いわゆる、パルスの幅-周波数-振幅-個数組合せ変調方式により、反応室中のイオン、ラジカル、フォトン等の種類、密度、エネルギーおよびこれらの比、さらにプラズマポテンシャルやシースポテンシャルを時間的、空間的に任意に制御できるので、低電圧、低温で、デポジション、重合、酸化、窒化、エッチング、焼結あるいは表面改室等のプラズマ反応プロセスを最適条件で行うことができ、屈折率、応力、抵抗率、耐酸化性、方向性、ダメージあるいは架橋性等の諸特性や、スループットの向上が達成できる。さらに、超伝導体等のこれまで不可能であった新しい材料の創製も可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の第1の実施例のプラズマ反応装置の基本構成図、第2図(A)は、従来のプラズマ反応装置の一例の基本構成図、第2図(B)は、第2図(A)に示した従来装置のマイクロ波電力を示す図、第3図は、本発明の反応プラズマ発生用電力の波形の一例を示す図、第4図は、本発明の第2の実施例の基本構成図である。
1…マイクロ波(または高周波、またはパルス)発振器
2…高圧電源
3…振幅変調器
4…導波管
5…反応室
6…試料
7…磁場コイル
8…排気装置
9…ガス導入装置
10…パルスの幅、周期および個数制御装置
11…パルスの振幅制御装置
12…電極
【図面】




 
訂正の要旨 訂正の要旨
1)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、2を削除する。
2)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を、新請求項1として、以下のとおりに訂正する。
「被処理物にプラズマを接触させて前記被処理物の表面を処理する表面処理方法において、
前記プラズマを発生させるために供給する電力をパルス電力として供給し、
前記パルスは、アクティブプラズマとアフターグロープラズマを制御するために、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第1の群と、所定の幅、周波数、振幅、個数からなる第2の群とを有し、
前記第1の群及び前記第2の群の前記所定の幅は1ミリ秒未満であって、
前記第1の群及び前記第2の群では、パルス電力を供給することにより発生したプラズマが消滅する前に次のパルス電力が供給されることを特徴とする表面処理方法。」
3)明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の発明の名称を「表面処理方法」と訂正する。
4)明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書(特許掲載公報第2欄第18〜19行)に記載の「表面改質などを行う・・・に係り」を、「表面改質などを行う表面処理方法に係り」に、また、同明細書(同公報第2欄第20行〜第3欄第2行)に記載の「各処理に用いる・・・に関する」を、「各処理に用いるプラズマ表面処理方法に関する」に、それぞれ訂正する。
5)誤記の訂正を目的として、特許明細書(特許掲載公報第6欄第44行)に記載の「電局極」を、「電極」と訂正する。
異議決定日 2000-04-03 
出願番号 特願昭62-307598
審決分類 P 1 651・ 161- YA (C23C)
P 1 651・ 121- YA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 松田 悠子
雨宮 弘治
登録日 1998-06-19 
登録番号 特許第2792558号(P2792558)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 表面処理方法  
代理人 作田 康夫  
代理人 作田 康夫  

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