• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47C
管理番号 1016407
異議申立番号 異議2000-70306  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-27 
確定日 2000-05-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2925859号「椅子における背もたれ装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2925859号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続きの経緯
本件特許第2925859号(以下「本件特許」という。)は、平成4年10月27日に特許出願したものであって、平成11年5月7日に特許権の設定登録がされ、これに対して特許異議申立人助川芳美より特許異議の申立てがされたものである。
〔2〕本件発明
本件特許発明(以下「本件発明」という。)は、明細書の記載からみて、その請求項1、請求項2に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
座受け体にて支持した座体の後方に立設した背もたれを、人の背中を支持する上部背もたれ体と、人の腰部を支持する下部背もたれ体とに分離形成し、前記上部背もたれ体を、弾性に抗して後傾動自在となるように前記座体又は座受け体に取付け、かつ、これら上下背もたれ体を、上部背もたれが後傾動していない状態で両者の前面が略同一面状に連続するように設定する一方、
前記座体又は座受け体に、座体の後方において上向きに延びる支持部を備えたスライド部材を、前後方向に移動自在で揺動不能に取付け、このスライド部材に、前記下部背もたれ体を、当該下部背もたれ体の下方が空間として開放された状態に設け、
更に、上部背もたれ体の後傾動に連動してスライド部材を前進動させる連動部材を設けていることを特徴とする椅子における背もたれ装置。
【請求項2】
前記上部背もたれ体を、前記座受け体に後傾動自在に取り付けた傾動杆に取付ける一方、前記連動部材を帯状の板ばね製として、当該板ばねの一端を座受け体に、他端をスライド部材にそれぞれ取付け、上部背もたれ体の後傾動によって板
ばねの一端と両端との間の中途部が前記傾動杆によって下方に押される構造としていることを特徴とする請求項1に記載した椅子における背もたれ装置。」
〔3〕異議申立てについて
(1)異議申立ての理由
異議申立人は、本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨主張し、以下の証拠方法を提出している。
甲第1号証:特開平4-58905号公報
甲第2号証:実公平2-1075号公報
甲第3号証:実願昭63-156742号(実開平2-76931号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭55-127988号(実開昭57-50251号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実開平3-122740号公報
(2)甲号各証記載の発明
甲第1号証には、背もたれ付椅子に関して、第1図、2図と共に以下の事項が記載されている。
a)「背板部22の中央部に背あて部24を設ける。背あて部24は両サイドに縦にスリット26をあけるとともに、背あて部24の下方の背板部を切り欠いて上辺でのみ背板部22と連結させる。こうして背あて部24は下部側がフリーとなった舌片状となる。背あて部24と背板部22とが連結する連結部24aは凹溝状にやや薄厚に形成し、背あて部24の下部側が動きやすくしている。」(第3頁左上欄第5〜13行)
b)「第1図において上記インナーシェルの支持機構について説明すると、脚柱26の上端には前端側がゆるやかに前方に向けて上昇し、後端側が比較的急角度で後方に上昇する固定枠27が固定されている。28は天秤部材であって、固定枠27の両端にそって、前記座板部20を支持する座部基板29の下方に、かつ座部基板29の前後方向にのびており、その中途部において固定枠27に回動自在に軸着されている。
30は天秤部材28の後端に設けた背支桿である。背支桿30は、その上端部が前記背あて部24の上辺近傍まで延出し、上端に背板部22をねじ止めして支持する支持桿32を横設している。
33はL字状リンクであり、固定枠27の前端側両側部にL字の屈曲部において軸34により回動自在に軸着されている。L字状リンク33の一方のリンク片端部は座部基板29の前部側の側部に軸着され、L字状リンク33の他方のリンク片端部に突設したピン35が天秤部材28の前端に前後方向に長く設けた長孔36に遊嵌している。
座部基板29の後部側はリンク板37によって天秤部材28に連携されている。L字状リンク33とリンク板37は座部基板29を前動させる力伝達手段を構成する。38は復帰およびバランス用のバネ等の伸縮体で、L字状リンク33の一方の片端部と固定枠27の後端側に設けた軸39との間に設けられ、底板部20を椅子としての本来の標準位置に付勢すると共に、L字状リンク33および天秤部材28を介して背支桿30を椅子としての本来の標準位置(起立位置)に付勢している。」(第3頁左上欄第19行〜同左下欄第9行)
c)「こうして得られた椅子は、上述したリンク機構により、椅子に腰を掛けて背もたれ部にもたれかかるよに力を加えると、背支桿30が伸縮体38の付勢力に抗して後傾し、それとともに座部基板29が前動する。すなわち、背もたれ部が後傾することと連動して座部が前動する。
このとき、座部基板29の前動にともない座部基板29に固定された押圧部材40も前に移動し、押圧部材40の上端縁が背あて部24を背面から前方に押圧することによって背あて部24を前方に押し出す。背あて部24は舌片状に形成されて一定の弾力性を有するから押圧部材40によって押圧されて前方に突出する。」(第3頁右下欄第5〜17行)
d)「上記説明から明らかなように押圧部材40は座部の前動にともなって背あて部24を押動させるものであるから、座部側で前動する部材に押圧部材40を固定すればよい。」(第4頁左上欄第4〜7行)
甲第2号証には、ロッキング椅子に関して、第2図と共に以下の事項が記載されている。
a)「腰当て板8はその大部分もしくは全部が背もたれ部10の折れ曲り部分(ロッキング部分)より下方に下部背もたれに重なるように取り付けられているから、背もたれ部10に背中をあづけて荷重をかけると上部背もたれが後方に傾倒し、同時に上部背もたれに取り付けられている腰当て板8はこの動きに連動して前方にせり出してくる。従って背中が後傾するにつれて前方に位置してゆく座者の腰部に追従して充分に支持するので、姿勢良く、長時間でも疲労しないものである。
また腰当て板8は椅子の本体とは別体に構成され取り付け、取り外し自由であるから、大きさや形状、材質を自由に選定することができ、座者の座姿勢に応じたものを取り付けることができるので、さらに腰部の支持能力にすぐれる。またデザイン的にも興趣あるものが得られるものである。」(第2頁左欄第22行〜同右欄第13行)
甲第3号証には、座席の背当における補助リクライニング機構に関して、第1図、2図、5図と共に以下の事項が記載されている。
a)「背当(12)は、第2図に示したように、その背面側内部に収納してある補助アーム(14a)を支持アーム(14)と一体的に形成するとともに、この支持アーム(14)の下端部を座席(10)を構成する支持フレーム(13)の後端部に対して回動軸(15)により回動可能に支持することにより、座部(11)に対して傾動可能となっているものである。」(第9頁第8〜14行)
b)「また、この座席(10)の背当(12)は一体化されたものではなく、第1図に示したように、使用者の主として背中部分が当接する背当本体(12a)と、この背当本体(12a)の下方全面に形成されて主として使用者の腰部が当接する補助背当(20)とによって構成してある。」(第10頁第2〜7行)
c)「また、第1図または第5図に示した補助背当(20)は、背当本体(12a)と全く分割された状態のもの、すなわちそれぞれ独立的に表装材(カバー)によって覆って構成したものを示している」(第10頁第12〜15行)
d)「この実施例における案内ローラ(27)は、支持板(23)の背面を支持部材(21)に対して案内するものであるから、必ずしも「ローラ」である必要はなく、例えば両者を摺動可能にする摺動部材によって構成してもよいものである。」(第14頁第9〜13行)
e)「背当を本体と補助背当とによって構成するとともに、背当本体を倒したときに補助背当が使用者側に積極的に残留するようにして、座席と使用者間に空間ができないようにすることができ、これにより背当がどのような状態にあっても安定して着座することができ、腰痛や疲労等の原因を解消することができるのである。」(第18頁第6〜13行)
f)「背当を本体と補助背当とによって構成するとともに、背当本体を倒したときに補助背当が使用者側に積極的に残留するようにして、座席と使用者間に空間ができないようにすることができ、これにより背当がどのような状態にあっても安定して着座することができ、腰痛や、疲労等の原因を解消することができるのである。」(第19頁第15行〜第20頁第3行)
甲第4号証には、腰部を指圧伸長する椅子の構造に関して、第1図、2図と共に以下の事項が記載されている。
a)「指圧部6を変えるテコ機構7の支点5を椅子座台4に設け、その他端部2と椅子の背当て3を支えるパイプ1を接し力点とする。背当て3が体重の力を受け後方に移動するとパイプは支点軸8を中心として下方に動き力点においてテコ機構7の一端2に作用する。従って指圧部6は前方に動く。この構造の効果は背当3が後方に動くと指圧部6が前方に動き、交互に動く作用は指圧効果と背軸を反す作用が大きく、座つていながら自身の力により強弱の調節ができるもので、腰の疲れまた腰痛予防に大きな効果がある。」(第4頁第1〜11行)
甲第5号証には、椅子における背もたれの弾力調整装置に関して、第2図ないし7図と共に、背もたれCの傾動をスライド部材88の直線移動に変換して背もたれCの弾力を調整する機構として、背もたれCと座受け側部材64との間に張架された帯状の引っ張り体86と背もたれ支柱79に備えられたピン79c、79dとを用いることが記載されている。
〔4〕当審の判断
甲第1号証には、背もたれ部の後傾に連動して、座部基板29に固定された押圧部材40を揺動させることにより前に移動させ、背あて部24を前方に押し出すことは記載されているが、本件発明の請求項1の「座体又は座受け体に、座体の後方において上向きに延びる支持部を備えたスライド部材を、前後方向に移動自在で揺動不能に取付」ける構成は記載も示唆もされていない。
甲第2号証ないし甲第4号証には、上部背もたれ体と下部背もたれ体とを分離形成することは記載されているが、本件発明の請求項1の「座体又は座受け体に、座体の後方において上向きに延びる支持部を備えたスライド部材を、前後方向に移動自在で揺動不能に取付」ける構成は記載も示唆もされていない。
甲第5号証には、本件発明の請求項1の「座体又は座受け体に、座体の後方において上向きに延びる支持部を備えたスライド部材を、前後方向に移動自在で揺動不能に取付」ける構成、本件発明の請求項2の「上部背もたれ体を、前記座受け体に後傾動自在に取り付けた傾動杆に取付ける一方、前記連動部材を帯状の板ばね製として、当該板ばねの一端を座受け体に、他端をスライド部材にそれぞれ取付け、上部背もたれ体の後傾動によって板ばねの一端と両端との間の中途部が前記傾動杆によって下方に押される構造」に関しては記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1号証ないし甲第5号証には、本件発明の請求項1の「座体又は座受け体に、座体の後方において上向きに延びる支持部を備えたスライド部材を、前後方向に移動自在で揺動不能に取付」けられている構成は記載されておらず、甲第1号証ないし甲第5号証を組み合わせても本件請求項1に係る発明には至らないので、本件請求項1に係る発明は甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとすることはできない。
また、本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明をさらに限定するものであるから、本件請求項1に係る発明と同様に、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとすることはできない。
〔5〕むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張は採用できない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-04-12 
出願番号 特願平4-288663
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A47C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平岩 正一土田 嘉一  
特許庁審判長 岡田 幸夫
特許庁審判官 長崎 洋一
熊倉 強
登録日 1999-05-07 
登録番号 特許第2925859号(P2925859)
権利者 株式会社イトーキ 株式会社イトーキクレビオ
発明の名称 椅子における背もたれ装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ