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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1016496
異議申立番号 異議1999-72497  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-03-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-25 
確定日 2000-05-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2843655号「コロイダルシリカの製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2843655号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2843655号に係る発明についての出願は、平成2年7月9日に特許出願され、平成10年10月23日に特許の設定登録がなされ、その後、平成11年6月25日に特許異議申立人金田三郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、期間延長請求がなされ、期間延長された指定期間内である平成12年4月3日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正請求書に記載された訂正の内容は以下のとおりである。
(ア)特許請求の範囲の請求項1「徐々に滴下することを特徴とする」を「徐々に滴下することからなり、ここで酸化剤は、過酸化水素水、次亜塩素酸、亜硝酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものであって、その濃度は0.01〜1重量%であり、そして鉱酸は、塩酸、硝酸および臭酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものであって、その添加量は、ケイ酸水溶液のpHが1.0〜2.0の範囲になるような量であることを特徴とする」と訂正する。
(イ)特許請求の範囲の請求項3および4を削除する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正のうち、(ア)は特許請求の範囲の請求項1に記載された発明に対して構成の追加を行うものであり、(イ)は請求項3、4の削除を行うものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項(ア)によって請求項1に追加された事項は訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項3、4等に記載されていた事項であるから、いずれの訂正事項も新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(3)独立特許要件
当審は、本件明細書の(実施例)に記載された「比較例2」は特許請求の範囲の請求項1に記載された要件を満たすにも拘わらず、実施例でなく比較例とされており、本件特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とは互いに矛盾するから、本件明細書の記載は特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たさず、特許を取り消すべきものである旨の取消理由を通知した。
これに対して、特許権者は特許請求の範囲の請求項1を上記のとおり訂正すること等を求める訂正請求を行った。
そして、この訂正請求により、「比較例2」は特許請求の範囲の請求項1に記載された要件を満たさないものとなるから、訂正後の本件明細書の記載は特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たすものであって、訂正明細書の請求項1、2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
本件発明は、訂正明細書の請求項1、2に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明1、2」という。)。
「【請求項1】ケイ酸アルカリ水溶液を、イオン交換によってアルカリ金属を除去し、これに酸化剤と鉱酸を添加した後、その一部を熟成させ、しかる後、これにアンモニア、または、塩基性有機化合物を添加して塩基性ケイ酸水溶液とし、該ケイ酸水溶液に前記の酸化剤と鉱酸を添加したケイ酸水溶液の残部を、徐々に滴下することからなり、ここで酸化剤は、過酸化水素水、次亜塩素酸、亜硝酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものであって、その濃度は0.01〜1重量%であり、そして鉱酸は、塩酸、硝酸および臭酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものであって、その添加量は、ケイ酸水溶液のpHが1.0〜2.0の範囲になるような量であることを特徴とする、コロイダルシリカの製造方法。
【請求項2】原料のケイ酸アルカリ水溶液は、ケイ酸含量が1〜10重量%、pHが7以上である、請求項第1項に記載のコロイダルシリカの製造方法。」
(2)申立て理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証(特開昭61-158810号公報)、甲第2号証(特開昭62-12608号公報)を提出し、本件請求項に係る発明はいずれも、甲第1乃至2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることを理由として、本件特許を取り消すべきことを主張している。
(3)甲各号証の記載事項
ア.甲第1号証
a.「1 (a)濃度が0.5〜7重量%であるアルカリケイ酸塩の水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂と接触させて脱アルカリすることにより珪酸液を調製し、(b)この珪酸液に酸を加え、pH2.5以下温度0〜98℃の条件で珪酸液を酸処理し、(c)得られた酸性珪酸コロイド液中の不純物を分画分子量500〜10000の限外濾過膜にて除去してオリゴ珪酸溶液を調製し、(d)このオリゴ珪酸溶液の一部にアンモニア又はアミンを加え、pH7〜10で60〜98℃の温度に加熱してヒールゾルを調製し、(e)このヒールゾルにオリゴ珪酸溶液の残部を徐々に滴下してコロイド粒子を生長させることを特徴とする高純度シリカゾルの製造法。
…(中略)…
3 工程(b)で使用する酸が塩酸、硫酸及びpKa<5の有機酸から選ばれる特許請求の範囲第1項記載の方法。」(第1頁特許請求の範囲)
b.「原料たるアルカリ珪酸塩は0.5〜7重量%の濃度に水で希釈されて脱アルカリ処理を受ける。」(第2頁第4欄第21〜23行)
イ.甲第2号証
a.「3.珪酸ナトリウム水溶液と鉱酸との反応によりシリカを生成させる方法において、キレート剤及び過酸化水素が存在する酸濃度1規定以上の酸領域中でシリカの沈殿を生成させ、次いで分離回収したシリカをキレート剤及び過酸化水素を含有する鉱酸にて洗浄処理することを特徴とするAl、B、Ba、Ca、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Sr、Ti、Zn、Zr、U及びTh不純物含有量がいずれも1ppm以下である高純度シリカの製造方法。
…(中略)…
5.反応系内に存在するキレート剤及び過酸化水素がそれぞれSiO2に対して0.1〜5重量%である特許請求の範囲第3項または第4項記載の高純度シリカの製造方法。」(第1頁特許請求の範囲)
b.「このキレート剤及び過酸化水素の存在により、特に、ZrやTi等の除去の困難な不純成分を選択的にシリカから除去することができる。」(第4頁第7欄第6〜8行)
c.「本発明ではシリカの沈殿を生成させる反応工程及び次の洗浄工程もいずれも酸で処理するものであるが、必ずキレート剤(必要に応じてその塩でもよい)及び過酸化水素水を含有させて行なう必要があり、いずれかの工程でこれらを含有させない場合には、所期の目的とする高純度シリカは得られない。」(第4頁第7欄第36〜42行)
(4)対比・判断
ア.本件発明1
甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1号証発明」という。)と本件発明1を対比する。
甲第1号証の「強酸型陽イオン交換樹脂と接触させて脱アルカリする」、「オリゴ珪酸溶液の一部にアンモニア又はアミンを加え…(中略)…ヒールゾルを調製」、「ヒールゾルにオリゴ珪酸溶液の残部を徐々に滴下」「コロイド粒子を生長させる…(中略)…シリカゾル」は、それぞれ本件発明1の「イオン交換によってアルカリ金属を除去」、「一部を熟成させ、しかる後、これにアンモニア、または、塩基性有機化合物を添加して塩基性ケイ酸水溶液とし」、「ケイ酸水溶液の残部を、徐々に滴下」、「コロイダルシリカ」の構成に相当する。
また、甲第1号証の「酸」は、「3.(3)ア.a」に摘記した事項よりみて、塩酸等の鉱酸を使用する場合を含むから、本件発明1の「鉱酸」に相当し、甲第1号証の「pH2.5以下」という酸処理条件は、本件発明1の「pHが1.0〜2.0」となるように鉱酸を添加するに構成に相当するものといえる。
以上のとおりであるから、両者は、「ケイ酸アルカリ水溶液を、イオン交換によってアルカリ金属を除去し、これに鉱酸を添加した後、その一部を熟成させ、しかる後、これにアンモニア、または、塩基性有機化合物を添加して塩基性ケイ酸水溶液とし、該ケイ酸水溶液に前記の鉱酸を添加したケイ酸水溶液の残部を、徐々に滴下することからなり、鉱酸は、塩酸、硝酸および臭酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものであって、その添加量は、ケイ酸水溶液のpHが1.0〜2.0の範囲になるような量であることを特徴とする、コロイダルシリカの製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点:本件発明1は酸化剤として過酸化水素水、次亜塩素酸、亜硝酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものを0.01〜1重量%の濃度で使用するのに対して、甲第1号証発明は酸化剤を使用するものでない点。
そこで、この相違点について検討する。
甲第2号証には、酸化剤に相当する過酸化水素を0.1〜5重量%の濃度で使用する高純度シリカの製造方法が記載されている。
しかしながら、甲第2号証に記載された発明(以下、「甲第2号証発明」という。)は、「3.(3)イ」に摘記した事項よりみて、酸化剤とキレート剤を一緒に使用することによって、酸化剤単独では期待できない所期の効果を奏するものであって、甲第2号証における酸化剤の使用は、キレート剤と併用することを前提としたものといえるから、甲第1号証に記載されるようなキレート剤の存在を前提としないコロイダルシリカの製造方法について、酸化剤を使用することの動機付けは、甲第2号証には存在しないというべきである。
してみれば、上記相違点に係る本件発明1の構成の点は、甲第2号証を勘案しても当業者が容易に想到し得たことではなく、本件発明1は、この構成の点により、シリカ粒子の成長速度が向上するという顕著な効果を奏するものであるから(本件特許公報第2頁第4欄第12〜14行等参照。)、甲第1乃至2号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ.本件発明2
本件発明2は、本件発明1に更に技術的限定を加えたものであるから、本件発明1と同様に、甲第1乃至2号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コロイダルシリカの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
1)ケイ酸アルカリ水溶液を、イオン交換によってアルカリ金属を除去し、これに酸化剤と鉱酸を添加した後、その一部を熟成させ、しかる後、これにアンモニアまたは塩基性有機化合物を添加して塩基性ケイ酸水溶液とし、該ケイ酸水溶液に前記の酸化剤と鉱酸を添加したケイ酸水溶液の残部を、徐々に滴下することからなり、ここで酸化剤は、過酸化水素水、次亜塩素酸、亜硝酸からなる群がら選ばれた一種または二種以上のものであって、その濃度は0.01〜1重量%であり、そして鉱酸は、塩酸、硝酸および臭酸からなる群がら選ばれた一種または二種以上のものであって、その添加量は、ケイ酸水溶液のpHが1.0〜2.0の範囲になるような量であることを特徴とする、コロイダルシリカの製造方法。
2)原料のケイ酸アルカリ水溶液は、ケイ酸含量が1〜10重量%、pHが7以上である、請求項第1項に記載のコロイダルシリカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、アルカリ金属を除去したケイ酸水溶液よりコロイダルシリカを製造する方法に関し、特に、アルカリ金属を除去したケイ酸水溶液より塩基性有機化合物の存在下でシリカ粒子を迅速に成長させるコロイダルシリカの製造方法に関する。
(従来の技術)
コロイダルシリカは、シリカの分散液であって、紙の表面処理剤、高分子材料の改質剤、フィルムの表面処理剤、研磨剤等に用いられているが、次第に、金属元素を含まない高純度のものが要望されるようになった。殊に、最近では、電子技術の発展にともない金属元素等の不純物含有量の少ないシリカゾルが望まれている。
従来、コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸アルカリを原料とし、Na,K等のアルカリ金属存在下で粒子成長させる方法が一般的に良く知られている。しかし、この方法では、金属元素の含有量が少ないシリカゾルを得ることはできない。
アルカリ金属を含まないシリカ粒子を成長させる方法として、例えば、特開昭61-155810号公報に、SiO2含量1.5〜8重量%のオリゴケイ酸溶液を調整し、その一部にアンモニアを加えて、pH7〜10で60〜98℃の温度に加熱してヒールゾルを調整し、このヒールゾルにアンモニアを添加したオリゴケイ酸溶液の残部を、徐々に滴下してコロイド粒子を成長させる方法が示されている。
又、特開昭64-18910号公報には、酸性シリカゾルをアンモニアまたはアミンを基礎とする塩基性環境中で、ゾル粒子を成長させる方法が示されている。
しかしながら、これらの方法は、従来のアルカリ金属存在下でシリカゾルを粒子成長させる方法と比較して、成長速度が遅く、時間を要する。
(発明が解決しようとする課題)
従って、本発明は、従来法の上記の欠点を解決したものであって、アルカリ金属を含まないケイ酸溶液より塩基性有機化合物の存在下でシリカ粒子を迅速に成長させ、金属元素等の不純物含有量の少ないコロイダルシリカを効率よく製造する方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段)
本発明の要旨は、ケイ酸アルカリ水溶液を、イオン交換によってアルカリ金属を除去し、これに酸化剤と鉱酸を添加した後、その一部を熟成させ、しかる後、これにアンモニアまたは塩基性有機化合物を添加して塩基性ケイ酸水溶液とし、該塩基性ケイ酸水溶液に前記の酸化剤と鉱酸を添加したケイ酸水溶液の残部を、徐々に滴下することを特徴とするコロイダルシリカの製造方法である。
即ち、本発明は、ケイ酸水溶液に酸化剤を添加して重縮合反応を促進させると共に、鉱酸を添加してケイ酸水溶液を安定化し、アンモニア又は塩基性有機化合物の存在下でのコロイド粒子の成長を促進させ、コロイダルシリカの製造時間を短縮するのである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に於いて、原料として使用できるケイ酸アルカリ水溶液については、市販されているJIS規格の水ガラスが安価に入手できるので好ましい。しかし、これに限らずケイ酸アルカリの水溶液であれば何れも使用可能である。本発明にあっては、ケイ酸アルカリ水溶液の濃度としては、シリカ含量を1〜10重量%に希釈したものが好ましい。
本発明では、まず、ケイ酸アルカリ水溶液をイオン交換によって、アルカリ金属を除去してケイ酸水溶液にする。アルカリ金属をイオン交換によって除去するには、陽イオン交換法により、通常の操作条件によればよい。
本発明の方法によるときは、ケイ酸水溶液に酸化剤と鉱酸を添加する。しかる後、一部を熟成させ、これに塩基性有機化合物を添加したものに、前記の残部の酸化剤と鉱酸を添加した酸性ケイ酸水溶液を、徐々に添加する。この工程は、シリカの微細な核粒子を形成させた後、その核粒子とケイ酸を重縮合反応させてシリカ粒子を成長させるものである。
即ち、ケイ酸水溶液に酸化剤を添加することにより、ケイ酸は不安定となり、重縮合反応が促進されてシリカ粒子の成長は速くなる。重縮合反応速度を促進させるためには、酸化剤の濃度が0.01%〜1重量%になるように添加する。0.01重量%以下では反応速度を促進させることはできず、又、1重量%以上添加するとゲル化反応が進むので目的が達せられない。
使用する酸化剤としては、過酸化水素水、次亜塩素酸、亜硝酸のいずれか、或はそれらを組み合わせたものを用いることができる。
酸化剤の添加により、ケイ酸水溶液は、酸化剤を添加しないケイ酸水溶液に比べてゲル化し易い。したがって、酸化剤を添加したケイ酸水溶液に鉱酸を添加して酸性化し、ゲル化時間が長くなるように調整する必要がある。通常、ゲル化時間を長くするために、pHを1〜2の範囲になるように調整する。
pHの調整のために使用する鉱酸としては、塩酸、硝酸、臭酸などを用いることができる。
本発明における熟成は、シリカの微細な核粒子を成長させるものであり、0〜98℃の範囲で行うことができるが、ケイ酸水溶液の安定性を考慮して、適宜所要時間を決定する。低温で行う場合は長時間必要とするが、高温で行う場合は短時間でよい。通常、70〜98℃の範囲で0.5〜4時間行うのが好ましい。熟成時間が所定の時間より長いとケイ酸水溶液はゲル化する。
本発明においては、熟成後、アンモニア又は塩基性有機化合物を添加して安定なケイ酸水溶液とする。使用する塩基性有機化合物としては、モノエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンなどを用いることができる。これらは、一種でも二種以上であってもよい。これら塩基性化合物の添加量は、ケイ酸水溶液のpHを9〜12の範囲とする量であるのが好ましい。pHが9以下では、次の工程であるケイ酸水溶液添加中にpHが低下し、不安定領域に入りゲル化する恐れがある。又、pH12以上では粒子の成長が遅い。
本発明によるときは、アンモニア又は塩基性有機化合物を加えてpHを9〜12に調整したケイ酸水溶液に、前記の酸化剤及び鉱酸を添加したケイ酸水溶液の残部を、温度90〜120℃で攪拌下に添加し、シリカを成長させる。攪拌は、反応液を循環させることにより行い、ケイ酸水溶液の添加は、循環経路途上で行うとよい。添加速度は、添加速度/反応液の循環速度の値が50〜150の範囲になるようであるのが好ましい。添加速度/循環速度の値を50以下または150以上にすると粒子の成長速度が遅くなる。
以上述べたように、本発明は、ケイ酸アルカリ水溶液をイオン交換によってアルカリ金属を除去した後、酸化剤と鉱酸を添加し、一部を熟成させ、しかる後、有機性の塩基を添加したものに、残部の酸化剤と鉱酸を添加したケイ酸水溶液を、徐々に滴下することによって、シリカ粒子の成長を促進させ、安定なシリカゾルを効率よく製造することができる。
(発明の効果)
本発明は、以上述べた工程を採用することによって、アルカリ金属を含まないコロイダルシリカを工業的有利に製造することができるという格別顕著な効果を示すので、その産業上の利用価値は極めて大である。
(実施例)
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例において、粒子成長速度の測定方法としては、熟成後、塩基性物質を添加したケイ酸水溶液に、酸化剤及び鉱酸を添加した残部のケイ酸水溶液を添加中にサンプルを抽出して測定した。サンプルの抽出は、添加後、15分または30分毎に行なった。
粒子成長速度の測定手段としては、分光光度計で波長が300nmの光の透過率によって行なった。測定用セルとしては、10mm角のものを使用した。透過率の低下が速いほど粒子成長が速いことを示す。
実施例1
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学協業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量5重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売 ダイアイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液に、過酸化水素水と塩酸を加えて、シリカ濃度が4重量%、過酸化水素水濃度が0.1重量%、塩酸濃度が0.1重量%のケイ酸水溶液1020gを得た。この水溶液のpHは1.5であり、そのゲル化時間は、常温でおよそ72時間であった。このケイ酸水溶液の一部320gを90℃の温浴で2時間熟成させた。熟成させた後、20gのモノエタノールアミンに、攪拌しながら添加した。このときのpHは10.7であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液700gを約2.3g/minの速度で約5時間添加し、pH10.3、シリカ濃度3.92重量%のシリカゾル1040gを得た。ケイ酸水溶液の添加は、循環途上で行った。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図1に示した。
実施例2
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学工業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量5重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売 ダイアイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液に、過酸化水素水と塩酸を加えて、シリカ濃度が4重量%、過酸化水素水濃度が0.8重量%、塩酸濃度が0.1重量%のケイ酸水溶液1020gを得た。この水溶液のpHは1.4であり、そのゲル化時間は、常温でおよそ72時間であった。このケイ酸水溶液の一部320gを90℃の温浴で1.5時間熟成させた。熟成させた後、20gのモノエタノールアミンに、攪拌しながら添加した。このときのpHは10.6であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液700gを約2.3g/minの速度で約5時間添加し、pH10.2、シリカ濃度3.92重量%のシリカゾル1040gを得た。ケイ酸水溶液の添加は、循環途上で行った。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図2に示した。
実施例3
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学工業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量5重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売 ダイアイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液に、過酸化水素水と塩酸を加えて、シリカ濃度が4重量%、過酸化水素水濃度が0.05重量%、塩酸濃度が0.1重量%のケイ酸水溶液1020gを得た。この水溶液のpHは1.6であり、そのゲル化時間は、常温でおよそ72時間であった。このケイ酸水溶液の一部320gを90℃の温浴で2.5時間熟成させた。熟成させた後、20gのモノエタノールアミンに、攪拌しながら添加した。このときのpHは10.7であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液700gを約2.3g/minの速度で約5時間添加し、pH10.3、シリカ濃度3.92重量%のシリカゾル1040gを得た。ケイ酸水溶液の添加は、循環途上で行った。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図3に示した。
実施例4
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学工業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量5重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売 ダイアイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液に、過酸化水素水と塩酸を加えて、シリカ濃度が4重量%、過酸化水素水濃度が0.1重量%、塩酸濃度が0.05重量%のケイ酸水溶液1020gを得た。この水溶液の一部320gを90℃の温浴で2時間熟成させた。熟成させた後、15gのモノエタノールアミンに、攪拌しながら添加した。このときのpHは10.6であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液700gを約2.3g/minの速度で約5時間添加し、pH10.3、シリカ濃度3.94重量%のシリカゾル1035gを得た。ケイ酸水溶液の添加は、循環途上で行った。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図4に示した。
実施例5
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学工業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量5重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売ダイアンイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液に、過酸化水素水と塩酸を加えて、シリカ濃度が4重量%、過酸化水素水濃度が0.1重量%、塩酸濃度が0.2重量%のケイ酸水溶液1020gを得た。この水溶液のpHは1.1であり、そのゲル化時間は、常温でおよそ72時間であった。このケイ酸水溶液の一部320gを90℃の温浴で2時間熟成させた。熟成させた後、25gのモノエタノールアミンに、攪件しながら添加した。このときのpHは10.5であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液700gを約2.3g/minの速度で約5時間添加し、pH10.0、シリカ濃度3.90重量%のシリカゾル1045gを得た。ケイ酸水溶液の添加は、循環途上で行った。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図5に示した。
比較例1
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学工業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量4重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売 ダイアイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液のpHは3.0であり、そのゲル化時間は、常温でおよそ48時間であった。このケイ酸水溶液の一部320gを90℃の温浴で2時間熟成させた。熟成させた後、10gのモノエタノールアミンに、撹拝しながら添加した。このときのpHは10.7であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液700gを約2.3g/minの速度で約5時間添加し、pH10.4、シリカ濃度3.9重量%のシリカゾル1030gを得た。添加は、循環途上で行った。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図1′に示した。
比較例2
市販のケイ酸ソーダ濃厚溶液(日本化学工業株式会社製、Jケイ酸ソーダ3号)をシリカ含量5重量%に希釈した。この水溶液を活性化されたカチオン性のイオン交換樹脂(日本練水(株)販売 ダイアイオンSKlB)に通し、ケイ酸ソーダからナトリウムを除去した。この水溶液に、過酸化水素水と塩酸を加えて、シリカ濃度が4重量%、過酸化水素水濃度が1.5重量%、塩酸濃度が0.1重量%のケイ酸水溶液1020gを得た。この水溶液のpHは1.1であり、そのゲル化時間は、常温でおよそ48時間であった。このケイ酸水溶液の一部320gを90℃の温浴で1時間熟成させた。熟成させた後、20gのモノエタノールアミンに、攪拌しながら添加した。このときのpHは10.3であった。この溶液を100℃に加熱し、250g/minの速度で循環させながら、残部のケイ酸水溶液を約2.3/minの速度で添加したところ、1時間経過後反応液はゲル化した。
得られたコロイダルシリカの粒子成長速度を測定した。その結果を第1図2′に示した。
第1図より本発明に係る方法によって、塩基性有機化合物の存在下で、アルカリ金属を含まないコロイダルシリカを粒子成長させると、成長速度が速いことが明らかとなる。
なお、以上の実施例1〜5及び比較例1〜2の条件を表として示すと第1表の通りである。

【図面の簡単な説明】
第1図は、各実施例及び比較例における添加時間に対する透過度を示す。
 
訂正の要旨 特許第2843655号「コロイダルシリカの製造方法」の明細書を、以下のとおり訂正する。
(ア)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1「徐々に滴下することを特徴とする」を「徐々に滴下することからなり、ここで酸化剤は、過酸化水素水、次亜塩素酸、亜硝酸からなる群から選ばれた一種または二種以上のものであって、その濃度は0.01〜1重量%であり、そして鉱酸は、塩酸、硝酸および臭酸からなる群がら選ばれた一種または二種以上のものであって、その添加量は、ケイ酸水溶液のpHが1.0〜2.0の範囲になるような量であることを特徴とする」と訂正する。
(イ)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項3および4を削除する。
異議決定日 2000-04-13 
出願番号 特願平2-179644
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 八原 由美子  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 能美 知康
新居田 知生
登録日 1998-10-23 
登録番号 特許第2843655号(P2843655)
権利者 イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー
発明の名称 コロイダルシリカの製造方法  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
代理人 高木 千嘉  
代理人 佐藤 辰男  
代理人 西村 公佑  
代理人 佐藤 辰男  

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