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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1016510
異議申立番号 異議1997-74232  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-09-08 
確定日 2000-05-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2589895号「シロキサン」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2589895号の特許を維持する。 
理由 理 由
1.手続の経緯
本件特許第2589895号は、昭和56年12月14日に出願された特願昭56-200245号の分割出願として新たに特許出願をしたものであって(特願平3-182091号)、平成8年12月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがあり、それにより取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月22日に訂正請求書が提出され、さらに、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年3月30日に補正がなされたものである。
2.訂正請求
(1)補正について
[1]補正の内容
訂正拒絶理由通知に対する上記の補正による補正事項は以下のとおりである。
イ.訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1における「0〜100の値を有する(但しZが0の時はF 1 はアミノ基ではない)]で表わされるシロキサン。」を「0〜100の値を有する(但しF 1 がアミノ基である時R1〜R6が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合を除く;またF 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合を除く)]で表わされるシロキサン。」と補正する。
ロ.訂正明細書の第3頁下3〜2行の「Z=0の時F 1 がアミノ基ではない」を「F 1 がアミノ基である時R1 〜R6 が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合を除く;またF 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合を除く」と補正する。
[2]補正の適否
上記のイ.の補正は、F 1 がアミノ基である時に特定の化合物を除くことにより、訂正された特許請求の範囲をさらに減縮するものであり、上記のロ.の補正は、イ.の補正に伴い訂正明細書の発明の詳細な説明における記載を整合して明りょうでない記載の釈明をなすものであるから、いずれの補正も訂正の要旨を変更するものではない。
したがって、当補正は、適法になされたものである。
(2)訂正について
[1]訂正の内容
本件訂正請求に係わる訂正事項は、上記補正事項を含めて以下のとおりである。
イ.特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「0〜100の値を有する]で表わされるシロキサン。」を「0〜100の値を有する(但しF 1 がアミノ基である時R1 〜R6 が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合を除く;またF 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合を除く)]で表わされるシロキサン。」と訂正する。
ロ.特許明細書の【0002】の「0〜100の値を有する]で表わされるシロキサン」を「0〜100の値を有する(但しF 1 がアミノ基である時R1 〜R6 が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合を除く;またF 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合を除く)]で表わされるシロキサン」と訂正する。
ハ.特許明細書の【0039】の「本明細書を通じて」を「本発明のポリシロキサン・・・【0134】本明細書を通じて」と訂正し、段落番号【0040】〜【0087】を【0135】〜【0182】に訂正する。
ニ.特許明細書の【0088】の「【0088】実施例35 次式」を「【0183】実施例35 30モル%のシロキサンを・・・【0228】実施例56 次式」と訂正し、段落番号【0090】〜【0096】を【0230】〜【0236】に訂正し、実施例番号36〜38を57〜59に訂正する。
[2]訂正の適否
上記のイ.の訂正は、F 1 がアミノ基である時に特定の化合物を除くことにより、特許明細書における特許請求の範囲を減縮するものであり、上記のロ.の訂正は、イ.の訂正に伴い特許明細書の発明の詳細な説明における記載を整合して明りょうでない記載の釈明をなすものであって、何れの訂正も当初明細書に記載された事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
上記のハ.およびニ.の訂正は、錯誤により削除された当初明細書の記載事項を再度明細書に記載する訂正および当訂正に伴い特許明細書の発明の詳細な説明における記載を整合させるものであり、何れの訂正も明りょうでない記載の釈明をなすものであり、かつ、当初明細書に記載された事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
そして、以上の訂正は、実質的に特許請求の範囲を拡張変更するものではない。
さらに、後記することから明らかなように、この訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項第1号および第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項〜第4項に規定する要件を満たすものであり、本件訂正は適法なものと認めることができる。
3.本件特許発明
本件特許発明の要旨は、訂正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「式:

〔式中、F 1 はアミノ基、ホルミル基、N-メチルアミノ基、m-エチルアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基(-COOH)、カルボメトキシ基、ハロ基、シアノ基、p-アセチル基、

Dはメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はオクチレン基を表わし;
R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 ,およびR6 は各々炭素数1〜4個の低級アルキル基、フェニル基、ビニル基、シアノエチル基又はアミノプロピル基であり;
x,y及びzは各々0〜100の値を有する(但しF 1 がアミノ基である時R1 〜R6 が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合を除く;またF 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合を除く)〕で表わされるシロキサン。」
4.特許異議の申立てについて
(1)異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証および甲第2号証を提示し、本件発明は、甲各号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、当発明に係わる特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、また、本件発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当発明に係わる特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、よって、本件特許を取り消すべきである旨主張している。
(2)甲各号証の記載事項
甲第1号証(英国特許第1,062,418号明細書)には、次式の化合物が記載されている(p.4 Example6)。


甲第2号証(米国特許第4,049,691号明細書)には、次式の化合物が記載されている(Y,Y’はメチル基,エチル基、フェニル基;6欄55〜68行)。

(3)異議申立て理由についての判断
イ.本件発明の特許が特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたか否かについて:
本件発明と甲第1号証に記載の発明とをそれらの化合物の化学構造において対比すると、本件発明のシロキサンにおいては、上述のとおり、本件訂正請求により、F 1 がアミノ基である時R1 〜R6 が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合が除かれており、甲第1号証に記載の化合物においては、本件発明のR1 〜R6 に相当する置換基がメチル基であり、その余の構造も本件発明のシロキサンと一致しているから、当化合物が本件発明の除外されたシロキサンに相当するのは明らかである。
したがって、本件発明は甲第1号証に記載された発明に該当するものではない。
本件発明と甲第2号証に記載の発明とをそれらの化合物の化学構造において対比すると、本件発明のシロキサンにおいては、F 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合が除かれており、この除かれたシロキサンが甲第2号証に記載された化合物に相当するのは明らかである。
したがって、本件発明は甲第2号証刊行物に記載された発明に該当するものではない。
よって、本件発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。
ロ.本件発明の特許が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたか否かについて:
本件発明と甲各号証に記載の発明とをそれらの化合物の化学構造において対比すると、本件発明のシロキサンにおいては、上述のとおり、F 1 がアミノ基である時R1 〜R6 が炭素数1〜4個の低級アルキル基の場合が除かれており、本件発明のシロキサンと甲第1号証に記載の化合物とは、F 1 がアミノ基である時、Si原子に直結した置換基(本件発明においては、R1 〜R6 基)において、本件発明では炭素数1〜4個の低級アルキル基以外のもので、甲第1号証ではメチル基であるから、この点において両発明は明白に相違している。なお、本件発明においてF 1 がアミノ基でない時には、両発明が相違するのは自明のことである。
また、本件発明のシロキサンにおいては、F 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時Zが―O―の場合が除かれており、この除かれたシロキサンが甲第2号証に記載された化合物に相当するから、本件発明のシロキサンと甲第2号証に記載の化合物とは、F 1 がアミノ基で、x,y,zが零である時、―O―結合において明白に相違し、本件発明のシロキサンにおいてF 1 がアミノ基で、x,y,zの少なくとも一つが零でない時、Si原子は三個以上であるから、両化合物は―Si―O―結合鎖において明白に相違している。なお、本件発明においてF 1 がアミノ基でない時には、両発明が相違するのは自明のことである。
そして、本件発明におけるシロキサンは、本件明細書に記載のとおり、各種の重合体の改質剤として有用なものであり、それらの重合体の可撓性や耐衝撃性あるいは輻射線に対する耐久性や耐酸化性さらには加工成形性や耐酸性などを向上させるものであり、当シロキサンは格別に顕著な効果を奏するものであるといえる。
したがって、本件発明は、甲各号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

4.むすび
以上のとおり、本件訂正は容認できるものであり、また、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-04-28 
出願番号 特願平3-182091
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08G)
P 1 651・ 113- YA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 市川 信郷谷口 浩行宮坂 初男保倉 行雄  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 柿崎 良男
小島 隆
登録日 1996-12-05 
登録番号 特許第2589895号(P2589895)
権利者 エム・アンド・テイ・ケミカルス・インコーポレイテツド
発明の名称 シロキサン  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 八木田 茂  
代理人 森田 哲二  

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