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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22C
管理番号 1016588
異議申立番号 異議1998-74365  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-08 
確定日 2000-01-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2723376号「鋳物砂用粘結組成物及び鋳型の製造方法」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2723376号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2723376号の請求項1、2に係る発明の出願は、平成3年5月16日に特許出願され、平成9年11月28日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後森田峰代及びフォセコ、インターナショナル、リミテッドより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年2月2日に特許異議意見書が提出され、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年9月13日に特許異議意見書及び訂正請求書が提出され、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年12月8日に手続補正書(訂正請求書)が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正請求に対する補正の適否について
平成11年12月8日付手続補正書(訂正請求書)による補正の内容には、当該手続補正書(訂正請求書)第1頁下から第8行〜第8頁第4行記載のとおり、(1)▲1▼▲2▼▲3▼、(2)▲1▼▲2▼、(3)▲1▼▲2▼、(4)▲1▼▲2▼のものがある。
(1)▲1▼のものは、全文訂正明細書中の特許請求の範囲の記載について、請求項1の「アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂」を、「水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂」と補正するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(1)▲2▼のものは、訂正請求書の訂正事項aについて上記と同様の補正を行うというものであり、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(1)▲3▼のものは、訂正請求書中の請求の原因について、(1)▲1▼の訂正を行った根拠を明らかにするものであり、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(2)▲1▼のものは、全文訂正明細書中の特許請求の範囲の記載について、請求項2の「アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂」を、「水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂」と補正するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(2)▲2▼のものは、訂正請求書の訂正事項bについて上記と同様の補正を行うというものであり、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(3)▲1▼のものは、全文訂正明細書中の【0009】の記載についても上記(1)▲1▼と同様の補正を行うというものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(3)▲2▼のものは、訂正請求書の訂正事項cについて上記と同様の補正を行うというものであり、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(4)▲1▼のものは、全文訂正明細書中の【0010】の記載についても上記(1)▲1▼と同様の補正を行うというものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
また、(4)▲2▼のものは、訂正請求書の訂正事項dについて上記と同様の補正を行うというものであり、訂正請求書の要旨を変更するものに該当しない。
したがって、これら(1)▲1▼▲2▼▲3▼、(2)▲1▼▲2▼、(3)▲1▼▲2▼、(4)▲1▼▲2▼の補正内容は、いずれも訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項で準用する第131条第2項の規定に適合する。
イ.訂正の内容
そうすると、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書及び図面」という。)に対して訂正請求されたのは、平成11年12月8日付け手続き補正書によって補正された訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりにすることであり、その具体的内容は、
(a)特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載
「ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物。」を、
「ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物。」に訂正し、
(b)特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載
「耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物を用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法。」を、
「耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.0l:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法。」に訂正し、
(c)【0009】の記載
「即ち本発明は、アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とほう素化合物を含有してなる鋳物砂用粘結組成物に関する。」を、
「即ち本発明は、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.0l:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物に関する。」に訂正し、
(d)【0010】の記載
「又、本発明は、耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とほう素化合物を含有してなる鋳物砂用粘結組成物を用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法に関する。」を、「又、本発明は、耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造されるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法に関する。」に訂正し、
(e)【0013】の記載
「(式中、M1及びM2はH原子又はLi,K,Na等の一種又はこれらの組み合わせから成るアルカリ金属元素、X及びYはH原子又はメチル基等のアルキル基又はこれらの組み合わせ、nとmの和は1.2〜5.5である。)
かかるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、常法によりビスフェノールとホルムアルデヒドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下水中で反応させて得られるが、アルカリ金属水酸化物:ビスフェノールのモル比は0.7:1.0〜5.0:1.0の範囲が良く、好ましくは、1.0:1.0〜4.0:1.0が良好である。モル比が0.7:1.0未満では硬化速度と鋳型強度が不十分であり、一方モル比が5.0:1.0を超えると可使時間が短くなり、好ましくない。」を、
「(式中、M1及びM2はH原子又はLi,K,Na等の一種又はこれらの組み合わせから成るアルカリ金属元素、X及びYはメチル基、nとmの和は1.2〜5.5である。)
かかるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、常法によりビスフェノールAとホルムアルデヒドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下水中で反応させて得られるが、アルカリ金属水酸化物:ビスフェノールAのモル比は0.7:1.0〜5.0:1.0の範囲であり、好ましくは、1.0:1.0〜4.0:1.0が良好である。モル比が0.7:1.0未満では硬化速度と鋳型強度が不十分であり、一方モル比が5.0:1.0を超えると可使時間が短くなり、好ましくない。」に訂正し、
(f)【0014】の記載
「ホルムアルデヒド:ビスフェノールのモル比は1.2:1.0〜6.0:10の範囲が良く、好ましくは、2.0:1.0〜5.5:1.0が良好である。モル比が1.2未満では前記と同様にほう素化合物との相溶性が悪くなり、モル比が6.0を超えると未反応ホルムアルデヒドの残存量が多くなる。」を、
「ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比は1.2:1.0〜6.0:1.0の範囲であり、好ましくは、2.0:1.0〜5.5:1.0が良好である。モル比が1.2未満では前記と同様にほう素化合物との相溶性が悪くなり、モル比が6.0を超えると未反応ホルムアルデヒドの残存量が多くなる。」に訂正し、
(g)【0015】の記載
「ほう素化合物としては、ほう酸及びほう酸、四ほう酸ナトリウム10水和物、ほう酸カリウム10水和物、メタほう酸ナトリウム、五ほう酸カリウム及び五ほう酸ナトリウム等のほう酸塩類が好ましい。」を、
「ほう素化合物としては、ほう酸及びほう酸、四ほう酸ナトリウム10水和物、ほう酸カリウム10水和物、メタほう酸ナトリウム、五ほう酸カリウム及び五ほう酸ナトリウム等のほう酸塩である。」に訂正し、
(h)【0016】の記載
「かかるほう素化合物:ビスフェノールのモル比は0.01:1.0〜2.0:1.0の範囲が良く、好ましくは、0.05:1.0〜1.0:1.0が良好である。モル比が0.01未満では鋳型の硬化速度及び度が不十分であり、モル比が2.0を超えるとアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液の性状及び水分含量にもよるが、ほう酸及びほう酸塩類の相溶性が悪化し沈澱物が発生する傾向がある。」を、
「かかるほう素化合物:ビスフェノールAのモル比は0.0l:1.0〜2.0:1.0の範囲であり、好ましくは、0.05:1.0〜1.0:1.0が良好である。モル比が0.01未満では鋳型の硬化速度及び強度が不十分であり、モル比が2.0を超えるとアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液の性状及び水分含量にもよるが、ほう酸及びほう酸塩類の相溶性が悪化し沈澱物が発生する傾向がある。」に訂正し、
(i)【0017】の記載
「本発明に使用する上記の一般式で示されるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の具体的な化合物としては、ビスフェノールAの場合、X及びYはメチル基であるホルムアルデヒドの付加縮合物であり、ビスフェノールFの場合、X及びYはH原子であるホルムアルデヒドの付加縮合物である。」を、
「本発明に使用する上記の一般式で示されるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の具体的な化合物としては、X及びYはメチル基であるホルムアルデヒドの付加縮合物である。」に訂正し、
(j)【0019】の冒頭の記載
「本発明の粘結組成物には、鋳型強度を向上させる目的でシランカップリング剤を加えても良い。」を、
「本発明の粘結組成物には、鋳型強度を向上させる目的でシランカップリング剤が加えられる。」に訂正しようとするものである。
ウ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における、「アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂」が「水溶性」であり、「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される」ことを規定し、さらに、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0であること、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であること、シランカップリング剤の添加量が粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部であることを規定したものであるから、明らかに特許請求の範囲の減縮に相当する。そして、前記樹脂が水溶性であることは出願当初の明細書の【0023】に、前記アルカリ性物質については【0021】に、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0であることは【0014】に、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0であることは【0013】に、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であることは【0016】に、またシランカップリング剤の添加量を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部としたことは【0019】に記載されている。また「二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物」を「二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物」と訂正したのは、二酸化炭素硬化に用いられる粘結組成物の用途を明確に限定したものであって、やはり特許請求の範囲の減縮に相当する。したがって、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
訂正事項bは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項2における、「アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂」が「水溶性」であり、「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される」ことを規定し、さらに、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0であること、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.0l:1.0〜2.0:1.0であること、シランカップリング剤の添加量が粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部であること、鋳物砂用粘結組成物の添加量を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部とすることを規定したものであるから、明らかに特許請求の範囲の減縮に相当する。そして、これらの訂正は、ほぼ訂正事項aと同じ根拠に基づくものであるが、鋳物砂用粘結組成物の添加量を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部としたことは出願当初の明細書の【0020】に記載されている。したがって、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
訂正事項cは、請求項1に対応する部分の記載を、訂正後の記載に合わせて修正したものであり、訂正後の請求項1に対して明りょうでない記載を釈明し、或いは誤記となる記載を訂正するものである。
訂正事項dは、請求項2に対応する部分の記載を、訂正後の記載に合わせて修正したものであり、訂正後の請求項2に対して明りょうでない記載を釈明し、或いは誤記となる記載を訂正するものである。
訂正事項eは、本発明のアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、ビスフェノールAを原料とすることを明確にし、またアルカリ金属水酸化物とビスフェノールAのモル比を請求項に規定したことから、その「範囲が良く」ではなく、その「範囲であり」と訂正して、訂正後の請求項に対して明りょうでない記載を釈明したものである。
訂正事項fは、ホルムアルデヒドとビスフェノールのモル比について、訂正後の請求項に対して明りょうでない記載を釈明したものである。
訂正事項gは、請求項に規定されているように、本発明ではほう酸又はほう酸塩がほう素化合物として用いられることを明確にし、明りょうでない記載を釈明したものである。
訂正事項hは、ほう素化合物とビスフェノールのモル比が、ほう素化合物とビスフェノールAについてのモル比であり、また、その「範囲が良く」ではなく、その「範囲であり」と訂正して、訂正後の請求項に対して明りょうでない記載を釈明したものである。
訂正事項iは、訂正事項eに合わせ、ビスフェノールFに関する記載を削除して、また置換基の特定を行って、明りょうでない記載を釈明したものである。
訂正事項jは、シランカップリング剤の添加は必須要件であることを明確にし、明りょうでない記載を釈明したものである。
今般の訂正のうち、訂正事項a及びbは特許法第120条の4第2項但し書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に相当する。また訂正事項cからjは上記のように、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
エ.独立特許要件の判断
当審は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1、2にかかる発明に対して、刊行物1(申立人森田峰代が甲第1号証として、申立人フォセコ、インターナショナル、リミテッドが甲第1号証としてそれぞれ提出した特開平1-224263号公報)、刊行物2(申立人森田峰代が甲第4号証として提出した特開昭55-68153号公報)、刊行物3(申立人森田峰代が甲第3号証として、申立人フォセコ、インターナショナル、リミテッドが甲第3号証としてそれぞれ提出した特開昭62-40948号公報)記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとの理由で、平成11年6月24日付けで取消理由を通知した。
〔訂正請求書の請求項1、2に係る発明〕
訂正請求書の請求項1、2に係る発明は、平成11年12月8日付け手続補正書によって補正された訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2にそれぞれ記載されたとおりのものと認める。
〔刊行物記載の発明〕
取消理由通知書において引用された、刊行物1には、「レゾール型フェノール・アルデヒド樹脂のアルカリ性水溶液と、その樹脂と安定な複合体を形成することができるオキシアニオンとを含み、溶液中に存在するアルカリの量が、樹脂とオキシアニオンとの間で安定な複合体が生成するのを実質的に防ぐに充分であることを特徴とする、結合剤組成物。」(特許請求の範囲第1項)、「オキシアニオンが硼酸塩、スズ酸塩、又はアルミン酸塩であることを特徴とする、特許請求の範囲第1-12項の何れか1つの項に記載する結合剤組成物。」(同第13項)、「硼酸塩が、硼酸によって与えられることを特徴とする、特許請求の範囲第13項に記載する結合剤組成物。」(同第16項)、「組成物がさらにシランを含んでいることを特徴とする、特許請求の範囲第1-19項の何れか1つの項に記載する結合剤組成物。」(同第20項)、「レゾール型フェノール・アルデヒド樹脂のアルカリ水溶液と、樹脂と安定な複合体を形成することができるオキシアニオンとから成る結合剤に、粒子状材料を混合して成る混合物を所望の形に成形し、オキシアニオンに樹脂と安定な複合体を形成させるために、成形体内に二酸化炭素を通し、それによって樹脂を固化させることを特徴とする、粒子状材料から成る成形体の製造方法。」(同第23項)が記載され、第7頁右下欄第3表には、結合剤1DB〜1ECが、本件発明と同程度の添加量で、通ガス時間120(秒)に対する圧縮強度が、16.2〜18.8(Kg・cm-2)程度のものが得られた実施例が記載されている。
また、刊行物2には、「a)アルコール溶性フェノール性樹脂とb)多価金属の水酸化物および/またはその酸化物とc)水とd)必要に応じて有機溶剤および/またはアルカリ性金属の水酸化物からなる炭酸ガス硬化用鋳型粘結材料」(特許請求の範囲第1項)、「アルコール溶性フェノール樹脂がアルコール溶性レゾール型フェノールホルムアルデヒド樹脂である特許請求の範囲第1項記載の炭酸ガス硬化用鋳型粘結材料」(同第3項)、「本発明に用いられるアルコール溶性フェノール樹脂は、フェノールホルムアルデヒド系樹脂についていえばレゾール型、ノボラック型、……等樹脂の結合形式に関係なくアルコール溶性であれば本目的に使用することができ、樹脂合成原料であるフェノール類についてもフェノールだけでなくクレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノール……など使用することができる。」(第3頁左上欄第3行〜第13行)、「一方ノボラック型樹脂(熱可塑性樹脂)を使用する場合は炭酸ガス吹込み時の粘結力が大きいが放置による強度の向上はレゾール型に比べて少ない。このことはレゾール型樹脂は炭酸ガス吹込み後も放置により共存する金属化合物の触媒作用でメチレン架橋が進行し、自硬性樹脂として働くものであり得られた鋳型の耐熱性は極めて高くなる。」(第4頁右上欄第12行〜第19行)、「樹脂C冷却器、攪拌装置を備えた四ツ口フラスコに、ビスフェノールA640g、37%ホルムアルデヒド162g、蓚酸2.0gを入れ還流温度に3Hr加熱した後脱水濃縮し軟化点95℃のノボラック型の樹脂Cを得た。」(第5頁左上欄第8行〜第13行)が記載されている。
また、刊行物3には、「アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂と有機エステルから成る鋳物砂用粘結剤。」(特許請求の範囲第1項)、「特に好ましくは両者がメチルのもの、即ち、ビスフェノールAのアルカリレゾール型ホルムアルデヒド縮合物である。」(第2頁右上欄第17行〜第19行)、「本発明アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂を用いると、従来のアルカリレゾール型フェノール樹脂(例えば特開昭50-130627号公報)に比べて少量でより優れた強度を備えた鋳型を得ることができる。」(第2頁右上欄第20行〜左下欄第4行)、「(4)粘結剤の経時変化:
上記粘結剤を40±2℃の恒温槽に放置した場合の経時粘度変化をB型粘度計にて測定した。結果を表-3に示した。粘度測定温度は20℃とした。」(第3頁右上欄第15行〜第19行)、「さらに、本発明の粘結剤は高温度下に保管しても、粘度上昇が少なく、実際的な作業面での粘結剤の取扱いがたやすくなる。」(第4頁右上欄第2行〜第4行)と記載され、表3には、本発明アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂を用いた粘結剤が、比較例である従来のアルカリレゾール型フェノール樹脂を用いた粘結剤に比べて、粘結剤の粘度変化が少ないという結果が示されている。
〔対比・判断〕
そこで、まず、平成11年12月8日付け手続補正書により補正された訂正請求書の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)と刊行物1〜3記載の発明とを対比する。
刊行物1の特許請求の範囲第1,3,13,16,20,23項の記載から、刊行物1には、「フェノールとホルムアルデヒドから得られるアルカリレゾール型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物。」が記載されている。
そして、本件発明と刊行物1に記載された発明とは、「(広義の)フェノールとホルムアルデヒドから得られ、アルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物。」という点において一致し、本件発明が、「フェノール」として、「ビスフェノールA」を採用し、「ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.0l:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.00l〜1重量部添加してなる」のに対し、刊行物1に記載された発明が、「フェノール」として、「ビスフェノールA」を採用しておらず、したがって上記モル比も規定されていない点で相違している。
上記相違点について検討する。
刊行物2には、炭酸ガス硬化用鋳型粘結材料(本件発明の二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物に相当する)に使用するフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の原料の(広義の)フェノールとして、ビスフェノールA(ノボラック型の樹脂が例示されているが、放置による強度を向上させるためにレゾール型とすることも示唆されている)を採用したものが記載されている。
しかし、刊行物2では水溶性フェノール性樹脂は対象外であり(第2頁左下欄第16〜18行)、鋳型強度が低いものとして排除されており(第2頁右下欄第12〜15行)、また刊行物2の粘結材料は多価金属塩とは言ってもほう酸やほう酸塩のようなオキシアニオンを用いるものではなく、主に2価金属の水酸化物を用いて架橋を行うものであって、本件発明や前記刊行物1とは異なるメカニズムに基づくものであるから、刊行物2の教示を水溶性フェノール樹脂に関して適用することは困難である。
また、刊行物3には、鋳物砂用粘結組成物に使用する粘結剤として、アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂が記載されており、また、アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂を用いると、従来のアルカリレゾール型フェノール樹脂を用いる場合に比べ、少量でより優れた強度を備えた鋳型を得ることができ、また、粘結剤の経時変化が少ない旨が記載されている。
しかし、刊行物3は、アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂と有機エステルからなる鋳物砂用粘結剤を記載しており、アルカリレゾール型ビスフェノール樹脂としては、ビスフェノールAのアルカリレゾール型ホルムアルデヒド縮合物などが好ましいとされている。すなわち刊行物3記載の発明には本件特許発明の炭酸ガス硬化法とはメカニズムを異にする、有機エステル硬化法が用いられているから、刊行物3の教示を二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物に関して適用することは困難である。
また、刊行物1によればフェノールとしてはフェノールそのものが好ましいとされ、付記的にパラクレゾールやメタクレゾールのような置換フェノールやバラフェノールスルホン酸のような単核フェノール化合物が挙げられているに過ぎず(4頁左下欄下から3行から右下欄2行)、二酸化炭素硬化法のメカニズムからパラ位が塞がっている置換フェノールは好ましくない旨の否定的な記載が見られることから、刊行物1でビスフェノールAは全く認識されていないと言わざるを得ない。したがって、刊行物1を読む当業者が(広義の)「フェノール」として認識するものはせいぜい「単核フェノール」の範疇に収まるものであり、ビスフェノールAは含み得ないものと認められる。
また、効果について検討すると、鋳物砂の種類を共通にすれば、本件発明の実施例は、刊行物1に記載された発明の実施例に相当する表1の比較例1よりも、鋳型の硬化速度、鋳型強度、粘結剤の貯蔵安定性がともに優れており、また、特許権者が平成11年9月13日付け特許異議意見書に添付した資料1を参照すると、ビスフェノールAを用いた本件発明が、フェノールを用いたものに比べ、鋳型の硬化速度、鋳型強度が格段に優れていることがわかる。したがって、本件発明は、刊行物1〜3に記載された発明からは予測し得ない、顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、刊行物1〜3に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはない。
この判断は、本件の請求項2に係る発明についても同様である。
よって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
したがって、補正された訂正請求書の特許請求の範囲に記載された発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
オ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び第120条の4第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
ア.本件請求項1、2に係る発明
本件請求項1、2に係る発明は、平成11年12月8日付け手続補正書により補正された平成11年9月13日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2にそれぞれ記載されたとおりのものと認める。
イ.申立ての理由の概要
申立人森田峰代は、特許異議申立書において、特許明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1、2に係る発明に対して、甲第1号証(特開平1-224263号公報)、甲第2号証(特公平3-18530号公報)、甲第3号証(特開昭62-40948号)、甲第4号証(特開昭55-68153号証)記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許を取り消すべき旨主張している。
また、申立人フォセコ、インターナショナル、リミテッドは、特許異議申立書において、特許明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1、2に係る発明に対して、甲第1号証(特開平1-224263号公報)、甲第2号証(岩波書店発行、理化学事典第4版、第1036頁及び1083頁)、甲第3号証(特開昭62-40948号)、甲第4号証(特開昭63-40636号公報)、甲第5号証(米国特許第4,937,024号明細書)記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許を取り消すべき旨主張している。
ウ、甲号証記載の発明
申立人森田峰代が提出した甲第1号証には、前記刊行物1と同じ内容が、同甲第2号証には、「鋳物砂100重量部に対し、カリウムアルカリレゾール型ビスフェノール樹脂水溶液含有粘結剤0.5〜6重量部を含む組成物を鋳型枠内へ成型し、該成型物に有機エステルガスを通気させて硬化させることを特徴とする鋳型の製造法」(特許請求の範囲第1項)が、同甲第3号証には、前記刊行物3と同じ内容が、同甲第4号証には、前記刊行物2と同じ内容が記載されている。
また、申立人フォセコ、インターナショナル、リミテッドが提出した甲第1号証には、前記刊行物1と同じ内容が、同甲第2号証には、ビスフェノールAが広義のフェノールの一種であることが記載され、同甲第3号証には、前記刊行物3と同じ内容が、同甲第4号証(申立人森田峰代が提出した甲第2号証の公開公報)には、「カリウムアルカリレゾール型ビスフェノール樹脂水溶液含有粘結剤を配合した鋳物砂を鋳型枠内へ成型し、該成型物に有機エステルガスを通気させて硬化させることを特徴とする鋳型の製造法」(特許請求の範囲第1項)が、同甲第5号証には、「フェノール樹脂を結合剤として使用し、この発明で用いるエステルと同じエステルを用いて、鋳型を硬化させることは、レモンほかに係る1988年7月26日に発行の米国再発行特許第32,710号明細書に示されている」(第2欄第28-31行)、「ここで用いることのできるフェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、3,5キシレノール、ビスフェノールA、他の置換フェノール又はそれらの混合物を、ホルムアルデヒド、又はフルアルデヒドのようなアルデヒドと反応させることにより得られるものである」(第5欄第56-60行)が記載されている。
エ.当審の判断
当審の判断は、前記刊行物1〜3については上記2.エに示したとおりであるが、その他の刊行物について検討を進める。
申立人森田峰代の提出した甲第2号証、申立人フォセコ、インターナショナル、リミテッドが提出した甲第4号証、甲第5号証は、すべて有機エステル硬化法に関するものであり、本件特許発明の炭酸ガス硬化法とはメカニズムを異にするものであるから、刊行物3と同様、二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物に関して適用することは困難である。
また、申立人フォセコ、インターナショナル、リミテッドが提出した甲第2号証には、ビスフェノールAが広義のフェノールの一種であることが記載されているが、刊行物1記載の発明においてビスフェノールAが意識されていないことは先に述べたとおりであるから、先に検討したのと同じ理由により、刊行物1記載の発明に単純にビスフェノールAを適用することもできない。
よって、本件発明を、同第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。
また、同様の理由により、本件の請求項2に係る発明を、同第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鋳物砂用粘結組成物及び鋳型の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物。
【請求項2】耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が、0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ガス硬化性鋳型に用いる改善された鋳物砂用粘結組成物及び鋳型の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機粘結剤を用いて主型や中子のような鋳型を製造する方法として、自硬性鋳型法、コールドボックス鋳型法、クローニング法(シェル法)は公知である。特に有機自硬性鋳型造型法は、機械鋳物分野を中心に生産性、鋳物品質、安全衛生上の観点から無機系に代わって既に汎用的な造型法となっている。
【0003】
一方、従来、中、高速で鋳型を製造するには、フェノール樹脂を粒状耐火物に被覆した、いわゆるコーテッドサンドを加熱硬化して鋳型を製造するクローニング法が幅広く使用されている。
【0004】
しかし、鋳型製造時の省エネルギー、鋳型生産速度、更に鋳型、鋳物の品質を改善するために、ガス状又はエロゾル状物質で常温硬化させるコールドボックス鋳型法が、クローニング法を代替する鋳型の造型方法として、鋳物業界で真剣に導入が試みられている。
【0005】
最近、ガス硬化の鋳型造型法である技術として、特に安全衛生上の観点から二酸化炭素を用いて鋳型を製造するプロセスとして特開平1-224263が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の技術においては十分な鋳型の硬化速度及び強度が得られ難く比較的多くの粘結剤を使用しなければならない。又、貯蔵時における粘結剤自体の粘度が経時的に変化し、貯蔵安定性が悪くなり、特に夏場において貯蔵安定性が悪化し易いなどの欠点があった。
【0007】
本発明は前記問題点を改善するものであり、比較的少量の粘結剤でも十分な鋳型の硬化速度及び強度が得られ、粘結剤自体の貯蔵安定性の良好なものが得られる鋳物砂用粘結組成物及び鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の問題点を解決すべく鋭意研究の結果、アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂にほう素化合物を添加含有せしめた粘結組成物を、耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、二酸化炭素により硬化せしめることにより、鋳型の硬化速度及び強度が大幅に改善されることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち本発明は、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物に関する。
【0010】
又、本発明は、耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法に関する。
【0011】
本発明で用いられるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、下記一般式で示される。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、M1及びM2はH原子又はLi,K,Na等の一種又はこれらの組み合わせから成るアルカリ金属元素、X及びYはメチル基、nとmの和は1.2〜5.5である。)
かかるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、常法によりビスフェノールAとホルムアルデヒドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下水中で反応させて得られるが、アルカリ金属水酸化物:ビスフェノールAのモル比は0.7:1.0〜5.0:1.0の範囲であり、好ましくは、1.0:1.0〜4.0:1.0が良好である。モル比が0.7:1.0未満では硬化速度と鋳型強度が不十分であり、一方モル比が5.0:1.0を超えると可使時間が短くなり、好ましくない。
【0014】
ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比は1.2:1.0〜6.0:1.0の範囲であり、好ましくは、2.0:1.0〜5.5:1.0が良好である。モル比が1.2未満では前記と同様にほう素化合物との相溶性が悪くなり、モル比が6.0を超えると未反応ホルムアルデヒドの残存量が多くなる。
【0015】
ほう素化合物としては、ほう酸及びほう酸、四ほう酸ナトリウム10水和物、ほう酸カリウム10水和物、メタほう酸ナトリウム、五ほう酸カリウム及び五ほう酸ナトリウム等のほう酸塩である。
【0016】
かかるほう素化合物:ビスフェノールAのモル比は0.01:1.0〜2.0:1.0の範囲であり、好ましくは、0.05:1.0〜1.0:1.0が良好である。モル比が0.01未満では鋳型の硬化速度及び強度が不十分であり、モル比が2.0を超えるとアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液の性状及び水分含量にもよるが、ほう酸及びほう酸塩類の相溶性が悪化し沈澱物が発生する傾向がある。
【0017】
本発明に使用する上記の一般式で示されるアルカリレゾール型ビスフェノール--ホルムアルデヒド樹脂の具体的な化合物としては、X及びYはメチル基であるホルムアルデヒドの付加縮合物である。
【0018】
本発明のアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液にほう素化合物を含有せしめた粘結組成物で鋳型を製造する際、二酸化炭素を用いて硬化せしめることにより、従来公知のレゾール型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂からなる粘結剤(特開平1-224263)より比較的少量の粘結剤でも十分な鋳型の硬化速度及び強度が得られ、粘結剤自体の貯蔵安定性の良好な粘結組成物を得ることができ、大幅に改善ができるものである。また本発明におけるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とほう素化合物とを含有せしめた粘結組成物溶液の固形分含量は25〜75重量%であることが望ましい。25重量%未満では鋳型強度が低く、一方75重量%を超えると粘結剤自体の粘度が高くなり、混練ムラになり易い等の問題がある。
【0019】
本発明の粘結組成物には、鋳型強度を向上させる目的でシランカップリング剤が加えられる。好ましいシランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は該粘結剤100重量部に対してシランカップリング剤0.001〜1重量部、好ましくは、0.002〜0.5重量部の割合で添加し、この粘結剤組成物を用いて同様のプロセスによって鋳型を製造することができる。
【0020】
本発明において、鋳物用砂型を製造するには、耐火性粒状材料100重量部に対して、粘結組成物0.4〜15重量部、好ましくは0.6〜8重量部を周知の方法で混練し、鋳型模型に充填した後、適量の二酸化炭素を通気(ガツシング)させることにより硬化せしめる。二酸化炭素の量及び気圧等は特に限定されるものではない。
【0021】
本発明に用いられるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂には、尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のホルマリン縮合が可能なモノマーを、重量比で主たる構成単位とならない程度に共縮合させてもよい。本発明に用いるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の製造の際に用いられる適当なアルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びこれらの混合物であるが、水酸化カリウムが最も好ましい。
【0022】
耐火性粒状材料としては、石英質を主成分とする硅砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、及びアルミナサンド等が挙げられる。
【0023】
樹脂の製造法は周知のいずれの方法でもよいが、例えば、ビスフェノール化合物を最適な溶媒(水)中でアルカリ金属水酸化物の存在下、加熱撹拌させながら、ホルムアルデヒドを分割あるいは連続的に添加し、樹脂化を行う。生成した樹脂に対してほう素化合物と水を別々に加えるか、或いは樹脂を水溶液化(樹脂:水=3:1〜1:3)して後、ほう素化合物を加える等の方法を用いると良い。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
ビスフェノールA456gr、水781.5gr、95%水酸化カリウム118.1grを撹拌器、冷却管、温度計、ヒーターを備えた周知の合成装置であるフラスコに仕込み撹拌しながら80℃に保温し、パラホルムアルデヒド(純度92%)261grを徐々に添加し、90分反応させた。その後室温になる迄冷却した。得られたアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液83重量部に対して7.3重量部の95%水酸化カリウム及び9.4重量部の四ほう酸ナトリウム10水和物及び0.6重量%のγ-アミノプロピルトリエトキシシランを順次溶解し、本発明の粘結剤を得〔この時の25℃に於ける粘度は150cps〕、鋳型強度の経時変化(硬化速度)を評価した。鋳型強度の評価については、フリーマントル珪砂100重量部に対し、前記の粘結剤の3重量部を混練した混合物を50mmφ×50mmhφのガッシング用テストピース模型に充填し、二酸化炭素を通気(101/分)させた後、抗圧力の経時変化を測定した。また、前記の粘結剤の貯蔵安定性テストについては、35℃の恒温器に貯蔵した場合のB型粘度計での粘度の経時変化を測定した(粘度の測定温度は25℃)。
【0026】
結果を表1に示す。
【0027】
比較例-1
フェノール800gr、パラホルムアルデヒド(純度92%)701.3gr、50%水酸化ナトリウム水溶液40.85grを撹拌器、冷却管、温度計、ヒーターを備えた周知の合成装置であるフラスコに仕込み撹拌しながら65℃まで昇温し、1時間保持した。再び1分当り1℃の割合で75℃まで昇温し30分間保持した。その後、1分当り1℃の割合で85℃まで昇温し170分間反応させた。その後室温になる迄冷却した。得られたレゾール型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂25重量部に対して5重量部の四ほう酸ナトリウム10水和物及び35重量部の50重量%水酸化カリウム及び0.4重量部のγ-アミノプロピルトリエトキシシランを順次溶解し、粘結剤を得〔この時の25℃での粘度は146cps〕、鋳型強度の経時変化(硬化速度)を評価した。即ち、フリーマントル珪砂100重量部に対し、前記の粘結剤を3重量部を混練した混合物を50mmφ×50mmhφのガッシング用テストピース模型に充填し、二酸化炭素を通気(101/分)させた後、抗圧力の経時変化を測定した。また、前記の粘結剤の貯蔵安定性テストについては、35℃の恒温器に貯蔵した場合のB型粘度計での粘度の経時変化を測定した(粘度の測定温度は25℃)。
【0028】
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【発明の効果】
本発明のアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液にほう素化合物を添加してなる鋳物砂用粘結組成物を用いることにより、二酸化炭素で鋳型を硬化せしめる造型法において、従来のレゾール型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液を用いるよりも、大幅に鋳型の硬化速度及び鋳型強度を向上させ、また粘結剤自体の貯蔵安定性に優れるものが得られる。
 
訂正の要旨 (a)特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載
「ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化性鋳物砂用粘結組成物。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物。」と訂正する。
(b)特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載
「耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物を用い、二酸炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法。」と訂正する。
(c)【0009】の記載
「即ち本発明は、アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とほう素化合物を含有してなる鋳物砂用粘結組成物に関する。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「即ち本発明は、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造される水溶性アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる二酸化炭素硬化用鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物に関する。」と訂正する。
(d)【0010】の記載
「又、本発明は、耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、アルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とほう素化合物を含有してなる鋳物砂用粘結組成物を用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法に関する。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「又、本発明は、耐火性粒状材料を用いて鋳型を製造する際、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又はこれらの混合物からなるアルカリ性物質を用いて製造されるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ほう酸又はほう酸塩と、シランカップリング剤とからなる鋳物砂用粘結組成物であって、ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比が1.2:1.0〜6.0:1.0、アルカリ性物質:ビスフェノールAのモル比が0.7:1.0〜5.0:1.0、ほう酸又はほう酸塩:ビスフェノールAのモル比が0.01:1.0〜2.0:1.0であり、シランカップリング剤を粘結剤100重量部に対して0.001〜1重量部添加してなる鋳物砂用粘結組成物を耐火性粒状材料100重量部に対して0.4〜15重量部用い、二酸化炭素により硬化せしめることを特徴とする鋳型の製造方法に関する。」と訂正する。
(e)【0013】の記載
「(式中、M1及びM2はH原子又はLi,K,Na等の一種又はこれらの組み合わせから成るアルカリ金属元素、X及びYはH原子又はメチル基等のアルキル基又はこれらの組み合わせ、nとmの和は1.2〜5.5である。)
かかるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、常法によりビスフェノールとホルムアルデヒドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下水中で反応させて得られるが、アルカリ金属水酸化物:ビスフェノールのモル比は0.7:1.0〜5.0:1.0の範囲が良く、好ましくは、1.0:1.0〜4.0:1.0が良好である。モル比が0.7:1.0未満では硬化速度と鋳型強度が不十分であり、一方モル比が5.0:1.0を超えると可使時間が短くなり、好ましくない。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「(式中、M1及びM2はH原子又はLi,K,Na等の一種又はこれらの組みわせから成るアルカリ金属元素、X及びYはメチル基、nとmの和は1.2〜55である。)
かかるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、常法によりビスフェノールAとホルムアルデヒドとを、アルカリ金属水酸化物の存在下水中で反応させて得られるが、アルカリ金属水酸化物:ビスフェノールAのモル比は0.7:1.0〜5.0:1.0の範囲であり、好ましくは、1.0:1.0〜4.0:1.0が良好である。モル比が0.7:1.0未満では硬化速度と鋳型強度が不十分であり、一方モル比が5.0:1.0を超えると可使時間が短くなり、好ましくない。」と訂正する。
(f)【0014】の記載
「ホルムアルデヒド:ビスフェノールのモル比は1.2:1.0〜6.0:10の範囲が良く、好ましくは、2.0:1.0〜5.5:1.0が良好である。モル比が1.2未満では前記と同様にほう素化合物との相溶性が悪くなり、モル比が6.0を超えると未反応ホルムアルデヒドの残存量が多くなる。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「ホルムアルデヒド:ビスフェノールAのモル比は1.2:1.0〜6.0:1.0の範囲であり、好ましくは、2.0:1.0〜5.5:1.0が良好である。モル比が1.2未満では前記と同様にほう素化合物との相溶性が悪くなり、モル比が6.0を超えると未反応ホルムアルデヒドの残存量が多くなる。」と訂正する。
(g)【0015】の記載
「ほう素化合物としては、ほう酸及びほう酸、四ほう酸ナトリウム10水和物、ほう酸カリウム10水和物、メタほう酸ナトリウム、五ほう酸カリウム及び五ほう酸ナトリウム等のほう酸塩類が好ましい。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「ほう素化合物としては、ほう酸及びほう酸、四ほう酸ナトリウム10水和物、ほう酸カリウム10水和物、メタほう酸ナトリウム、五ほう酸カリウム及び五ほう酸ナトリウム等のほう酸塩である。」と訂正する。
(h)【0016】の記載
「かかるほう素化合物:ビスフェノールのモル比は0.01:1.0〜2.0:1.0の範囲が良く、好ましくは、0.05:1.0〜1.0:1.0が良好である。モル比が0.01未満では鋳型の硬化速度及び強度が不十分であり、モル比が2.0を超えるとアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液の性状及び水分含量にもよるが、ほう酸及びほう酸塩類の相溶性が悪化し沈澱物が発生する傾向がある。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「かかるほう素化合物:ビスフェノールAのモル比は0.01:1.0〜2.0:1.0の範囲であり、好ましくは、0.05:1.0〜1.0:1.0が良好である。モル比が0.01未満では鋳型の硬化速度及び強度が不十分であり、モル比が2.0を超えるとアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液の性状及び水分含量にもよるが、ほう酸及びほう酸塩類の相溶性が悪化し沈澱物が発生する傾向がある。」と訂正する。
(i)【0017】の記載
「本発明に使用する上記の一般式で示されるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の具体的な化合物としては、ビスフェノールAの場合、X及びYはメチル基であるホルムアルデヒドの付加縮合物であり、ビスフェノールFの場合、X及びYはH原子であるホルムアルデヒドの付加縮合物である。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「本発明に使用する上記の一般式で示されるアルカリレゾール型ビスフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の具体的な化合物としては、X及びYはメチル基であるホルムアルデヒドの付加縮合物である。」と訂正する。
(j)【0019】の冒頭の記載
「本発明の粘結組成物には、鋳型強度を向上させる目的でシランカップリング剤を加えても良い。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「本発明の粘結組成物には、鋳型強度を向上させる目的でシランカップリング剤が加えられる。」と訂正する。
異議決定日 1999-12-27 
出願番号 特願平3-111723
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 正博  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 三浦 均
金澤 俊郎
登録日 1997-11-28 
登録番号 特許第2723376号(P2723376)
権利者 花王株式会社
発明の名称 鋳物砂用粘結組成物及び鋳型の製造方法  
代理人 古谷 聡  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 持田 信二  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 馨  
代理人 酒井 正美  
代理人 持田 信二  
代理人 古谷 馨  
代理人 古谷 聡  

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