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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C01F 審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 C01F 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C01F |
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管理番号 | 1016618 |
異議申立番号 | 異議1998-75636 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-07-01 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-11-20 |
確定日 | 1999-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2754058号「薄片状活性アルミナ担体、その製造方法及びそれを用いた複合顔料」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2754058号の請求項1〜5に係る発明は、平成1年11月13日に特許出願され、平成10年3月6日にその特許権の設定登録がなされ、その後、中田義直より請求項1及び2に係る発明について特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月1日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の要旨 平成11年11月1日付けの訂正請求における訂正の要旨は次のとおりである。 1.訂正事項a 特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2を削除する。 2.訂正事項b 特許明細書の特許請求の範囲の請求項3に「平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする請求項1記載の薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」(特許公報第1欄第7〜11行)とあるのを、「平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gである薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」に訂正するとともに、請求項の番号を「1」に繰り上げる。 3.訂正事項c 特許明細書の特許請求の範囲の請求項4に「請求項3記載の方法により得られた薄片状活性アルミナ担体を更に酸処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする請求項2記載の薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」(同公報1欄第12〜15行)とあるのを「平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理し、ここに得られる薄片状活性アルミナ担体を更に酸処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gで、懸濁液にした際のpHが3.0〜5.0である薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」に訂正するとともに、請求項の番号を「2」に繰り上げる。 4.訂正事項d 特許明細書の特許請求の範囲の請求項5に「請求項1又は2記載の薄片状活性アルミナ担体に有機色素が包蔵され、該薄片状活性アルミナ担体表面が水熱処理されていることを特徴とする複合顔料。」(同公報第2欄第1〜3行)とあるのを「請求項1又は2で得られた薄片状活性アルミナ担体に有機色素が包蔵され、該薄片状活性アルミナ担体表面が水熱処理されていることを特徴とする複合顔料。」と訂正するとともに、請求項の番号を「3」に繰り上げる。 III.訂正の適否についての判断 1.訂正の目的、新規事項、拡張・変更 上記訂正事項aは、特定の請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮に相当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 上記訂正事項b及びcは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2が削除されたことに伴い、特許明細書の請求項3及び4を独立請求項の形式で記載するとともに、請求項の番号を繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明に相当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 また、上記訂正事項dは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2が削除されたことに伴い、訂正前の請求項1又は2を引用する形式で記載されていたものを訂正後の請求項1又は2を引用する形式に訂正するとともに、請求項の番号を繰り上げたものである。そして、訂正前の請求項1又は2に係る発明の「薄片状活性アルミナ担体」は訂正後の請求項1又は2に係る「薄片状活性アルミナ担体の製造方法」の発明(訂正前の請求項3又は4に係る発明に相当)により製造されるものであるから、上記訂正事項dは、明りょうでない記載の釈明に相当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2.独立特許要件 当審における取り消し理由の概要は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明に対するものであったが、その特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2は上記訂正請求により削除されたため、取消理由の対象は存在しなくなった。 3.訂正の認否 したがって、上記「1.」及び「2.」に述べたように、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項から第4項までの規定にそれぞれ適合するものであるから、上記訂正を認める。 IV.特許異議の申立についての判断 1.申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開昭62-12711号公報)及び甲第2号証(特開昭54-24298号公報)を提出し、 (1)本件特許の請求項1に係る発明は上記甲第1及び2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、 (2)本件特許の請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明にその作用・効果を確認するに足る具体的な記載がないので、該発明の特許は明細書の記載が特許法第36条第3項又は第4項の規定に違反するものに対してなされたものである、 ので、特許を取り消すべきものである旨を主張している。 2.当審の判断 特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2は上記訂正請求により削除されたため、特許異議の申立ての対象は存在しなくなった。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 薄片状活性アルミナ担体、その製造方法及びそれを用いた複合顔料 (57)【特許請求の範囲】 1.平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gである薄片状活性アルミナ担体の製造方法。 2.平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理し、ここに得られる薄片状活性アルミナ担体を更に酸処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gで、懸濁液にした際のpHが3.0〜5.0である薄片状活性アルミナ担体の製造方法。 3.請求項1又は2で得られた薄片状活性アルミナ担体に有機色素が包蔵され、該薄片状活性アルミナ担体表面が水熱処理されていることを特徴とする複合顔料。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、新規な活性アルミナ担体に関し、更に詳細には高い色素吸着性を有し、顔料担体として有用性が高い薄片状活性アルミナ担体及びその製造方法、並びに該薄片状活性アルミナ担体に有機色素を包蔵せしめてなる、明度、彩度、耐水性、耐溶剤性、耐候性及び安全性が高く、かつ良好な伸展性(のび、すべり)を有し、使用感に優れた顔料に関する。 〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕 有機顔料は、無機顔料に比べて色の鮮明さと種類の豊富さにおいて優れてはいるものの、耐水性、耐溶剤性、耐候性、耐熱性などの安定性において劣るものか多い。一方、無機顔料にあっては、これらの安定性に優れたものが多い反面、一般に色調が鈍く、色の種類にも制限がある等の欠点を有している。そこでこのような有機系、無機系の顔料それぞれの優れた性質を併有した顔料を得るためその複合化が試みられている。 例えば、酸化チタンや硫酸バリウム等の無機粉体の表面を有機色素で被覆し、これを不溶化して隠蔽力、耐候性の向上をはかる方法や、粘土鉱物、シラスバルーン、その他の活性無機粉体に有機色素をイオン交換または、吸着作用等で包蔵せしめて顔料を得る方法が知られている。 しかし、この無機粉体を有機色素でコーティングする方法は、被覆した有機色素が▲剥▼離しやすく、また、有機色素が表面に露出しているために耐水性、耐溶剤性、耐候性などの向上には自ら限度があり、有機顔料の持つ欠点を充分にカバーすることができないという問題点があった。また、無機粉体内に有機色素を包蔵させる方法は、有機色素の鮮明さが犠牲となることが多い上、有機色素の閉じ込めが不完全な場合には、耐水性、耐溶剤性及び耐候性が悪くなるという欠点があった。 そこで、本発明者らは、このような技術的困難を解決すべく種々検討を行い、色素の吸着力に優れ、該吸着色素の色調に何ら影響を与えず、かつ、安定な顔料の担体として必要な性質を満たす多孔性アルミナを見出して先に特許出願した(特願昭60-20555号)。このものは顔料としての安定性が高く、色調も鮮明なものであったが、今般化粧品として使用する際の使用感の官能試験を行った結果、のび、すべりなどの伸展性の因子が不充分であり、化粧品としての使用に濃度的限界のあることが判明した。 従来、アルミナは▲1▼アルミニウム塩の水溶液をアンモニア又はアルカリによって中和する、▲2▼アルミン酸ナトリウムの過飽和溶液から析出させたり、アルミン酸ナトリウムを二酸化炭素、炭酸水素ナトリウムあるいは酸により加水分解する、▲3▼アルミニウムアマルガムを加水分解する、▲4▼アルミニウムのアルキル化物又はアルコキシドを加水分解する等の方法で得られたアルミニウムの水酸化物(又はアルミナ水和物)を脱水することによって製造されている。 しかしながら、これらの方法によって得られた従来のアルミナは、形状が微粉状、球状、粒状のみであるために、伸展性が充分でなく、使用感に問題を有するものであった。 一方、特開昭51-100995号公報には金属アルミニウムをアルカリ性、中性、酸性の各水溶液中で反応させて、それぞれ微粉状、板状、ゲル状の水和アルミニウムを得る方法が開示されている。しかし、この方法で得られるアルミナはいずれも、比表面積が、30m2/g以下であるため担体としての性能に劣るだけでなく、その粒径も極めて微細であるため伸展性が悪く、きしみ等の官能性にも劣るという問題を有していた。 従って、顔料の担体として優れた特徴を有し、かつ化粧品として使用した際に、良好な使用感が得られる、新規な活性アルミナ担体の開発が望まれていた。 〔課題を解決するための手段〕 斯かる実情において、本発明者らは、種々検討した結果、特定の平均粒径、アスペクト比及び比表面積を有する薄片状金属アルミニウムをアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成すれば、活性の高い薄片状活性アルミナ担体が得られ、また該担体に有機色素を包蔵せしめた後、水熱処理を行えば官能性に優れ、かつ耐水性、耐溶剤性の大幅に改良された複合顔料が得られることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gである薄片状活性アルミナ担体及びその製造方法、並びに該担体を用いた複合顔料を提供するものである。 本発明において、平均粒径は、粉末の懸濁液を超音波分散させレーザ回折式粒度分布測定装置によって測定した値である。アスペクト比は、走査型電子顕微鏡により、視野中の粒子群についてその最大径と厚さの最大値を測定して比を計算し、それを20視野について平均して得られる値である。また、比表面積は、N2吸着によるB.E.T.法によって得られた値である。懸濁液のPHは5重量%水性懸濁液を25℃で測定した時の値である。 本発明において、薄片状とは、板状、葉状、盤状、鱗片状、フレーク状等、幅方向に比較して厚さ方向の薄い形状一般をいう。 また、本発明における活性アルミナとは、単に比表面積が大きいだけでなく、水熱反応によって少なくとも一部が水和アルミナになることのできるものであり、例えば、無定型,χ-,ρ-,η-アルミナ、べーマイト等をいう。更にはこれらの表面に固体酸点を形成させ、吸着性を高めたアルミナをも包含する。 本発明の薄片状活性アルミナ担体の平均粒径は0.1〜50μmであることが必要であり、特に1〜20μmであることが好ましい。平均粒径が50μmを超えると、化粧品として使用した際、皮膚への付着性(つき)に欠け、また、平均粒径が、0.1μmより小さくなると伸展性が悪くなる。 本発明の薄片状活性アルミナ担体は、アスペクト比が10〜100の薄片状であることが必要である。アスペクト比が10未満のものは、顔料とした時に良好な伸展性を示さない。アスペクト比は大きいほど、顔料とした場合の伸展性が向上するが、100以上のものを調製することは技術上困難である。 その比表面積は、有機色素を充分に吸着せしめるために30〜350m2/gであることが必要であり、特に20 0〜350m2/gであることが好ましい。比表面積が30m2/g未満であると有機色素の吸着が充分でなくなり、また350m2/gを超えるものを調製することは技術上困難である。 また、本発明の薄片状活性アルミナ担体は、特に固体酸点を持たなくても有機色素を吸着するが、懸濁液のpHが3.0〜5.0である固体酸点を持つものは更に有機色素の吸着性が高い。 斯かる本発明の薄片状活性アルミナ担体は、比表面積が2m2/g〜20m2/g、アスペクト比が10〜100で、かつ平均粒径0.1〜50μmの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0でアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成するか、あるいは、この方法で得た薄片状活性アルミナ担体を更に酸処理した後、乾燥及び/又は焼成することによって製造される。 本発明製造方法は、原料となる薄片状金属アルミニウムの形状をほぼ保持したままの薄片状活性アルミナ担体が得られるため、原料の金属アルミニウムの形状を制御すれば、得られる薄片状活性アルミナ担体の形状も容易に制御することができる。 本発明において、出発原料である薄片状金属アルミニウムは、アルミニウムをアトマイズ粉にしたものまたはアルミチップを、ステアリン酸等の潤滑剤及びミネラルスピリットと共に、ボールミルで一定の粒径になるまで粉砕した後、湿式振動篩により分級し、次いで濾過したものを用いることかできる。 これらの薄片状の金属アルミニウムをアルカリ水溶液中にて攪拌しながら処理する。使用するアルカリとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア、アミン、尿素が挙げられるが、特にアンモニア、尿素、モノエタノールアミン等のアミンが好ましい。また、アルカリ水溶液のpHは、急激な反応を抑制するために7.1〜11.0であることが必要であり、特に9.0〜10.0であることが好ましい。また、反応温度は、急激な反応を抑制するために40〜100℃、特に70〜90℃であることが好ましい。更に、アルカリ処理反応の際、薄片状活性アルミナ担体の凝集防止の目的で界面活性剤を添加すると好ましい結果が得られる。添加する界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤が好ましく、特にポリカルボン酸型高分子界面活性剤が好ましい。 斯かるアルカリ処理を行った後、濾過して乾燥する。更に、これに焼成処理を施せば、より色素の吸着力を増加させることができる。焼成温度は、150〜800℃であることが好ましく、特に400〜600℃で10分〜2時間の焼成のとき最も優れた特性の薄片状活性アルミナ担体が得られる。 懸濁液のpHが3.0〜5.0である固体酸点を有する本発明の薄片状活性アルミナ担体を製造するには、上述で得た薄片状活性アルミナの懸濁液を塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸や、蓚酸、クエン酸等の有機酸を用いて処理した後、乾燥及び/又は焼成すればよい。 これらの有機酸による酸処理は、平衡時のpHが2〜5.5になるような条件で行うことが好ましい。pHが2未満であるとアルミナが溶解するため担体粒子の溶解が生じる場合があり、また5.5を超えると、その後の賦活が困難となって色素の吸着力が損なわれ易いため好ましくない。 斯かる酸処理の後、濾過し、乾燥して得られたものを、焼成すれば色素の吸着力の更に大きな薄片状活性アルミナ担体が得られる。ここで、焼成温度は、150〜800℃であることが好ましく、350〜600℃で10分〜2時間の焼成が特に好ましい。 以上の様にして得られた本発明の薄片状活性アルミナ担体に有機色素を吸着させることにより包蔵せしめれば、色が鮮明で安定な複合顔料を得ることが出来る。 薄片状活性アルミナ担体に包蔵せしめる有機色素としては酸性染料、天然色素、油溶性染料、建染染料等が挙げられ、いずれの色素での着色も可能であるが、酸性染料、天然色素が特に好ましい。 酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、だいだい色205号、だいだい色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、赤色202号、青色205号、褐色201号、赤色410号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、だいだい色402号、黄色402号、黄色403号、黄色406号、黄色407号、緑色402号、紫色401号、黒色401号等が挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いることもできる。 天然色素としては、ラッカイン酸、カルミン酸、ケルメス酸、アリザリン、シコニン、アルカニン、エキノクロームなどのキノン系色素;β-カロチン、β一アポー8-カロチナール、カプサンチン、リコピン、ビキシン、クロシン、カンタキサンチンなどのカロチノイド系色素;シソニン、ラファニン、エノシアニン、サフロールイエロー、ルチン、クエルセチン、カカオ色素などのフラボノイド系色素;リボフラビンなどのフラビン系色素;クロロフィルなどのポルフィリン系色素;クルクミンなどのジケトン系色素;べタニンなどのべタシアニジン系色素等が挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いることも出来る。 油溶性染料としては、例えば、赤色215号、赤色218号、赤色223号、だいだい色201号、だいだい色206号、黄色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号、赤色501号、赤色505号、だいだい色403号、黄色404号、黄色405号、青色403号等が挙げられ、必要に応じ混合して用いることも出来る。 吸着工程は、前記のように調製された薄片状活性アルミナ担体に上記有機色素の0.001〜10wt%、好ましくは0.01〜3wt%溶液を接触・作用せしめることにより行われる。 色素溶液としては、酸性染料又は天然色素の場合は水溶液が、油溶性染料の場合は有機溶媒溶液が好ましいが、場合によっては水と有機溶媒の混合溶液も用いることができる。また、建染染料を製造する場合には還元体の水溶液が用いられる。 色素溶液には、必要に応じて染着性向上のため界面活性剤、無機塩類等を加えてもよい。 薄片状活性アルミナ担体と色素溶液との接触・作用操作は、浸漬、滴下混合又は流動床混合等の方法により行うことができるが、いずれの方法の場合も接触・作用時間は、1〜60分、色素溶液の液温は80℃以下とすることが好ましい。この接触・作用操作により有機色素を担体中に重量比で0.001〜1g/g担体、特に0.05〜0.8g/g担体を包蔵せしめたものが顔料とした際に好ましい性質を有する。 有機色素を包蔵した活性アルミナ担体は、更に水熱処理を行う事によって部分的に水和物を生ぜしめることができる。この水和反応により、有機色素の溶出が防止される。 水熱処理は70〜180℃の熱水による処理で良いが、特に100〜180℃の加圧水蒸気を用いると水熱処理は一層充分となるため好ましい。しかし、有機色素によっては150℃を超えると変色するものがあるため、留意が必要である。また、水熱処理に要する時間は高温であるほど短時間で良く、温度に応じて決定されるが、5分〜2時間が好ましい。 水熱処理の後、最終的に粉体を洗浄、濾過し、120℃以下で乾燥する。この際に濾過物の乾燥を早め、二次凝集を防ぐためアセトン、エタノール等の有機溶剤を用いて洗浄すると粉体物性の良いものが得られる。 斯くして得られた本発明の複合顔料は、色調、着色力、使用感、耐水性、耐溶剤性、且つ安全性に優れたものであり、これを配合した化粧料は、色分かれのない鮮明な外観色と良好な使用感を兼ね備えたものとなる。 また、これを配合した塗料は、鮮明な外観色と良好な耐候性、耐水性、耐溶剤性を兼ね備えたものとなる。 〔作用〕 本発明のアルミナ担体は、薄片状で、かつ比表面積が大きく活性であって、水熱処理により水和させる事も可能である。このため高い色素吸着性を有すると共に、色素溶出をなくすことができ、優れた色調、耐水性、耐溶剤性、耐候性、及び、安全性を有し、かつ良好な伸展性の、使用感に優れた顔料を得ることができる。 〔発明の効果〕 本発明の薄片状活性アルミナ担体は、使用感に優れ、かつ大きな比表面積を有し、吸着特性に優れるため、吸湿性、吸油性、保香性及び薬効成分を保持する等の機能性をも持ち合わせた体質顔料として有用である。 また、斯かる本発明の薄片状活性アルミナ担体を用いた複合顔料は、使用時の色分かれがなく、外観色の鮮明性及び耐水性、耐溶剤性に優れ、種々の化粧料、塗料、プラスチック、インキ、絵の具、日用雑貨、装飾品などに有用である。 〔実施例〕 次に実施例を挙げて本発明を説明する。 参考例1 金属アルミニウムのアトマイズ粉をステアリン酸、及びミネラルスピリットと共に、ボールミルで一定の粒径になるまで粉砕した後、湿式振動篩により分級し、濾過して比表面積4m2/g、アスペクト比70、19.0μmの平均粒径を有する薄片状の金属アルミニウムを得た。 実施例1 上記薄片状金属アルミニウム10.0gを、0.1%アンモニア水200g、及びエタノール160gの混合溶液に添加した。この時の懸濁液のpHは、10.0であった。80℃で1時間攪拌して反応を完全に終結させた。吸引濾過後、90℃で2時間乾燥し16.3gの白色粉末を得た。更に窒素雰囲気中400℃で2時間焼成し、比表面積268m2/g、アスペクト比50、平均粒径20.0μmの薄片状粉末11.5gを得た。 実施例2 実施例1で得た同様の薄片状金属アルミニウム10.0gを、エタノール160g、水200gの混合溶液に添加した。更に、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(花王製デモールEP)を0.1g添加して、30分間攪拌した。更に、モノエタノールアミン0.9gを添加した。この時の25℃でのpHは、10.0であった。80℃で2時間攪拌し、反応は完全に終結した。吸引濾過後90℃で2時間乾燥し、16.5gの白色粉末(薄片状粉末A)を得た。更に窒素雰囲気中400℃で2時間焼成し、比表面積278m2/g、アスペクト比50、平均粒径20.0μmの薄片状粉末11.8g(薄片状粉末B)を得た。 実施例3 実施例2で得た粉末A10.0gに水170gを加えて攪拌した。この時の25℃でのpHは、7.1であった。これに、1Nの塩酸を4ml加えpHを3.60にした後、2時間攪拌した。最終pHは4.21で平衡に達した。濾過し、90℃で2時間乾燥した。 更に、窒素雰囲気中、400℃にて2時間焼成し、7.5gの薄片状粉末(薄片状粉末C)を得た。このものは、比表面積270m2/g、アスペクト比50、平均粒径20.0μmであった。また、この薄片状粉末の5%水懸濁液における25℃でのpHは、4.0であった。 実施例4 実施例2で得た薄片状粉末B1.0gを水50gに懸濁させ、更に天然色素コチニール(カルミン酸、三栄化学製)0.35gを水40gに溶解したものを徐々に攪拌しなから加えた。60℃、20分間攪拌し、濾過洗浄し着色された薄片状粉末を得た。更に、この着色粉末を水100gで沸騰処理した後、慮過、水洗、次いでエタノール洗浄し、80℃で乾燥すると粉体色の鮮明な暗褐色を示す複合顔料(本発明品1)が得られた。 得られた複合顔料のSEM像を図1に示す。この色素濃度を堀場製カーボンアナライザーEMIA-110型による炭素分析の結果をもとに計算したところ、14.8%の色素を含んでいた。また、顔料の粉体色を色差計(日本電色社製、Σ80)で測定し、色相(H)=3.55R、明度(V)=2.64、彩度(C)=10.05であった。 また、複合顔料の化粧料として必要性能である皮膚表面での伸展性(のび、すべりの良さ)について、実用テスト(専門パネラー10人)により調べた結果良好であった。 実施例5 実施例3で得た薄片状粉末B1.0gを水50gに懸濁させ、更に天然色素コチニール(カルミン酸、三栄化学製)0.35gを水40gに溶解したものを徐々に攪拌しながら加えた。60℃、20分間攪拌し、濾過洗浄し着色された薄片状粉末を得た。更に、この着色粉末を水100gで沸騰処理した後、濾過、水洗、次いでエタノール洗浄をし、80℃で乾燥すると粉体色の鮮明な暗赤色を示す複合顔料(本発明品2)が得られた。 得られた複合顔料は、色素を23.3%含むものであり、H=3.51R、V=2.54、C=10.25であった。 また、複合顔料の化粧料として必要性能である皮膚表面での伸展性(のび、すべりの良さ)について、実用テストにより調べた結果良好であった。 実施例6 実施例3で得た薄片状粉末B1.0gを水50gに懸濁させ、更にフロキシンB(赤色104号の(1)、癸巳化成製)0.15gを水40gに溶解したものを徐々に攪拌しながら加えた。60℃、20分間攪拌し、次いで濾過洗浄して着色された薄片状粉末を得た。この薄片状粉末をオートクレーブに入れ、水100gを加えた懸濁液を30分で130℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、30分で70℃まで放冷した。更にこれを洗浄、乾燥して粉体色の鮮明な赤色を示す複合顔料(本発明品3)が得られた。 得られた複合顔料は、色素を10.5%含むものであり、H=5.18R、V=3.80、C=14.30であった。 また、複合顔料の化粧料として必要性能である皮膚表面での伸展性(のび、すべりの良さ)について、実用テストにより調べた結果良好であった。 実施例7 実施例3で得た薄片状粉末B1.0gを水50gに懸濁させ、更にタートラジン(黄色4号、癸巳化成製)0.15gを水40gに溶解したものを徐々に攪拌しながら加えた。60℃、20分間攪拌し、次いで濾過洗浄して着色された薄片状粉末を得た。この薄片状粉末をオートクレーブに入れ、水100gを加えた懸濁液を30分で130℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、30分で70℃まで放冷した。更にこれを洗浄、乾燥して粉体色の鮮明な黄色を示す複合顔料(本発明品4)が得られた。 得られた複合顔料は、色素を10.4%含むものであり、H=2.61Y、V=6.46、C=14.50であった。 また、複合顔料の化粧料として必要性能である皮膚表面での伸展性(のび、すべりの良さ)について、実用テストにより調べた結果良好であった。 実施例8 実施例3で得た薄片状粉末B1.0gを水50gに懸濁させ、更にブリリアントブルー(青色1号、癸巳化成製)0.15gを水40gに溶解したものを徐々に攪拌しながら加えた。60℃、20分間攪拌し、次いで濾過洗浄して着色された薄片状粉末を得た。この薄片状粉末をオートクレーブに入れ、水100gを加えた懸濁液を30分で130℃まで昇温し、そのまま1時間保持後、30分で70℃まで放冷した。更にこれを洗浄、乾燥して粉体色の鮮明な青色を示す複合顔料(本発明品5)が得られた。 得られた複合顔料は、色素を10.0%含むものであり、H=5.34B、V=1.24、C=9.85であった。 また、複合顔料の化粧料として必要性能である皮膚表面での伸展性(のび、すべりの良さ)について、実用テストにより調べた結果良好であった。 比較例1 参考例1で得た同様の薄片状金属アルミニウム10.0gを、交換水200gに添加した。この時の25℃でのpHは、5.3であった。90℃で10時間攪拌したが、反応は完全に終結せず黒灰色であった。X線回折の測定結果より、大部分はAl金属のままであり、一部しかアルミナ水和物は、得られなかった。 比較例2 参考例1で得た薄片状金属アルミニウム10.0gを、塩酸水溶液200gに添加した。この時の25℃でのpHは、4.0であった。90℃で10時間攪拌したが、反応は完全に終結せず黒灰色であった。X線回折の測定結果より、大部分はAl金属のままであり、一部しかアルミナ水和物は、得られなかった。 試験例1 実施例4〜8で得られた本発明品1〜5について、市販品との耐溶水性、耐溶剤性の比較を行った。すなわち、上記実施例で得られた本発明品1〜5及び下記の比較品1〜3の各0.2gを水、エタノール、または、0.3%食塩水に懸濁させ、40℃で1時間振とう後、濾過し、濾液中の染料濃度を分光光度法(島津製、UV-200)により定量し、染料の溶出量を調べた。その結果を第1表に示す(単位はppb)。 比較品1: レーキ顔料R104(赤色104-1号を19.4wt%含有) 比較品2: レーキ顔料Y4(黄色4号を38.6wt%含有) 比較品3: レーキ顔料B1(青色1号を12.5%含有) 第1表から明らかなように、本発明複合顔料は、耐水性、耐溶剤性に優れたものであった。 試験例2 皮膚表面での、粉体の伸展性(のび、すべり)を数値化するために、その代用特性として相関の高い、摩擦係数を測定した。すなわち、実施例6で得られた本発明品3の粉末を2枚のアルミニウム製の円盤に挟み込み、100gの荷重を円盤の片方から垂直方向に印加し、もう片方の円盤を300rpmで回転しトルクを検出する事により粉体の摩擦係数を算出した。伸展性の良い雲母(比較品5)を対照物質として選択し、摩擦係数を比較測定した。また、薄片状でない粒状のアルミナ顔料(比較品4)の摩擦係数と比較した。その結果を第2表に示す。 比較品4: 市販の活性アルミナ(平均粒径3.4μm、比表面積270m2/g、細孔容積0.3ml/g)6.0gに水54.0gを加えて攪拌し、0.1Nの塩酸を32ml加え1時間攪拌した。最終pHは25℃で4.66で平衡に達した。濾過し、90℃で2時間乾燥した。 更に、窒素雰囲気中400℃、2時間焼成した。この粉末の5%水懸濁液こおける25℃でのpHは、4.6であった。 上記焼成粉末1.0gを水50gに懸濁させ、更にフロキシンB(赤色104号の(1)、癸巳化成製)0.15gを水40gに溶解したものを徐々に攪拌しながら加えた。60℃、20分間攪拌し、濾過洗浄し着色された粉末を得た。更に、この着色粉末を水100gで沸騰処理した。濾過、水洗、エタノール洗浄し、80℃で乾燥し平均粒径4.5μmの粒状の顔料を得た。 比較品5: 市販の雲母(平均粒径15.0μm) 第2表から明らかなように、本発明複合顔料は雲母と同様の低い摩擦係数を示した。 【図面の簡単な説明】 図1は、実施例4で得られた、本発明複合顔料のSEM像による粒子構造を示す写真である。 |
訂正の要旨 |
平成11年11月1日付けの訂正請求における訂正の要旨は次のとおりである。 1.訂正事項a 特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2を削除する。 2.訂正事項b 明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項3に「平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする請求項1記載の薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」(特許公報第1欄第7〜11行)とあるのを、「平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gである薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」に訂正するとともに、請求項の番号を「1」に繰り上げる。 3.訂正事項c 明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項4に「請求項3記載の方法により得られた薄片状活性アルミナ担体を更に酸処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする請求項2記載の薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」(同公報1欄第12〜15行)とあるのを「平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が2〜20m2/gの薄片状金属アルミニウムをpH7.1〜11.0にてアルカリ処理し、ここに得られる薄片状活性アルミナ担体を更に酸処理した後、乾燥及び/又は焼成することを特徴とする平均粒径が0.1〜50μmで、アスペクト比が10〜100であり、かつ比表面積が30〜350m2/gで、懸濁液にした際のpHが3.0〜5.0である薄片状活性アルミナ担体の製造方法。」に訂正するとともに、請求項の番号を「2」に繰り上げる。 4.訂正事項d 明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項5に「請求項1又は2記載の薄片状活性アルミナ担体に有機色素が包蔵され、該薄片状活性アルミナ担体表面が水熱処理されていることを特徴とする複合顔料。」(同公報第2欄第1〜3行)とあるのを「請求項1又は2で得られた薄片状活性アルミナ担体に有機色素が包蔵され、該薄片状活性アルミナ担体表面が水熱処理されていることを特徴とする複合顔料。」と訂正するとともに、請求項の番号を「3」に繰り上げる。 |
異議決定日 | 1999-11-19 |
出願番号 | 特願平1-294388 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
XA
(C01F)
P 1 652・ 531- XA (C01F) P 1 652・ 532- XA (C01F) |
最終処分 | 決定却下 |
前審関与審査官 | 安齋 美佐子 |
特許庁審判長 |
石井 勝徳 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 能美 知康 |
登録日 | 1998-03-06 |
登録番号 | 特許第2754058号(P2754058) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 薄片状活性アルミナ担体、その製造方法及びそれを用いた複合顔料 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |