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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 発明同一  C08G
管理番号 1018133
異議申立番号 異議1997-75627  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-01-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-12-04 
確定日 1999-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2616054号「ポリウレタン弾性フォーム,およびその製造方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2616054号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第2616054号の発明は、平成1年10月20日(優先権主張 昭和63年10月25日、平成1年2月10日 日本)に出願され、平成9年3月11日にその特許の設定登録がなされたものである。
本件特許について東谷満および三洋化成工業株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成10年5月19日に特許異議意見書と共に訂正請求書が提出され、各特許異議申立人宛に発した審尋書に対する回答書が提出され、更に訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成11年8月10日に意見書と共に手続補正書が提出された。
[2]訂正の適否についての判断
〔訂正の内容〕
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲を次のとおり訂正する。
「1.下記ポリオキシアルキレンポリオールおよび下記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールから選ばれた少くとも1種の高分子量ポリオール、任意に架橋剤、および下記ポリイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物を触媒、発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)、整泡剤など助剤の存在下密閉された金型内で反応させることを特徴とする、共振振動数が3.5Hz以下、かつコアの反発弾性が70%以上のポリウレタン弾性フォームの製造方法。
ポリオキシアルキレンポリオール:水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28、総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下、かつ水酸基数2〜8のポリオキシアルキレンポリオール。
ポリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物。
2.ポリオキシアルキレンポリオールがオキシプロピレン基含有量70wt%以上で、任意にオキシエチレン基を含む、ポリオキシアルキレンポリオールである、請求項1の方法。
3.ポリオキシアルキレンポリオールが末端オキシエチレン基を5wt%以上含む、ポリオキシアルキレンポリオールである、請求項2の方法。
4.ポリマー分散ポリオールがポリマー微粒子を1〜40wt%含む、請求項1の方法。
5.架橋剤をポリオール100重量部に対し0.2〜l0重量部使用する、請求項1の方法。
6.請求項1の方法によって得られるポリウレタン弾性フォーム。」
訂正事項b:
明細書第4頁第12行の「4Hz未満」を「3.5Hz以下」に訂正する。
訂正事項c:
明細書第5頁第6行〜第10行の「と総不飽和度(Ymeq/g)が下記(1)の関係にあり(ただし、X>10のとき)、しかもY≦0.07であり、Xが5〜38である高分子量ポリオールを使用することによって得られる。Y≦0.9/(X-10)・・・(1)」を「が5〜28、総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下である高分子量ポリオールを使用することによって得られる。」に訂正する。
訂正事項d:
明細書第6頁第8行〜第10行の「4Hz未満、特に3.5Hz以下が好ましい。それに加えて、コアの反発弾性は70%以上であることが好ましく、」を「3.5Hz以下である。それに加えて、コアの反発弾性は70%以上である。」に訂正する。
訂正事項e:
明細書第8頁第7行および第11頁第9行の「38」を「28」に訂正する。
訂正事項f:
明細書第10頁第15行の「が好ましい。」を「である。」に訂正する。
訂正事項g:
明細書第11頁第13行〜第17行の「はXが約22.9以下ではYの上限は0.07である。より好ましくは、Yの上限は0.04である(Xが約32.5〜38では式(1)に従う)。また、水酸基価はより好ましくは5〜28である。」を「の総不飽和度Yの上限は0.04である。また、水酸基価Xは5〜28である。」に訂正する。
訂正事項h:
明細書第12頁第20行の「水酸基価と総不飽和度の関係」を「水酸基価と総不飽和度の要件」に訂正する。
訂正事項i:
明細書第13頁第4行〜第5行の「(水酸基価と総不飽和度の関係等)」を削除する。
訂正事項j:
明細書第13頁第18行〜第19行の「5〜38であることが好ましく、特に」を削除する。
訂正事項k:
明細書第20頁第4行の「第1表」を「表-1」に訂正する。
訂正事項m:
明細書第20頁第13行の「アルキル」を「アルキレン」に訂正する。
〔補正の内容〕
手続補正書による訂正事項の補正は次のとおりである。
補正事項1:
訂正事項aを次のa′に補正する。
訂正事項a′:
特許請求の範囲を次のとおり訂正する。
「1.下記ポリオキシアルキレンポリオールおよび下記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールから選ばれた少くとも1種の高分子量ポリオール、任意に架橋剤、および下記ポリイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物を触媒、発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)、整泡剤など助剤の存在下密閉された金型内で反応させることを特徴とする、共振振動数が3.5Hz以下、かつコアの反発弾性が70%以上のポリウレタン弾性フォームの製造方法。
ポリオキシアルキレンポリオール:水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28、総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下、かつ水酸基数2〜8のポリオキシアルキレンポリオールで、オキシプロピレン基含有量70wt%以上かつ末端オキシエチレン基を5〜30wt%含む。
ポリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物。」
補正事項2:
次の訂正事項nおよびpを追加する。
訂正事項n:
明細書第10頁第15行〜第18行(全文訂正明細書第4頁下から第1行〜第5頁第2行)の「最も好ましくは、1,2-プロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基を70重量%以上、特に80重量%以上含むポリオキシアルキレンポリオールである。」を「本発明におけるポリオキシアルキレンポリオールは、1,2-プロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基を70重量%以上含み、好ましくは80重量%以上含む。」に訂正する。
訂正事項p:
明細書第11頁第3行〜第6行(全文訂正明細書第5頁第5行〜第7行)の「これら末端部分に存在するオキシエチレン基の割合は少なくとも2wt%、特に5〜30wt%が好ましい。最も」を「これら末端部分に存在するオキシエチレン基の割合は5〜30wt%である。より」に訂正する。
〔補正の適否〕
補正事項1は、訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲を減縮するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
補正事項2は、補正事項1の補正に伴って明細書の記載が不明瞭になることを釈明するものであり、補正事項1と一体のものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
以上のとおり、本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、これを認める。
以下、補正後の訂正明細書を単に訂正明細書という。(補正前の訂正明細書に言及する場合には、その旨を明記する。)
〔訂正の目的の適否〕
訂正事項a′による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b、c、d、e、g、h、i、j、nおよびpによる訂正は、訂正事項a′の訂正に伴って、明細書の記載が不明瞭になることの釈明を目的とするものである。
訂正事項f、kおよびmによる訂正は、誤記の訂正を目的とするものである。
従って、本件訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書に規定する要件を満たすものである。
〔訂正の範囲、拡張・変更の存否〕
訂正事項a′、b、c、d、e、g、h、i、j、nおよびpによる訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項f、kおよびmによる訂正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項a′、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、m、nおよびpによる訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
従って、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項および第3項に規定する要件を満たすものである。
〔独立特許要件の判断〕
(1)訂正後の発明
訂正後の請求項1に係る発明は、訂正事項a′により訂正された特許請求の範囲に記載の前記のとおりのものである。
以下、この訂正後の請求項1に係る発明を「訂正後の発明」という。
(2)刊行物等の記載事実
特開昭56-38322号公報(昭和56年4月13日発行、特許異議申立人・東谷満が提出した甲第1号証、以下、「刊行物1」という。)には、「活性水素含有化合物に複数のアルキレンオキサイドを付加してポリエーテル化合物を製造する方法において、触媒としてアルカリ金属化合物と相間移動触媒との組み合せを使用することを特徴とするポリエーテル化合物の製造法。」(特許請求の範囲第1項)が記載されている。この方法によれば、特定の触媒を使用することにより、「反応速度を向上させかつ不飽和度を増大させることなくアルキレンオキサイドを付加しうる」(第2頁右下欄第1行〜第3行)こと、およびこの方法が「不飽和基の原因となるプロピレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドの付加反応にも有効である」(第2頁右下欄第5行〜第7行)こと、ポリイソシアネート化合物について「ポリウレタンは通常少くとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と少くとも2個の活性水素を有する活性水素化合物とを反応させて得られる」(第1頁右下欄第17行〜第2頁左上欄第1行)こと、ポリエーテル化合物は「アルキレンオキサイドが付加しうる水素を含む基を有する化合物」(第3頁右上欄第13行〜第14行)をイニシエータ-とし、「ポリウレタンの原料であるポリエーテルポリオールを製造するためには、イニシエータ-は少くとも2つの活性な水素を必要とする」(第3頁右上欄第15行〜第18行)ものであり、使用するアルキレンオキサイドとしては「エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリンなどの炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが好まし」(第3頁右下欄第1行〜第4行)く、特に「不飽和基を生じるプロピレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドが好ましい」(第3頁右下欄第6行〜第8行)が、「プロピレンオキサイドと組み合わせる他のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドが最も好ましい」(第3頁右下欄第14行〜第17行)ことが記載されている。その水酸基価の好ましい範囲および用途は、「水酸基価が15〜200のポリエーテルポリオールであり、主に軟質高弾性ポリウレタンフォームやポリウレタンエラストマー用の原料」(第4頁右上欄第10行〜第13行)であることが記載されている。更に、実施例6〜9(第4頁右上欄第3行〜第8行及び第5頁左上欄表-1)にイニシエータ-としてグリセリンを、アルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドを用いて製造したポリオールが記載され、実施例10(第5頁右上欄第8行〜第13行)には実施例1のイニシエーターとしてグリセリンを、アルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドを用いてポリオールを合成した後に、触媒を除去することなく更にエチレンオキサイドを15%付加して製造したポリオールが開示されている。更に、参考例1(第5頁右上欄第20行〜左下欄第6行および第5頁右下欄表2)には、実施例10のポリエーテルポリオールを用い、ポリイソシアネート化合物としてTDIと粗フェニレンジイソシアネートの80/20の混合物を用いたフォームの製造方法が開示されている。この例では、発泡剤として水を、触媒としてトリエチレンジアミンを、整泡剤としてシリコーンオイルが用いられている。このポリウレタンフオームは「圧縮強さおよび永久圧縮歪にすぐれる」(第5頁右下欄第18行〜第20行)ことも開示されている。
特開昭56-43322号公報(昭和56年4月22日発行、特許異議申立人・東谷満が提出した甲第2号証、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第5号証、以下、「刊行物2」という。)には次の記載が成されている。
「活性水素含有化合物に複数のアルキレンオキサイドを付加してポリエーテル化合物を製造する方法において、触媒として、アルカリ金属化合物とクラウンエーテルおよび/またはクリプタンドとの組み合せ、またはアルカリ金属配位クリプテートを使用することを特徴とするポリエーテル化合物の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
「本発明は活性水素を含む化合物に複数のアルキレンオキサイドを付加してポリエーテル化合物を製造する方法に関するものであり、特にアルキレンオキサイド付加反応において副生物の生成を抑制するための新規な触媒を使用したポリエーテル化合物の製造方法に関するものである。」
(第1頁右下欄第8行〜第14行)
「ポリウレタンの原料として使用されるポリエーテルポリオールには残留触媒量、含水量、酸価、その他の品質上の要求事項があるが、その1つとして不飽和度がある。不飽和度とはポリエーテルポリオール中の不飽和二重結合の量を表わすものである。この不飽和度の高いポリエーテルポリオールは製品の着色や異臭等の原因になり易くさらにポリウレタンの物性や品質にも悪影響を与えるので、不飽和度の少いポリエーテルポリオールが求められている。」
(第2頁左上欄第14行〜右上欄第3行)
「実施例1 グリセリンにプロピレンオキサイド(以下POと称する)を付加して得られる分子量1500のポリエーテルポリオール750gに苛性カリ19.5gを混合した後、18-クラウン-681gとともにオートクレーブに装入して110℃に昇温した。減圧にて苛性カリに基づく水分を除去した後、PO 3180gを5.5時間にわたって導入し、その時内圧は1.9Kg/cm2Gに保たれていた。PO導入終了後さらに1.5時間110℃に保って後反応を行った。反応完結後、ケイ酸マグネシウム174gを添加し、110℃で3.5時間撹拌を行って触媒を吸着させ、濾過、乾燥して製品を得た。得られたポリエーテルポリオールの水酸基価(以下OH価と称する)は27.6、不飽和度(JIS K 1557-1970に基づいて測定。以下同様)は0.031であった。」
(第4頁右下欄第4行〜第5頁左上欄第1行)
「実施例7 実施例1におけるケイ酸マグネシウム添加前の触媒を有するポリエーテルポリオールに、さらにエチレンオキサイドを仕上りポリエーテルポリオール中のエチレンオキサイド含有量15重量%となるように110℃で付加反応させた。これを実施例1と同様触媒除去処理を行った。得られたポリエーテルポリオールのOH価は24.7、不飽和度は0.025であった。」
(第5頁右上欄下から第7行〜左下欄第2行)
「参考例1 実施例7及び比較例2で得られたポリエーテルポリオールを下記第2表に示す発泡処方(重量部で示す)に従って混合し、予め50℃に調温しておいたアルミニウム製のモールド中に流し込んだ。室温にて10分後離型し、室温にて一昼夜放置したフォームの物性を測定した。その結果を第2表に示す。本発明により得られる不飽和度の少いポリエーテルポリオール使用ポリウレタンフォームは、圧縮強さおよび永久歪について改善されていることがわかる。」
(第5頁左下欄第12行〜右下欄第2行)
刊行物2には更に、参考例1の結果として、実施例7のポリエーテルポリオール100、水3、シリコンオイル1.2、トリエチレンジアミン0.1、ポリイソシアネート(TDI80と粗ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの重量比80:20の混合物)インデックス〔105〕の発泡処方で得られたフォーム物性は、密度50.1Kg/m3、圧縮強さ25%で11.2Kg/314cm3、65%で30.8Kg/314cm3、引張り強度1.28Kg/cm2、伸び221%、圧縮永久歪 乾5.1%、湿13.4%、弾性60%であること(第2表)が示されている。
米国特許第4098729号明細書(1978年7月4日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第1号証、以下、「刊行物3」という。)には次の記載が成されている。
「開放気泡構造の架橋されたウレタン基からなるフォームの製造法」(発明の名称)
「(a)約700〜5000のヒドロキシ当量を有するポリエーテルポリオールからなる2または3官能性活性水素化合物;(b)2または3官能性ポリイソシアネート;(c)触媒;(d)発泡剤;および(e)架橋剤[但し該架橋剤は結晶性の少くとも3個の水酸基を有する飽和または不飽和の脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族または芳香脂肪族のポリヒドロキシ化合物であり、該化合物は該発泡される系に不溶性または僅かに可溶性であり約60〜160℃の温度範囲で溶融し、該架橋剤は該系中の該ポリオールの1ヒドロキシ当量に基づいて計算して0.1〜5.0ヒドロキシ当量の量において用いられ・・・発泡より前に該発泡系に添加される]からなる系を発泡させることからなる開放気泡構造の架橋されたウレタン基からなるフォームの製造法。」(クレーム1)
「本発明による架橋されたウレタン基からなるフォームの製造のための出発物質は脂肪族、脂環式および芳香族ポリイソシアネートであり、この目的は当業者に周知である。・・・そのようなイソシアネートの例は、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネート、3量化トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネートまたはポリメリックイソシアネートたとえばポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネートならびにこれらの化合物の混合物である。」(第7欄第16行〜第29行)
「本発明の目的にとくに適しているのは700〜5000のヒドロキシ当量を有する2または3官能性ポリエーテルポリオールである。最も好ましいのは1500〜4000のヒドロキシ当量を有する。1500以上のヒドロキシ当量を有し80〜100%のプロピレンオキサイドからなるポリエーテルポリオールは、もはやアルカリ性触媒では純粋に定義されたようには製造できない。ヒドロキシ当量すなわち鎖長の増大に伴って、副反応が起こってアリルまたはプロペニルエーテル基のような不飽和末端基の形成に至る程度が増大する。このような副反応のために、ポリエーテルポリオールの官能基数の減少を来たし、最終的にポリエーテルポリオール生成物が有用な技術的特性を有するフォーム製品の製造にはもはや使用し得ないという事実に至る結果となる。しかしながら、1500〜5000のヒドロキシ当量と高いプロピレンオキサイド含有率を有し出発物質分子に起因する官能基数がほぼ保持されている無定形ポリエーテルポリオールは、別の有機金属または金属混合触媒により製造できる。適した触媒系は例えば複金属シアン化物錯体であり、その組成および製造はドイツ特許第1667068号明細書に開示されている。これらの触媒の存在下に、例えばブタンジオール-1,4またはトリス-ヒドロキシプロポキシプロパンのような低分子量ポリヒドロキシ化合物を出発物質分子として用いて製造されるポリエーテルポリオールは、1500〜5000の範囲のヒドロキシ当量でも、転位反応により形成される不飽和末端ポリエーテルポリオール分子はほんの僅かの量しか含有しない。そのようなポリエーテルポリオール中の不飽和成分の含量はグラム当り通常0.04ミリグラム当量より低い不飽和成分である。出発物質構成単位を除いて、好ましいポリエーテルポリオールは完全にプロピレンオキサイドからなる。その代りに、ポリエーテルポリオールは5〜20重量%のエチレンオキサイドと80〜95重量%のプロピレンオキサイドからなっていてもよい。エチレンオキサイド含有ポリエーテルポリオールにおいて、10重量%以上の末端水酸基は第1級水酸基の形であってもよい。5〜20重量%のエチレンオキサイドを含有する、より高分子量のポリエーテルポリオールについて、それらの活性水素原子の20〜50重量%が第1級OH基の形で存在するのが好ましい。より高分子量のポリエーテルジオールおよびトリオールを用いることにより、本発明に従って製造されるフォームは高い弾性特性が付与される。」
(第7欄第49行〜第8欄第38行)
「ポリウレタンフォームの製造は、プレポリマー法または好ましくはワンショット法により行うことができる。ワンショット法に従って、ポリウレタンフォーム製造は、上記ポリエーテルポリオール、水および場合により有機発泡剤ならびに安定剤または乳化剤および活性化助剤およびその系に加えられている本発明の結晶性ポリヒドロキシ化合物と、ポリイソシアネートを混合することにより室温でまたは高められた温度で達成される。安定剤または乳化剤としては界面活性剤が適している。これらの界面活性剤は好ましくは、ポリオキシアルキレン単位またはセグメントで変性されていてもよいアルキルシロキサン基を含有すべきである。」(第8欄第61行〜第9欄第8行)
「ポリウレタンフォームの製造は、密閉された金型内で行われてもよく、スラブフォームとしてでもよい。発泡が型内で行われる場合、発泡されるべき反応混合物は金属もしくはプラスチック製の型内へ入れられる。一般に、入れられるべき発泡し得る反応混合物の量は型がちょうど充填されるような量である。しかし、より多い量の発泡し得る混合物を用いるのがうまくゆく。」
(第9欄第33行〜第40行)
「例1 次の組成を有する混合物が調製された。
100.00重量部の84重量%のプロピレンオキサイドと16重量%のエチレンオキサイドからなり、35のOH価を有し、その中に1.5部のソルバイトが分散しているグリセリンベースのポリオキシアルキレントリオール 3.00重量部の水 0.35重量部のトリエチレンジアミン 2.0重量部のトリエタノールアミン 1.00重量部のポリエーテル変性シロキサン(例えば“TEGOSTAB B 3706”として商業的に知られている。) 5.00重量部のトリクロロフルオロメタン この混合物は開放容器中で67部のトルエンジイソシアネート(T80)と33重量部の粗ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物51.6重量部との反応に共された。・・・」(第11欄第7行〜第33行)
「例4 次の組成を有する混合物が調製された。
87.25重量部の83重量%のプロピレンオキサイドと17重量%のエチレンオキサイドから構成され28のOH価を有するグリセリンベースのポリオキシアルキレントリオール 15.00重量部の例7に従って製造され、分散剤としての同一ポリオール中の10重量%のソルバイトと4.5重量%の水を含有する分散物 2.33重量部の水 2.00重量部のトリエタノールアミン 0.33重量部のトリエチレンジアミン 1.00重量部のポリエーテル変性ポリシロキサン(商品名“TEGOSTAB B 3705”) 5.00重量部のトリクロロフルオロメタン この混合物が、52.5重量部の39のNCO数を有するトリレンジイソシアネートの三量体のトリレンジイソシアネート中の溶液と共に、開放フォームボックス中で激しく攪拌され反応された。次の機械的特性を有する開放気泡の非収縮性のフォーム体が得られた。 密度:32g/1 25%圧縮における硬さ:17p/cm2 65%圧縮における硬さ:58p/cm2 サク因子:3.4」
(第14欄第31行〜第59行)
「例5 次の成分からなる混合物が調製された。
89重量部の84重量%のプロピレンオキサイドと10重量%のエチレンオキサイドから構成され35のOH価を有するグリセリンベースのポリオキシアルキレントリオール 10重量部のソルバイト および1重量部の1,3,5,7-テトラメチル-テトララウロイル-プロピルシクロテトラシロキサン この混合物は強力剪断力を与える撹拌下で120℃に加熱された。形成されたエマルジョンの急速冷却と同時にポリエーテルポリオール中のソルバイトの比較的安定な分散物が形成された。分散相の融点は91℃であった。」
(第15欄第31行〜第45行)
「例7 4.5重量部の水と0.5重量部の例5の乳化在中10重量部のソルバイトを例4に記載のポリエーテルポリオール85重量部に剪断力撹拌下に添加した。ソルバイトは微細に分散した状態で沈殿した。・・・」
(第15欄第61行〜第16欄第3行)
「例8 次の成分の混合物を調製した。 例5に記載のポリオキシアルキレントリオール75重量部 25重量部のソルバイト この混合物をスチールボールを充填したボールミルに入れ、室温で24時間粉砕した。25℃において8000cPの粘度をもつ安定な分散体が得られた。」
(第16欄第5行〜第15行)
「例9 94.0重量部の例1のポリオキシアルキレントリオール 8.0重量部の例8に準じて製造された分散体 3.0重量部の水 2.0重量部のトリエタノールアミン 0.2重量部のトリエチレンジアミン 0.4重量部のジメチルエタノールアミン 1.0重量部の一般式・・・のメチルフェニルシロキサン(名称“DD 3043”として商業的に知られている。)からなる混合物の6倍量を54.4重量部の例4のポリイソシアネートと共に激しく混合した。この混合物を45℃に予備加熱した金型に導入した。金型を密閉し、反応を開始した。・・・」
(第16欄第16行〜第53行)
「本発明により得られる硬度の増加は、極めて高い弾性を有するが多くの目的には柔らかすぎるHRまたはコールドフォームの名で市販されているフォームシステム用に特に重要である。」
(第9欄第48行〜第52行)
米国特許第4687851号明細書(1978年8月18日発行、特許異議申立人・東谷満が提出した甲第3号証、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第2号証、以下、「刊行物4」という。)には、「(a)ポリイソシアネートと(b)少なくとも2000の当量と不飽和度0.1meq/g以下のポリエーテルポリオールの反応生成物であるポリウレタンおよび/またはポリウレアポリマー」(第1欄第41行〜第48行)に関する発明が開示されている。この発明によるポリウレタンおよび/またはポリウレアポリマー弾性体は、「驚くべき弾性と優れた引っ張り特性」(第1欄第51行〜第53行)を示し、低ガラス転位温度であり、「優れたコンプレッションセット性」(第1欄第54行)を示すことが記載されている。また、このポリエーテルポリオールは「アルキレンオキサイドとして、少なくとも炭素数3またはそれ以上のアルキレンオキサイドやそれらの混合物」(第2欄第5行〜第8行)の反応生成物であり、好ましいアルキレンオキサイドは「炭素数3のものが少なくとも50重量%である」(第2欄第17行〜第19行)こと、アルキレンオキサイドは「ポリ水酸化イニシエータ-の存在下に重合して」(第2欄第22行〜第24行)ポリエーテルポリオールを製造されること、ポリエーテルポリオールの末端を一級水酸基にしたい場合には「少量のエチレンオキサイドを用いる」(第3欄第24行〜第26行)こと、このポリエーテルポリオールの「有用な官能基数は8までであるが、好ましくは2〜4」(第3欄第41行〜第43行)であること、ウレタンおよび/またはウレア化反応に用いる適切なポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネートを含み、「2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、およびそれらの混合物」(第3欄第51行〜第55行)の他、「プレポリマー変性されたジフェニルメタンジイソシアネートの誘導体」(第3欄第55行〜第57行)等が有用であること、更にこの発明においては反応成分に「種々のオプショナルな物質」(第4欄第12行〜第14行)を添加すること、架橋剤に関しては「1種あるいはそれ以上の低当量のポリオールを反応混合物に含ませるのが好ましいこと(第4欄第15行〜第16行)、これらは一般に「鎖延長剤」(第4欄第17行)という述語で呼ばれていること、鎖延長剤は「特にポリウレタンおよび/またはポリウレアエラストマ一または軟質フォーム」(第4欄第18行〜第20行)に好んで使用されること、この鎖延長剤は「ポリヒドロキシ化合物」(第4欄第21行〜第22行)であり、その「当量は31〜250」(第4欄第22行〜第23行)で用い、その使用量は「ポリオール100重量部に対して2〜80部が典型的」(第4欄第37行〜第42行)であること、また、「軟質フォームにおいては、鎖延長剤使用量を上げるとフォームがより硬くなる」(第4欄第47行〜第48行)こと、この発明においては「一般に有用な触媒を使用」(第4欄第61行〜第62行)し、その触媒は「三級アミン化合物や有機金属化合物」(第4欄第65行〜第66行)が好ましく、その使用量は「一般に、イソシアネートと反応し得る成分100重量部に対して0.10〜1部」(第4欄第66行〜第68行)であること、ポリウレタンおよび/またはポリウレアフォームの製造では、「通常、発泡剤を含み」(第5欄第6行〜第8行)、「水やハロゲン化メタン等の低沸点有機化合物を含む最適な」(第5欄第8行〜第10行)発泡剤を使用し、「水は一般にポリオール100重量部に対して0.5部〜5部」(第5欄第12行〜第14行)であること、各種助剤(第5欄21行〜第25行)を用いること、およびポリイソシアネートの量は、「活性水素原子100当たりのイソシアネート基が70〜500が効果的である」(第3欄第66行〜第4欄第2行)ことが記載されている。実施例1(第6欄第1行〜第39行)には、イニシエーターとしてグリセリンのプロピレンオキサイド付加物(分子量700)を、アルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドを用い、さらに約10%のエチレンオキサイドを付加して製造したポリオール(ポリオールA:当量2850、不飽和度0.016meq/g)が記載されている。このポリオールは、分子量8550、水酸基価19.7mgKOH/gである。また、この実施例には、イニシエーターとして、アミノエチルピべラジンと3モルのブロピレンオキサイドの付加物を用い、アルキレンオキサイドとしてプロピレンオキサイドを用い、さらに約10%のエチレンオキサイドを付加して製造したポリオール(ポリオールB:当量3260、不飽和度0.07meq/g)が記載されている。
特公昭59-15336号公報(昭和59年4月9日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第3号証、以下、「刊行物5」という。)には、「複金属シアン化物錯体の類の触媒残留物を含有する、ポリプロピレンエーテルポリオールとポリ-1,2-ブチレンエーテルポリオールとそれらの混合物からなる群から選ばれるポリオールを、触媒残留物をイオン種へ転化するのに十分な量と温度と時間でナトリウム金属、カリウム金属、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる処理剤で処理し、上記ポリオールがこのポリオールの第二級の基の少なくともいくらか好ましくは全部を第一級ヒドロキシル基に転化するに少なくとも足りる量で存在する処理剤と混合物になっている間にエチレンオキシドを上記ポリオールに加え、次にイオン種と処理剤をポリオールから除くことからなる方法」(特許請求の範囲第1項)が記載されており、この方法によって作られるポリオール類は安定であるか、本質的に安定であり、これらのポリオール類は屈曲性ないし剛性のポリウレタンフォームの製造に使用できること(第4頁右欄第31行〜第34行)が記載されている。
なお、刊行物5には、「ポリウレタン類に関してもっと詳しい情報を得るには・・・「ポリウレタン類」化学と技術、第II部技術、ソーンダース及びフリッシュ、インターサイエンス・パブリッシャーズ(ジョン・ウイリー・アンド・サンズ社の部門)、ニューヨーク、1964年、を参照のこと。」との記載(第4頁右欄末行〜第5頁左覧第14行)がなされている。
米国特許第3829505号明細書(1974年8月13日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第4号証、以下、「刊行物6」という。)には、「ポリエーテル及びその製法」(名称)が記載されており、その方法の特徴は、はっきり感知し得る程の末端不飽和基のない高分子量ジオール、トリオール等の製造であり、生成物はポリイソシアネートとの反応による固体または可撓性ポリウレタンの製造に有用であること(第1欄第26行〜第35行)が記載されている。
特開昭60-20915号公報(昭和60年2月2日発行、特許異議申立人・東谷満が提出した甲第4号証、以下、「刊行物7」という。)には、「遊離基触媒の存在において、(1)エチレン系不飽和単量体約10〜約50重量%を、(a)基材ポリオールと(b)数平均分子量が少くとも約240のコア-セグメントから成る接続枝ポリオールとから成るポリオール混合物約50〜約90重量%中に溶解又は分散させて重合させることによって形成する常態で液体の安定なポリマー/ボリオール組成物であって、1つのコア-枝単位は直接に該コア-セグメントの各端に接続され、各端の少くとも1つの追加枝単位は直接又は間接に該コア-枝単位に接続され、該枝単位は枝単位セグメントを形成し、線状ポリマーセグメントは該枝単位に接続されかつ少くとも約240の数平均分子量を有し、該接続枝ポリオールがポリマー/ポリオールを安定化する程の量からポリオール混合物の100重量%までの範囲の量で存在する前記組成物。」(特許請求の範囲第1項)が記載され、「ポリウレタンフォーム、エラストマー等の製造に用いるのに適したポリマー/ポリオール組成物は公知の材料である。」(第4頁右上欄第8行〜第10行)こと、この組成物は「接続枝ポリオールを所望の安定度を与えるのに十分な量で用いて作るポリマー/ポリオール及びポリウレタン生成物の調製における該ポリマー/ポリオールの使用に関する」(第8頁右下欄第14行〜第17行)ものであり、この接続枝ポリオールの「線状セグメントは少くとも約240の分子量(数平均)を持つべきであるが、多分、分子量4000又はそれ以上」(第11頁左上欄第18行〜第20行)であり、「所望の場合、かつプロピレンオキシドを用いて線状セグメントを形成する場合には、線状セグメントを従来技法によってエチレンオキシドでキャップして第一水酸基の比率を増大させることができ」(第11頁右上欄第11行〜第15行)、そのエチレンオキシドの量は「約10〜35%の範囲」(第11頁右上欄第18行)が適当であり、「接続枝ポリオールは数平均分子量約8000〜約18000かその位を有するのが好まし」(第11頁右上欄第19行〜左下欄第1行)く、「典型的な軟質フォームの場合にはヒドロキシル価は約25〜約70」(第11頁左下欄第7行〜第8行)であり、これらの接続枝ポリオールの具体的な水酸基価と不飽和度(第23頁下欄表I、実施例8、9、11、13、14、15の行)が記載されている。また、「ポリマー/ポリオールを調製する際に用いる単量体は任意のエチレン系不飽和単量体から成ることができ」(第12頁左上欄第15行〜第17行)、商業的に用いられるポリマー/ポリオールは、通常、アクリロニトリルか或はアクリロニトリルとスチレンとの重量比を変えた混合物のどちらかから成る」(第12頁右上欄第2行〜第5行)こと、「アクリロニトリル対スチレンの比は、特定の用途に対して望まれる通りに、100:0〜0:100の範囲になり得、コモノマーを用いる場合には、適当な共反応性がありさえずれば、任意の単量体から適度を超える安定度のポリマー/ポリオールを作ることができる」(第12頁右上欄第12行〜第19行)こと、ポリマーポリオール中のポリマー微粒子の含量は「通常、ポリマーポリオールの重量を基準にして約10〜約50%の範囲」であり、「一層低いポリマー含量を用い得ること」(第13頁右上欄第4行〜第7行)であることが記載されている。これらの接続枝ポリオールによるポリマーポリオールの製造実施例は、第25頁下欄表II(特に実施例28、29)に記載されている。また、「(a)ポリマー/ポリオール組成物と、(b)有機ポリイソシアネートと、(c)(a)及び(b)を反応させる触媒」(第17頁左上欄第11行〜第13行)、かつ「フオームを調製する場合には発泡剤およびフォーム安定剤を反応させる」(第17頁左上欄第14行〜第15行)ポリウレタン生成物の製造方法および「所望の場合には、ポリマー/ポリオールを従来のポリオール等にブレンドしてポリマー含量を特定の最終用途について望まれるレベルにまで低減する」(第17頁左上欄第19行〜右上欄第2行)ことが記載されている。適当なポリイソシアネートの例として、TDI、MDI、高分子MDI」(第17頁右上欄第12行〜第13行)が例示され、「これらの混合物も挙げ」(第17頁左下欄第17行〜第18行)られている。「任意の公知触媒」(第17頁左下欄第19行〜第20行)が使用でき、その使用量は「反応混合物の重量を基準にして約0.001〜約5%用いる」
(第18頁左下欄第6行〜第7行)こと、発泡剤は「例えば水を少量(例えば、ポリマー/ポリオール組成物の全重量を基準にして約0.5〜約5重量%の水)使用する」(第18頁左下欄第10行〜第12行)他、「反応の発熱によって気化する発泡剤を使用することによって、或は2方法を組合せることによって行う」(第18頁左下欄第12行〜第14行)こと、例として「ハロゲン化炭化水素」(第18頁左下欄第15行〜右下欄第2行)が記載され、フォーム安定剤を「全反応混合物を基準にして約0.001〜5重量%使用」(第18頁右下欄第19行〜第20行)することも記載されている。
「Proceedings of the Fourth International Pacific Conference on Automotive Engineering」Melbourne,Australia,November8-14,(1987),871299,299.1頁〜299.9頁(特許異議申立人・東谷満が提出した甲第5号証、以下、「刊行物8」という。)には、日本の自動車工業会における可撓性成形ポリウレタンフォームの動向について記載されており、自動車成形シート、即ちHRフォームクッションの弾性が55〜70%であること(299.2頁第1表)および、共振振動数が2.6〜3.4程度であること(299.7頁第5図、第6図)が記載されている。
特表昭56-500497号公報(昭和56年4月16日発行、特許異議申立人・東谷満が提出した甲第6号証、以下、「刊行物9」という。)には、「60%より大で90%より小の内部残留セルを有する軟質ポリウレタンフォーム」(請求の範囲1)が記載されており、これは軟質フォーム(特に高弾性フォーム)の振動消去性能を向上させるものであるが、発泡剤の存在下にポリオールとイソシアネートとを反応させ、「常温硬化型ポリウレタンフォームを製造する方法は当業界の熟達者にとって周知であり」(第3頁右上欄第14行〜第17行)、「硬度密度比を変えるために、および(または)特定の物理的性質を改善するために、0.2ないし20pphp、好ましくは0.5ないし8pphpの架橋剤を加えること」(第5頁左上欄第7〜10行)、その分子量は「60ないし2000、好ましくは80ないし400の分子量を有する多価アルコールである」(第5頁左上欄第12〜14行)こと、および、ポリイソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(第4頁右下欄第19行〜第25行)が記載されている。
特開昭50-15894号公報(昭和50年2月19日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第6号証、以下、「刊行物10」という。)には、「(a)ポリオキシアルキレン化合物と(b)エチレン性不飽和単量体とを(c)分子中にシクロヘキシル基およびフェニル基のうちの少なくとも一つの基を有するアゾ系ラジカル開始剤の存在下で反応させることを特徴とするグラフト共重合体の製造方法」(特許請求の範囲第1項)が記載され、特にポリウレタン樹脂の製造に適したグラフト共重合体(一般にポリマーポリオールと呼ばれている)の製造方法の改良に関するものであること(第1頁右下欄第2行〜第7行)および、ポリオキシアルキレン化合物としては実質的に反応性の脂肪族不飽和基を含まないほうが望ましいこと(第2頁右上欄第19行〜左下欄第6行)が記載されている。
特開昭49-109498号公報(昭和49年10月17日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第7号証、以下、「刊行物11」という。)には、高弾性ポリエーテルウレタンフォームの製法(名称)の発明が記載されており、その態様として(I)(A)少くとも40モル%の第一級ヒドロキシル基を含有し且つ約2000〜約8000の分子量を有するポリエーテルポリオール及び(B)該ポリエーテルトリオール及び平均少くとも2個のヒドロキシル基を有する他のポリエーテルの混合物、但しこの混合物の該ポリエーテルトリオールが全ポリオール含量の少くとも40重量%に相当する該混合物からなる群から選択される有機ポリオール;(II)有機ポリイソシアネート、但し該有機ポリオール及び該ポリイソシアネートが混合物中に多量成分として存在し且つウレタンを製造するのに必要な相対量で存在するような該有機ポリイソシアネート;(III)反応混合物を発泡させるのに十分少量の発泡剤;(IV)ウレタンを製造するための触媒量の触媒;(V)フォームをボイド及び収縮に対して安定化させるのに十分な量のシアノアルキル改変シロキサン流体;を含んでなる混合物を発泡及び反応せしめることを特徴とする高弾性ポリエーテルウレタンフォームの製造方法(第26頁右上欄第16行〜右下欄末行)が記載されている。
米国特許第4689357号明細書(1987年8月25日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第8号証、以下、「刊行物12」という。)には、振動遮断材(名称)が記載されており、これは、本質的に(a)2.5〜4.5の平均官能基数および2000〜8500の数平均分子量を有するポリエーテルポリオール、(b)2.5〜4.0の平均官能基数を有しグラフト比が4〜20重量%であるビニルモノマー-グラフトポリオール、(c)ヒドロキシル末端基、2.0〜3.0の平均官能基数および2000〜3500の数平均分子量を有する液状ポリブタジエンポリオール、(d)有機ポリイソシアネート、(e)鎖伸長剤、(f)発泡剤および(g)ウレタン化触媒からなり、NCOインデックスが90〜110の範囲にあり、鎖伸長剤の濃度が(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の合計量に基づいて0.3×10-3〜1.5×10-3mol/gである、ウレタンエラストマーの発泡しうる出発液体から製造される、ウレタン結合および0.4〜0.75g/cm3の嵩密度を有する低発泡ウレタンエラストマーからなる振動遮断材であること(第3欄第15行〜第38行)が記載されている。
岩田敬治編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」昭和62年9月25日、日刊工業新聞社発行(特許権者が特許異議意見書に添付した乙第1号証、特許異議申立人・東谷満が回答書に添付した参考資料1、三洋化成工業株式会社が回答書に添付した資料I、以下、「刊行物13」という。)には、自動車シート用クッション剤のフォーム物性例を示す表中に、コールドキュアフォーム(HRフォーム)クッション使用部位の反発弾性は55〜70%であること(第190頁、表5.14)が記載されている。
J.H.SAUNDERS外1名著「POLYURETHANES CHEMISTRY AND TECHNOLOGY PartII.Technology」INTERSCIENCE PUBLISHERS、1964年発行(三洋化成工業株式会社が回答書に添付した参考資料II、以下、「刊行物14」という。)には、可撓性フォームの成形方法について記載されている。
特許権者が意見書に添付した、旭硝子株式会社中央研究所玉川分室内和田浩志が記名、押印した実験報告書(以下、「特許権者提出の実験報告書」という。)には次の記載がなされている。
「1.本実験の目的
本件特許発明において、要件I(反応を密閉された金型内で行うこと)、要件II(ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28であること)、要件III(ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下であること)、要件IV(ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基数が2〜8であること)、要件V(ポリオキシアルキレンポリオールがオキシブロピレン基含有量70重量%以上有すること)、及び要件VI(ポリオキシアルキレンポリオールが末端オキシエチレン基を5〜30重量%有すること)、の要件がそれぞれ臨界性を有することを立証するため、以下の実験を行った(ただし、要件IV、Vの項目は省略する)・・・。
4.実験方法
(1)要件I・・・について
(1‐1)内容 密閉された金型内で反応させることが必要であることを実証するために、反応を密閉された金型内で行った場合と開放型で行った場合での、それぞれの発泡挙動および得られた弾性フォームの特性の比較を行った。・・・(1‐4)評価 本実験番号1と2、および3と4の比較により、開放型成形品は、共振振動数および反発弾性とも本件発明の域に達していない。また、開放型にて、硬度および密度を密閉型成形品と同程度まで調整した実験番号5においても、共振振動数および反発弾性は本件発明の域に達していない。従って、反応を密閉された金型内で行うことが必要である。
(2)要件II・・・について
(2‐1)内容 本明細書に記載されているポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28であることが必要であることを実証するために、水酸基価の異なるポリオキシアルキレンポリオールを合成し、それらを用いて弾性フォームを製造し、発泡挙動および特性の比較を行った。・・・(2‐4)評価 本実験結果より、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(XmgKOH/g)が5より小さい場合については、ポリオール原料温度を60℃にしても粘度が高く、混合不良が発生し、成形が不可能であった。また。ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価が28より大きい場合では、総不飽和度(Ymeq/g)が0.04 以下でも本明細書に記載されている共振振動数が3.5Hz以下でかつ反発弾性が70%以上のフォームは得られていない。従って、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(XmgKOH/g)は、5以上28以下であることが必要となる。
(3)要件III・・・について
(3‐1)内容 本明細書に記載されているポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度(Y meq/g)が0.04 以下であることが必要であることを実証するために、総不飽和度の異なるポリオキシアルキレンポリオールを合成し、それを用いて弾性フォームを製造し、特性の比較を行った。・・・(3‐4)評価 本実験結果より、ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度が0.04より大きい実験番号1では、反発弾性が本件発明の領域に達していない。従って、ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度が0.04以下であることが必要である。
(4)要件VI・・・について
(4‐1)内容 本明細書に記載されているポリオキシアルキレンポリオールの末端オキシエチレン基が5〜30wt%であることが必要であることを実証するために、末端オキシエチレン基量の異なるポリオキシアルキレンポリオールを合成し、それを用いてフォームを製造し、発泡挙動および特性の比較を行った。(4‐2)実験 原料:後述ポリウレタン弾性フオームの原料として表6のポリオキシアルキレンポリオールを使用した。各ポリオールは本明細書に示される方法で合成を行った。ポリマー分散ポリオールは、該ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとし、ポリアクリロニトリルの微粒子を20wt%含むものを使用した。このポリマー分散ポリオールの名称はマトリックスのボリオールの名称にpを付して表す。他のポリウレタン弾性フォームの製造原料は以下の通りである。・・・架橋剤 A:ソルビトール-プロピレンオキシドーエチレンオキシド付加物。水酸基価450mgKOH/g 触媒 A:トリエチレンジアミン溶液(商品名“TEDA L33”、東ソー(株)販売) B:3級 アミン系触媒(商品名 “TOYOCATET”、東ソー(株)販売) 発泡剤 A:水 整泡剤 B:シリコン系整泡剤(商品名“L‐5366”、日本ユニカー(株)販売) C:シリコン系整泡剤(商品名“L‐3601”、日本ユニカー(株)販売) ポリイソシアネート化合物 A:TDI‐80(日本ポリウレタン(株)販売) フォーム製造方法:本明細書実施例に示す方法により、ウレタンフオームを製造した。また、本明細書実施例に示す方法によりフォームの特性を測定した。ここでフォームの成形不良を回避するために、末端オキシエチレン基含量が5wt%より小さいポリオールでは触媒量を増量し、かつ高活性シリコン整泡剤を使用し、一方末端オキシエチレン基含量が30wt%より大きいポリオールでは触媒量を削減した。なお、フオームの成形不良を回避するために触媒量、シリコン整泡剤の活性を調製することは通常行われる方法である。(4‐3)結果 表7に得られたポリウレタン弾性フォームの特性を示す。・・・(4‐4)評価 末端オキシエチレン基が5wt%より小さい場合(実験番号1)では、フォームの外観に不良(セル荒れ)がみられ、また共振振動数および反発弾性が本件発明の域に達していない。一方、末端オキシエチレン基が30wt%より大きい場合(実験番号3)では、フォームの独泡性が強く、金型取り出し時に割れ不良が発生した。従って、ポリオキシアルキレンポリオールの末端オキシエチレン基が5〜30wt%であることが必要である。」
特許権者提出の実験報告書には更に、実験(2‐2)、実験(3‐2)および実験(4‐2)に用いたポリオールの分子量等の物性値(表2、表4および表6)並びに各実験により得られたポリウレタン弾性フォームの特性(表1、表3、表5、および表7)が記載されている。
そして、表6には、実験(4‐2)に用いたポリオールMは、官能基数3、分子量8000、EO 3.8wt%、水酸基価21mgKOH/g、不飽和度0.022meq/gであり、ポリオールNは、官能基数3、分子量8000、EO 12wt%、水酸基価21mgKOH/g、不飽和度0.021meq/gであり、ポリオールOは、官能基数3、分子量8000、EO 32wt%、水酸基価21mgKOH/g、不飽和度0.020meq/gであることが記載されている。
また、表7には、ポリオールM:70、ポリマーポリオールMp:30、架橋剤A4.5、触媒A0.75、触媒B0.1、発泡剤A2.5、整泡剤B1.0、イソシアネートAインデックス105としたときの外観は「セルアレ」、コア密度49.4 kg/m3、25%ILD18.0kg/314cm2、反発弾性(コア)66%、伸び90%、湿熱圧縮永久歪み13.5%、共振振動数3.62Hz、6Hz伝達率0.73であり、ポリオールN:70、ポリマーポリオールNp:30、架橋剤A4.5、触媒A0.5、触媒B0.l、発泡剤A2.5、整泡剤C1.0、イソシアネートAインデックス105としたときの外観は「良好」、コア密度48.7kg/m3、25%ILD22.3kg/314cm2、反発弾性(コア)77%、伸び132%、湿熱圧縮永久歪み6.1%、共振振動数3.31Hz、6Hz伝達率0.40であり、ポリオールO:70、ポリマーポリオールOp:30、架橋剤A4.5、触媒A0.3、触媒B0.1、発泡剤A2.5、整泡剤C1.0、イソシアネートAインデックス105としたときの外観は「独泡ワレ」であることが記載されている。
特願平2-155618号(平成2年6月15日出願、優先権主張1989年6月16日 米国、発明者 ロナルド エム.ヘルリントンおよびロバート ビー.ターナー、出願人 ザ ダウ ケミカル カンパニー)の願書に最初に添付した明細書(特開平3-35013号公報=平成3年2月15日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第9号証参照、以下、甲第9号証明細書という。)には、「低不飽和ポリエーテルポリオールを用いて製造される軟質ポリウレタンフォーム及びその製造方法」(名称)の発明が記載されている。
特願平1-218389号(平成1年8月24日出願、発明者 秋本啓一、住田健および中村吉男、出願人 三洋化成工業株式会社)の願書に最初に添付した明細書(特開平3-81314号公報=平成3年4月5日発行、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が提出した甲第10号証参照、以下、甲第10号証明細書という。)には、「高弾性ポリウレタンフォームの製法」(名称)の発明が記載されている。
特許異議申立人・三洋化成工業株式会社が回答書に添付した1998年12月9日付けの試験成績表(KOUNOの記名がなされている。以下、「三洋化成工業株式会社提出の試験成績表」という。)には、試験名:シートクッション振動試験 シート形状T/P シートサイズ300*300*100 シート構造FULLFOAMであり、振動特性図が振動数3.48Hzで5.52倍の伝達率(極大値)を示すこと 共振振動数3.48Hz 共振倍率5.52 動バネ定数23.90N/mm 6Hz時伝達率0.79 振動台の全振幅5.0mmであること 加圧板の種類 鉄研型加圧板の重量50.0Kg 試験機C-601DL-T 検出器SS-204変位計MODEL6004 試験場所の状態 温度:20℃ 湿度:50%であること、が記載されている。
特許異議申立人・三洋化成工業株式会社はこれを甲第10号証明細書実施例9を追試実験して得られたフォームの試験結果であると述べている。
(回答書第27頁第19行〜第21行)
(3)当審の判断
(3-1)明細書の記載事項について
特許異議申立人・三洋化成工業株式会社は、訂正前の明細書において、特許請求の範囲請求項1には、「発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)」および「下記ポリイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物・・・ポリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物」なる記載がなされ、発明の詳細な説明には対応する記載がなされているが、これらの記載では除外されるものの範囲が不明確である旨の主張をしている。
そして、訂正明細書にも同様の記載がなされているのでこれについて検討する。
訂正明細書におけるこれらの記載は、例えば、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むもの、或いは、トリレンジイソシアネート(もしくはその変性体)とポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートの変性体との3者の混合物を除いていることは明らかである。
そのため、訂正明細書の特許請求の範囲には、発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されており、発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成および効果が記載されているというべきである。
それ故、訂正明細書の記載が特許法第36条第3項および第4項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
(3-2)優先権および発明の同一性について
特許異議申立人・三洋化成工業株式会社は、補正前の訂正明細書において、特許請求の範囲請求項1には、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価が「5〜28」であり、総不飽和度(Ymeq/g)が「0.04以下」である旨の規定がなされているが、優先権主張の基礎となる特願昭63-267297号および特願平1-29644号の願書に最初に添付した明細書には、水酸基価および総不飽和度の上限である「28」および「0.04」の数字が記載されていないので、優先権主張は認められないという前提を設け、この前提に立てば、本件特許の出願日は、現実の出願日である平成1年10月20日になり、甲第9号証明細書および甲第10号証明細書の存在により、補正前の訂正明細書請求項1〜6に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない旨の主張をしている。
そして、訂正明細書の特許請求の範囲にも同様の記載がなされているのでこれについて検討する。
本件特許の優先権主張の基礎となる特願昭63-267297号の願書に最初に添付した明細書には、「ポリオールとして水酸基価5〜34、総不飽和度0.07以下の高分子ポリオールを用いる」(特許請求の範囲請求項1)との記載がなされている。そしてこの記載は水酸基価と総不飽和度の範囲がそれぞれ他に影響されないものとして解するのが自然である。
そのため、訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載されたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価「5〜28」および総不飽和度(Ymeq/g)「0.04以下」のすべての領域にわたって特願昭63-267297号の願書に最初に添付した明細書の記載と一致している。
してみれば、優先権を認めることができ、本件特許は特願昭63-267297号の出願の時、即ち昭和63年10月25日に出願されたとみなすべきものである。
従って、特許異議申立人・三洋化成工業株式会社の前記主張は、前提において誤っており、甲第9号証明細書、甲第10号証明細書および三洋化成工業株式会社提出の試験成績表について検討するまでもなく、訂正後の発明が特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
(3-3)新規性および進歩性について
特許権者提出の実験報告書は、記載内容が具体的であるところがら、記載されたとおりの実験が行われ、記載されたとおりの結果が得られたものであり、この報告書の内容は訂正後の発明の効果を立証するものとして妥当なものであると認められる。
訂正明細書の記載および特許権者提出の実験報告書の内容から見て、訂正後の発明は、
1.反応を密閉された金型内で行うこと、
2.ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28であること、
3.ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下であること、
4.ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基数が2〜8であること、
5.ポリオキシアルキレンポリオールがオキシプロピレン基含有量70wt%以上有すること、
および
6.ポリオキシアルキレンポリオールが末端オキシエチレン基を5〜30wt%有すること、
の各要件の結合が重要であり、要件1〜6の結合によって初めて、得られるポリウレタン弾性フォームの共振振動数3.5Hz以下、コアの反発弾性70%以上とし、湿熱圧縮永久歪、6Hz伝達率等を改善し、特に自動車用クッションとして優れた特性を有するポリウレタン弾性フォームを得ることができるたものと認められる。
そこで、訂正後の発明と刊行物1〜14の記載とを対比する。
各刊行物には、ポリウレタン弾性フォームについて種々の記載がなされ、訂正後の発明の構成に欠くことのできない次の事項が断片的に記載されている。
a.ポリオキシアルキレンポリオールおよび該ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールから選ばれた少なくとも1種の高分子量ポリオール、任意に架橋剤、およびトリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物を除くポリイソシアネート化合物を触媒、発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)、整泡剤などの助剤の存在下で反応させることによるポリウレタン弾性フォームの製造方法、
b.前記1〜6の要件
c.ポリウレタン弾性フォームの共振振動数が3.5Hz以下であること、
d.コアの反発弾性が70%以上であること、
しかしながら、刊行物1〜14には、これらの事項の全てを組み合わせることは記載されていない。
そして、訂正明細書および特許権者提出の実験報告書の記載から明らかなように、訂正後の発明は、これらの事項の全てを組み合わせることによって、共振振動数3.5Hz以下、コアの反発弾性70%以上のポリウレタン弾性フォームを実際に製造できるという効果を奏したものと認められ、そのような効果は、刊行物1〜14の記載からは予測し得ないものである。
そのため、訂正後の発明が刊行物1〜14に記載された発明であるとも、それらに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることができない。
それ故、訂正後の発明が特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
従って、訂正後の発明は、出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項および第3項に規定する要件を満たすものである。
以上のとおりであるから、本件訂正を認める。
[3]特許異議の申立についての判断
〔申立の理由の概要〕
特許異議申立人・東谷満の申立の理由の概要は、訂正前の全請求項に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定に違反してされた、というものである。
特許異議申立人・三洋化成工業株式会社の申立の理由の概要は、訂正前の全請求項に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号、同条第2項または第29条の2の規定に違反してされ、特許法第36条第3項または第4項の規定に違反する特許出願に対してされた、というものである。
〔判断〕
前記訂正の適否における独立特許要件の判断に示したとおり、本件特許発明(訂正後の発明)については、特許法第29条第1項第3号、同条第2項および第29条の2の規定を適用することはできず、また、訂正明細書は、特許法第36条第3項および第4項の規定を満たすものである。
〔結び〕
従って、特許異議申立人の主張および挙証によっては、本件の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポリウレタン弾性フォームの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
1.下記ポリオキシアルキレンポリオールおよび下記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールから選ばれた少くとも1種の高分子量ポリオール、任意に架橋剤、および下記ポリイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物を触媒、発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)、整泡剤など助剤の存在下密閉された金型内で反応させることを特徴とする、共振振動数が3.5Hz以下、かつコアの反発弾性が70%以上のポリウレタン弾性フォームの製造方法。
ポリオキシアルキレンポリオール:水酸基価(X mgKOH/g)が5〜28、総不飽和度(Y meq/g)が0.04以下、かつ水酸基数2〜8のポリオキシアルキレンポリオールで、オキシプロピレン基含有量70wt%以上かつ末端オキシエチレン基を5〜30wt%含む。
ポリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、ポリウレタン弾性フォーム、およびその製造方法に関するものである。特に自動車用シートクッションとして優れた物性を有するポリウレタン弾性フォーム、およびその製造方法に関するものである。
[従来の技術、発明の解決しようとする課題]
近年、ポリウレタン弾性フォームの特性を向上させるために、新たな種々の検討がなされている。たとえば、自動車などの高級化にともなってシートクッションの振動特性の向上が望まれている。車体振動と人間の関係は一様ではないが、とくに人が敏感な周波数域(たとえば4〜8Hz、あるいは6〜20Hzといわれている)の減衰を特に大きくとることが乗り心地向上に有効であると提唱されている。従って、この周波数域よりも共振振動数が低いポリウレタン弾性フォームでシートクッションを構成することができれば、自動車の乗り心地は大幅に向上すると考えられる。しかしながら、従来共振振動数が4Hz未満のポリウレタン弾性フォームは知られていなかった。
[課題を解決するための手段]
本発明は、共振振動数3.5Hz以下のポリウレタン弾性フォームを提供するものである。又、本発明は、このようなポリウレタン弾性フォームを製造することができるポリウレタン弾性フォームの製造方法を提供するものである。本発明のポリウレタン弾性フォームは、特に低水酸基価でかつ総不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオールを用いることによって得られる。即ち、ポリオキシアルキレンポリオールとして炭素数3以上のオキシアルキレン基を主として含むポリオキシアルキレンポリオール、特に1,2-プロピレンオキシドに由来するオキシプロピレン基を70wt%以上有するポリオキシアルキレンポリオール、であって、その水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28、総不飽和度(Y皿eq/g)が0.04以下である高分子量ポリオールを使用することによって得られる。
このポリオキシアルキレンポリオールの1分子当り平均水酸基数は2〜8であり、特に2〜6が好ましい。又、このポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオール、およびポリマー分散ポリオールとこのポリオキシアルキレンポリオールとの混合物も好ましいポリオールである。
更に、上記ポリオキシアルキレンポリオールなどとともに架橋剤と呼ばれる比較的低分子量の多官能性化合物を使用することも好ましい。
ポリウレタン弾性フォームの原料として、ポリイソシアネート化合物の使用は必須である。さらに、触媒、発泡剤、及び整泡剤は通常必須の助剤である。従って、本発明のポリウレタン弾性フォームはこれらを原料として製造される。
本発明のポリウレタン弾性フォームは、その共振振動数が3.5Hz以下である。それに加えて、コアの反発弾性は70%以上である。更に湿熱永久歪は10%以下であることが好ましい。
以下に、本発明における各原料成分の説明を行なう。
ポリオキシアルキレンポリオール
一般に、ポリウレタンの原料として用いられるポリオキシアルキレンポリオールはアルカリ金属水酸化物などのアルカリ触媒を用い多価アルコールなどのイニシエーターにプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを開環付加重合されて製造されている。この製法において、副生物として不飽和基を有するモノオールが生成し、この不飽和モノオールの生成量はポリオールの分子量の増大(水酸基価の低下)とともに増大する。ポリウレタン弾性フォームの原料として広く用いられている水酸基価56程度のポリオキシアルキレンポリオールにおいては、この不飽和モノオールの存在はあまり問題となる量ではなかった。しかし、ポリウレタンエラストマーなどの原料として用いられるより低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールにおいてはこの不飽和モノオールの存在が問題となることがある。たとえば、水酸基価34程度のポリオキシアルキレンポリオールでは、その総不飽和度は通常0.lmeq/g以上となる。さらに低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールをアルカリ触媒を用いて製造しようとしても、その総不飽和度が著るしく高くなることより事実上不可能であった。
又、かりに総不飽和度の高いポリオキシアルキレンポリオールを用いて弾性フォームを製造したとしても、硬度の低下、反発弾性の低下、圧縮永久歪の悪化、フォーム成形時のキュア性の低下等の問題点が生じる。
本発明において使用されるポリオキシアルキレンポリオールは通常のポリウレタン弾性フォームに用いられる原料に比べ、低不飽和度であるため、従来見られた問題点、特に水酸基価28以下の高分子量ポリオキシアルキレンポリオールを用いる場合の問題点(硬度の低下、反発弾性の低下、圧縮永久歪の悪化、フォーム成型時のキュア性の低下)をおさえることができるとともに、振動減衰特性にすぐれるものである。
こうしたポリオキシアルキレンポリオールは一般的にアルカリ触媒以外の触媒、たとえばジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、複金属シアン化物錯体等を触媒に用いることによって得られる。特に、複金属シアン化物錯体の使用により良好なポリオキシアルキレンポリオールが得られる。このようなポリオキシアルキレンポリオールの製造方法としては、例えば下記文献に記載されている。
USP 3829505,USP 3941849,USP 4355188,USP 3427334,USP 3427335
USP 4472560,USP 4477589,EP 283148
本発明において、ポリオールは上記低不飽和度かつ低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールの1種以上を用いることができる。また、ポリオキシアルキレンポリオール以外に必要により任意にポリエステル系ポリオール、水酸基含有ポリジエン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリオール等の2〜8、特に2〜4個の水酸基を有するポリオールを併用することができる。特にポリオキシアルキレンポリオールの1種類以上あるいはそれをマトリックスとするポリマー分散ポリオールのみからなるか、それを主成分としてポリエステル系や水酸基含有ポリジエン系ポリマーなどの少量(通常30重量%以下)との併用が好ましい。
本発明におけるポリオキシアルキレンポリオールとしては、多価アルコール、糖類、アルカノールアミン、多価フェノール類、それらにアルキレンオキシドを付加して得られる目的物よりは低分子量のポリオキシアルキレンポリオール、その他の開始剤にモノエポキシドの少なくとも1種を付加して得られるポリオキシアルキレンポリオールが用いられる。モノエポキシドとしては、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、その他の炭素数3以上のアルキレンオキシドの少なくとも1種、及びそれらの少なくとも1種とエチレンオキシドの併用が好ましい。特に好ましくは、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシドの少なくとも1種、又はそれらの少なくとも1種とエチレンオキシドの併用である。本発明におけるポリオキシアルキレンポリオールは、1,2-プロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基を70重量%以上含み、好ましくは80重量%以上含む。
上記ポリオキシアルキレンポリオールは1級水酸基含量の高いポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。このようなポリオキシアルキレンポリオールは、分子末端にオキシエチレン基やポリオキシエチレンブロック鎖を有する。これら末端部分に存在するオキシエチレン基の割合は5〜30wt%である。より好ましくは5〜20wt%である。
本発明におけるポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよい。ただし、実質的に水酸基価28を越えるポリオキシアルキレンポリオールは含まないことが好ましい。その場合の水酸基価、水酸基数、総不飽和度は平均値として表わされる。本発明において、ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度Yの上限は0,04である。また、水酸基価Xは5〜28である。
ポリマー分散ポリオール
本発明のポリオールとして、ポリマー分散ポリオールを用いることができる。ポリマー分散ポリオールのマトリックスであるポリオールは前記ポリオキシアルキレンポリオールである必要がある。ポリマー分散ポリオールは、このマトリックス中にポリマー微粒子が安定的に分散している分散体であり、ポリマーとしては付加重合体系ポリマーや縮重合体系ポリマーがある。マトリックスが従来のポリオールであるポリマー分散ポリオールは公知であり、ポリウレタン弾性フォーム用ポリオールとして広く用いられている。本発明におけるポリマー分散ポリオールは前記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとして従来の方法で製造することができる。又、従来知られているポリマー分散ポリオールの比較的少量を前記ポリオキシアルキレンポリオールに添加してもよい。この場合、従来のポリマー分散ポリオールのマトリックスのポリオールが前記ポリオキシアルキレンポリオールに少量添加されることになるが、その場合でも平均として前記ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価と総不飽和度の要件が満たされていることが必要である。このように、本発明におけるポリマー分散ポリオールのマトリックスであるポリオキシアルキレンポリオールは前記と同じ要件である必要がある。
ポリマー分散ポリオール中のポリマー微粒子は、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、その他のビニルモノマーのホモポリマーやコポリマー等の付加重合体系ポリマーやポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン樹脂等の縮重合系ポリマーからなる。このポリマー微粒子の存在により、ポリマー分散ポリオール全体の水酸基価はマトリックスのポリオールの水酸基価よりも一般的に言って低下する。従って、前記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールの全体の水酸基価は5〜28が好ましい。
ポリマー分散ポリオールあるいはそれと前記ポリオキシアルキレンポリオールとの混合物中におけるポリマー微粒子の含有量は、通常60wt%以下、特に40wt%以下である。ポリマー微粒子の量は特に多い必要はなく、また多すぎても、経済的な面以外では不都合ではない。多くの場合20wt%以下で十分に有効である。また、ポリオキシアルキレンポリオール中のポリマー微粒子の存在は必ずしも必須ではないが、それが存在するとフォームの硬度、通気性、その他の物性の向上に有効である。従って、ポリマー微粒子は少なくとも0.1wt%、好ましくは少なくとも1wt%、最も好ましくは少なくとも2wt%存在することが適当である。
架橋剤
本発明において、上記低水酸基価(即ち、高分子量)のポリオキシアルキレンポリオールのみを(ただし水を除く)イソシアネート化合物と反応させることができるが、さらに低分子量のイソシアネート基と反応しうる多官能性化合物(本発明では架橋剤と呼ぶ)を高分子量のポリオキシアルキレンポリオールとともに使用することができる。この多官能性化合物は、水酸基、1級アミノ基、あるいは、2級アミノ基などのイソシアネート反応性基を2個以上有するイソシアネート反応性基当りの分子量が600以下、特に300以下の化合物が適当である。このような架橋剤としてはポリウレタン技術分野で通常架橋剤あるいは鎖伸長剤と呼ばれている化合物を含む。このような化合物としては、たとえば多価アルコール、アルカノールアミン、ポリアミン、および多価アルコール、アルカノールアミン、糖類、ポリアミン、モノアミン、多価フェノール類などに少量のアルキレンオキサイドを付加して得られる低分子量のポリオキシアルキレンポリオール系ポリオールがある。さらに、低分子量のポリエステル系ポリオールやポリアミンなども使用できる。好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリンなどの多価アルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸基価が200以上のポリオキシアルキレン系ポリオールおよびt-ブチルトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、クロルジアミノベンゼン等のポリアミンが用いられる。特に好ましくは水酸基価が200以上で水酸基数が3〜8のポリオキシアルキレン系ポリオールからなる。この多官能性化合物の使用量は高分子量ポリオール100重量部に対して約10重量部以下、特に5重量部以下が好ましい。使用量の下限は特にないが、使用する場合、0.2重量部程度で充分に有効である。
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、あるいは脂肪族系のポリイソシアネート、それら2種類以上の混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートがある。具体的には、たとえば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDl)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などのポリイソシアネートやそれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体などがある。好ましくは、TDI,MDIクルードMDI、およびそれらの変性体から選ばれる少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートが用いられる。ただし、本発明におけるポリイソシアネート化合物はトリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物を除くものである。
本発明におけるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有量は、15wt%以上が好ましく、特に20wt%以上が好ましい。
その他原料成分
ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させる際、通常触媒の使用が必要とされる。触媒としては、活性水素含有基とイソシアネート基の反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒やトリエチレンジアミンなどの3級アミン触媒が使用される。また、カルボン酸金属塩などのイソシアネート基同志を反応させる多量化触媒が目的に応じて使用される。さらに、良好な気泡を形成するための整泡剤も多くの場合使用される。整泡剤としては、たとえばシリコーン系整泡剤や含フッ素化合物系整泡剤等がある。その他、任意に使用しうる配合剤としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、着色剤、難燃剤等がある。
前記のように、本発明においては発泡剤として水系発泡剤やR-11(トリクロロフルオロメタン),R-12(ジフルオロジクロロメタン),CF2Br2(ジフルオロジブロムメタン),塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素やブタン、ヘキサン、空気、窒素等が用いられる。水系発泡剤とは水そのもの、あるいは含水物などの反応時に水を発生する化合物をいう。低沸点ハロゲン化炭化水素を水系発泡剤とともに発泡剤として併用することができる。
発泡剤として水系発泡剤を用いた場合、前記ポリイソシアネート化合物の一部が水と反応し、炭酸ガスを発生する。従って、ポリイソシアネート化合物の使用量は、高分子量ポリオールや低分子量の多官能性化合物の合計にさらに水系発泡剤を加えたものを基準とし、それら合計の1当量に対して0.8〜1.3当量用いることが好ましい。このポリイソシアネート化合物の当量数の100倍は通常(イソシアネート)インデックスと呼ばれている。従って、ポリイソシアネート化合物のインデックスは80〜130が好ましい。
[実施例]
後述ポリウレタン弾性フォームの原料として下記のポリオキシアルキレンポリオールを用いた。各ポリオールは、分子量400〜600のポリオキシプロピレンポリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体を触媒としてプロピレンオキシドを付加し、次いで該触媒を失活させた後アルカリ触媒を用いてエチレンオキサイドを付加し、その後精製して触媒成分を除去して製造されたものである。表-1に得られたポリオキシアルキレンポリオールの名称、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基数(N)、水酸基価(X)、オキシエチレン基含有量(EO)、総不飽和度(Y)を示す。
比較のために用いたポリオール(ポリオールG,F)は、アルカリ触媒を用いて開始剤(グリセリン)にプロピレンオキシドを反応させ、次にエチレンオキサイドを反応させ、その後精製して製造されたポリオキシアルキレンポリオールである。

ポリマー分散ポリオール:
上記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとし、ポリアクリロニトリルの微粒子を20wt%含むポリマー分散ポリオールを使用した。このポリマー分散ポリオールの名称はマトリックスのポリオールの名称にpを付して表わす(例:ポリオールAp)。
他のポリウレタン弾性フォームの製造原料は以下の通りである。
架橋剤
A:ソルビトール-プロピレンオキシド-エチレンオキシド付加物。水酸基価450(水酸基当りの分子量約125)
B:ジエタノールアミン
触媒
A:トリエチレンジアミン溶液(商品名“Dabco 33LV”)
B:N-エチルモルホリン
C:スタナスオクトェート
D:3級アミン系触媒(商品名“花王ライザーNo.1”,花王(株)販売)
発泡剤
A:水
B:トリクロロフルオロメタン
整泡剤
A:シリコーン系整泡剤(商品名“L-5740S”,日本ユニカー(株)販売)
B:シリコーン系整泡剤(商品名“SF-2962”,東レシリコーン(株)販売)
C:シリコーン系整泡剤(商品名“SRX-274C”,東レシリコーン(株)販売
ポリイソシアネート化合物
A:TDl-80
B:ポリウレタン弾性フォーム用変性MD1(NCO含量27%)
実施例、比較例
表-2に示す原料を用いてポリウレタン弾性フォームを製造した。
ポリイソシアネート化合物以外の全原料の混合物にポリイソシアネート化合物を加えて撹拌し、直ちに60℃に加温された縦横各350mm、高さ100mmの金型にその混合物を注入して密閉し、室温で5分間放置した後成形されたポリウレタン弾性フォームを金型より取り出した。その後、下記のフォームの物性を測定した。原料の種類、使用量(重量部で表わす。ただし、ポリイソシアネート化合物の使用量のみはイソシアネートインデックス(当量比の100倍)で表わす)、フォーム物性を表-2に示す。なお物性測定は下記による。
外観:目視による判定
25% ILD:JIS K6401
反発弾性:JIS K6401
伸 び :JIS K6401
湿熱永久歪:JIS K6401
共振振動数:JASO B 407-82
6Hz伝達率:JAS B 407-82

 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2616054号発明の明細書を本件訂正明細書に添付された訂正明細書のとおりにすなわち
a.特許請求の範囲の記載
「1.下記ポリオキシアルキレンポリオールおよび下記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールから選ばれた少くとも1種の高分子量ポリオール、任意に架橋剤、および下記ポリイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物を触媒、発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)、整泡剤など助剤の存在下で反応させることを特徴とするポリウレタン弾性フォームの製造方法。
ポリオキシアルキレンポリオール:水酸基価(XmgKOH/g)と総不飽和度(Ymeq/g)が下記の関係にあり(ただし、X>10のとき)、かつYが0.07以下、水酸基価(X)が5〜38、水酸基数2〜8のポリオキシアルキレンポリオール。
Y≦0.9/(X-10)
ポリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物。
2.ポリオキシアルキレンポリオールがオキシプロピレン基含有量70wt%以上で、任意にオキシエチレン基を含む、ポリオキシアルキレンポリオールである、請求項1の方法。
3.ポリオキシアルキレンポリオールが末端オキシエチレン基を5wt%以上含む、ポリオキシアルキレンポリオールである、請求項2の方法。
4.ポリマー分散ポリオールがポリマー微粒子を1〜40wt%含む、請求項1の方法。
5.架橋剤をポリオール100重量部に対し0.2〜10重量部使用する、請求項1の方法。
6.請求項1の方法によって得られるポリウレタン弾性フォーム。
7.共振振動数が3.5Hz以下である請求項6のポリウレタン弾性フォーム。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「1.下記ポリオキシアルキレンポリオールおよび下記ポリオキシアルキレンポリオールをマトリックスとするポリマー分散ポリオールから選ばれた少くとも1種の高分子量ポリオール、任意に架橋剤、および下記ポリイソシアネート化合物を除くポリイソシアネート化合物を触媒、発泡剤(ただし、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンあるいは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを含むものを除く)、整泡剤など助剤の存在下密閉された金型内で反応させることを特徴とする、共振振動数が3.5Hz以下、かつコアの反発弾性が70%以上のポリウレタン弾性フォームの製造方法。
ポリオキシアルキレンポリオール:水酸基価(XmgKOH/g)が5〜28、総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下、かつ水酸基数2〜8のポリオキシアルキレンポリオールで、オキシプロピレン基含有量70wt%以上かつ末端オキシエチレン基を5〜30wt%含む。
ポリイソシアネート化合物:トリレンジイソシアネートあるいはその変性体とポリメチレンポリフェニルイソシアネートあるいはその変性体との混合物、および/または該混合物を変性して得られる変性物。」に訂正する。
b.明細書第4頁第12行の「4Hz未満」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「3.5Hz以下」に訂正する。
c.明細書第5頁第6行〜第10行の「と総不飽和度(Ymeq/g)が下記(1)の関係にあり(ただし、X>10のとき)、しかもY≦0.07であり、Xが5〜38である高分子量ポリオールを使用することによって得られる。Y≦0.9/(X-10)・・・(1)」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「が5〜28、総不飽和度(Ymeq/g)が0.04以下である高分子量ポリオールを使用することによって得られる。」に訂正する。
d.明細書第6頁第8行〜第10行の「4Hz未満、特に3.5Hz以下が好ましい。それに加えて、コアの反発弾性は70%以上であることが好ましく、」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「3.5Hz以下である。それに加えて、コアの反発弾性は70%以上である。」に訂正する。
e.明細書第8頁第7行および第11頁第9行の「38」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「28」に訂正する。
f.明細書第10頁第15行の「が好ましい。」を誤記の訂正を目的として、「である。」に訂正する。
g.明細書第11頁第13行〜第17行の「はXが約22.9以下ではYの上限は0.07である。より好ましくは、Yの上限は0.04である(Xが約32.5〜38では式(1)に従う)。また、水酸基価はより好ましくは5〜28である。」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「の総不飽和度Yの上限は0.04である。また、水酸基価Xは5〜28である。」に訂正する。
h.明細書第12頁第20行の「水酸基価と総不飽和度の関係」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「水酸基価と総不飽和度の要件」に訂正する。
i.明細書第13頁第4行〜第5行の「(水酸基価と総不飽和度の関係等)」を明りょうでない記載の釈明を目的として、削除する。
j.明細書第13頁第18行〜第19行の「5〜38であることが好ましく、特に」を明りょうでない記載の釈明を目的として、削除する。
k.明細書第20頁第4行の「第1表」を誤記の訂正を目的として、「表-1」に訂正する。
m.明細書第20頁第13行の「アルキル」を誤記の訂正を目的として、「アルキレン」に訂正する。
n.明細書第10頁第15行〜第18行(全文訂正明細書第4頁下から第1行〜第5頁第2行)の「最も好ましくは、1,2-プロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基を70重量%以上、特に80重量%以上含むポリオキシアルキレンポリオールである。」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「本発明におけるポリオキシアルキレンポリオールは、1,2-プロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基を70重量%以上含み、好ましくは80重量%以上含む。」に訂正する。
p.明細書第11頁第3行〜第6行(全文訂正明細書第5頁第5行〜第7行)の「これら末端部分に存在するオキシエチレン基の割合は少なくとも2wt%、特に5〜30wt%が好ましい。最も」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「これら末端部分に存在するオキシエチレン基の割合は5〜30wt%である。より」に訂正する。
異議決定日 1999-12-03 
出願番号 特願平1-271833
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C08G)
P 1 651・ 161- YA (C08G)
P 1 651・ 121- YA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 橋本 栄和  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 柿澤 紀世雄
谷口 浩行
登録日 1997-03-11 
登録番号 特許第2616054号(P2616054)
権利者 旭硝子株式会社
発明の名称 ポリウレタン弾性フォーム,および製造方法  
代理人 角田 衛  
代理人 内田 明  
代理人 角田 衛  
代理人 内田 明  
代理人 泉名 謙治  
代理人 安西 篤夫  
代理人 泉名 謙治  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  
代理人 萩原 亮一  

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