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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1018139
異議申立番号 異議1998-73816  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-08-04 
確定日 1999-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2708692号「美白化粧料」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2708692号の特許を維持する。 
理由 I.手続きの経緯
本件特許第2708692号発明は、平成5年3月1日に特許出願され、平成9年10月17日にその特許の設定登録がされ、その後、その特許について、矢辺ゆり子、ライオン株式会社、千葉恭弘、古山茂夫の4名から特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求(その後取り下げ)がなされ、その後さらに平成11年10月28日に取消理由通知がなされ、同日に訂正請求がされたものである。
II.訂正の適否の判断
1.訂正の内容
(1)特許請求の範囲の請求項1の「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ0.005〜2.0重量%と、水溶性紫外線吸収剤0.001〜20重量%とを配合することを特徴とする美白化粧料。」を「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ0.005〜2.0重量%と、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上0.001〜20重量%とを配合することを特徴とする美白化粧料。」と訂正する。
(2)明細書【0009】の「水溶性紫外線吸収剤」を「2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上」と訂正する。
(3)明細書【0012】の「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラメトキシ桂皮酸、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、サリチル酸誘導体のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの水溶性紫外線吸収剤は1種又2種以上を混合して用いられる。」を「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤としては、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上を混合して用いられる。」と訂正する。
(4)明細書【0013】の「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の含有量は、本発明の美白化粧料の総量を基準として0.005〜2.0重量%、好ましくは0.005〜1.0重量%の範囲内である。0.005%未満ではその効果は発揮されず、2.0重量%を越えると、製品の保存安定性に劣る為好ましくない。」を「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の含有量は、本発明の美白化粧料の総量を基準として0.005〜2.0重量%である。」と訂正する。
(5)明細書【0014】の「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤の化粧料への配合量は化粧料全量中の総量として0.001〜20重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜10重量%である。0.001重量%未満では美白効果が得られにくく、20重量%を超えてもその効果分に見合った効果の向上は望めず、使用時の感触が悪くなり易く、個々の剤型を保持し難くなる。」を「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤の化粧料への配合量は化粧料全量中の総量として0.001〜20重量%である。」と訂正する。
(6)明細書【0029】の「実施例1〜5、比較例1〜5」を「実施例1〜2、比較例1〜8」と訂正する。
(7)明細書【0033】の表の「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」を、それぞれ、「比較例6」、「比較例7」、「実施例1」と訂正する。
(8)明細書【0034】の表の「実施例4」、「実施例5」を、それぞれ、「実施例2」、「比較例8」と訂正する。
(9)明細書【0035】の「実施例1〜5」及び「比較例1〜5」を、それぞれ、「実施例1〜2」及び「比較例1〜8」と訂正する。
(10)明細書【0036】の「実施例6」を「実施例3」と訂正する。
(11)明細書【0039】の「実施例6」を「実施例3」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
▲1▼訂正事項(1)は請求項1の「水溶性紫外線吸収剤」を明細書【0012】にもともと記載されていた「2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許請求の範囲を何等拡張・変更するものではない。
▲2▼訂正事項(2)及び(3)は、訂正事項(1)により特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い発明の詳細な説明を特許請求の範囲の記載に一致するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、特許請求の範囲を何等拡張・変更するものではない。
▲3▼訂正事項(4)及び(5)は、本発明の配合成分である「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ」と「2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上」の使用量を特許請求の範囲記載のものと一致させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、特許請求の範囲を何等変更するものではない。
▲4▼訂正事項(6)、(7)、(8)及び(9)は、訂正事項(1)により特許請求の範囲が減縮された結果、いままで実施例であったものの内訂正により特許請求の範囲に含まれなくなったものを比較例とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、特許請求の範囲を何等変更するものではない。
▲5▼訂正事項(10)、(11)は、訂正事項(1)により特許請求の範囲が減縮されたことに伴い実施例の番号を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、特許請求の範囲を何等変更するものではない。
3.独立特許要件の判断
上記訂正は、後述の特許異議の申立についての判断の項に記載した理由により、特許法第120条の4の第4項および同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するものである。
III.特許異議申立についての判断
1.申立理由の概要
(1)申立人矢辺ゆり子は、甲第1号証〔フレグランス ジャーナル 1990年5月号(Vol.18,No.5)、第80〜81頁〕、甲第2号証(特開昭58-69806号公報)、甲第3号証〔フレグランス ジャーナル 1983年No.61(Vol.11,No.4)、第106〜110頁〕、甲第4号証(特開平1-93519号公報)、甲第5号証(特開平3-209305号公報)、甲第6号証(特開平1-186809号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証或いは甲第2号証記載の発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するばかりか、仮にそうでないとしても、(甲第3〜6号証の記載をも参酌し)甲第1号証或いは甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものであり、特許法第29条第2項に該当するものである、と主張する。
(2)申立人千葉恭弘は、甲第1号証(特開平3-157314号公報)、甲第2号証(特開平2-279621号公報)、甲第3号証(フレグランス ジャーナル1990年6月号、第39〜46頁)、甲第4号証(特開証62-120312号公報)、第5号証(特開平1-186810号公報)、甲第6号証(特開平1-186809号公報、申立人矢辺ゆり子の提出した甲第6号証と同じ)、甲第7号証(特開昭62-48611号公報)を提出し、本件請求項1に係る説明は、甲第1号証記載の発明と同一であり、特許法第29条第1項第3項に該当するばかりでなく、仮にそうでないとしても、甲第1〜7号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものであり、特許法第29条第2項に該当するものである、と主張する。
更にまた同人は、本件明細書実施例に具体的に記載された効果は、そこで実際に使用された特定の水溶性紫外線吸収剤化合物については認められるものの、それ以外の水溶性紫外線全般において普遍的に認められるべき効果ではあり得ないから、かかる明細書の記載は特許法第36条第4項の要件を満足しない、と主張する。
(3)申立人ライオン株式会社は、甲第1号証(特開平5-112487号公報)、甲第2号証(特開平6-087879号公報)、甲第3号証(特開平1-186810号公報、申立人千葉恭弘の提出した甲第5号証と同じ)、甲第4号証(特開平1-186809号公報、申立人矢辺ゆり子の提出した甲第6号証及び申立人千葉恭弘の提出した甲第6号証と同じ)を提出し、本件請求項1に係る発明は甲第1号証或いは甲第2号証記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するばかりでなく(尚、両挙証は本件特許出願後に公開されているので特許法第29条の2の誤記と考えられるが)、仮にそうでないとしても、甲第3〜4号証記載の周知技術を組み合わせれば当業者が容易に発明し得るものであり、特許法第29条第2項に該当する、と主張する。
(4)申立人古山茂夫は、甲第2号証(特開平1-186809号公報、申立人矢辺ゆり子の提出した甲第6号証、申立人千葉恭弘の提出した甲第6号証及び申立人ライオン株式会社の提出した甲第4号証と同じ)、甲第3号証(特開平1-186810号公報、申立人千葉恭弘の提出した甲第5号証及び申立人ライオン株式会社の提出した甲第3号証と同じ)を提出し(なお、甲第1号証は本件特許公報)、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項に該当する、と主張する。
更にまた同人は、本発明は2種の配合成分の相乗的な効果を意図したものであり、いかなる水溶性紫外線吸収剤を使用しても得られる効果ではなく、本件明細書実施例に具体的に記載された特定の水溶性紫外線吸収剤化合物についてのみ効果が確認されるのであり、特許請求の範囲は実施例により実証された範囲に限定されるべきであり、かかる明細書の記載は特許法第36条第6項の要件を満足しない、と主張する。
2.申立人の提出した甲各号証の記載事項
(1)申立人矢辺ゆり子の提出した甲第1号証〔フレグランス ジャーナル 1990年5月号(Vol.18,No.5)、第80〜81頁〕には、新製品ニュースとして、株式会社ポーラ化粧品本舗から「ルミエラ トランスヴィ」シリーズ<医薬部外品>日やけによるシミ・ソバカスの防止に優れた基礎化粧品シリーズが4月1日に発売されたこと、その特長は「1)安全性の高い紫外線カット剤W-21(3-ヒドロキシー4-メトキシケイ皮酸ナトリウム)を世界で初めて化粧品に配合(特許出願中)。日やけによる肌あれと色黒を同時に防止する。
…………………3)甘草抽出物誘導体:GK-2(グリチルリチン酸ジカリウム)の抗炎症効果により、シミ生成の大きな原因である肌あれを防止する。…………………。」であること、が記載されている。
(2)申立人矢辺ゆり子の提出した甲第2号証(特開昭58-69806号公報)には、安定なコラーゲン含有化粧用ローションの発明に関して記載され、その実施例4には、グリチルリチン酸ジカリウム0.1重量%、p-アミノ安息香酸(紫外線吸収剤)1.0重量%を配合した整肌化粧水の処方が記載されている。
(3)申立人矢辺ゆり子の提出した甲第3号証〔フレグランス ジャーナル 1983年No.61(Vol.11,No.4)、第106〜110頁〕には、薬用化粧品に関して、「2)肌荒れ・荒れ性……化粧水,クリーム,乳液,ハンドクリーム,化粧用油,パック……………i消炎剤……………(グリチルリチン酸塩類)………………(グリチルレチン酸及びその誘導体)………………7)日やけ・雪やけを防ぐ…………日やけ止め剤………………i紫外線吸収剤 パラアミノ安息香酸……………ウロカニン酸エチル………………9)日やけ・雪やけによる顔のほてり……………日やけ・雪やけによる顔のほてりは紫外線による炎症の結果であり消炎剤が配合される。………………………」であること、が記載されている。
(4)申立人矢辺ゆり子の提出した甲第4号証(特開平1-93519号公報)には、「トラネキサム酸もしくはその塩類またはこれらの混合物を配合することを特徴とする抗色素沈着外用剤」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明には、紫外線吸収剤を併用すると一層、日やけの予防、日やけの回復促進並びに色素沈着症の予防、治療に効果的であることが記載され、紫外線吸収剤として、パラアミノ安息香酸を始めとして多数の化合物が列挙されており、さらに、グリチルリチン、グリチルレチン及びこれらの酸並びに誘導体等の抗炎症剤を使用することもできること、が記載されている。
(5)申立人矢辺ゆり子の提出した甲第5号証(特開平3-209305号公報)には、
「(a)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、および(b)炭素数18〜22かつ分子構造中の不飽和結合数が2以上の遊離脂肪酸、その塩あるいは一価または二価アルコールとのエステルを配合したことを特徴とする美白化粧料。」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明には、実施例4に(紫外線吸収剤である)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン 0.5重量%とグリチルレチン酸ステアリル 0.1重量%を配合した乳液の処方が記載されている。
(6)申立人矢辺ゆり子の提出した甲第6号証(特開平1-186809号公報、申立人千葉恭弘の提出した甲第6号証、申立人ライオン株式会社の提出した甲第4号証、申立人古山茂夫の提出した甲第2号証と同じ)には、「(a)炭素数18〜22かつ分子構造中の不飽和結合数が2以上の遊離脂肪酸、その塩あるいは一価または二価アルコールとのエステルからなる群より選ばれた1種または2種以上の化合物および(b)抗炎症剤を配合したことを特徴とする美白化粧料。」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明には、抗炎症剤として、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、その塩、およびその誘導体、が例示化合物として挙げられ、また、抗炎症剤の配合量は0.01〜5.0重量%であるのが好ましいことが記載されている。
(7)申立人千葉恭弘の提出した甲第1号証(特開平3-157314号公報)には、「水難溶性パラベン類と水難溶性成分とをヒドロキシアルキル化シクロデキストリンで包接した包接物を配合することを特徴とする化粧料。」(特許請求の範囲1)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明の実施例13には(水溶性紫外線吸収剤である)2-ヒドロキシ-4メトキシベンゾフェノン-5ソディウムスルホネート1.0重量%とグリチルリチン酸モノアンモニュウム0.03重量%を配合したサンケアパウダーが記載されている。
(8)申立人千葉恭弘の提出した甲第2号証(特開平2-279621号公報)には、「水溶性紫外線吸収剤と、平均粒径が3〜200mμである微粒子粉末と、粘土鉱物とを含有することを特徴とする粉末入り化粧水。」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明には、水溶性紫外線吸収剤として多数の化合物が列挙されその中に2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルフォン酸も記載されている。
(9)申立人千葉恭弘の提出した甲第3号証(フレグランス ジャーナル 1990年6月号、第39〜46頁)には、紫外線カット剤は刺激の原因を遮断することによって「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」を達成しようとする試みであること、乳液、化粧水、パック類等の美白に関する効能は、従来の「シミ,ソバカス,色黒」から「日焼けによるシミ,ソバカスを防ぐ」に修正されたこと、について記載されている。
(10)申立人千葉恭弘の提出した甲第4号証(特開昭62-120312号公報)には「化粧料基剤に対し、一般式(I)…………………で示されるイソフェルラ酸および(または)その誘導体を有効成分として配合してなることを特徴とする美肌化粧料。」(特許請求の範囲1)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明の実験例2、表-3には、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸がメラノサイト生成抑制作用があること、が記載されている。
(11)申立人千葉恭弘の提出した甲第5号証(特開平1-186810号公報、申立人ライオン株式会社の提出した甲第3号証、申立人古山茂夫の提出した甲第3号証と同じ)には、「(a)炭素数18〜22かつ分子構造中の不飽和結合数が2以上の遊離脂肪酸、その塩あるいは一価または二価アルコールとのエステルからなる群より選ばれた1種または2種以上の化合物並びに(b)紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤を配合したことを特徴とする美白化粧料。」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明には、紫外線吸収剤として、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルフォン酸ナトリウム、4-メトキシケイ皮酸-2-エトキシエチル等の化合物が多数列挙されている他、紫外線吸収剤の配合量が0.05〜10重量%であること、が記載されている。
(12)申立人千葉恭弘の提出した甲第7号証(特開昭62-48611号公報)には、「アントシアニン類及びそのアグリコンであるアントシアニジン類からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む皮膚用外用剤。」(特許請求の範囲1)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明の実施例2には、グリチルリチン酸モノアンモニウム塩 0.1重量%およびALS-24S(2-ヒドロキシ4-メトキシベンゾフェノン5-スルフォン酸ナトリウム) 0.3重量%を配合したW/O型クリームの処方が記載されている。
(13)異議申立人ライオン株式会社の提出した甲第1号証(特開平5-112487号公報)には、「【請求項1】下記一般式1で表されるベンゾフェノン誘導体。…………………。【請求項2】請求項1記載のベンゾフェノン誘導体よりなる紫外線吸収剤。【請求項3】請求項1記載のベンゾフェノン誘導体を一種または二種以上含むことを特徴とする皮膚外用剤。」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明の実施例4にはグリチルリチン酸ステアレート 0.1重量%、1-(4-ベンゾイルフェニル)グリセロールマルチトールエーテル 8.0重量%を含有するクリームの処方が記載されている。
(14)異議申立人ライオン株式会社の提出した甲第2号証(特開平6-87879号公報)には、「【請求項1】下記一般式1で表されるベンゾフェノン誘導体。…………………。【請求項2】請求項1記載のベンゾフェノン誘導体よりなる紫外線吸収剤。【請求項3】請求項1記載のベンゾフェノン誘導体を一種または二種以上含むことを特徴とする皮膚外用剤。」(特許請求の範囲)の発明についての記載がされ、発明の詳細な説明の実施例4にはグリチルレチン酸ステアレート 0.1重量%、2-ヒドロキシ-4-(2-グリセロイルエトキシ)ベンゾフェノン 8.0重量%を含有するクリームの処方が記載されている。
なお、異議申立人千葉恭弘の提出した甲第6号証、申立人ライオン株式会社の提出した甲第3〜4号証、申立人古山茂夫の提出した甲第2〜3号証は上記(1)〜(12)のいずれかの挙証と同じものであり、記載内容の摘示は重複するので省略した。
3.判断
(1)特許法第29条第1項第3号
本件請求項1に係る発明は訂正により、水溶性紫外線吸収剤という広範な化合物を含むものから2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上、と言うように特定の化合物を使用するものに限定された。
その結果、本件請求項1に係る発明は、グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ(以後単にグリチルリチン酸類と略称することあり)と、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上(以後単に本件のベンズイミダゾール化合物と略称することあり)の両者を含むことを必須とする美白化粧料に関するものとなったが、このグリチルリチン酸類と本件のベンズイミダゾール化合物を必須の成分として用いるものは、(申立人が本件発明と同一と主張する)上記III.2.(1)、(2)、(7)のみならず、上記III.2.(1)〜(12)のいずれの挙証刊行物にも記載されていない(なお、上記III.2.(13)及び(14)即ち、ライオン株式会社の提出した甲第1〜2号証は本件特許出願後に頒布されたものである。)。
したがって、本件請求項1に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(2)特許法第29条第2項
申立人矢辺ゆり子の提出した甲第1号証にはグリチルリチン酸類と(紫外線カット剤としての)3-ヒドロキシー4-メトキシケイ皮酸ナトリウムを併用する日やけによるシミ・ソバカスの防止に優れた基礎化粧料が記載されており、申立人矢辺ゆり子の提出した甲第2号証にはグリチルリチン酸類と(紫外線吸収剤としての)p-アミノ安息香酸を併用する整肌化粧水が記載されており、矢辺ゆり子の提出した甲第5号証にはグリチルリチン酸類と(紫外線吸収剤としての)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンを併用する乳液が記載され、申立人千葉恭弘の提出した甲第1号証にはグリチルリチン酸類と2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5ソディウムスルフォネートを併用するサンケアパウダーが記載されており、また、申立人千葉恭弘の提出した甲第7号証にはグリチルリチン酸類と(紫外線吸収剤として)2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸ナトリウムを併用するW/O型クリームが記載されている。
一方、本件のベンズイミダゾール化合物については、申立人千葉恭弘の提出した甲第2号証に記載されたものが唯一のものであるが、該化合物は該挙証の発明で使用する水溶性紫外線吸収剤の例示化合物として並列的に記載されているものの一つであり、この数ある例示化合物の中で特に本件のベンズイミダゾール化合物を選択使用することを動機づける記載も存在しないし、また、該挙証には本件のグリチルリチン類を併用することについて記載も示唆も全くない。
そうであれば、申立人矢辺ゆり子の提出した甲第1、2及び5号証や申立人千葉恭弘の提出した甲第1及び7号証で示されるグリチルリチン類に併用される(紫外線吸収剤として示される)個々の化合物、即ち、3-ヒドロキシ-4-メトキシケイ皮酸ナトリウム、p-アミノ安息香酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-ソディウムスルフォネート、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸ナトリウムに代えて申立人千葉恭弘の提出した甲第2号証のベンズイミダゾール化合物を使用することは容易に思いつくものとは言えない。
そして、特許権者が平成11年8月2日に提出した特許異議意見書に添付された鐘紡株式会社化粧品研究所の副主任研究員の研谷啓によってなされた実験成績証明書によれば、本件発明の2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルフォン酸ナトリウムを使用するものと、3-ヒドロキシ-4-メトキシケイ皮酸ナトリウム、p-アミノ安息香酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5ソディウムスルフォネート、等を使用した比較例では、本件発明のものの方が比較例のものに較べて0℃および50℃での保存安定性が優れていることが認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、申立人矢辺ゆり子の提出した甲第1、2及び5号証記載の発明や申立人千葉恭弘の提出した甲第1、2及び7号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものではない。
さらに、申立人古山茂夫の提出した甲第2号証(申立人矢辺ゆり子の提出した甲第6号証、申立人千葉恭弘の提出した甲第6号証及び申立人ライオン株式会社の提出した甲第4号証と同じ)にはグリチルリチン酸類を使用することが記載され、紫外線吸収剤を配合しても良い(即ち任意成分)、との記載もあるが、申立人古山茂夫の提出した甲第3号証(申立人千葉恭弘の提出した甲第5号証及び申立人ライオン株式会社の提出した甲第3号証と同じ)にはそこで使用される紫外線吸収剤として本件のベンゾイミダゾール化合物は示されていないので、これらの挙証から本件請求項1に係る発明が容易に思いつくものではない。
その他以上の進歩性判断で触れられなかった証拠である申立人矢辺ゆり子の提出した甲第3〜4号証や申立人千葉恭弘の提出した甲第3〜4号証の記載事項を併せ考慮しても、特に本件請求項1に係る発明が容易になし得るとする理由を見いだすことはできない。
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明が特許法第29条第2項に該当するとは言えない。
(3)特許法第29条の2
異議申立人ライオン株式会社の提出した甲第1〜2号証には、上記III.2.(13)および(14)で述べたように、グリチルリチン類と本件のベンズイミダゾール化合物を必須の成分として用いるものは記載されていない。
したがって、本件請求項1に係る発明は特許法第29条の2に該当するものではない。
(4)特許法第36条第3項ないし第4項
本件請求項1に係る発明は訂正により、水溶性紫外線吸収剤という広範な化合物を含むものから2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上、と言うように特定の化合物を使用するものに限定された。
その結果、本件請求項1に係る発明は、実施例1及び2で効果が裏付けられている2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸塩を用いるものになったので、効果を確認し得ない多数の化合物を包含する水溶性紫外線吸収剤を請求の範囲で記載しているが故に記載不備であるとする申立人の主張はその根拠を失うこととなった。
したがって、訂正後の明細書は特許法第36条第3項および第4項に規定する要件を満足しないものと言うことはできない。
4.まとめ
以上に述べたとおりであり、また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しい。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
美白化粧料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ0.005〜2.0重量%と、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又は2種以上0.001〜20重量%とを配合することを特徴とする美白化粧料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線を浴びた皮膚に対する優れた炎症抑制(紫外線紅斑抑制)効果及び美白効果を有し、且つ皮膚安全性に優れ、保存安定性の高い美白化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
紫外線により皮膚は炎症(紅斑)を越こし種々の因子が放出されメラノサイトを刺激する。これにより色調は変化し黒化する。この黒化は、メラノサイトにおいて産生され表皮細胞に受け渡されるメラニンの過剰生産が原因であり、メラニンはチロシンが酸化されて産生される。
【0003】
従来より、皮膚の黒化やしみ、そばかすを防ぎ本来の白い肌を保つために、この酸化を防止するビタミンCの塩や脂肪酸誘導体、更にハイドロキノンモノベンジルエーテル、過酸化水素等を配合した皮膚化粧料が提案されている。
【0004】
しかし、これらの美白化粧料中にビタミンC誘導体を配合すると保存安定性が不充分であるか、紫外線による炎症抑制効果、美白効果が充分に認められないことが多い。一方、美白化粧料中にハイドロキノンモノベンジルエーテル等を配合すると、色黒の肌を淡色化する効果はあるが、皮膚の安全性上に問題がある等の欠点がある。
【0005】
また、グリチルリチン酸誘導体及びその塩類、グリチルレチン酸誘導体及びその塩類を単独で配合した場合、抗菌作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用を有することが確認されている。しかし、その炎症抑制効果、美白効果は満足するものではなかった。
【0006】
一方、水溶性紫外線吸収剤は、その紫外線吸収効果により紫外線による炎症抑制効果はあるが、美白効果は認められず、しかも保存安定性が不十分である。
【0007】
この様に、炎症抑制効果(紫外線紅斑抑制)、美白効果に優れ且つ皮膚安全性が高く、保存安定性皮膚化粧料を得ることは困難を極めている。本発明者らは、このような事情に鑑み鋭意検討した結果、後記美白化粧料が、紫外線による炎症抑制効果及び美白効果を有し、且つ皮膚安全性に優れ、保存安定性に優れていることを見出し、本発朋を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発朋の目的は、紫外線による炎症を抑制する効果及び美白効果を有し、且つ皮膚安全性に優れ、保存安定性に優れた美白化粧料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ0.005〜2.0重量%と、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又は2種以0.001〜20重最%とを配合することを特徴とする美白化粧料によって達成される。
【0010】
本発明に用いるグリチルリチン酸誘導体及びその塩は、公知の化合物であり、グリチルリチン酸誘導体としては、18α-グリチルリチン酸(α-Giと略記する)、18β-グリチルリチン酸(β-Giと略記する)、グリチルリチン酸誘導体のエステル類としては、例えば18α-グリチルリチン酸メチルエステル(α-Giメチルと略記する)、18β-グリチルリチン酸メチルエステル(β-Giメチルと略記する)、グリチルリチン酸誘導体の塩としては、18α-グリチルリチン酸トリナトリウム(α-Gi-Na3と略記する)、18α-グリチルリチン酸ジカリウム(α-Gi-K2と略記する)、18α-グリチルリチン酸モノアンモニウム(α-Gi-NH3と略記する)、18β-グリチルリチン酸トリナトリウム(β-Gi-Na3と略記する)、18β-グリチルリチン酸モノカリウム(β-Gi-Kと略記する)、18β-グリチルリチン酸ジカリウム(β-Gi-K2と略記する)、18β-グリチルリチン酸モノアンモニウム(β-Gi-NH3と略記する)等が特に好ましいものとして挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
また、本発明に用いるグリチルレチン酸誘導体及びその塩は、公知の化合物であり、グリチルレチン酸誘導体としては、α-グリチルレチン酸(α-Geと略記する)、β-グリチルレチン酸(β-Geと略記する)、グリチルレチン酸誘導体のエステル類としては、α-グリチルレチン酸ステアリル(α-Ge-ステアリルと略記する)、β-グリチルレチン酸ステアリル(β-Ge-ステアリルと略記する)、α-グリチルレチン酸ピリドキシン(α-Ge-ピリドキシンと略記する)、β-グリチルレチン酸ピリドキシン(β-Ge-ピリドキシンと略記する)、α-グリチルレチン酸グリセリン(α-Ge-グリセリンと略記する)、β-グリチルレチン酸グリセリン(β-Ge-グリセリンと略記する)、グリチルレチン酸誘導体の塩としては、3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム(3サクシニル-Ge-Na2と略記する)等が特に好ましいものとして挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤としては、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又は2種以上を混合して用いられる。
【0013】
グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の含有量は、本発明の美白化粧料の総量を基準として0.005〜2.0重量%である。
【0014】
本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤の化粧料への配合量は化粧料全量中の総量として0.001〜20重量%である。
【0015】
本発明の化粧料には、上記原料の他にタール系色素、酸化鉄などの着色顔料、パラベンなどの防腐剤、脂肪酸セッケン、セチル硫酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、べタイン型、スルホベタイン型、スルホアミノ酸型、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどの両イオン性界面活性剤、レシチン、リゾフォスファチジルコリンなどの天然系界面活性剤、酸化チタンなどの顔料、ジブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤などを、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。
【0016】
本発明の化粧料の剤型としては、クリーム、乳液、化粧水、パックなどが挙げられる。この化粧料は、例えば乳液等の場合、油相及び水相をそれぞれ加熱溶解したものを乳化分散して冷却する通常の方法により製造することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を詳述する。尚、実施例に示す%とは重量%である。実施例に記載の(1)保存安定性試験法、(2)皮膚色明度回復試験法、(3)美白実用試験、(4)紫外線紅斑抑制試験、(5)光パッチ試験は下記のとおりである。
【0018】
(1)保存安定性試験法
試料を45℃の恒温槽に入れて経日観察を行い、下記の判定基準に従って評価した。
【0019】
【表1】

【0020】
ここで異常とは、変色・変臭が生じる,化粧水で沈殿が生じる,乳化物で相分離が生じる現象を意味する。
【0021】
(2)皮膚色明度の回復試験法
被験者20名の背部皮膚にUV-B領域の紫外線を最小紅斑量の2倍照射し、試料塗布部位と非塗布部位を設定して各々の皮膚の基準用度(VO値,VO´値)を測定した。引き続いて塗布部位には試料を1日2回ずつ4週間連続塗布した後、1,2,4週間後の塗布部位及び非塗布部位の皮膚の明度(Vn値,Vn´値)を測定し、下記の判定基準にしたがって皮膚色の回復を評価した。
尚、皮膚の明度(マンセル表色系V値)は高速分光色彩計で測定して得られたX,Y,Z値より算出した。また評価は被験者20名の4週間後の評価点の平均値で示した。
【0022】
【表2】

【0023】
(3)美白実用試験
夏期の太陽光に3時間(1日1.5時間で2日間)曝された被試験者20名の前腕屈側部皮膚を対象として、左前腕屈側部皮膚には太陽光に曝された日より、試料を、右前腕屈側部皮膚には太陽光に曝された日よりベースを朝夕1回ずつ13週連続塗布した。
尚、評価はベース塗布部より試料塗布部の効果を確認された被験者の人数で示した。
【0024】
(4)紫外線紅斑抑制試験
除毛したハートレー系モルモット10匹の背部皮膚にUVB領域の紫外線の最小紅斑量の2倍を各2ヶ所ずつ照射を行う。24時間前と照射直後に試料を塗布し、試料塗布部位とベース塗布部位を設定して、24時間後に紅斑の状態を下記判定基準に従い評価を行った。
【0025】
【表3】

【0026】
(5)光パッチ試験
被験者25名の前腕屈側部皮膚に試料0.05gを塗布した直径1.0cmのパッチ板を用いて24時間クローズドパッチを行った後、夏期の太陽光を6時間(1日3時間で2日間)照射した。
【0027】
評価は、下記の判定基準に従い、被験者25名の皮膚の状態を評価判定した。判定結果は、照射24時間後に、(±)以上の人数で示した。
【0028】
【表4】

【0029】
実施例1〜2,比較例1〜8
グリチルリチン酸誘導体及びその塩、グリチルレチン酸誘導体及びその塩と水溶性紫外線吸収剤を表5の組成において配合し、下記の調製方法に基づいてスキンクリームを調製した。
【0030】 組成
【表5】

【0031】
調製方法
(B)の油溶性成分を(A)に投入して70℃、(B)の水溶性成分を(C)に投入して50℃にて均一に溶解し、(A)を攪拌しながら(C)を(A)に投入して乳化分散した後、撹絆しながら温度30℃まで冷却して調製する。これらを試料として前記の諸試験を実施し、その結果を表6、表7及び表8に示した。
【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
【表8】

【0035】
特性
本発明の実施例1〜2のスキンクリームは、諸特性において顕著な効果が認められた。一方、比較例1〜8のスキンクリームは、本発明の実施例に比べて諸特性において劣っていた。
【0036】
実施例3 [スキンローション]
表9の組成により本発明のスキンローションを下記の製法によって調製した。
【0037】
組成
【表9】

【0038】
調製法
(A),(B)の各成分をそれぞれ混合溶解し、(B)を(A)に加えて混合攪拌して調製した。
【0039】
特性
この実施例3のスキンローションは、前記諸試験すべてにおいて良好な結果を示した。
【0040】
【発明の効果】
以上記載のごとく、本発明が、優れた美白効果を有し、且つ皮膚安全性に優れ、保存安定性の高い美白化粧料を提供することは明らかである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2708692号発明の明細書を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりにすなわち、
(1)特許請求の範囲の請求項1の「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ0.005〜2.0重量%と、水溶性紫外線吸収剤0.001〜20重量%とを配合することを特徴とする美白化粧料。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の群から選ばれる少なくとも一つ0.005〜2.0重量%と、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上0.001〜20重量%とを配合することを特徴とする美白化粧料。」と訂正する。
(2)明細書【0009】の「水溶性紫外線吸収剤」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上」と訂正する。
(3)明細書【0012】の「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラメトキシ桂皮酸、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、サリチル酸誘導体のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの水溶性紫外線吸収剤は1種又2種以上を混合して用いられる。」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤としては、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸のアルカリ金属、アンモニア又は有機アミンの各塩の1種又2種以上を混合して用いられる。」と訂正する。
(4)明細書【0013】の「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の含有量は、本発明の美白化粧料の総量を基準として0.005〜2.0重量%、好ましくは0.005〜1.0重量%の範囲内である。0.005%未満ではその効果は発揮されず、2.0重量%を越えると、製品の保存安定性に劣る為好ましくない。」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「グリチルリチン酸誘導体及びその塩もしくはグリチルレチン酸誘導体及びその塩の含有量は、本発明の美白化粧料の総量を基準として0.005〜2.0重量%である。」と訂正する。
(5)明細書【0014】の「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤の化粧料への配合量は化粧料全量中の総量として0.001〜20重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜10重量%である。0.001重量%未満では美白効果が得られにくく、20重量%を超えてもその効果分に見合った効果の向上は望めず、使用時の感触が悪くなり易く、個々の剤型を保持し難くなる。」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「本発明に用いられる水溶性紫外線吸収剤の化粧料への配合量は化粧料全量中の総量として0.001〜20重量%である。」と訂正する。
(6)明細書【0029】の「実施例1〜5、比較例1〜5」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「実施例1〜2、比較例1〜8」と訂正する。
(7)明細書【0033】の表の「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」を明りょうでない記載の釈明を目的として、それぞれ、「比較例6」、「比較例7」、「実施例1」と訂正する。
(8)明細書【0034】の表の「実施例4」、「実施例5」を明りょうでない記載の釈明を目的として、それぞれ、「実施例2」、「比較例8」と訂正する。
(9)明細書【0035】の「実施例1〜5」及び「比較例1〜5」を明りょうでない記載の釈明を目的として、それぞれ、「実施例1〜2」及び「比較例1〜8」と訂正する。
(10)明細書【0036】の「実施例6」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「実施例3」と訂正する。
(11)明細書【0039】の「実施例6」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「実施例3」と訂正する。
異議決定日 1999-11-17 
出願番号 特願平5-66215
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 534- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨士 美香  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 柿澤 紀世雄
谷口浩 行
登録日 1997-10-17 
登録番号 特許第2708692号(P2708692)
権利者 鐘紡株式会社
発明の名称 美白化粧料  
代理人 深谷 光敏  
代理人 池浦 敏明  

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