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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09D |
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管理番号 | 1018205 |
異議申立番号 | 異議1997-74948 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-06-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-10-23 |
確定日 | 1999-08-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2602404号「水性インク組成物」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2602404号の特許を取り消す。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件特許第2602404号は、平成5年9月8日(パリ条約による優先権主張1992年9月8日、米国)に特許出願され、平成9年1月29日にその特許の設定登録がなされ、その後、藤田肇より特許異議の申立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年4月17日に訂正請求がなされ、その訂正請求に対して、平成10年7月28日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定し意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。 [2]訂正請求についての判断 〈訂正拒絶理由の概要〉 本件訂正請求は、本件特許請求の範囲において、本件発明の水性インク組成物を構成する(4)ポリマーに関し、「ABブロックポリマー、BABブロックポリマー、ABCブロックポリマー及びランダムポリマーからなる群より選択されるポリマー」とあったのを、「アクリル酸またはメタクリル酸とアクリレートまたはメタクリレートとから誘導されるABブロックポリマー」と訂正することを含んでいる。 しかしながら、願書に添付した明細書(登録時の明細書)に、「アクリル酸またはメタクリル酸とアクリレートまたはメタクリレートとから誘導されるABブロックポリマー」に相当するポリマーとして記載されているものは、「ブチルメタクリレート//メタクリル酸ABブロックポリマー、ブチルメタクリレート//ブチルメタクリレート-共メタクリル酸ABブロックポリマー」のみであって、アクリル酸及びアクリレートから誘導されるポリマーは記載されておらず、ブチルメタクリレート以外のメタクリレートから誘導されるものも記載されていない。 そして、「アクリル酸またはメタクリル酸とアクリレートまたはメタクリレートとから誘導されるABブロックポリマー」が登録時の明細書の記載から自明のものとも認められない。 よって、本件訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものではないので、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第1項ただし書き(平成5年法第26号による改正後の特許法による。)の規定に違反する。 〈判断〉 上記訂正拒絶理由は妥当なものと認められるので、本件訂正は認めないことにする。 [3]特許異議申立についての判断 1.本件発明 上記のとおり、本件訂正請求は認められないものであるので、本件発明は、登録時の特許明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】(1)水性坦体媒質、(2)着色剤、(3)普通紙支持体のカールを実質的に除去するのに十分な量の少なくとも1種のカール防止剤、および(4)ABブロックポリマー、BABブロックポリマー、ABCブロックポリマー及びランダムポリマーからなる群より選択されるポリマーを含み、ここで、カール防止剤は25℃で少なくとも4.5%の水溶解度を有し、かつ、(a)1,3-ジオール類、(b)1,3,5-トリオール類、アミノ-1,3-ジオール類及び下記の構造式: 【化1】 〔式中、R1、R2、R4、R5及びR6は独立してH、CnH2n+1(ここでn=1〜4)又はCnH2nO(CH2CHYO)bH(ここでn=1〜6及びb=0〜25)であり;R3=H、CnH2n+1(ここでn=1〜4)、CnH2nO(CH2CHYO)bH(ここでn=1〜6及びb=0〜25)又は(CH2)eNXZ(ここでX及びZは独立してH、CH3、C2H5又はC2H4O(CH2CHYO)dH(ここでd=0〜25及びe=0〜3))であり;Y=H又はCH3;a及びcは独立して0〜25であり;そしてCH2CHYO単位の総数は0〜100である〕を有するそれらのポリオキシアルキレン誘導体; (b)ポリオール類及び下記の構造式: 【化2】 〔式中、Rは独立してH、CnH2n+1(ここでn=0〜4)又はCH2O(CH2CHYO)eHであり;Y=H又はCH3;b=0又は1;a、c、d及びeは独立して0〜40であり;f=1〜6;そしてCH2CHYO単位の総数は0〜100であるが、但しa、b、c及びd=0、及びf=1である場合はRはHではなく、a、c及びd=0並びにb及びf=1である場合はeは0でない〕を有するそのポリオキシアルキレン誘導体; (c)下記の構造式: 【化3】 〔式中、X=H、OH、CH2O(CH2CHYO)aH、O(CH2CHYO)bH又はOM(ここでMは金属陽イオンである)であり:n=2〜7;R=(CH2CHYO)c(ここで、Y=H又はCH3);a、b及びcは独立して0〜25であり;そしてCH2CHYO単位の総数は0〜125である〕を有する化合物; (d)ピラノシド及び下記の構造式: 【化4】 〔式中、R=H又はCnH2n+1(ここでn=0〜4)であり;a、b、c及びdは独立して0〜30であり;Y=H又はCH3;そしてCH2CHYO単位の総数は0〜120である〕を有するそれらのポリアルコキシアルキレン誘導体; (e)下記の構造式: H-(OCH2CHY)xOH (式中、Y=H又はCH3、及びx=3〜20)を有するポリ(オキシアルキレン)化合物;及び (f)構造式: Z1Z2N(CH2CH2NZ3)nZ4 〔式中、Z1、Z2、Z3及びZ4は独立して(CH2CHYO)aH(ここで、Y=H又はCH3)であり;n=1〜20;aは独立して0〜20であり;そしてCH2CHYO単位の総数は3〜200である〕を有する脂肪族ポリアミンのポリオキシアルキレン誘導体からなる群より選択されることを特徴とする水性インク組成物 2.引用刊行物記載事項 本件発明に対して、当審が取消理由通知において示した刊行物3(特開平3-79680号公報、以下、引用例という。)には、次のことが記載されている。 ▲1▼特許請求の範囲 『水性媒体、スチレン-マレイン酸共重合体及び銅フタロシアニン顔料を含有することを特徴とするインクジェット用記録液』 ▲2▼第2頁左上欄第11行〜同頁右上欄第3行 『本発明の記録液に用いられる水性媒体としては、水の他水溶性有機溶剤として・・・トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200)、ポリエチレングリコール(#400)、・・・を含有しているのが好ましく、水溶性有機溶剤の含有量としては、記録液全重量に対して、10〜50重量%の範囲が挙げられる。』 ▲3▼第2頁右上欄第4行〜同頁左下欄第1行 『本発明の記録液に分散剤として用いられるスチレン-マレイン酸共重合体はスチレンと無水マレイン酸とを通常の方法により共重合した後加水分解してポリカルボン酸とし、アンモニア、水酸化ナトリウム等の塩基性物質で中和することにより得られる。・・・この様な共重合体物質としては、・・・ディスコートN-14(第一工業製薬(株)製)・・・等が市販されており、これらを適宜利用することもできる。本発明の記録液において、これらの分散剤の含有量としては顔料の重量に対して・・・、好ましくは30〜60重量%の範囲が挙げられる。』 ▲4▼第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄下から第5行 『実施例1 記録液の組成 使用量(g) ポリエチレングリコール(#200) 15 ディスコートN-14 1.3 (第一工業製薬(株)製) 銅フタロシアニン 4 水 残量 合計 100 上記の各成分を容器にとり平均0.5mm径のガラスビーズ130mlと共にサンドグラインダー(五十嵐機械製造(株)製造)を用いて20時間粉砕処理を行った。孔径3μのテフロンフィルターで加圧濾過したのち、真空ポンプ及び超音波洗浄機を用いて脱気処理し記録液を調製した。得られた記録液を用いて、インクジェットプリンター(I0-735、シャープ株式会社製造)を用いて電子写真用紙(富士ゼロックス(株)製造)にインクジェット記録を行ない、下記(a)、(b)及び(c)の方法に従って、諸評価を行った。』 3.対比・判断 本件発明と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の銅フタロシアニン顔料は顔料の1種であり、水性媒体の1成分として用いられる水溶性有機溶剤のトリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200)、ポリエチレングリコール(#400)は本件発明の(3)(e)のポリ(オキシアルキレン)化合物に該当し(段落【0035】)、スチレン-マレイン酸共重合体はランダムポリマーの1種であるので、本件発明の(1)水性媒質、(2)着色剤、(3)カール防止剤、(4)ポリマーは、引用例に記載された発明の水性媒体中の水、銅フタロシアニン顔料、水溶性有機溶剤、スチレン-マレイン酸共重合体とそれぞれ一致する。 さらに、引用例の実施例1に記載された記録液において、ポリエチレングリコール(#200)の使用量は、インク全体の15%であって、この使用量は、本件発明の「カールを実質的に除去するのに十分な量」に該当するもの(段落【0038】には「カール防止剤の許容範囲はインクの総重量を基礎にして10〜75%、好ましくは12〜55%、最も好ましくは15〜30%である。」と記載されている。)と認められ、本件発明の要件をすべて満たすものである。 結局、本件発明に係る水性インク組成物は、引用例に記載されており、本件発明は引用例に記載された発明と認めざるを得ない。 [4]むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、上記引用例に記載された発明であるので、本件特許は、特許法第29条第1項第3号に違反してされたものであり、特許法第113条第1項第2号に該当するので、その特許を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-03-23 |
出願番号 | 特願平5-233317 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZB
(C09D)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 中島 庸子 |
特許庁審判長 |
柿崎 良男 |
特許庁審判官 |
中島 次一 池田 正人 |
登録日 | 1997-01-29 |
登録番号 | 特許第2602404号(P2602404) |
権利者 | イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー |
発明の名称 | 水性インク組成物 |
代理人 | 佐藤 辰男 |
代理人 | 高木 千嘉 |
代理人 | 西村 公佑 |