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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C04B 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C04B 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C04B |
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管理番号 | 1018216 |
異議申立番号 | 異議1999-70043 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-05-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-11 |
確定日 | 1999-11-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2773416号「窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2773416号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 特許第2773416号に係る発明についての出願は、平成2年9月25日に特許出願され、平成10年4月24日に特許の設定登録がなされ、その後、平成11年1月11日に特許異議申立人高橋喜美夫(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月27日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容、 訂正請求書は平成9年12月19日付け全文補正明細書により補正され本件明細書について、以下のとおりの訂正を行うことを請求するものである。 (a)特許請求の範囲の請求項1の 「六方晶系のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であるウルツ鉱構造以外の化合物粒子を、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散したことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。」を「六方晶のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が、窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であり、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散した、熱伝導率が120W/m・K以上であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。」と訂正する。 (b)特許請求の範囲の請求項2,3を削除し、以下の請求項の番号を順次繰り上げる。 (c)特許請求の範囲の請求項6(訂正後の請求項4)の「Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Co,Niからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物粉末」を「Ti,Zr,Hf,V,NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%」と訂正し、「加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で」を「炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で」と訂正する。 (d)特許請求の範囲の請求項8(訂正後の請求項6)の「Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Co,Niからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物の化合物」を「Ti,Zr,Hf,V,NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%」と訂正し、「その後の昇温段階で0.01〜5.0重量%の範囲の遊離炭素を形成しうる量の同炭素を形成する有機化合物とを」を「炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で」と訂正する。 (e)明細書第5頁第10〜11行の「分散させる化合物の好ましい結晶系は立方晶系であり、特にNaCl構造であることがより好ましい。」を「分散させる化合物の結晶系は、NaCl構造である。」と訂正する。 (f)明細書第5頁第19〜21行の「であるウルツ鉱構造以外の化合物粒子を、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させることなく、微細分散したものである。特に微細分散した粒子がNaCl構造をとる…化合物であることが望ましい。」を、「であり、Ti、Zr、Hf.V、NbおよびTaからなる群がら選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させることなく、微細分散したものであり、熱伝導率が120W/m・K以上である。」と訂正する。 (g)明細書第6頁第10〜16行の「本発明の窒化アルミニウム粒子内に……その限りではない。」を、「本発明の窒化アルミニウム粒子内に微細分散させた化合物粒子は、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物であり、NaCl構造をとるものである。またその添加量は元素換算で0.01〜5.0重量%とする。」と訂正する。 (h)明細書第6頁第22〜23行の「分散された…好ましい。」および同頁第27行の「0.01〜30重量%の範囲で、好ましくは」を削除する。 (i)明細書第6頁第29行〜第7頁第1行目の「5.0重量%の量で十分本発明の目的とする効果が得られる。」を削除する。 (j)明細書第8頁第10行の「焼結体は、熱伝導率が70W/m・K以上、」を「焼結体は、熱伝導率が120W/m・K以上、」に、同頁第12行の「さらに120W/m・K以上、さらには」を「さらに」と訂正する。 (k)明細書第8頁第24〜25行の「Ti、Zr、Hf、…の化合物粉末と、加熱により」を「Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、炭素または加熱により」と訂正する。 (l)明細書第9頁第2〜7行の「窒化アルミニウムの…準備する工程と」を「窒化アルミニウムの前駆体である原料から合成され、窒化アルミニウムと、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf,V、NbおよびTaからなる群がら選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%と、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で含む窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程と、」と訂正する。 (m)明細書第9頁第13行の「焼結助剤となる化合物と、」を削除し、同行の「加熱により」の前に「炭素または」を追加する。さらに同頁第13〜14行の「ものである。」の後に「または必要により焼結助剤となる化合物も含む。」を追加する。 (n)明細書第9頁第26行の「同合成粉末が得られる。」を「同合成粉末を得ることもできる。」と訂正する。 (o)明細書第10頁第14行の「0.01〜30重量%の範囲で、好ましくは」を削除する。 (p)明細書の表1の試料2、5、6、7および表3の試料22、26および27、表6の試料52を削除し、表1の試料1および9(訂正後は試料5)、表4の試料31(訂正後は試料20)を比較例とし、*印を付す。さらに上記の試料削除によって、各表の試料の追い番号を訂正する。 また表4の下に「*印は比較例。」の文言を追加する。 (q)明細書の第6頁第7行の「高い程好ましい。」の後に、「言い換えれば、微細分散粒子の内の50%を越える分がAIN粒子内にあり.その残りがAINの粒界にある方が望ましい。」を追加する。 (r)明細書の表3の試料24(訂正後は試料16)以降の試料の分散粒子欄の「 〃 」を、全て試料23(訂正後は試料15)に合わせ、「粒内,粒界」と訂正する。 (s)明細書の第4頁第24行の「開発法向」を「開発方向」、同第6頁第6行の「AIN粒径」を「AIN粒界」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項のうち、(a)〜(d)は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、(e)〜(r)は訂正後の明細書全体の記載事項を整合させて、記載の明瞭化を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、(S)は誤記の訂正を目的とするものである。 また、訂正事項(a),(f)の「窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率が120W/m・K以上であること」及び訂正事項(q)の「微細分散粒子の内の50%を越える分がAIN粒子内にあること」はそれぞれ本件特許明細書に「熱伝導率については70W/m・K以上が得られ、…また熱伝導率についても好ましくは120W/m・K以上…」,「分散粒子の過半がAlN粒子内にあり…」(特許公報第4頁第8欄第2〜7行,第3頁第6欄第20行)と記載されているから、いずれの訂正事項も新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 3.独立特許要件の判断 当審は、次の理由による取消理由を通知した。 なお、取消理由通知における「甲第1号証」〜「甲第4号証」の記載は、特許異議申立書からの引用箇所を除き、それぞれ「引用例1」〜「引用例4」と読みかえて、取消理由の認定を行った。 理由1.請求項1,3,4の発明は、引用例1,2の発明と同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当する。 理由2.請求項1〜5の発明は、引用例1〜4の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3.本件明細書の記載は、▲1▼AlN粒子内に存在する分散粒子の比率が具体的な比率として示されていないから、微細分散粒子の存在形態に関する定義が不明瞭である,▲2▼表1の下部に「*は比較例」と記載されているにも拘わらず、表1には*の付されたデータがない, ▲3▼表3のNo24以降のデータの「〃」は意味が不明瞭である、から特許法第36条第3,4項に規定する要件を満たしていない。 (1)訂正明細書の請求項1乃至7に係る発明 平成11年8月7日付けで提出された訂正明細書の請求項1乃至7に係る発明は、その請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「訂正後発明1」〜「訂正後発明7」という。)。 「(1)六方晶のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が、窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であり、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散した、熱伝導率が120W/m・K以上であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。 (2)焼結助剤とAl2O3との化合物相から構成される粒界相が、前記微細分散した化合物粒子を含むことを特徴とする特許請求の範囲第(1)項に記載の窒化アルミニウム焼結体。 (3)波長500nmの光の吸収係数が、50cm-1以上であることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項または第(2)項に記載の窒化アルミニウム焼結体。 (4)窒化アルミニウム粉末に、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で混合して混合粉末とする工程と、該混合粉末を成形して成形体とする工程と、該成形体を窒素を含む非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で焼結する工程とを含むことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 (5)前記混合粉末とする工程において、さらに焼結助剤となる化合物を追加して混合することを特徴とする特許請求の範囲第(4)項に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 (6)窒化アルミニウムの前駆体である原料から合成され、窒化アルミニウムと.分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%と、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜50重量%の範囲となるような量で含む窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程と、該合成粉末を成形して成形体とする工程と、該成形体を窒素を含む非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で焼結する工程とを含むことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 (7)前記窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程において、さらに焼結助剤となる化合物を追加して含ませることを特徴とする特許請求の範囲第(6)項に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。」 (2)引用例の記載事項 取消理由で引用した引用例1(特開昭62-223069号公報),引用例2(「日本セラミックス協会学術論文誌 VOL97.11」1372-78(1989年11月)),引用例3(特開昭61-281074号公報),引用例4(特開昭61-295275号公報)にはそれぞれ次のとおりの事項が記載されている。 引用例1 ▲1▼「希土類酸化物0.01〜15重量%と、モリブデン化合物0.01〜15重量%と、残部が実質的に窒化アルミニウムである窒化アルミニウム焼結体。」(第1頁特許請求の範囲) ▲2▼「第1出発原料であるAlN粉末は、従来から焼結体用の原料として使用されているものであればよく格別限定されるものではない。平均粒径0.1〜1.5μmのものが好適である。」(第2頁左下欄第3〜6行) ▲3▼「第3の出発原料はモリブデン酸(H2MoO4・H2O)の粉末若しくはモリブデン酸塩の粉末であるが、…平均粒径0.3〜3.0μmのものが好適である。」(第2頁左下欄第16行〜右下欄第3行) ▲4▼「平均粒径1.3μmのAlN粉末と平均粒径0.9μmの表示の希土類酸化物粉末と平均粒径0.8μmのモリブデン酸又は表示のモリブデン酸塩粉末とを表示の割合(重量%)で配合し、ボールミルで充分に混合した。得られた混合粉末にステアリン酸を8重量%添加したのちこれを金型に充填し、室温下、成形圧700Kg/cm2で加圧成形して長さ40mm,幅40mm,厚み10mmの角板とした。得られた角板を窒素雰囲気炉にいれ、1,790℃で4時間焼結した。長さ32mm,幅32mm,厚み8mmの焼結板が得られた。」(第3頁左上欄第13行〜右上欄第4行) ▲5▼本発明のAlN焼結体の熱伝導率が65〜90W/m・Kであることを示す実施例。(第3頁の表) ▲6▼「本発明のAlN焼結体は、従来のものと比べて焼結密度,熱伝導率では全く遜色がない。しかし、その曲げ強度は従来のものに比べて10〜20%向上しており高強度品となっている。」(第4頁左欄第2〜6行) 引用例2 ▲1▼「AlN粉末(徳山曹達)にY2O3粉末(信越化学工業)を5又は10wt%添加し(以下5Yと10Y),それをブタノール(和光純薬工業,特級)を溶媒としてAl2O3ボールを用いたボールミルで4時間混合する。溶媒を蒸発乾燥後,バインダーを加える。混合粉末の成形は,20mmφの金型を用い,300kg/cm2の一軸加圧により行った。成形体は,500℃,3時間N2中で脱脂した後,まず1800℃,1時間N2中で緻密化する。…次に還元雰囲気における熱処理に用いた焼結体は,両面をそれぞれ約0.5mm研磨し表面部分を除去し,焼結体全体の相の組成を均一にするとともに,各焼成時間での焼結体と雰囲気との接触表面積を同一にした。研磨した焼結体を,カーボン容器に入れ還元雰囲気において,1900℃で1,3,6及び24時間熱処理を行った。」(第1372頁右欄下から3行〜第1373頁左欄第16行) ▲2▼「図9に各熱処理時間における10Yの焼結体の破断面のSEM写真を示す。出発原料と1時間の熱処理では粒界に幅を持った粒界相が観察される。また,1時間の熱処理では粒とは別の微細な粒子が存在している。24時間の熱処理では粒界は明確な線として観察され,幅を持った粒界相は観察されない。また,どの熱処理時間においても気孔は観察されず緻密な構造をしている。これは、密度測定の結果と一致している。図10に、SEM写真から測定した焼結体中心部の粒径の熱処理時間に対する変化を示した。出発試料では10Y,5Yとも粒径はほとんど同じで約2μmである。熱処理するとどちらも粒径は大きくなるが,5Yの方が10Yよりも粒径が大きくなっている。1時間の熱処理で粒界相は10Yが5.5vol%存在するのに対して5Yでは0.9vol%しか存在しない。そのため10Yでは粒界のピン止め効果が大きく,粒成長が抑制されたと考えられる。」(1376頁右欄下から3行〜第1377頁左欄最下行) ▲3▼10wt%のY2O3を含み、1900℃の還元雰囲気中で0,1,3,6及び24時間熱処理を行ったAlNセラミックスの破断表面のSEM写真。(第1377頁 Fig.9) 引用例3 ▲1▼「窒化アルミニウムを100重量部と、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta及びCrの各炭化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物を、金属元素に換算して総量で0.1〜10重量部とからなることを特徴とする高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体。」(第1頁特許請求の範囲) ▲2▼「本発明は上記成分のみでも十分であるが、必要に応じてY2O3やCaO等の焼結助剤をAlN100重量部に対して5重量部を越えない範囲で含んでもよい。」(第2頁左下欄第4〜7行) ▲3▼「Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta及びCrの各炭化物はAlN粒子中に固溶することなく、AlN粒子間、即ち、粒界に存在して、金属と結合するために、本発明は、AlNの金属との濡れ性を改善すると思われる。」(第2頁左下欄下から2行〜右下欄第3行) 引用例4 ▲1▼「窒化アルミニウムを100重量部と、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta及びCrから選ばれた1種又は2種以上を、総量で0.1〜10重量部とからなることを特徴とする高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体。」(第1頁特許請求の範囲) ▲2▼「本発明は上記成分のみでも十分であるが、必要に応じてY2O3やCaO等の焼結助剤をAlN100重量部に対して5重量部を越えない範囲で含んでもよい。」(第2頁右上欄15〜18行) ▲3▼「Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta及びCrの金属はAlN粒子中に固溶することなく、AlN粒子間、即ち、粒界に存在して、金属と結合するために、本発明は、AlNの金属との濡れ性を改善すると思われる。」(第2頁左下欄第8〜12行) (3)理由1について 理由1は訂正前の請求項1,3,4に係るものであるが、訂正後発明のうち、これらに相当するものは、その発明を構成する事項よりみて、訂正後発明1,2であると認められる。 そこで、訂正後発明1と引用例1,2に記載された発明とを対比すると、両者はいずれも窒化アルミニウム焼結体である点においては軌を一にするが、窒化アルミニウム以外の原料として、訂正後発明1は「Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子」を使用するのに対し、引用例1記載の発明は「希土類酸化物及びモリブデン化合物」、引用例2記載の発明は「Y2O3粉末」を使用するが、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の粒子は使用しない点において明確に相違する。 そして、「Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子」を使用することは引用例1,2に記載される発明より当業者にとって自明なことでもない。 してみれば、訂正後発明1は、引用例1乃至2に記載された発明と同一の発明とは言えない。 また、訂正後発明2は訂正後発明1に更に技術的限定を加えたものあるから、訂正後発明1と同様の理由により、引用例1乃至2に記載された発明と同一の発明とは言えない。 (4)理由2について 理由2は訂正前の請求項1〜5に係るものであるが、訂正後発明のうち、これらに相当するものは、その発明を構成する事項よりみて、訂正後発明1〜3であると認められる。 ▲1▼訂正後発明1 訂正後発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1の平均粒径0.1〜1.5μmのAlN粉末は訂正後発明1の「平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子」に相当する。 また、「一般にAlNは六方晶系に属し、ウルツ鉱型の結晶構造をとる」(例えば、本件特許公報第3頁第5欄第32〜33行参照。)ことより、六方晶のウルツ鉱構造を有するAlNは普通のものと言える。 してみれば、両者は、「六方晶のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アノレミニウム粒子よりなる窒化アルミニウム焼結体」の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 相違点1:訂正後発明1は、「平均粒径が、窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であり、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散した」ものであるのに対して、引用例1記載の発明は「希土類酸化物0.01〜15重量%と、モリブデン化合物0.01〜15重量%」を原料として使用したものである点。 相違点2:訂正後発明1のAlN焼結体は熱伝導率が120W/m・K以上であるのに対して、引用例1記載のAlN焼結体は熱伝導率が65〜90W/m・Kである点。 そこで、まず相違点1について検討する。 引用例2には「Y2O3粉末」を使用することは記載されているが、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の粒子を使用することは記載も示唆もされていない。 また、引用例3にはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta及びCrの各炭化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物を使用することが、引用例4にはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta及びCrから選ばれた1種又は2種以上を使用することが記載されているが、これらはいずれも「AlN粒子中に固溶することなく、AlN粒子間、即ち、粒界に存在して、金属と結合する」(II.3.(2)引用例3▲3▼及び引用例4▲3▼)ものであって、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を固溶させずに窒化アルミニウム結晶格子内に微細分散することは記載も示唆もされていない。 以上のとおりであって、上記相違点1であげた訂正後発明1の構成の「Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物粒子を、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散した」点は、引用例2乃至4のいずれにも記載も示唆もされておらず、またこれらの引用例の記載を併せて勘案しても当業者が容易に想到し得たことではない。 そして、訂正後発明1は「特定の結晶構造を持つ微細な化合物をAlN粒子内に分散させた特異な組織構造のAlN焼結体とすることによって、優れた熱伝導性、機械的特性を有し、なおかつ優れた遮光性を有する」(特許公報第3頁第5欄第28〜31行)という顕著な効果を奏するものである。 してみれば、訂正後発明1は少なくとも上記相違点1の点により、引用例1乃至4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 ▲2▼訂正後発明2,3 訂正後発明2,3は訂正後発明1に更に技術的限定を加えたものあるから、訂正後発明1と同様の理由により、引用例1乃至4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。 (5)理由3について 理由3の▲1▼,▲2▼,▲3▼の点は、それぞれ順に上記「II.1」の訂正事項(q),(p),(r)により、明瞭なものとなったから、本件明細書の記載は特許法第36条第3,4項に規定する要件を満たすものである。 以上のとおりであるから、訂正後の本件発明は、特許出願に際して独立して特許を受けることができるものである。 4.むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議申立てについての判断 1.本件発明 本件発明は、訂正明細書の請求項1〜7に記載されたとおりのものである(以下、「本件発明1」〜「本件発明7」という。)。 2.特許異議の申立て理由の概要 申立人は、証拠として甲第1乃至4号証(それぞれ順に取消理由通知で引用した引用例1〜4に相当する。)を提出し、(ア)請求項1,3,4の発明は、引用例1,2の発明と同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当すること,(イ)請求項1〜5の発明は、引用例1〜4の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないこと, (ウ)本件明細書の記載は、▲1▼AlN粒子内に存在する分散粒子の比率が具体的な比率として示されていないから、微細分散粒子の存在形態に関する定義が不明瞭である,▲2▼表1の下部に「*は比較例」と記載されているにも拘わらず、表1には*の付されたデータがない,▲3▼表3のNo24以降のデータの「〃」は意味が不明瞭である、から特許法第36条第3,4項に規定する要件を満たしていないこと、を申立の根拠として、本件特許は取り消されるべきであることを主張している。 3.判断 特許異議の申立ての理由(ア),(イ),(ウ)はいずれも取消理由通知で通知した理由と同一のものであるので、上記「II.3.(3)」〜「II.3.(5)」に記載したのと同様の理由により、本件特許が取り消されるべき根拠として、採用することはできない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件発明1〜7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 (1)六方晶のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が、窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であり、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散した、熱伝導率が120W/m・K以上であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。 (2)焼結助剤とAl2O3との化合物相から構成される粒界相が、前記微細分散した化合物粒子を含むことを特徴とする特許請求の範囲第(1)項に記載の窒化アルミニウム焼結体。 (3)波長500nmの光の吸収係数が、50cm-1以上であることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項または第(2)項に記載の窒化アルミニウム焼結体。 (4)窒化アルミニウム粉末に、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化学物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で混合して混合粉末とする工程と、核混合粉末を成形して成形体とする工程と、核成形体を窒素を含む非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で焼結する工程とを含むことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 (5)前記混合粉末とする工程において、さらに焼結助剤となる化合物を追加して混合することを特徴とする特許請求の範囲第(4)項に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 (6)窒化アルミニウムの前駆体である原料から合成され、窒化アルミニウムと、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf、V、HbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%と、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で含む窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程と、該合成粉末を成形して成形体とする工程と、該成形体を窒素を含む非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で焼結する工程とを含むことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 (7)前記窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程において、さらに焼結助剤となる化合物を追加して含ませることを特徴とする特許請求の範囲第(6)項に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。 【発明の詳細な説明】 (発明の目的) [産業上の利用分野] 本発明は、窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは窒化アルミニウム結晶中に微細粒子が分散した繊密、高熱伝導、高強度でかつ遮光性に優れた窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法に関する。 [従来の技術] 最近の電子産業を中心とした技術進歩はめざましく、使用される材料に要求される特性も厳しくなっている。例えば、半導体においてはその集積度、処理速度の増大により、発熱量、発熱密度が増大しており、基板材料に要求される放熱特性が厳しいものになっている。そのため従来のAl2O3基板では熱伝導率が低く放熱性が不十分であり、半導体の発熱量増大に対応できなくなっている。このためAl2O3に代わる基板材料として酸化ベリリウム(BeO)が挙げられるが、BeOは毒性があり取扱いが難しい欠点がある。そのため新しい材料が要求されている。 また自動車分野においては、地球環境の保護の必要からエンジン効率の向上を目指して、車体の軽量化は勿論、エンジン系の軽量化、高効率化が追求されている。特に高熱部分においては、軽量、高耐熱、高強度かつ高熱伝導の材料が必要とされ、もはや従来の金属材料では対応できず、セラミック材料が検討されている。しかしながら従来のセラミック材料では、強度と熱伝導率を同時に満足できるものは存在しなかった。一方窒化アルミニウム(AlN)は、高熱伝導性かつ高電気絶縁性の物質であり、しかも毒性もなく資源も豊富なことから、安価に焼結体が得られれば、上記した要求特性を満足しうるため、古くから研究開発が行われてきた。 AlNは焼結性が悪く、AlN単独での緻密化は困難である。そのため焼結助剤が添加される。たとえば特開昭60-71575に示されるように、アルカリ土類金属、イットリウム及びランタン族金属からなる群の一種または二種以上の金属の化合物が用いられてきた。AlN本来の材料特性を発揮させ、有用な材料とするための研究開発は、このような緻密質焼結体を前提として、次の三つの方向で行われてきた。 第一の方向としては、高強度材料を得て構造材料として用いることを意図したものであり、繊維状の組織とすることで機械的強度向上を達成する方向である。たとえば特公昭56-36153によれば、SiO2又はシリケート鉱物を添加して高強度のAlN焼結体を得ている。しかしながらこの場合には熱伝導性を犠牲にして高強度を達成しており、AlN本来の特性を十分に発揮させたとは言い難いものであった。 第二の方向としては、熱伝導性を高めることを優先させた開発方向である。たとえは特開昭60-71575には、高純度のAlN原料粉末を用いることによって、高熱伝導性の焼結体を得ている。この焼結体は、波長6μmの赤外光の吸収係数が20cm-1程度であり、60W/m・Kを越える熱伝導率を有するものである。さらに特開昭63-303863においては、焼結時間を延長し、添加した焼結助剤の量を減少せしめることによって、さらに高い熱伝導率のものを得ている。この場合には200W/m・K以上の熱伝導率で、波長500nmの光の吸収係数が50cm-1以下の透光性のものを得ている。しかしながらこの開発方向で得られたAlN焼結体は、いずれも熱伝導性には優れているが、AlN粒子の粗大化が著しいため材料強度が低く、実用上信頼性の低いものであった。また透光性があるために、たとえば半導体パッケージ用の材料としては好ましくないとされている。 第三の方向としては、第二の方向の改良として特定の化合物を添加して遮光性を持たせる、あるいはメタライズ性を改良するといった方向である。たとえば特開昭62-153173によれば、周期律表の4a、5a、6a、7a、8族元素を添加し、低温焼結が可能であり緻密かつ高熱伝導性の着色されたAlNが得られている。しかしながらこれらのものでは、その熱伝導率は高々100W/m・K程度、その抗折強度は高々60kg/mm2程度である。特開昭61-270262には、メタライズ強度を向上させるために、周期律表の4a、5a、6a族元素の硼化物、窒化物、炭化物を添加したAlN焼結体が開示されているが、この焼結体は、添加したこれらの化合物をAlN粒子の粒界に存在せしめ、メタライズ性を向上させたものである。しかしながらその熱伝導率は120W/m・K程度と低く、その機械的強度、光の透過性については何の記述もない。特開平2-124772には、AlNを主成分としてTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Nd、Hoから選ばれた一種以上の金属元素を含み、150W/m・K以上の熱伝導率を有するAlN焼結体が開示されている。この焼結体は遮光性があり、かつ高熱伝導性ではあるが、その強度については低レベルである。 すなわち従来のAlN焼結体の研究開発方向は、同焼結体中の酸素を中心とした不純物を極力減少せしめることによって、高い熱伝導性を追求することが中心であり、その一部において機械的強度の向上を図ったり、添加物種の検討によってその粒界相を改良してメタライズ強度の向上やその着色を図ったりすることも行われてきた。ましてや熱伝導性とともに機械的強度・遮光性の改善を図るという試みについては、なされてこなかった。 [発明が解決しようとする課題] 現在までのAlN焼結体の開発方向は、以上のようにAlNの熱伝導性の向上という課題の追求に偏ったものであり、AlN本来の特性を十分に利用できるまでには至っておらず、また実用上必要な諸特性を必ずしも充足しているとは言い難い状況にある。すなわち本発明の課題は、緻密で高熱伝導性、高強度かつ遮光性に優れた窒化アルミニウムを提供することである。 [発明の構成] (課題を解決するための手段及び作用) 本発明者等は、上記目的を達成すべくAlN焼結体について、AlN原料粉末を含めて実験を進めた結果、新規な組織構造のAlN焼結体を見出し本発明を完成した。 すなわち特定の結晶構造を持つ微細な化合物をAlN粒子内に分散させた特異な組織構造のAlN焼結体とすることによって、優れた熱伝導性、機械的特性を有し、なおかつ優れた遮光性を有するものの得られることが明らかになった。一般にAlNは六方晶系に属し、ウルツ鉱型の結晶構造をとる。本発明では、これとは異なった結晶系に属する化合物を窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させることなく、同結晶粒子内に微細分散させる。分散させる化合物の結晶系は、NaCl構造である。このようにすることによって熱伝導性、遮光性とともに特に抗折強度を高めることができる。ちなみにAlNと同じ結晶系のBeOあるいはTiB2等の結晶は、AlN粒子内には分布し難く、またその結果上記特性の向上も十分なものとはならない。このようにすることによって熱伝導性、遮光性とともに特に抗折強度を高めることができる。 すなわち本発明の提供する窒化アルミニウム焼結体は、六方晶系のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が窒化アルミニウムのそれの1/5以下であり、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させることなく、微細分散したものであり、その熱伝導率が120W/m・K以上である。 本発明の窒化アルミニウム焼結体においては、AlN粒子の粒径と分散された化合物粒子のそれとの関係が、上記課題達成のためには最も重要なコントロール因子の一つであり、最終的に得られる焼結体において、分散される化合物粒子の平均粒径がAlN粒子のそれの1/5以下とする。分散される化合物粒子の平均粒径がAlN粒子のそれの1/5を越えると、特に上記した分散粒子による機械的強度向上の効果が低下するからである。分散粒子の平均粒径は小さいほどその効果は高くなる。本発明の焼結体では、その分散粒子の平均粒径を0.3μm以下とするのが望ましい。またAlN粒子の平均粒径は1μm以上とする。AlN粒子は微細な程焼結体の機械的強度は大きくなるが、微細分散粒子の取り込みが不十分となり、分散粒子のAlN粒界への析出量が増加するため好ましくないからである。 すなわち本発明の窒化アルミニウム焼結体においては、通常微細分散粒子は大部分がAlN粒子内に存在し、またAlN粒子の大部分のものに微細分散粒子が存在するが、分散粒子の過半がAlN粒子内にあり、残りはAlN粒子の粒界に存在するのが望ましく、分散粒子がAlN粒子内に存在する比率が高い程好ましい。言い換えれば、微細分散粒子の内の50%を越える分がAlN粒子内にあり、その残りがAlNの粒界にある方が望ましい。分散粒子をAlN粒子内に分散すれは熱伝導率の低下が小さく抑えられ、また遮光性増加、焼結体強度向上への寄与が大きくなる。 本発明の窒化アルミニウム粒子内に微細分散させた化合物粒子は、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物であり、NaCl構造をとるものである。またその添加量は元素換算で0.01〜5.0重量%とする。特にこれらの元素は光の吸収効果が大きく遮光性向上に大きく寄与する。またこれらの金属元素は、金属でも酸化物、炭化物、窒化物等の化合物でもよいが、AlNの結晶格子に固溶するのではなく、あくまでも分離分散していることが必要である。すなわちAlN粒子の格子内への固溶は、AlNの熱伝導率を大きく低下させるため避ける必要があり、上記の金属元素は、その大部分がAlN粒子の格子内に置換型あるいは侵入型で固溶していないことが必要である。これらの化合物はNaCl構造をとる化合物で、たとえば窒化物、炭化物、硼化物、酸化物あるいはこれらの固溶体の形態で存在する。特に主として窒化物からなる化合物の場合に本発明の目的とする効果が大きい。分散粒子は、その元素に換算して、焼結体中に0.01〜5.0重量%の範囲で含まれる。含有量が多くなりすぎると、電気絶縁性の低下、緻密度の低下が起こり、この限度内にすることが必要である。分散粒子が微細であれば、特に1.0重量%までの量で十分な遮光性と機械的強度を有し、高い熱伝導率、電気絶縁特性とを兼ね備えた窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能である。 またAlN粒子の焼結性を向上させるために、焼結助剤を用いることができる。焼結助剤としては、公知のアルカリ土類、希土類元素の化合物を用いることが好ましく、これらは、焼結体中ではAlN結晶格子内に固溶することなく、AlN粉末に含まれるAlとOとの間で化合物を形成し、AlNの粒界に存在する。焼結助剤は少なければ熱伝導率が低下し、焼結密度が上がり難くなる。その一方で多すぎれば焼結体の熱伝導率がかえって低下し、焼結体表面の面粗度が悪くなる。そのためこれらの焼結助剤の添加量は、その酸化物に換算して0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜3.0重量%の範囲とする。添加する形態としては、酸化物、炭酸塩、水酸化物、ステアリン酸化合物、アルコキシド等がある。これらは焼結体中では主として酸化物として存在し、AlN粉末表面のAl2O3との化合物を形成する場合が多い。 次に得られる焼結体の特性について述べる。本発明の焼結体は抗折力が30kg/mm2以上である。なお本発明での抗折力は4mm幅×0.635mm厚みの板状試片を3点曲げ20mmスパンで測定して求めたものである。好ましい製造条件を選定することによって、50kg/mm2以上、さらには80kg/mm2を越える強度を得ることも可能である。このような高強度のものは、たとえはAlN粒子の平均粒径を5μm以下とし、微細分散粒子のそれを0.3μm以下として、これら分散粒子の過半をAlN粒子内に分散し、残りをAlN粒界にも存在させることで得られる。このような高い強度の発現理由は、AlN粒子の成長が適度に抑えられるとともに、分散によるAlN粒子自体の強化および粒界の強化との相乗効果によるものと考えられる。 本発明の窒化アルミニウム焼結体の光の吸収係数は、光の波長500nmにおいて50cm-1以上であり、黒色・茶色等に着色され遮光性を示す。本発明の吸収係数は厚さ0.5mmの板状試片を用い、分光光度計によって測定する。なお吸収係数は簡易的に、 I=I0e-μtで算出した。ここで I0は入射光の強度 Iは透過光の強度 μは吸収係数 tは試片の厚み である。 このように分散粒子、焼結助剤以外は高純度のAlN結晶粒子からなり、高い熱伝導性を示すにもかかわらず、上述のように光の吸収係数が高いのは、分散粒子の光の吸収能が高いためと考えられる。これは分散粒子の元素による吸収効果とともに、これらの粒子が微細にAlN粒子内に分布しているため、より効率的に入射光の散乱と吸収に寄与しているためと考えられる。本発明の窒化アルミニウム焼結体は、熱伝導率120W/m・K以上、抗折強度30kg/mm2以上でかつ波長500nmの光の吸収係数が50cm-1以上を同時に満足するものである。熱伝導率は、さらに150W/m・K以上のものが、抗折強度は、さらに50kg/mm2以上、さらには80kg/mm2以上のものが得られる。 本発明における焼結体のAlN粒子は、微細に分散した粒子以外は極めて高純度であり、AlN結晶格子中に固溶する不純物元素は極めて少ない。そのためAlNの格子常数は、C軸方向が4.979Å〜4.983Å、a軸方向が3.110Å〜3.113Åでc/aが1.602以下である。半値幅が微細分散した粒子の影響により大きくなっているにもかかわらず、格子常数のc/aが小さく、AlN格子への固溶物質は極めて少ないと考えられる。これが熱伝導性、遮光性、機械的強度を同時に向上し得る理由であると考えられる。 次に本発明の窒化アルミニウム焼結体の製造方法について説明する。本発明の第一の製造方法は、窒化アルミニウム粉末と、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選はれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をもつ化合物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で混合して混合粉末とする工程と、同混合粉末を成形して成形体とする工程と、さらに同成形体を窒素を含む非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で焼結する工程とを含む方法である。また必要により混合粉末とする工程において、焼結助剤となる化合物を追加して混合することもある。 また第二の製造方法は、窒化アルミニウムの前駆体である原料から合成され、窒化アルミニウムと、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%と、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で含む窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程と、同合成粉末を成形して成形体とする工程と、同成形体を窒素を含む非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で焼結する工程とを含む方法である。また必要により合成粉末とする工程において、焼結助剤となる化合物を追加して含ませることもある。 第一の方法に用いる窒化アルミニウム原料粉末は、通常高純度のものを用いる。また第二の方法で用いる窒化アルミニウムを主体とする合成粉末は、分散粒子と、炭素または加熱により遊離炭素をを形成する有機化合物とを含むものである。また必要により焼結助剤となる化合物も含む。これらいずれの粉末も焼結性、成形性に優れたものが必要であり、好ましくは平均粒径2μm以下、酸素含有量2.0重量%以下のものを用いる。ただし過度に微細なAlN粉末を用いると、焼結性は高いものの成形性(シート成形、押し出し成形、プレス成形等)が劣り、適度な粒度であることが必要である。酸素量は、同粉末中に含まれる炭素量を変動させることで、後述する炭素による脱酸素の効果の度合いが制御できるため、広い量範囲で含有してもよいが、AlN粒子内に固溶した酸素は好ましくない。同様に同粒子内に固溶した炭素が存在したり、同粉末中に未反応のAl2O3等が存在するのは好ましくない。 第二の方法では窒化アルミニウムの前駆体である出発原料(たとえばAl、Al2O3等のアルミニウム化合物)に、予め分散粒子またはその前駆体の粉末と、焼結助剤またはその前駆体となる粉末と、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機物質を添加したものを、窒化アルミニウム粉末を合成する各種の手順を経て、同合成粉末を得ることもできる。なお分散粒子となる粉末、焼結助剤となる粉末および加熱により遊離炭素を形成する有機物質については、合成し得られた粉末に、必要によってはさらに追加添加してもよい。 たとえば合成粉末の製法がAl2O3の還元窒化法であれば、Al2O3粉末に炭素またその前駆体である有機物質、微細分散粒子となる元素および/またはその化合物の前駆体、焼結助剤となる化合物の前駆体を予め添加混合した後、窒素含有雰囲気中、1400℃以上の温度で加熱して同合成粉末を得ることができる。さらにAlNの合成法によらず、たとえばAl2O3の還元窒化法以外のAlの直接窒化法やAl成分を含む原料を用いた気相反応法でも、AlN以外の成分を適宜追加することによって、本発明第二の製法の合成粉末を得ることができる。分散粒子や焼結助剤となる出発原料物質としては、これらの対象とする元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、蓚酸塩等の粉末、あるいはアルコールに溶解させたアルコキシド等の溶液であってもよい。好ましくは平均粒径0.2μm以下の微粉末あるいは溶液等でAlN粉末に微細混合分散させる。第一の方法では、これらの金属あるいは酸化物、炭化物、窒化物の粉末をAlN粉末に添加し、また第二の方法では、AlN粉末合成時に予め添加してこれに含ませる。これら分散粒子となる成分の添加量は、最終的に焼結体中にそれらの元素換算で0.01〜5.0重量%の範囲で存在させるに必要な量とする。 焼結助剤となるアルカリ土類、希土類元素の化合物の添加量は、最終的に焼結体中にそれらの元素換算で0.01〜10重量%の範囲、好ましくは0.01〜3.0重量%の範囲で存在させるに必要な量とする。また同時に加える炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機物質の添加量は、加熱途中で、たとえば1000℃以下の加熱により生じる遊離炭素の量が0.01〜5.0重量%の範囲となるようにする。この炭素源となるものとしては、たとえばアセチレンブラックやグラファイト等の炭素、フェノール樹脂や成形助剤(バインダー)として用いられるPVB等の加熱により上記の温度までに分解して遊離炭素を生じるものがある。この遊離炭素はAlN粉末の表面あるいは内部に存在する酸素を除去する(OをCOガスとして除去する。たとえばAl2O3は還元され、COガスを放出するか又は低級酸化物として蒸発揮散する)とともに、微細分散する元素およびその化合物を還元する。例えば添加されたTiO2粉末はこの炭素によって還元され、次いで雰囲気中の窒素により直ちに窒化されTiNとなってAlN粒子内に取り込まれ分散する。混合粉末並びに合成粉末の成形及び焼結は、公知の方法によって行われる。なお焼結は、窒素含有の非酸化性雰囲気中、1600〜2000℃で行われる。 以下実施例を挙げて説明する。なお以下の実施例は、製法等についての一例を示したものであり、それによって本発明は何ら制限されない。本明細書における各特性の測定方法は以下の通りである。 ・粒径は原則としてSEM又はTEMによる観察、粉末の粒径は沈降法による平均粒径を用いた。 ・元素分析は、金属元素またはアルカリ溶融後の定量分析で、炭素、酸素はガス分析(Leco社製ガス分析装置による)で確認した。 ・抗折強度は前述の通りである。 ・光の吸収係数は、分光光度計により試料の両面を鏡面加工し、厚み0.5mmの試片とした後測定した。 ・熱伝導率は、レーザーフラッシュ法による二次元測定(真空理工製TC-7000相当の装置による)で行った。 ・空孔率は、窒化アルミニウムの理論密度を3.26g/cm3として、実測密度から算出した。 ・実測密度は、アルキメデス法によって行った。 ・格子常数ならびに半値幅は、Siを標準としたX線回折法により確認した。 実施例1 AlN粉末(平均粒径0.8μm、含有酸素量1.5重量%、Alを除く金属不純物量0.1重量%以下、含有炭素量0.03重量%)に、表1に示した量の平均粒径0.5μm以下の分散化合物粉末と、焼結助剤としてY2O3粉末(平均粒径0.5μm、純度99.9%)0.5重量%を添加し、さらにフェノール樹脂を1.0重量%、PVBを10重量%加え、トルエン系溶剤中、ナイロンボール、ナイロンポットで10時間混合して得たスラリーを、シート状にキャスティング後乾燥して、厚さ0.8mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角状シートとした後、BNルツボに入れ窒素中1850℃で5時間加熱して焼結体を得た。昇温途中1000で試料を取り出し炭素量を分析したところ、遊離炭素は0.6重量%であった。得られた焼結体の特性を表1に示す。 実施例2 AlN粉末(平均粒径0.8μm、含有酸素量1.5重量%、Alを除く金属不純物量0.1重量%以下、含有炭素量0.03重量%)に、TiO2粉末(平均粒径0.1μm、純度99.9%)を2.0重量%、焼結助剤として表2に示した量の化合物を添加し、さらにフェノール樹脂を1.0重量%およびPMMA(ポリメチルメタアクリレート)を10重量%を加え、ナフサ系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて10時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティング後乾燥して厚さ0.8mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角状シートとし、これを窒素中1850℃にて、BNルツボ中で3時間加熱して焼結体を得た。焼結体の特性は表2に示す。 実施例3 AlN粉末(平均粒径1.0μm、含有酸素量1.2重量%、Alを除く金属不純物量0.1重量%以下、含有炭素量0.05重量%)に、表3に示した添加物と、焼結助剤としてY2O3を1.0重量%添加し、さらにフェノール樹脂を0.8重量%および成形バインダーとして、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)を10重量%加え、ナフサ系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて10時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティング後乾燥して、厚さ0.8mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角状シートとし、これを窒素中1850℃にて、BNルツボ中で3時間加熱して焼結体を得た。焼結体の特性は表3に示す。 実施例4 AlN粉末(平均粒径1.2μm、含有酸素量1.0重量%、Alを除く金属不純物量0.1重量%以下、含有炭素量0.03重量%)に、TiO2粉末(平均粒径0.2μm、純度99.9%)を0.5重量%、焼結助剤としてY2O3粉末を0.5重量%添加し、さらに遊離炭素源として表4に記載の種々の重量割合のグラファイト、フェノール樹脂と、成形バインダーとして、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)を10重量%加え、ナフサ系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて10時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティング後乾燥して、厚さ0.8mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角状シートとし、これを窒素中1800℃にて、BNルツボ中で5時間加熱して焼結体を得た。焼結体の特性は表4に示す。 実施例5 TiO2粉末(平均粒径0.1μm、純度99.9%)を0.5重量%含むAlN粉末を直接窒化法、還元窒化法、アルキルアルミ分解法により合成した(その特性は表5に示す)。このAlN粉末にY2O3粉末(平均粒径0.5μm、純度99.9%)を0.5重量%添加し、さらに遊離炭素源としてフェノール樹脂を1.0重量%、成形用バインダーとして、PVBを10重量%添加して、トルエン系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて5時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティング後乾燥して、厚さ0.7mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角状シートとし、これを窒素中1850℃にて、AlN製のルツボ中で3時間加熱して焼結体を得た。焼結体の特性は表5に示す。 実施例6 種々の添加物を含むAlN粉末を直接窒化法、還元窒化法、アルキルアルミ分解法により合成した(その特性を表6に示す)。このAlN粉末にY2O3粉末(平均粒径0.5μm、純度99.9%)を0.5重量%添加し、さらに遊離炭素源としてフェノール樹脂を1.0重量%、成形用バインダーとしてPVBを10重量%添加して、トルエン系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて5時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティング後乾燥して、厚さ0.7mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角形シートとし、これを窒素中1850℃にて、AlN製のルツボ中で3時間加熱して焼結体を得た。焼結体の特性は表6に示す。 実施例7 AlN粉末(平均粒径0.8μm、含有酸素量1.0重量%、Alを除く金属不純物量0.1重量%以下、含有炭素量0.03重量%)に、表7に示す種々のTi化合物粉末を添加し、さらに遊離炭素源としてフェノール樹脂を1.0重量%、成形バインダーとして、PMMAを10重量%加え、ナフサ系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて10時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティング後乾燥して、厚さ0.8mmのシートを得た。このシートを50mm角に打ち抜いて角状シートとし、これを窒素中表7に示す温度、時間で加熱して焼結した。焼結体の特性は表7に示す。 実施例8 AlN粉末(平均粒径0.8μm、含有酸素量1.0重量%、Alを除く金属不純物量0.1重量%以下、含有炭素量0.03重量%)に、平均粒径0.1μmのTiO2粉末を1.0重量%添加し、さらに遊離炭素源としてフェノール樹脂を1.0重量%、成形バインダーとして、PMMAを10重量%加え、ナフサ系溶剤中でナイロンポット、ナイロンボールを用いて10時間混合した。得られたスラリーをシート状にキャスティングし乾燥した後、50mm角に打ち抜き、厚さ0.8mmの角形シートを得た。シートは1850℃にて5時間窒素気流中で焼結した。得られた焼結体の格子常数はa軸3.111Å、c軸4.981Åでc/aは1.601とTiO2を添加しないで同一条件で作製したものと同一であった。なお熱伝導率は170W/m・Kと190W/m・Kとであった。また半値幅は2Θで0.10degでTiO2を添加しない場合の0.05degよりも大きかった。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明による窒化アルミニウム焼結体のTEM写真(倍率10,000倍)であり、AlNの結晶内にTiNの粒子が分散し、結晶粒界にAl2O3、Y2O3相が存在していることを示す。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2773416号発明の明細書を、平成11年8月27日付け審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正する。すなわち、 ▲1▼特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「六方晶系のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であるウルツ鉱構造以外の化合物粒子を、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散したことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。」を「六方晶のウルツ鉱構造を有する平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粒子内に、その平均粒径が、窒化アルミニウム粒子のそれの1/5以下であり、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaC1構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させず、微細分散した、熱伝導率が120W/m・K以上であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。」と訂正する。 ▲2▼特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2,3を削除し、以下の請求項の番号を順次繰り上げる。 ▲3▼特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項6(訂正後の請求項4)の「Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Co,Niからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物粉末」を「Ti,Zr,Hf,V,NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%」と訂正し、「加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で」を「炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素量が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で」と訂正する。 ▲4▼特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項8(訂正後の請求項6)の「Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Co,Niからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物の化合物」を「Ti,Zr,Hf,V,NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%」と訂正し、「その後の昇温段階で0.01〜50重量%の範囲の遊離炭素を形成しうる量の同炭素を形成する有機化合物とを」を「炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で」と訂正する。 ▲5▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第5頁第10〜11行の「分散させる化合物の好ましい結晶系は立方晶系であり、特にNaCl構造であることがより好ましい。」を「分散させる化合物の結晶系は、NaCl構造である。」と訂正する。 ▲6▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第5頁第19〜21行の「であるウルツ鉱構造以外の化合物粒子を、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させることなく、微細分散したものである。特に微細分散した粒子がNaCl構造をとる…化合物であることが望ましい。」を、「であり、Ti、Zr、Hf.V、NbおよびTaからなる群がら選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粒子を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、窒化アルミニウム結晶格子内に固溶させることなく、微細分散したものであり、熱伝導率が120W/m・K以上である。」と訂正する。 ▲7▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第6頁第10〜16行の「本発明の窒化アルミニウム粒子内に……その限りではない。」を、「本発明の窒化アルミニウム粒子内に微細分散させた化合物粒子は、Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物であり、NaCl構造をとるものである。またその添加量は元素換算で0.01〜5.0重量%とする。」と訂正する。 ▲8▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第6頁第22〜23行の「分散された…好ましい。」および同頁第27行の「0.01〜30重量%の範囲で、好ましくは」を削除する。 ▲9▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第6頁第29行〜第7頁第1行目の「5.0重量%の量で十分本発明の目的とする効果が得られる。」を削除する。 ▲10▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第8頁第10行の「焼結体は、熱伝導率が70W/m・K以上、」を「焼結体は、熱伝導率が120W/m・K以上、」に、同頁第12行の「さらに120W/m・K以上、さらには」を「さらに」と訂正する。 ▲11▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第8頁第24〜25行の「Ti、Zr、Hf、…の化合物粉末と、加熱により」を「Ti、Zr、Hf、V、NbおよびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物粉末を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%、炭素または加熱により」と訂正する。 ▲12▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第9頁第2〜7行の「窒化アルミニウムの…準備する工程と」を「窒化アルミニウムの前駆体である原料から合成され、窒化アルミニウムと、分散粒子として平均粒径1μm以下のTi、Zr、Hf,V、NbおよびTaからなる群がら選ばれた少なくとも1種の元素のNaCl構造をとる化合物を、その元素に換算した量で0.01〜5.0重量%と、炭素または加熱により遊離炭素を形成する有機化合物を、その後の昇温段階で遊離炭素が0.01〜5.0重量%の範囲となるような量で含む窒化アルミニウム合成粉末を準備する工程と、」と訂正する。 ▲13▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第9頁第13行の「焼結助剤となる化合物と、」を削除し、同行の「加熱により」の前に「炭素または」を追加する。さらに同頁第13〜14行の「ものである。」の後に「または必要により焼結助剤となる化合物も含む。」を追加する。 ▲14▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第9頁第26行の「同合成粉末が得られる。」を「同合成粉末を得ることもできる。」と訂正する。 ▲15▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第10頁第14行の「0.01〜30重量%の範囲で、好ましくは」を削除する。 ▲16▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の表1の試料2、5、6、7および表3の試料22、26および27、表6の試料52を削除し、表1の試料1および9(訂正後は試料5)、表4の試料31(訂正後は試料20)を比較例とし、*印を付す。さらに上記の試料削除によって、各表の試料の追い番号を訂正する。 また表4の下に「*印は比較例。」の文言を追加する。 ▲17▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の第6頁第7行の「高い程好ましい。」の後に、「言い換えれば、微細分散粒子の内の50%を越える分がAIN粒子内にあり.その残りがAINの粒界にある方が望ましい。」を追加する。 ▲18▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の表3の試料24(訂正後は試料16)以降の試料の分散粒子欄の「 〃 」を、全て試料23(訂正後は試料15)に合わせ、「粒内,粒界」と訂正する。 ▲19▼誤記の訂正を目的として、明細書の第4頁第24行の「開発法向」を「開発方向」、同第6頁第6行の「AIN粒径」を「AIN粒界」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-10-22 |
出願番号 | 特願平2-255752 |
審決分類 |
P
1
652・
531-
YA
(C04B)
P 1 652・ 121- YA (C04B) P 1 652・ 113- YA (C04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 後谷 陽一 |
特許庁審判長 |
酒井 正己 |
特許庁審判官 |
能美 知康 新居田 知生 |
登録日 | 1998-04-24 |
登録番号 | 特許第2773416号(P2773416) |
権利者 | 住友電気工業株式会社 |
発明の名称 | 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法 |
代理人 | 佐野 健一郎 |
代理人 | 上代 哲司 |
代理人 | 上代 哲司 |
代理人 | 中野 稔 |
代理人 | 佐野 健一郎 |
代理人 | 中野 稔 |