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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない E06B
管理番号 1019382
審判番号 審判1999-35016  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-01-06 
確定日 2000-07-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第2744770号発明「がらり構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 一.手続きの経緯
出願:平成6年12月15日(特願平6-312004号)
特許登録:平成10年2月6日(特許第2744770号)請求項2
無効審判請求:平成11年1月6日
答弁書:平成11年5月17日
弁駁書:平成11年9月2日
証人尋問申請書:平成11年12月28日
口頭審理陳述要領書:平成11年12月28日
口頭審理陳述要領補充書:平成12年2月3日
口頭審理・証拠調べ:平成12年2月3日(場所:福岡市 博多パークホテル 特許庁審判廷)
二.請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、平成11年1月6日付け審判請求書において、「特許第2744770号の請求項1及び2に係る特許を無効とする。審判請求の費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
その理由1として、平成11年1月6日付け審判請求書において、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであると主張している。
その理由2として、平成11年1月6日付け審判請求書において、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであると主張している。
この請求人の理由2の主張については、平成12年2月3日の口頭審理において、本件特許の請求項1及び2に係る発明と、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載のアメセフ70及びアメセフ120は同一のものであり、その構成に差異がないことを被請求人も同意したため、請求人はこの主張を撤回した。
その理由3として、平成11年9月2日付け弁駁書において、新たに甲第17号証を提出し、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第17号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであると主張している。
この請求人の理由3の主張については、平成12年2月3日の口頭審理において、請求人は理由3の主張を撤回し、提出した甲第17号証を参考資料とすることで、請求人及び被請求人は了解した。
そして、請求人は、平成11年1月6日付け審判請求書と同時に次の証拠方法を提出している。
甲第1号証:「ガラリの革命児 完全防水アメセフ」総発売元株式会社プログレス、製造元株式会社リンデン、「H6.11.2000 No.4」カタログを提出しているが、甲第1号証として提出されたカタログをみると、製造元株式会社リンデンの下に住所と電話番号のシールが貼られている。このシールは、被請求人が平成11年5月17日付け答弁書において、乙第4号証として提出した平成6年12月28日付けアメセフカタログ改竄の是正についての通知書により、請求人が本件特許出願(平成6年12月15日)以降に株式会社リンデンの住所と電話番号のシールを貼つたものであり、シールの貼られていないカタログが既に無いということなので、請求人の主張する本件特許出願前に国内で頒布された甲第1号証刊行物を「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」と呼称することで、請求人と被請求人は同意した。
甲第2号証:特許第2744770号特許公報(本件特許公報)
甲第3号証:参考比較図1(本件請求項1発明と「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載のアメセフ70との比較図)
甲第4号証:参考比較図2(本件請求項2発明と「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載のアメセフ120との比較図)
甲第5号証:株式会社太陽設計が平成10年10月15日付けでした採用証明書
甲第6号証:不二サッシ株式会社が平成10年9月10日にした施工証明書
甲第7号証:株式会社ワタナベプリンティングセンターが、公大産業株式会社宛に平成6年11月30日に出した請求書。
甲第8号証:施工現場(ミスターマックス綾羅木店)写真
甲第9号証:昭和51年審判第6095号審決公報
甲第10号証:特許第2744770号特許原簿
また、請求人は、平成11年9月2日付け弁駁書と同時に次の証拠方法を提出している。
甲第11号証:林田一男発(株)プログレス宛ファクシミリ
甲第12号証:(株)建鋼社発(株)プログレス宛ファクシミリ
甲第13号証:(株)プログレス発(株)リンデン宛送付案内書
甲第14号証:(株)プログレス発(株)リンデン宛請求書
甲第15号証:(株)リンデン発(株)プログレス宛送付案内書
甲第16号証:(株)プログレス当座勘定照合表
参考資料:「ガラリの革命児 完全防水アメセフ」製造元株式会社リンデン、総発売元株式会社プログレス、「H6.6.2000 No.3」カタログ。
三.被請求人の主張
被請求人は、平成11年5月17日付け答弁書において、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
その理由として被請求人は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願(平成6年12月15日)前に国内で頒布された事実は認められないから無効審判請求には理由がないと主張している。
また、被請求人は、仮に「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願(平成6年12月15日)前に国内で頒布された事実があったとしても、その頒布は、特許を受ける権利を有するものの意に反してなされたものであり、請求人が主張する頒布時期が平成6年11月ということであり、本件特許の出願日は意に反して頒布された時期から6ケ月以内であるから、特許法第30条第2項で規定する新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるものであるから無効審判請求には理由がないと主張している。
そして、被請求人は、平成11年5月17日付け答弁書と同時に次の証拠方法を提出している。
乙第1号証:(株)リンデン(甲)が(株)プログレス(乙)と平成5年11月10日に交わした実用新案出願28392号(リンデンスーパーガラリ)についての一手販売契約書。
乙第2号証:(株)リンデンが(株)プログレスに宛に平成8年7月2日に通知した内容証明の契約解除通知。
乙第3号証:(財)ベンチャーエンタープライズセンターが、福岡地裁第5民事部書記官に通知した調査事項の平成10年12月7日付け回答書。
乙第4号証:(株)リンデンが(株)プログレス に平成6年12月28日に通知した「アメセフカタログ改竄の是正について」という通知書。
乙第5号証:(株)プログレスが(財)九州・山口地域企業育成基金に提出した債務保証申請書。
乙第6号証:(株)プログレスが林田千代子に対して特許権に基づく差止請求権不存在確認請求を求める平成10年7月14日福岡地裁受理の訴状。
乙第7号証:林田千代子が(株)プログレスに対して特許権侵害行為差止請求を求める反訴状。
また、被請求人は、平成11年12月28日に、証人尋問申請書を提出し、当事者林田一男の当事者尋問を申請した。
四.当審の判断
1.本件特許発明
本件請求項1及び2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】壁部(W)に形成した換気口(9)に取付けて、換気が行なえるようにしたがらり構造であって、
換気口(9)中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体(10)と、同周縁支持枠体(10)の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体(11)と、同周縁支持枠体(10)の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体(12)と、同前側横羽根体(11)の後方及び後側横羽根体(12)の前方に配設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体(13)を具備し、
連通流路形成体(13)は、周縁支持枠体(10)の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部(30,31)を左右幅方向に千鳥状に立設すると共に、断面コ字状に形成し、前側に位置する流路形成柱部(30)は、コ字状開口面を後方へ向けて立設する一方、後側に位置する流路形成柱部(31)はコ字状開口面を前方へ向けて立設し、前側に位置する流路形成柱部(30)のコ字状の開口面と、後側に位置する流路形成柱部(31)のコ字状の開口面とを略面一に配置し、
しかも、流路形成柱部(30)は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体(30a)と、同柱部本体(30a)の左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した折返し片(30b,30b)と、柱本体(30a)の前面中途部より前方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(30c,30c)とを一体成形して断面コ字状に形成し、
流路形成柱部(31)は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体(31a)と同柱部本体(31a)の左右側端縁よりそれぞれ前方へ伸延させて形成した折返し片(31b,31b)と、柱部本体(31a)の前面中央部より前方へ伸延させて形成した突出片(31c)と、柱部本体(31a)の後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(31d,31d)とを一体成形して中央部に突出片(31c)を設けた断面コ字状に形成し、
更には、前側の流路形成柱部(30)と後側の流路形成柱部(31)は、左右幅方向に千鳥状に配置し、前側の流路形成柱部(30)の折返し片(30b)を、後側の流路形成柱部(31)の折返し片(31b)と突出片(31c)との中間に配置すると共に、
これら折返し片(30b,31b)と突出片(31c)の各端面を左右幅方向に伸延する同一仮想直線上に位置させて、各流路形成柱部(30,31)の折返し片(30b,30b,31b,31b)と突出片(31c)とにより折返し状に屈曲する折返し状流路(32)を形成してなるがらり構造。
【請求項2】壁部(W)に形成した換気口(9)に取付けて、換気が行なえるようにしたがらり構造であって、
換気口(9)中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体(10)と、同周縁支持枠体(10)の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体(11)と、同周縁支持枠体(10)の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体(12)と、同前側横羽根体(11)の後方及び後側横羽根体(12)の前方に配設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体(13)を具備し、
連通流路形成体(13)は、周縁支持枠体(10)の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部(30,31)を左右幅方向に立設すると共に、断面コ字状に形成し、前側に位置する流路形成柱部(30)は、コ字状開口面を後方へ向けて立設する一方、後側に位置する流路形成柱部(31)はコ字状開口面を前方へ向けて立設し、しかも、流路形成柱部(30)は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体(30a)と、同柱部本体(30a)の左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した折返し片(30b,30b)と、柱本体(30a)の前面中途部より前方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(30c,30c)とを一体成形して断面コ字状に形成し、
流路形成柱部(31)は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体(31a)と同柱部本体(31a)の左右側端縁よりそれぞれ前方へ伸延させて形成した折返し片(31b,31b)と、柱部本体(31a)の前面中央部より前方へ伸延させて形成した突出片(31c)と、柱部本体(31a)の後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(31d,31d)とを一体成形して中央部に突出片(31c)を設けた断面コ字状に形成し、
前側に位置する流路形成柱部(30)の折返し片(30b、30b)と、後側に位置する流路形成柱部(31)の折返し片(31b、31b)との中間位置に中間の流路形成柱部(40)を配置すると共に、中間の流路形成柱部(40)は、矩形板状の柱部本体(40a)と、同柱部本体(40a)の左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した両側折返し片(40b、40b)と、柱部本体(40a)の左右いずれか一側端縁より前方へ伸延させて形成した一側折返し片(40c)とを一体成形しており、更には、流路形成柱部40は、左右幅方向に交互に上下反転状態に立設することにより共用化し、平面視で左右対称形状となして配置し、しかも後方へ伸延する両側折返し片(40b)の一方が後側の流路形成柱部(31)の折返し片(31b)と突出片(31c)との中間に位置し、同折返し片(31b)が両側折返し片(40b、40b)の中間に位置すると共に、前方へ伸延する一側折返し片(40c)が前側の流路形成柱部(30)の折返し片(30b、30b)の中間に位置するように配置したことを特徴とするがらり構造。
2.対比
本件請求項1及び2に係る発明と、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載の「アメセフ70」及び「アメセフ120」として示されているがらり構造を対比すると、本件請求項1に係る発明は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の「アメセフ70」として示されているがらり構造とその構成に差異はなく、本件請求項2に係る発明は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の「アメセフ120」として示されているがらり構造とその構成に差異はない。そして、平成12年2月3日に実施した口頭審理の調書によれば、請求人と被請求人とに、本件請求項1及び2に係る発明と、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」に記載のアメセフ70及びアメセフ120は同一のものであり、その構成に差異がないという点について両者に争いはない。
3.「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」カタログが本件特許出願前に頒布されたか否かについての検討
(1)請求人の主張の根拠
請求人は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願(平成6年12月15日)前に国内で頒布されたと主張している。
その主張する根拠は、次のとおりである。
根拠1:「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の末尾の「H6.11.2000 No.4」という表記は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が平成6年11月(遅くとも平成6年11月30日)に発行されたことを示すものであり、この発行日は本件特許の出願日(平成6年12月15日)前であり、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前に国内で頒布されたことは明らかである。
根拠2:甲第5号証の採用証明書は、本件特許に対して守秘義務のない第三者である株式会社太陽設計が、「ミスターマックス綾羅木店新築工事において、平成6年11月1日以前に、別添のカタログを受領し、同時期に説明を受けた。また、当該現場に関して、遅くとも平成6年11月1日までに別紙図面にてカタログに掲載のLAS100型ガラリ(「アメセフ100」)の採用を承認した。」という内容を証明するものであり、前記証明内容の別添のカタログとは、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」のことであり、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前の平成6年11月1日までに国内で頒布されたことは明らかである。また、同様に、甲第6号証の施工証明書は、本件特許に対して守秘義務のない第三者である不二サッシ株式会社が、「ミスターマックス綾羅木店新築工事において、平成6年11月2日に、別紙カタログに記載のLAS100型ガラリ(「アメセフ100」)を購入し、現場に取付け施工を行った。」という内容を証明するものであり、前記証明内容の別紙カタログとは、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」のことであり、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前の平成6年11月2日に国内で頒布されたことは明らかである。甲第8号証は、ミスターマックス綾羅木店新築工事の施工現場の写真であり、甲第5及び6号証で証明する工事が実際に行われたことを示すものである。
根拠3:甲第7号証の株式会社ワタナベプリンティングセンター発行の公大産業株式会社(請求人の関連会社)宛の平成6年11月30日付けの請求書中の11月19日のプログレスアメセス商品案内増刷2,000とは、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の印刷代金の請求書であり、カタログの発行及び納品を済ませてから、当該費用を請求する印刷業界の取引慣習に照らせば、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の発行日が、本件特許の出願日前であることは明らかである。
(2)請求人の主張する根拠につての検討
先ず、根拠1について検討する。
「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の「H6.11.2000 No.4」の表記は、請求人の主張によれば、このカタログが平成6年11月の発行で2000部印刷され、4番目のカタログを示すものであるということであるが、カタログの発行とは、通常、商品を販売する販売者又は商品の製造者が、商品を購入してくれる第三者へ頒布することであり、あくまで、その頒布は、商品の販売戦略等を考慮して商品販売者又は商品製造者が決定するものであり、印刷業者が決定するものではない。
前記「H6.11.2000 No.4」という表記は、カタログの末尾の目立たない位置に、他の文字より小さい活字で表示されており、印刷業者、あるいはカタログ制作者にとって、複数のカタログをそれぞれ特定するための表記、つまりカタログの印刷時期、印刷部数、何番目のカタログであるかを示すものであるとするのが妥当である。
そして、請求人から、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の「H6.11.2000 No.4」の表記について、印刷業者に特別の指示をしたという主張も立証もないことから、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の「H6.11.2000 No.4」という表記のみをもって、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前に国内で頒布されたという請求人の主張は採用できないものである。
次に、根拠2について検討する。
請求人は、甲第5号証の採用証明書中の「別添のカタログ」、甲第6号証の施工証明書中の「別紙カタログ」とは、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」であると主張している。
しかし、甲第5号証の採用証明書及び甲第6号証の施工証明書には、「別添のカタログ」及び「別紙カタログ」が添付されていない。
甲第5号証の採用証明書及び甲第6号証の施工証明書で採用を決め、購入したがらりという商品は、LAS100型ガラリ(「アメセフ100」)というものである。
LAS100型ガラリ(「アメセフ100」)という商品は、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」カタログに記載されているが、請求人が、平成11年9月2日付け弁駁書と同時に提出した参考資料:「ガラリの革命児 完全防水アメセフ」製造元株式会社リンデン、総発売元株式会社プログレス、「H6.6.2000 No.3」カタログにも、その構成が全く同じであるLAS100型ガラリ(「アメセフ100」)という商品が記載されおり、「別添のカタログ」の添付のない甲第5号証の採用証明書の「別添のカタログを受領し、同時期に説明を受けた。また、当該現場に関して、遅くとも平成6年11月1日までに別紙図面にてカタログに掲載のLAS100型ガラリ(「アメセフ100」)の採用を承認した。」という内容中の「別添カタログ」とは、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」なのか、「参考資料」なのか不明であり、同じく、「別紙カタログ」の添付のない甲第6号証の施工証明書の「別紙カタログに記載のLAS100型ガラリ(「アメセフ100」)を購入し、現場に取付け施工を行った。」という内容の「別紙カタログ」とは、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」なのか、「参考資料」なのか不明である。また、甲第8号証は、本件請求項1及び2発明とは異なる構成の「アメセフ100」というがらり構造の施工現場写真である。
したがって、請求人の甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証を根拠とする、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が本件特許出願前に国内で頒布されたという請求人の主張は採用することができないものである。
続いて、根拠3について検討する。
請求人の甲第7号証の請求書中の平成6年11月19日のプログレスアメセス商品案内増刷数量2,000代金300,000という記載が、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の印刷代金の請求書であり、カタログの発行及び納品を済ませてから、当該費用を請求する印刷業界の取引慣習に照らせば、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の発行日が、本件特許の出願日前であることは明らかであるという主張は、プログレスアメセフのカタログは、「参考資料」で示されるように複数存在し、甲第7号証に記載されたものがどのカタログの代金の請求書なのか不明であり、仮に、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」の代金の請求書だとしても、単に「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が印刷された事実を示すに過ぎず、甲第7号証の請求書のみをもって、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前に国内で頒布されたという請求人の主張は採用できないものである。
また、請求人の主張する根拠1〜3を総合して検討しても、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前に頒布されたものとは認めることができない。
なお、被請求人の特許法第30条第2項についての主張についての検討は、前記のように、「甲第1号証のシールが貼られていない当初のもの」が、本件特許出願前に頒布されたとする理由1の主張は認めるられないので行わない。
4.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1及び2に係る特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-04-06 
結審通知日 2000-04-21 
審決日 2000-05-08 
出願番号 特願平6-312004
審決分類 P 1 112・ 113- Y (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 鈴木 公子
幸長 保次郎
登録日 1998-02-06 
登録番号 特許第2744770号(P2744770)
発明の名称 がらり構造  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 平野 一幸  
代理人 松尾 憲一郎  
復代理人 武末 昌秀  

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