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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  G01N
管理番号 1020268
異議申立番号 異議1998-71771  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-15 
確定日 2000-07-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第2664319号「空燃比センサ」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。  
結論 特許第2664319号の特許を取り消す。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第2664319号の発明は、特願昭60-19982号(昭和60年2月6日出願)の発明の一部を新たに平成4年12月4日に出願したもので、平成9年6月20日に設定登録され、その後、申立人トヨタ自動車株式会社から特許異議申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成11年2月1日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由がなされた。

2 訂正の適否
(1)訂正請求
特許権者が求める訂正は次の訂正事項a〜bである。
[訂正事項a]
特許請求の範囲の記載、すなわち
「【特許請求の範囲】
1.袋管状のジルコニア固体電解質と、前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極と、前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極と、前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体とを備えた検出部と、前記固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を600℃以上に加熱するためのヒータと、前記検出部を駆動するための駆動回路部とから構成された空燃比センサにおいて、前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段を有し、前記第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定することを特徴とする空燃比センサ。」を、
「【特許請求の範囲】
1.袋管状のジルコニア固体電解質と、前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極と、前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極と、前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体とを備えた検出部と、前記固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を670℃以上750℃未満に加熱するためのヒータと、前記検出部を駆動するための駆動回路部とから構成された空燃比センサにおいて、前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段と前記電流に応じて前記第一の電極と前記第二の電極との間の電圧を変化させる手段とを有し、前記第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定することを特徴とする空燃比センサ。」
と訂正する。
[訂正事項b]
明細書【0014】の「600℃以上に加熱する」を「670℃以上750℃未満に加熱する」と訂正し、「前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段を有し、」を「前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段と前記電流に応じて前記第一の電極と前記第二の電極との間の電圧を変化させる手段とを有し、」と訂正する。
[訂正事項c]
明細書【0054】の「空燃比」を「空燃比(λ=0.5〜λ=1.5)」と訂正する。
(訂正後の発明)
訂正後の発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものと認められる
「袋管状のジルコニア固体電解質と、前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極と、前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極と、前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体とを備えた検出部と、前記固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を670℃以上750℃未満に加熱するためのヒータと、前記検出部を駆動するための駆動回路部とから構成された空燃比センサにおいて、前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段と前記電流に応じて前記第一の電極と前記第二の電極との間の電圧を変化させる手段とを有し、前記第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定することを特徴とする空燃比センサ。」
(先願発明)
これに対して、当審が訂正拒絶理由通知において示した、本件出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願昭59-268130号(特開昭61-144563号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次のとおりの発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
「この発明による空燃比検出方法は、酸素イオン伝導性固体電解質の表面に、一方が大気に接触しかつ他方が気体の拡散・流動を制御する制御部を介して被測定ガスに接触する一対の多孔性電極を有する酸素センサを用い、前記一対の電極間に電流iを供給して、前記電極間電圧を所定電圧eと電流iに酸素センサの内部抵抗値にほぼ等しい所定係数rを乗じた値irとの和e+irに保ち、前記電流iの値から被測定ガス中の酸素濃度あるいは一酸化炭素濃度を測定することにより空燃比を検出するようにしたことを特徴としている。
この発明において使用される酸素センサの構造は特に限定されず、酸素イオン伝導性固体電解質、一対の多孔性電極、気体の拡散・流動を制御する制御部等を構成する材質においても、従来よりこの種の酸素センサにおいて使用される各種の素材の中から適宜選んで採用されるものである。」(2頁左下欄19行〜右下欄16行)
「第1図はこの発明の一実施例を示す図である。第1図において、10は酸素センサであり、この酸素センサ10は、酸素イオン伝導性固体電解質1の表面に大気側電極2と被測定ガス側電極3とが設けてあり、大気側電極2は大気に接触していると共に、被測定ガス側電極3は気体の拡散・流動を制御する制御部としての拡散層4を介して被測定ガスに接触している構造を有するものである。
この酸素センサ10において、被測定ガス側電極3には定電圧V1が結線してあり、大気側電極2には2次の低域通過フィル夕を構成する演算増幅回路が結線してある。この場合、大気側電極2は演算増幅器5の反転入力端子(-)に結線してあると共に、出力電圧V0が抵抗Rを介して結線してあって、電流iが一対の電極2,3間に供給されるようにしてある。一方、演算増幅器5の非反転入力端子(+)にはV1+eが抵抗R2を介して入力してあると共に、出力電圧V0が抵抗R1を介して入力してあって正帰還がなされている。」(3頁左上欄11行〜右上欄11行)
(対比・判断)
先願発明における「酸素イオン伝導性固体電解質1」、「大気側電極2」、「被測定ガス側電極3」、「拡散層4」、「酸素センサ10」は、それぞれ、本件発明の構成要件中の「袋管状のジルコニア固体電解質」、「前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極」、「前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極」、「前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体」及び「検出部」に相当し、先願発明における演算増幅器等からなる回路は訂正後の発明の「駆動回路部」に相当することが認められる。
また、先願発明の駆動回路部の「演算増幅器5」は、訂正後の発明の「前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段」に相当し、非反転入力端子(+)に接続された「抵抗R2」と出力電圧V0からの帰還「抵抗R1」とは、「前記電流に応じて前記第一の電極と前記第二の電極との間の電圧を変化させる手段」に相当し、被測定ガス側電極3に結線された「定電圧V1」は、「第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定する」ものと認められる。
したがって、訂正後の発明と先願発明とを対比すると、両者は、
「袋管状のジルコニア固体電解質と、前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極と、前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極と、前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体とを備えた検出部と、前記検出部を駆動するための駆動回路部とから構成された空燃比センサにおいて、前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段と前記電流に応じて前記第一の電極と前記第二の電極との間の電圧を変化させる手段とを有し、前記第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定することを特徴とする空燃比センサ。」
で一致し、訂正後の発明が「前記固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を670℃以上750℃未満に加熱するためのヒータ」を備えているのに対して、先願発明は固体電解質の加熱について言及するところがない点で一応相違する。
しかしながら、袋管状のジルコニア固体電解質を用いたセンサにおいて、固体電解質の内部に、固体電解質を加熱するためのヒータを備えることは周知慣用の技術である(特開昭58-143108号公報(以下、「周知例1」という。)、特開昭58-19553号公報(以下、「周知例2」という。)、特開昭58-48749号公報(以下、「周知例3」という。)、特開昭59-163556号公報(以下、「周知例4」という。)参照)。
また、その加熱温度として「650〜700℃以上」(周知例1)「700〜750℃」(周知例2)「650〜700℃以上」(周知例3)「約650℃以上」(周知例4)が開示され、いずれの例においても700℃を温度範囲に含んでいるいることを考慮すれば、加熱温度を700℃程度にすることは当業者にとってごく常識的な温度設定であると認められる。
そうであるなら、固体電解質の内部に固体電解質を加熱するためのヒータを備えること、及びヒータの加熱温度を700℃程度とすることは、当業者にとっては先願明細書等に記載されているに等しい事項といわざるをえない。
このように、先願発明は、固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を700℃程度に加熱するためのヒータを備えてなる空燃比センサを開示するものであり、訂正後の発明の「670℃以上750℃未満」の温度範囲は700℃を含むものであるから、訂正後の発明は先願発明を包含するもので、先願発明と実質的に同一である。
特許権者は、訂正後の発明は今までのリーンセンサの測定範囲(λ>1.00)とは全く異なるλ=0.50からλ=1.00という範囲をも測定対象とし、さらに電圧を変化させるというものであるから、定電圧リーンセンサの加熱温度をそのまま適用してよいとはいえないと主張する。
しかしながら、先願発明は、訂正後の発明と同様にリーン領域もリッチ領域をも測定対象とするもので、かつ電圧を変化させるものである。そして、リーン領域における測定においてはセンサを700℃程度に加熱することはごく常識的なものであり、またリッチ領域(λ<1.00)におけるセンサも加熱して動作させることが周知慣用である(例えば特開昭53-66292号公報には、リッチ領域で動作するセンサに関し、「この可燃性ガス環境MEの温度は、300℃〜1000℃すなわち慣用の固体電解質電気化学セルの動作温度範囲内にあるとしよう。周囲温度状態が適切でない場合には、電気化学セル20を別途に加熱する手段を用いることができる。可燃物センサ10を内部加熱するための代表的な実例は米国特許第 3,546,086号明細書に記載されている。」(3頁右上欄1〜9行)と記載されている。)から、リーン領域及びリッチ領域を測定対象とするものについて、700℃程度の加熱温度とすることは、ごく常識的な温度設定であるといわざるをえない。したがって、特許権者の主張は採用できない。
以上のとおり、訂正後の発明は、本件出願の日前の他の特許出願であってその出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、その発明をした者が本件の発明者と同一の者でもなく、本件出願の時に本件出願の出願人と当該他の特許出願の出願人とが同一の者でもないから、特許法29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、この訂正は、特許法120条の4第3項において準用する126条4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

(3)異議申立についての判断
(本件発明)
本件特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「袋管状のジルコニア固体電解質と、前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極と、前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極と、前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体とを備えた検出部と、前記固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を600℃以上に加熱するためのヒータと、前記検出部を駆動するための駆動回路部とから構成された空燃比センサにおいて、前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段を有し、前記第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定することを特徴とする空燃比センサ。」
(先願発明)
当審が通知した取消理由に引用した特願昭59-268130号(特開昭61-144563号)(前述の訂正拒絶理由に引用した先願と同じ)の願書に最初に添付された明細書又は図面には、次のとおりの発明が記載されている。
「袋管状のジルコニア固体電解質と、前記固体電解質の大気雰囲気側に形成した第一の電極と、前記固体電解質の排気雰囲気側に形成した第二の電極と、前記第二の電極上に形成した拡散抵抗体とを備えた検出部と、前記検出部を駆動するための駆動回路部とから構成された空燃比センサにおいて、前記駆動回路部は前記第一の電極と前記第二の電極との間に双方向に電流を流す手段を有し、前記第二の電極のポテンシャル電位を前記駆動回路のグランドレベルより高い値に設定することを特徴とする空燃比センサ。」
(対比・判断)
本件発明と先願発明とを対比すると、本件発明が、「固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を600℃以上に加熱するためのヒータ」を備えるのに対して、先願発明は、固体電解質を加熱するヒータについて言及するところがない点で一応相違するが、先に述べたように、ジルコニア固体電解質を用いたセンサにおいては、固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を加熱するためのヒータを用いることは周知慣用であるし、加熱温度を600℃以上とすることもごく常識的なものであるから、固体電解質の内部に設けられ、前記固体電解質を600℃以上に加熱するためのヒータを備える点は、当業者にとっては記載されているに等しい事項である。
したがって、本件発明は先願発明を包含するものであり、本件発明は先願発明と実質的に同一であるといわざるをえない。
(むすび)
以上のとおりであるから、本件発明は、本件出願の日前の他の特許出願であってその出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、その発明をした者が本件発明の発明者と同一の者でもなく、本件出願の時に本件出願の出願人と当該他の特許出願の出願人とが同一の者でもないから、本件発明についての特許は特許法29条の2の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-18 
出願番号 特願平4-325179
審決分類 P 1 651・ 161- ZB (G01N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 後藤 千恵子能美 知康  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 住田 秀弘
松本 邦夫
登録日 1997-06-20 
登録番号 特許第2664319号(P2664319)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 空燃比センサ  
代理人 土屋 繁  
代理人 石田 敬  
代理人 作田 康夫  
代理人 西山 雅也  
代理人 戸田 利雄  
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