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審決分類 |
審判 審判種別コード:65 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 G01N 審判 審判種別コード:65 1項3号刊行物記載 G01N 審判 審判種別コード:65 2項進歩性 G01N |
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管理番号 | 1020269 |
異議申立番号 | 異議1998-72821 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-10-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-06-02 |
確定日 | 2000-07-19 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 特許第2716103号「イムノアッセイにおける誤結果除去方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2716103号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 |
理由 |
(1)手続の経緯 本件特許第2716103号の発明は、平成4年(1992)7月23日(パリ条約による優先権主張、1991年7月26日)に国際出願され、平成9年11月7日に設定登録され、その後、ヤマサ醤油株式会社、東洋紡績株式会社、内山忠より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年6月1日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内に応答がなかったものである。 (2)訂正の適否 (訂正明細書の特許請求の範囲記載の発明) 「1)捕獲抗体、免疫反応性抗体断片接合体からなるデテクター抗体および未重合ポリクローナルIgGを被検体の有無を検査しようとする検体と反応させることより成る、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を実質的に除去する方法。 2)免疫反応性断片がFab、Fab′またはF(ab′)2より成る群より選択される請求項1記載の方法。 3)捕獲抗体、免疫反応性抗体断片接合体および未重合ポリクローナルIgGがマウス、ラット、ウサギ、ヤギまたはウマより成る群より選択される生物種から調製されたものである請求項1記載の方法。 4)被検体がクレアチンキナーゼのMBイソエンザイム(CKMB)、TSHまたはhCGより成る群より選択される請求項1記載の方法。 5)未重合ポリクローナルIgGが捕獲抗体および免疫反応性抗体断片接合体と同種に由来する請求項1記載の方法。」 (引用刊行物記載の発明) 訂正明細書の請求項1ないし5に係る発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(Arch Pathol Lab Med,Vol112,p901-907)には、 (イ)Fab′酵素抗体とF(ab′)2固相化ビーズを用いたアッセイに使用した抗体と同種の血清またはIgGを添加することによりイムノアツセイの測定上の妨害(偽陽性の増加)が抑制できることから、偽陽性などの誤結果をもたらすイムノアッセイ上の妨害は被検体中の抗イムノグロブリン抗体によって起こること、 (ロ)抗原抑制実験などから被検体中の抗イムノグロブリン抗体は抗Fc特異的抗体であり、イムノアッセイに使用する抗体としてFab’またはF(ab’)2を使用することでイムノアッセイの測定上の妨害は取り除くとができること、および (ハ)イムノアッセイに使用する抗体としてFab’またはF(ab’)2を使用することでイムノアッセイの測定上の妨害は最小化することができるが、それでも妨害を完全に取り除けない場合がある。この現象は被検体中の抗イムノグロブリン抗体として抗Fab’特異的抗体を含むことに起因し、マウスIgGやそのF(ab’)2断片を使用することで抗Fab’特異的抗体による妨害を抑制できること、 (ニ)上記実験はhCG、THS、CK-MBを被検体とするアッセイにおいて行われたこと、 が記載されている。 (対比・判断) 訂正明細書の請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、後者のF(ab′)2固相化ビーズは「捕獲抗体」に、Fab′酵素抗体は「免疫反応性抗体断片接合体からなるデテクター抗体」に相当するから、両者は捕獲抗体、免疫反応性抗体断片接合体からなるデテクター抗体およびIgGを被検体の有無を検査しようとする検体と反応させることより成る、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を実質的に除去する方法である点で一致し、両抗体とともに反応させるIgGが、前者では未重合ポリクローナルIgGであるのに対し、後者では単にIgGであると記載されている点で相違する。 しかしながら、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を除去するために、IgG同様使用すると有効な血清に含まれているIgGは、特に熱処理などを行わない限り、未重合ポリクローナルIgGであるから、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を除去するために使用するIgGとして、未重合ポリクローナルIgGを使用することに格別の困難性は認められない。 また、請求項2に係る発明の免疫反応性断片がFab、Fab′またはF(ab′)2より成る群より選択される点および請求項3に係る発明の捕獲抗体、免疫反応性抗体断片接合体および未重合ポリクローナルIgGがマウス、ラット、ウサギ、ヤギまたはウマより成る群より選択される生物種から調製されたものである点は、その中の選択肢は刊行物1に記載されているものを含んでおり、記載外の選択肢も、妨害が抗Fc特異的抗体に起因することが刊行物1に記載されている以上、Fab′およびF(ab′)2同様、Fc部分を含まないFabを使用したり、マウス同様に免疫動物として周知の他の動物を使用することは、当業者が適宜なし得る程度のことである。そして、請求項4に係る発明の被検体がクレアチンキナーゼのMBイソエンザイム(CKMB)、TSHまたはhCGより成る群より選択される点および請求項5に係る発明の未重合ポリクローナル1gGが捕獲抗体および免疫反応性抗体断片接合体と同種に由来するする点はいずれも刊行物1に記載されている。 以上のとおり、訂正明細書の請求項1ないし5に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (まとめ) したがって、本件訂正請求は、特許法120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正請求は認められない。 (3)特許異議申立てについての判断 (本件発明) 本件特許の請求項1ないし請求項5に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲記載の次の事項によって特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】デテクター抗体としての免疫反応性抗体断片接合体および未重合IgGを被検体の有無を検査しようとする検体と反応させることより成る、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を実質的に除去する方法。 【請求項2】免疫反応性断片がFab、Fab′またはF(ab′)2より成る群より選択される請求項1記載の方法。 【請求項3】生物種がマウス、ラット、ウサギ、ヤギまたはウマより成る群より選択される生物種から調製されたものである請求項1記載の方法。 【請求項4】抗原がCKMB、TSHまたはhCGより成る群より選択される請求項1記載の方法。 【請求項5】未重合IgGが捕獲抗体および接合体と同種に由来する請求項1記載の方法。」 イ.特許法第29条違反について (i)刊行物1に基づいて 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(Arch Pathol Lab Med,Vol112,p901-907)には、上記(2)に記載した事項が記載されている。 本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、後者Fab′酵素抗体は「デテクター抗体としての免疫反応性抗体断片接合体」に相当するから、両者はデテクター抗体としての免疫反応性抗体断片接合体およびIgGを被検体の有無を検査しようとする検体と反応させることより成る、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を実質的に除去する方法である点で一致し、デテクター抗体とともに反応させるIgGが、前者では未重合IgGであるのに対し、後者では単にIgGであると記載されている点で相違するだけであるから、上記(2)に記載した理由で、干渉抗体の存在によるイムノアッセイにおける誤結果を除去するために使用するIgGとして、未重合IgGを使用することに格別の困難性は認められない。 また、請求項2ないし5に係る発明の上記相違点以外の構成についても、上記(2)に記載したように、当業者が適宜なし得る程度のこと、あるいは刊行物1に記載された事項である。 以上のとおり、本件請求項1ないし5に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (ii)刊行物2〜4に基づいて 本件請求項1ないし3に係る発明は、当審が通知した取消理由1(B)に記載した理由で、引用した刊行物2(国際公開WO91/06857号公報)に記載された発明と同一である。 また、本件請求項4および5に係る発明は、同じく当審が通知した取消理由1(B)に記載した理由で、引用した刊行物2、刊行物3(「生化学事典」1984年株式会社東京化学同人発行、「IgG」の項および「グロブリン」の項)および刊行物4(特開昭61-65162号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (iii)刊行物5に基づいて 本件特許の請求項1、2、3、5の各発明は、当審が通知した取消理由1(C)に記載した理由で、引用した刊行物5(特開平1-254869号公報)に記載された発明と同一であり、同請求項4の発明は、上記刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (iv)以上のとおりであるから、本件請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第1項3号および同第2項の規定に違反してなされたものである。 ロ.36条違反について 本件特許明細書は、当審が通知した取消理由1(D)に記載した理由で、請求項1ないし5の発明について、記載不備があり、本件請求項1ないし5の各発明に係る特許は、特許法36条の要件を満たしていない、出願に対してされたものである。 (むすび) したがって、本件請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第1項第2号および第4号に該当するので、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-03-01 |
出願番号 | 特願平5-503596 |
審決分類 |
P
1
65・
532-
ZB
(G01N)
P 1 65・ 113- ZB (G01N) P 1 65・ 121- ZB (G01N) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 亀田 宏之 |
特許庁審判長 |
後藤 千恵子 |
特許庁審判官 |
植野 浩志 伊坪 公一 |
登録日 | 1997-11-07 |
登録番号 | 特許第2716103号(P2716103) |
権利者 | デイド・ケミストリイ・システムズ・インコーポレーテツド |
発明の名称 | イムノアッセイにおける誤結果除去方法 |
代理人 | 佐藤 辰男 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 西村 公佑 |
代理人 | 高木 千嘉 |
代理人 | 安富 康男 |
代理人 | 佐藤 明子 |
代理人 | 古谷 信也 |
代理人 | 玉井 敬憲 |