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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1020326
異議申立番号 異議1998-73478  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-07-21 
確定日 1999-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2700793号「易崩壊性顆粒配合化粧料」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2700793号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 [I]手続の経緯
特許第2700793号の発明についての出願は、昭和63年1月25日に特許出願され、平成9年10月3日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、市橋俊一郎及び安田孝之より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年5月17日に訂正請求がなされたものである。
[II]訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者は、以下のa〜bの訂正を請求する。
訂正a
特許請求の範囲の「【請求項1】粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料。」を、
「【請求項1】粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料。」と訂正する。
訂正b
明細書第4頁3〜7行目の
「すなわち、本発明は、粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料を提供するものである。」を
「すなわち、本発明は、粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料を提供するものである。」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正aは、顆粒の造粒法を、明細書記載のものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、新規事項の追加に該当しない。
訂正bは、特許請求の範囲の記載内容に発明の詳細な説明の記載を整合させるものといえるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記いずれの訂正も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ.独立特許要件
上記訂正aにより訂正された請求項1〜2に係る発明は、後記[III]で示した内容から明らかなように、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[III]特許異議の申立てについて
ア.本件発明
本件発明は、訂正した明細書の特許請求の範囲に記載された、以下のとおりのものである。
【請求項1】粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料。
【請求項2】化粧料用水不溶性粉体がタルク及び/又はイオウ末である第1項記載の易崩壊性顆粒配合化粧料。
イ.申立ての理由の概要
これに対し、特許異議申立人市橋俊一郎(以下、申立人Aという。)は、証拠として
甲第1号証:特開昭60-222405号公報
甲第2号証:特開昭59-59796号公報
甲第3号証:ハンドブック-化粧品・製剤原料-改訂版、昭和52年2月1日、日光ケミカルズ株式会社、日本サーファクタント工業株式会社、p144〜147
甲第4号証:化粧品原料基準 第二版注解I、薬事日報社、1984年、p75〜78
を提示し、以下の2点を主張している。
1)本件請求項1〜2に係る発明は、甲第1〜2号証の記載に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
2)本件明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、本件出願は特許法第36条に規定する要件を満たしていない。
また、特許異議申立人安田孝之(以下、申立人Bという。)は、証拠として
甲第1号証:特開昭61-69708号公報
甲第2号証:フレグランス ジャーナルNo.80,(昭和61年9月25日発行)(Vol.14,No.5)、p27〜33
甲第3号証:フレグランス ジャーナルNo.80,(昭和61年9月25日発行)(Vol.14,No.5)、p15〜22
甲第4号証:特開昭62-243699号公報
甲第5号証:特開昭59-59796号公報
甲第6号証:フレグランス ジャーナルNo.73,(昭和60年7月25日発行)(Vol.13,No.4)、p7
甲第7号証:フレグランス ジャーナルNo.77,(昭和61年3月25日発行)(Vol.14,No.2)、p89〜94
甲第8号証:化粧品原料基準第二版注解(1984年8月1日発行)p75-78,111-113,647-650,672-675,933-937
甲第9号証:日本汎用化粧品原料集(1985年10月25日)、p12,48,68〜69,81,122,142,174〜175,177,202
を提示し、本件請求項1〜2に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、若しくは甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に,発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。
ウ.判断
そこで、これら特許異議申立人の主張について、以下検討する。
(申立人Aの1)の主張について)
甲第1号証には、耐油性結合剤により造粒された顆粒を配合することを特徴とする皮膚外用剤が記載されており、使用中に徐々に顆粒が小さくなっていく必要があるという知見に基づいた発明であること、造粒される物質としてタルクがあること、造粒される物質の粒径は0.1mm以下であること耐油性結合剤としてポリアクリル酸誘導体などの水溶性高分子があること、結合剤を水又は水を主成分とする溶媒に溶解して、例えば流動造粒法あるいは攪拌造粒法などにより造粒を行うこと、造粒された顆粒の大きさは粒径が0.05〜2.0mmであることが記載されている。
甲第2号証には、微細に分割された研磨性物質の凝集塊及びこの種の物質を凝集させるための有機バインダーで構成される研磨剤を含むことを特徴とするすりみがきクリーニング組成物が記載され、その実施態様として、化粧品として許容される基剤中に5〜60重量%の研磨剤が含まれていることを特徴とする、皮膚クレンジング組成物が記載されており、研磨性物質としてタルクなどの鉱物が記載され、有機バインダーとしてアルキルアクリルエステルが記載され、バインダーの溶液又はエマルションを用いて鉱物を膨潤させたスラリーを作り、次に熱感燥によって溶剤又は水を除去し、凝集塊を得て、これを所望の粒径に粉砕して研磨剤を製造することが記載されている。
甲第3号証には、カルボキシビニル-ポリマーがアクリル酸の共重合体であることが記載されている。
甲第4号証には、イオウ末が、にきび治療用クリーム等に配合される水不溶性の薬剤粉末であることが記載されている。
ここで、本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載のものとを対比すると、両者は、粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料である点で一致し、顆粒の粒径も重複するものであるが、本件請求項1に係る発明では、上記アクリル系ポリマーがエマルジョンの形で使用されるのに対し、甲第1号証記載のものでは、水溶液の形で使用される点、及び、本件請求項1に係る発明のアクリル系ポリマーはエマルジョンを形成することから水不溶性のものであるところ、甲第1号証記載のもので用いるポリアクリル酸誘導体は水溶性である点で相違する。
この点について、申立人Aは、甲第1号証記載のものと甲第2号証記載のものとが技術分野や課題が共通することからみて、甲第1号証記載の顆粒を調製するに際して、水溶性アクリル系ポリマーに代えて甲第2号証記載のアクリル系ポリマーのエマルジョンを結合剤として適用して本件発明を構成することは、当業者にとって容易であり、水溶性アクリル系ポリマーに代えてアクリル系ポリマーのエマルジョンを用いたことによって、格別の効果が奏せられたとは、本件明細書の記載からは認められない旨主張する。
しかしながら、特許権者が提出した平成11年7月15日付け説明書の記載からみて、本件請求項1に係る発明の化粧料は、水溶性のカルボキシビニルポリマーを水とともに用いて製造した顆粒を配合したものに比較して、顆粒の肌あたり、肌へののびひろがりなどの明細書記載の作用効果の点で、著しく優れているものといえる。
してみれば、本件請求項1に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明の化粧料用水不溶性粉体をタルクなどに限定したものであるから、本件請求項1に係る発明についての理由と同様の理由により、甲第1〜2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立人Aの1)の主張は採用できない。
(申立人Aの2)の主張について)
申立人Aは、本件明細書の記載不備の理由として、本件発明においては粉体の粒径を0.1mm以下と規定するが、本件明細書の実施例には、使用されたタルク及びイオウ末の粒径が何ら記載されていないことにより、発明の詳細な説明の欄が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない点を挙げている。
しかしながら、本件発明においては、粉体の粒径は0.1mm以下と規定されているのであるから、実施例で使用されているタルク及びイオウ末の粒径もまた0.1mm以下であるものと解すればよく、粒径0.1mm以下のタルクやイオウ末を調製し、実施例の記載に従って使用すれば、当業者は本件発明を実施することができるものといえる。
したがって、本件明細書には、申立人Aが主張するような記載上の不備はない。
よって、申立人Aの2)の主張は採用できない。
(申立人Bの主張について)
甲第1号証には、体質顔料の表面をアクリル樹脂の1種又は2種以上により被覆せしめた被覆顔料の1種又は2種以上を配合することを特徴とする化粧料が記載されており、体質顔料としてタルクが記載されている。
甲第2号証には、アクリル超微粉体と粉体とを混合すると、軽く混ぜ合わせるだけの混合操作により、粉体の粒度を損なうことなく個々の粉体粒子表面にアクリル超微粒子が均一に付着分散することが記載されている。
甲第3号証には、ポリメチルメタクリレートを用い、スチレン系樹脂やナイロン12球を表面改質したことが記載されている。
甲第4号証には、粉末とマイクロカプセルからなる造粒物および/または粉末とマイクロカプセルと結合剤からなる造粒物を配合することを特徴とする枠ねり石けんが記載されており、粉末としてタルクが、結合剤としてポリアクリル酸誘導体等の高分子類が記載されている。
甲第5号証には、微細に分割された研磨性物質の凝集塊及びこの種の物質を凝集させるための有機バインダーで構成される研磨剤を含むことを特徴とするすりみがきクリーニング組成物が記載され、その実施態様として、化粧品として許容される基剤中に5〜60重量%の研磨剤が含まれていることを特徴とする、皮膚クレンジング組成物が記載されており、研磨性物質としてタルクなどの鉱物が記載され、有機バインダーとしてアルキルアクリルエステルが記載され、バインダーの溶液又はエマルションを用いて鉱物を膨潤させたスラリーを作り、次に熱感燥によって溶剤又は水を除去し、凝集塊を得て、これを所望の粒径に粉砕して研磨剤を製造することが記載されている。
甲第6号証には、中空多孔質粉体「エアリーパウダー」は、高分子化合物のアクリル系ポリマーでできており、粉体でありながら、一見液体ともみえるほどの流動性があること、また、超薄膜マイクロカプセル「パウダリーオイル」は化粧をするときに簡単に壊れても、製造時にはまったく壊れないマイクロカプセルで、粒子膜の主成分はアクリル系ポリマーであることが記載されている。
甲第7号証には、アクリル系ポリマーを用いたマイクロカプセルは、カプセルの構造がたて-よこ等の力に対しては強いがななめの力に対しては弱い、すなわち、生産に必要な攪拌では破壊されないが、用時(たとえばマッサージ中)の力では破壊されて皮膚へ必要な物質を供与できる特質を有するものであることが記載されている。
甲第8号証には、イオウ、雲母チタン、結晶セルロース、タルクの性状や用途などが記載されている。
甲第9号証は、化粧品原料に関するもので、タルク、イオウ、ポリアクリル酸エチルなどが挙げられている。
ここで、本件請求項1に係る発明と甲第1〜3号証に記載されたものとを対比すると、両者は、化粧料用水不溶性粉体とアクリル系ポリマーを含む粒子を配合した化粧料である点で一致するものの、かかる粒子の製造方法に何ら共通するところがなく、また、本件請求項1に係る発明の顆粒の性質である易崩壊性について甲第1〜3号証には何らの記載もない。
したがって、本件請求項1に係る発明と甲第1〜3号証に記載されたものは、配合される粒子の製造方法及び性質の点で異なるものである。
次に、本件請求項1に係る発明と甲第4号証に記載されたものとを対比すると、両者は、化粧料用水不溶性粉体とアクリル系ポリマーを含む粒子を配合した化粧料である点で一致するものの、後者は、さらにマイクロカプセルを必須成分として配合するものであり、また、本件請求項1に係る発明の顆粒の性質である易崩壊性について甲第4号証には何らの記載もない。
したがって、本件請求項1に係る発明と甲第4号証に記載されたものは、配合される粒子の成分、製造方法及び性質の点で異なるものである。
次に、本件請求項1に係る発明と甲第5号証に記載されたものとを対比すると、両者は、化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて得た粒子を配合した化粧料である点で一致し、上記粉体の粒径及び上記粒子の粒径も重複するものの、本件請求項1に係る発明の粒子が、流動造粒法又は攪拌造粒法によって造粒した顆粒であって、薬効剤や有効成分の配合を視覚的に顆粒として強調するためのものであるのに対し、甲第5号証記載の粒子は、エマルションを用いて鉱物を膨潤させたスラリーを作り、次に熱感燥によって溶剤又は水を除去し、凝集塊を得て、これを所望の粒径に粉砕して製造した研磨剤である。
したがって、本件請求項1に係る発明と甲第5号証に記載されたものとは、配合される粒子の製造方法及び用途の点で異なるものである。
次に、本件請求項1に係る発明と甲第6〜7号証に記載されたものとを対比すると、甲第6及び7号証に記載のものは、いずれも、アクリル系ポリマーでできた多孔質粉体やマイクロカプセルに関するものであり、本件請求項1に係る発明で用いる化粧料用水不溶性粉体を組み合わせることについて何らの記載もない点で、本件請求項1に係る発明と明らかに相違する。
結局、本件請求項1に係る発明と甲第1〜7号証に記載されたものとは、少なくとも、配合される粒子の製造方法の点で、異なるものである。してみれば、かかる甲第1〜7号証に、種々の化粧品原料の性状や用途などが記載されているにとどまる甲第8〜9号証を組み合わせても、当業者が本件請求項1に係る発明に容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明ではなく、また甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明の化粧料用水不溶性粉体をタルクなどに限定したものであるから、本件請求項1に係る発明についての理由と同様の理由により、甲第1〜7号証に記載された発明ではなく、また甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、申立人Bの主張は採用できない。
[IV]むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜2に係る特許を取り消すことができない。
また、請求項1〜2に係る特許について、他に取消理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
易崩壊性顆粒配合化粧料
(57)【特許請求の範囲】
1.粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料。
2.化粧料用水不溶性粉体がタルク及び/又はイオウ末である第1項記載の易崩壊性顆粒配合化粧料。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は顆粒を配合した化粧料に関し、更に詳細には、組成物中においては顆粒として存在するが、手や皮膚の上に取り、使用時に力を加えれば容易に崩壊する、易崩壊性顆粒を含有する化粧料に関する。
〔従来の技術及びその課題〕
化粧料中には従来から種々の薬効成分や有効成分が配合されている。本発明者は、これら成分を顆粒状にし、化粧料中に配合すれば、該成分の配合か視覚的な面からも容易に認識され、当該化粧品の商品価値がより高まるであろうと考え、化粧品中に顆粒を配合する試みをおこなった。
しかしながら、従来公知の顆粒を化粧料に配合した場合、使用時に顆粒が残留し、ざらついたり異物感がある等使用感の面での問題があった。例えば特開昭60-152407号には非水溶性結合剤により造粒された顆粒を配合した皮膚外用剤が開示されているが、顆粒製造のために用いる非水溶性結合剤はエチルセルロース、アセチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸ビニル樹脂等であり、得られた顆粒は、▲1▼比較的硬く、スムーズに崩壊しない、▲2▼小さな力では崩壊しない、▲3▼肌あたりがなめらかでない等の欠点があった。また、顆粒の製造に当っても有機溶媒を使用するという欠点もあった。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、化粧料中において安定に存在し、用時に小さな力で容易に崩壊し、しかも崩壊後の肌あたりがなめらかな化粧料配合用顆粒を得べく鋭意検討をおこなった結果、特定のポリマーエマルジョンを用いて造粒した顆粒は上記目的を満足するものであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料を提供するものである。
本発明において用いる化粧料用水不溶性粉体は、その粒径が0.1mm以下の水に不溶なものであり、例えばタルク、酸化チタン、カオリン、マイカ、ケイ酸等の無機顔料;ポリエチレン、ナイロン、結晶セルロース、でんぷん等の有機顔料;油脂粉末;炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の水不溶性塩;草木末、イオウ末等が挙げられる。このうち、特にタルク、イオウ末が好ましい。
また、アクリル系ポリマーエマルジョンは、アクリル系の重合体又は共重合体を水に分散させたものであり、その粒径が0.03〜0.5μのものが好ましい。アクリル系ポリマーエマルジョンとしては、ポリアクリル酸エチルポリマーエマルジョン、ポリメタクリル酸ブチルポリマーエマルジョン、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル共重合体ポリマーエマルジョン等が挙げられ、固型分として35〜65%のものが入手できる。市場において容易に入手できるアクリル系ポリマーエマルジョンとしては、プライマル(日本アクリル化学)、アロンA(東亜合成化学工業)、ビナクリルR(大日本インキ化学工業)、ダウラテックス(ダウケミカル社)、プレキシトール(ローム社)、ポリコA(デュポン社)、ポリゾールA(高分子化学工業)、ハイカー(B、F、グッドリッチ社)等が挙げられる。
本発明化粧料に配合される顆粒の調製は、公知の流動造粒法、攪拌造粒法によりおこなうことができる。造粒に当っては、アクリル系ポリマーエマルジョンをその固型分量として、水不溶性粉体100重量部に対し、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部使用する。このアクリル系ポリマーエマルジョンを水で希釈すればより造粒が容易となる。なお、造粒に当ってポリマーエマルジョンを採用しているので、有機溶媒は全く不用である。
本発明の化粧料は、叙上の如くして得られる易崩壊性顆粒を常法に従い、化粧料基剤に配合することにより調製される。化粧料基剤に対する易崩壊性顆粒の配合量は特に制限されるものではないが、0.1〜30重量%、特に0.5〜15重量%とすることが好ましい。
斯くして得られる本発明化粧料は、皮膚洗浄剤、ニキビ治療用化粧料、美白化粧料等とすることができ、その剤型としては、液状、ゲル状、クリーム状、固型のものを挙げることかできる。なお、本発明化粧料には、易崩壊性顆粒及び化粧料基剤のほか通常の化粧料に配合される任意成分を必要に応じ添加することもできる。
〔実施例〕
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
実施例1
第1表に示す成分を用い、流動法により造粒をおこなった。これを散布後、棚式乾燥装置で乾燥させ、ふるい分けをおこない粒径0.5〜1mmのものを集め易崩壊性顆粒を得た。
(配合成分)

実施例2
実施例1で得た顆粒を用い、下記処方で洗顔クリームを調製した。この洗顔クリームについて、女性パネル10名によりその使用感(顆粒の肌あたり、肌へののび・ひろがり、異和感、顆粒のくずれやすさ)を評価した。この結果を第2表に示す。
(組成)
(%)
▲1▼N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム 30.0
▲2▼グリセリン 25.0
▲3▼プロピレングリコール 15.0
▲4▼香料 0.3
▲5▼精製水 24.7
▲6▼顆粒 5
(製法)
▲1▼〜▲5▼を75℃で加熱溶解後冷却し、▲6▼を加える。
(結果)

実施例3 ニキビ用クリーム
(i)下に示す成分を攪拌法により造粒した。乾燥後、ふるい分けし、粒径0.5〜2mmの顆粒を集めた。
(重量部)
(1)ナイロン末 30
(2)タルク 30
(3)ジパルミチン酸ピリドキシン 10
(4)亜鉛華 10
(5)ルチン 1
(6)黄色205号 0.1
(7)ポリアクリル酸エチルポリマーエマルジョン(50%) 20
(8)精製水 45
(ii)(i)で得た顆粒と、下に示す成分を用い、ニキビ用クリームを調製した。調製は、下記(1)〜(8)の油性成分と、(10)〜(14)の水性成分とを70℃に加温し、油性成分中に水性成分を加え、攪拌混合した。冷却後、(9)の香料と(15)の顆粒を加えることによりおこなった。
(%)
(1)セタノール 3.0
(2)ステアリン酸 2.0
(3)ステアリン酸モノグリセライド 2.0
(4)スクワラン 10.0
(5)流動パラフィン 10.0
(6)メチルフェニルシリコン 5.0
(7)P.O.E.(20)ソルビタンモノラウレート 1.0
(8)ソルビタンモノラウレート 1.0
(9)香料 0.05
(10)トリエタノールアミン 1.0
(11)カルボキシビニルポリマー 0.5
(12)グリセリン 10.0
(13)ジプロピレングリコール 10.0
(14)精製水 バランス
(15)顆粒 5.0
〔発明の効果〕
本発明において用いられる易崩壊性顆粒は、化粧料組成中においては安定に存在し、使用時に僅かな力でスムースに崩壊するので、化粧料中に配合しても異和感のない優れたものである。したがって、この顆粒を配合した化粧料は、使用感を損ねることなく薬効剤、有効成分の配合を視覚的に顆粒として強調できるので、商品的に極めて有利なものである。
 
訂正の要旨 特許請求の範囲の請求項1の「粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料。」と訂正する。
発明の詳細な説明中の「すなわち、本発明は、粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料を提供するものである。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「すなわち、本発明は、粒径0.1mm以下の化粧料用水不溶性粉体を、結合剤としてアクリル系ポリマーエマルジョンを用いて、流動造粒法又は攪拌造粒法によって0.2〜3mmの粒径に造粒した顆粒を配合したことを特徴とする易崩壊性顆粒配合化粧料を提供するものである。」と訂正する。
異議決定日 1999-08-02 
出願番号 特願昭63-14296
審決分類 P 1 651・ 531- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 113- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨士 美香  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 内藤 伸一
宮本 和子
登録日 1997-10-03 
登録番号 特許第2700793号(P2700793)
権利者 株式会社コーセー
発明の名称 易崩壊性顆粒配合化粧料  
代理人 中島 俊夫  
代理人 有賀 三幸  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 中島 俊夫  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 有賀 三幸  
代理人 高野 登志雄  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 高野 登志雄  

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