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審決分類 |
審判 補正却下の決定 判示事項別分類コード:13 C01B |
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管理番号 | 1020406 |
審判番号 | 審判1992-10404 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1988-08-08 |
種別 | 補正却下の決定 |
確定日 | 2000-10-31 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第8598号「超電導物質及び超電導装置」拒絶査定に対する審判事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 平成3年10月18日付けの手続補正を却下する。 |
理由 |
平成3年10月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された、「層状ペロブスカイト様の結晶構造を持つ単一の結晶学的相をなす銅酸化物を主成分とし」、「26Kを超える転移温度を有する」超伝導物質については、以下のとおり、願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「出願当初の明細書等」という。)に記載されておらず、 かつ、出願当初の明細書等の記載からみて自明のこととも認められない。 出願当初の明細書等には、以下の記載がある。 ▲1▼「組成RE2-xAExTM1O4-yを有し(但しREは1つ以上の希土類元素、AEは1つ以上のアルカリ土元素、そしてTMは遷移金属)、x≦0.3且つy≦0.5である超伝導物質。」(特許請求の範囲第1項)、 ▲2▼「D.問題点を解決するための手段 本発明は、従来知られている超伝導物質で得られるよりも高い温度で超伝導性を示す新規な物質、及びそれらの物質を製造し使用する方法に関する。これらの物質は26Kよりも高い温度で超伝導電流(即ち、その化合物の事実上ゼロ抵抗状態での電流)を伝える事ができる。一般に、この物質は、遷移金属酸化物が多原子価の振舞いを示し得るような混合遷移金属酸化物系として特徴付けられる。それらの化合物は、しばしばペロブスカイト型の、層状の結晶構造を有し、希土類又は希土類類似の元素を含み得る。」(第4頁第2行〜第13行)、 ▲3▼「適当な遷移金属の特に良い例は銅である。後に明らかになるように、銅酸化物をベースにした系は高Tc超伝導体として独特且つ優れた性質を与える。 高Tcを有する超伝導物質の一例は、式RE-TM-Oによって表現される物質である。」 (第5頁第5行〜第10行)、 ▲4▼「希土類又は希土類類似元素、及びアルカリ土元素を含む銅酸化物系は、26Kよりも高いTcを示す超伝導性の層状銅酸化物の一般的なクラスの唯一の例である。」(第6頁第18行〜第7頁第1行)、 ▲5▼「本発明は、弗化カリウム・ニッケルK2NiF4から知られる種類の層構造を有する物質を使用する事を提案する。この構造は特に、一般的組成RE2TMO4を有する酸化物に存在する。但しREは希土類を表わし、TMはいわゆる遷移金属を表わす。問題の化合物において、RE部分がアルカリ土金属の1メンバー又はアルカリ土のメンバーの組み合せによって部分的に置換され、且つ酸素含有量に欠損のある事が本発明の特徴である。」(第7頁第2行〜第11行)、 ▲6▼「本発明に関連して行なわれた実験は、希土類が、同じIIA族の元素の他のメンバー即ち他のアルカリ土金属の1つ以上のものによって部分的に置換された化合物において高Tcの超伝導が存在する事を明らかにした。実際、Sr2+を含むLa2CuO4-yのTcはBa2+及びCa2+を含むもので見い出されているよりも高く、且つその超伝導による反磁性はより強い。」(第10頁第19行〜第11頁第6行)、 ▲7▼「一般に、Ba-La-Cu-O系は、・・・・・X線解析を行なうと、3つの異なった結晶学的相を示す。即ち、 -K2NiF4構造に関連した、層状ペロブスカイト様の第1の相、La2-xBaxCuO4-yを有する。 但しx<1及びy≧0。 -第2の、非伝導性のCuO相 -第3の、・・・・・ これら3つの相のうち第1のものが高Tc超伝導の原因であると思われる。その臨界温度はその相の中のバリウム濃度に対する依存性を示す。」(第12頁第18行〜第13頁第14行)、 ▲8▼「出発組成物において2:1という(Ba、La)対Cuの比を用いて超伝導の原因と考えられたLa2CuO4:Baの組成をまねると、CuO相は存在せず、2つの相だけが生じた。バリウム含有量がx=0.15の場合、Tc=26Kで抵抗率の低下が生じた。」(第16頁第14行〜第19行)、 ▲9▼「Ca及びBa化合物に関してそれぞれ22±2K及び33±2Kで超伝導の開始を示す。Sr化合物の場合、40K±1Kの抵抗率の低下に至るまで、抵抗率は金属的なままである。」(第21頁第19行〜第22頁第2行)、 ▲10▼「超伝導化合物において種々の異なった遷移金属元素を用いた例を与えてきたが、混合物原子価を有する銅酸化物が独特且つ特に重要と思われ、26K以上の温度で超伝導性を有する。これらの混合原子価銅化合物は希土類元素及び/又は希土類類似元素を含み、これらはアルカリ土元素によって置換可能である。」(第25頁第1行〜第7行) 以上▲1▼〜▲10▼の記載及び出願当初の第2図〜第4図の記載からみて、出願当初の明細書等には、26Kを超える転移温度を有する層状ペロブスカイト様の結晶構造を持つ「希土類元素又は希土類類似元素を含む混合銅酸化物」が、問題点を解決する超伝導物質の発明として、実質的に開示されているものの、26Kを超える転移温度を有する層状ペロブスカイト様の結晶構造を持つ「希土類元素又は希土類類似元素を含まない混合銅酸化物」は、問題点を解決する超伝導物質の発明として、実質的にも開示されているものということはできない。 したがって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された超伝導物質は、出願当初の明細書等に開示されていない超伝導物質を包含するものであるから、出願当初の明細書等においては、自明の超伝導物質として認識することができない。 よって、本件補正は、明細書の要旨を変更するものであるから、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 なお、平成9年(行ケ)第200号補正の却下の決定取消請求事件の判決(平成11年5月13日判決言渡)を参照のこと。 |
決定日 | 1999-10-12 |
出願番号 | 特願昭63-8598 |
審決分類 |
P
1
93・
13-
(C01B)
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前審関与審査官 | 松田 一弘、吉見 京子、雨宮 弘治 |
特許庁審判長 |
松本 悟 |
特許庁審判官 |
能美 知康 高梨 操 |
発明の名称 | 超電導物質及び超電導装置 |
復代理人 | 合田 潔 |
復代理人 | 市位 嘉宏 |
復代理人 | 坂口 博 |