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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E06B
管理番号 1020772
判定請求番号 判定請求1999-60020  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1996-06-25 
種別 判定 
判定請求日 1999-04-06 
確定日 1999-08-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第2744770号発明「がらり構造」判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「がらり構造」は、特許第2744770号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 I.請求の趣旨
本件判定の趣旨は、イ号図面及び説明書に記載する「がらり」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第2744770号の請求項2に係る発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。
II.本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであり、その請求項2に係る発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。
A.壁部(W)に形成した換気口(9)に取付けて、換気が行なえるようにしたがらり構造であること。
B.換気口(9)中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体(10)と、同周縁支持枠体(10)の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体(11)と、同周縁支持枠体(10)の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体(12)と、同前側横羽根体(11)の後方及び後側横羽根体(12)の前方に配設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体(13)を具備すること。
C.連通流路形成体(13)は、周縁支持枠体(10)の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部(30,31)を左右幅方向に立設すると共に、断面コ字状に形成すること。
D.前側に位置する流路形成柱部(30)は、コ字状開口面を後方へ向けて立設する一方、後側に位置する流路形成柱部(31)はコ字状開口面を前方へ向けて立設すること。
E.しかも、流路形成柱部(30)は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体(30a)と、同柱部本体(30a)の左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した折返し片(30b,30b)と、柱本体(30a)の前面中途部より前方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(30c,30c)とを一体成形して断面コ字状に形成すること。
F.流路形成柱部(31)は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体(31a)と同柱部本体(31a)の左右側端縁よりそれぞれ前方へ伸延させて形成した折返し片(31b,31b)と、柱部本体(31a)の前面中央部より前方へ伸延させて形成した突出片(31c)と 柱部本体(31a)の後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(31d,31d)とを一体成形して中央部に突出片(31c)を設けた断面コ字状に形成すること。
G.前側に位置する流路形成柱部(30)の折返し片(30b、30b)と 後側に位置する流路形成柱部(31)の折返し片(31b、31b)との中間位置に中間の流路形成柱部(40)を配置すること。
H.中間の流路形成柱部(40)は、矩形板状の柱部本体(40a)と、間柱部本体(40a)の左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した両側折返し片(40b、40b)と、柱部本体(40a)の左右いずれか一側端縁より前方へ伸延させて形成した一側折返し片(40c)とを一体成形すること。
I.更には、流路形成柱部40は、左右幅方向に交互に上下反転状態に立設することにより共用化し、平面視で左右対称形状となして配置すること。
J.しかも後方へ伸延する両側折返し片(40b)の一方が後側の流路形成柱部(31)の折返し片(3lb)と突出片(31c)との中間に位置し、同折返し片(3lb)が両側折返し片(40b、40b)の中間に位置すると共に、前方へ伸延する一側折返し片(40c)が前側の流路形成柱部(30)の折返し片(30b、30b)の中間に位置するように配置したがらり構造であること。
III.イ号物件
請求人が提出したイ号物件説明書においては、前記(6)及び(10)に係る構成の一部を、
「同柱部本体31aの後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ31dとを一体成形し、中央部に突出片を形成せず、補強リブ31dの前面31dxのみが仮想同一直線Lから距離Dだけ離れた位置で前面側に露呈するように形成し」及び「後方へ伸延する両側折返し片40bの一方が後側の流路形成柱部31の折返し片3lbと補強リブ31cとの中間に位置し」という記載にしているが、被請求人は、平成11年6月17日付け答弁書において、その対応する(6)及ぶ(10)に係る構成を、「同柱部本体31aの前後面中央部より前後方へ突出させて形成した補強リブ31dとを一体形成して、補強リブ31dの前方突出部分を突出片31dxとする断面コ字状に形成すると共に、突出片31dxの前面は、同一仮想直線Lから一定の距離Dを隔てており、」及び「後方へ伸延する両側折返し片40bの一方が後側の流路形成柱部31の折返し片3lbと突出片31dxとの間に位置し、」という記載にすべきであると主張している。
当審は、請求人が提出したイ号図面の記載からみて、下記(6)及び(10)に記載した構成が相当であると認定する。
(1)壁部に形成した換気口に取付けて、換気が行なえるようにしたがらり構造であること。
(2)換気口中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体10と、同周縁支持枠体10の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体11と、同周縁支持枠10の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体12と、同前側横羽根体11の後方及び同後側横羽根体12の前方に配設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体13を具備すること。
(3)連通流路形成体13は、周縁支持枠体10の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部30,31を左右幅方向に立設すると共に、断面コ字状に形成すること。
(4)前側に位置する流路形成柱部30は、コ字状開口面を後方へ向けて立設する一方、後側に位置する流路形成柱部31は、コ字状開口面を前方へ向けて立設すること。
(5)前側の流路形成柱部30は、上下方向に伸延する矩形状の柱部本体30aと、同柱部本体30aの左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した折返し片30bと、同柱部本体30aの前面中途部より前方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ30cとを一体成形して断面コ字状に形成すること。
(6)後側の流路形成柱部31は、上下方向に伸延する矩形板状の柱部本体31aと、同柱部本体31aの左右側端縁よりそれぞれ前方へ伸延させて形成した折返し片3lbと、同柱部本体31aの後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ31dとを一体成形し、補強リブ31dの前面膨出部を31dxとし断面コ字状に形成し、補強リブ31dの前面膨出部31dxは仮想同一直線Lから距離Dだけ離れた位置で前面側に露呈するように形成すること。
(7)前側に位置する流路形成柱部30の折返し片30bと、後側に位置する流路形成柱部31の折返し片31bとの中間位置に中間の流路形成柱部40を配置すること。
(8)中間の流路形成柱部40は、矩形板状の柱部本体40aと、同柱部本体40aの左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した両側折返し片40bと、柱部本体40aの左右いずれか一側端縁より前方へ伸延させて形成した一側折返し片40cとを一体成形すること。
(9)中間の流路形成柱部40は、左右幅方向に交互に上下反転状態に立設することにより共用化し、平面視で左右対称形状となして配置すること。
(10)しかも後方へ伸延する両側折返し片40bの一方が後側の流路形成柱部31の折返し片3lbと補強リブ31dの前面膨出部31dxとの間に位置し、同折返し片3lbが両側折返し片40bの中間に位置すると共に、前方へ伸延する一側折返し片40cが前側の流路形成柱部30の折返し片30bの中間に位置するように配置したがらり構造であること。
IV.イ号物件が本件特許の請求項2に係る発明の技術的範囲に属するか否かについて
1.本件特許の請求項2に係る発明の構成要件とイ号物件との対比
本件特許の請求項2に係る.発明の構成要件とイ号物件とを対比すると、イ号物件は、本件特許の請求項2に係る発明の構成要件A.,B.,C.,D.,E.,G.,H.,I.を具備している。
しかし、構成要件F.,J.を具備しているか否かについては、その構成に相違があることから、明確でない。
相違点
相違点1:本件特許の請求項2に係る発明の構成要件F.においては、「柱部本体(31a)の前面中央部より前方へ伸延させて形成した突出片(31c)と、柱部本体(31a)の後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ(31d,31d)とを一体成形して中央部に突出片(31c)を設けた断面コ字状に形成する」としているのに対して、イ号物件においては、「柱部本体31aの後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ31dとを一体成形し、補強リブ31dの前面膨出部を31dxとし断面コ字状に形成し、補強リブ31dの前面膨出部31dxは仮想同一直線Lから距離Dだけ離れた位置で前面側に露呈するように形成する」としている点において構成が相違する。
相違点2:本件特許の請求項2に係る発明の構成要件J.においては、[後方へ伸延する両側折返し片(40b)の一方が後側の流路形成柱部(31)の折返し片(31b)と突出片(31c)との中間に位置し」としているのに対して、イ号物件においては、「後方へ伸延する両側折返し片40bの一方が後側の流路形成柱部31の折返し片3lbと補強リブ31dの前面膨出部31dxとの間に位置し」としている点において構成が相違する。
相違点1及び2についてその内容を検討すると、結局、両者の構成の相違は、本件特許の請求項2に係る発明における、「突出片31c」と、イ号物件における、「補強リブ31dの前面膨出部31dx」の構成の相違ということになる。
2.構成要件F.,J.を充足するか否かの検討
(ア)特許請求の範囲の記載の変遷
前記相違点について検討するにあたり、現在の請求項2の記載になるまでの、特許請求の範囲の記載の変遷を見ていく。
▲1▼出願当初(平成6年12月15日)の特許請求の範囲の記載
【請求項1】壁部に形成した換気口に取付けて換気が行えるようにしたがらり構造であって、換気口中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体と、同周縁支持枠体の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体と、同周縁支持枠体の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体と、前側横羽根体と後側横羽根体との間に介設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体とを具備し、連通流路形成体は、周縁支持枠体の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部を左右幅方向に千鳥状に立設すると共に、左右幅方向に隣接する各流路形成柱部の各側縁部を前後方向に対向させて配置して、各流路形成柱部間に折返し状に屈曲する折返し状流路を形成したことを特徴とするがらり構造。
【請求項2】流路形成柱部は、上下方向に伸延させると共に、断面コ字状に形成し、前側横羽根体に近接する流路形成柱部はコ字状開口面を後方へ向けて立設する一方、後側横羽根体に近接する流路形成柱部はコ字状の開口面を前方へ向けて立設したことを特徴とする請求項1記載のがらり構造。
【請求項3】前側横羽根体に近接する流路形成柱部のコ字状の開口面と、後側横羽根体に近接する流路形成柱部のコ字状開口面とを略面一に配置したことを特徴とする請求項2記載のがらり構造。
▲2▼審査請求と同時に提出された手続補正書(平成9年4月8日付け)の特許請求の範囲の記載
【請求項1】壁部に形成した換気口に取付けて、換気が行えるようにしたがらり構造であって、換気口中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体と、同周縁支持枠体の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体と、同前側横羽根体の後方に配設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体とを具備し、連通流路形成体は、周縁支持枠体の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部を左右幅方向に千鳥状に立設すると共に、左右幅方向に隣接する各流路形成柱部の各側縁部を前後方向に対向させて配置して、各流路形成柱部間に折返し状に屈曲する折返し状流路を形成したことを特徴とするがらり構造。
【請求項2】壁部に形成した換気口に取付けて、換気が行えるようにしたがらり構造であって、換気口中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体と、同周縁支持枠体の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体と、同後側横羽根体の後方に配設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体とを具備し、連通流路形成体は、周縁支持枠体の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部を左右幅方向に千鳥状に立設すると共に、左右幅方向に隣接する各流路形成柱部の各側縁部を前後方向に対向させて配置して、各流路形成柱部間に折返し状に屈曲する折返し状流路を形成したことを特徴とするがらり構造。
【請求項3】壁部に形成した換気口に取付けて、換気が行えるようにしたがらり構造であって、換気口中に嵌合させて取付け可能とした周縁支持枠体と、同周縁支持枠体の前側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の前側横羽根体と、同周縁支持枠体の後側部に上下方向に間隔を開けて横架した複数個の後側横羽根体と、前側横羽根体と後側横羽根体との間に介設した雨水等浸入防止用の連通流路形成体とを具備し、連通流路形成体は、周縁支持枠体の上下枠形成部間に複数個の流路形成柱部を左右幅方向に千鳥状に立設すると共に、左右幅方向に隣接する各流路形成柱部の各側縁部を前後方向に対向させて配置して、各流路形成柱部間に折返し状に屈曲する折返し状流路を形成したことを特徴とするがらり構造。
【請求項4】流路形成柱部は、上下方向に伸延させると共に、断面コ字状に形成し、前側に位置する流路形成柱部はコ字状開口面を後方へ向けて立設する一方、後側に位置する流路形成柱部はコ字状の開口面を前方へ向けて立設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のがらり構造。
【請求項5】前側に位置する流路形成柱部のコ字状の開口面と、後側に位置する流路形成柱部のコ字状の開口面とを略面一に配置したことを特徴とする請求項2記載のがらり構造。
▲3▼第1回目拒絶理由通知に対応して提出された手続補正書(平成9年8月7日付け)の特許請求の範囲の請求項2の記載
【請求項2】前側に位置する流路形成柱部(30)の折返し片(30b、30b)と、後側に位置する流路形成柱部(31)の折返し片(31b、31b)との中間位置に中間の流路形成柱部(40)を配置すると共に、中間の流路形成柱部(40)は、矩形板状の柱部本体(40a)と、同柱部本体(40a)の左右側端縁よりそれぞれ後方へ伸延させて形成した両側折返し片(40b、40b)と、柱部本体(40a)の左右いずれか一側端縁より前方へ伸延させて形成した折返し片(40c)とを一体成形しており、更には、流路形成柱部40は、左右幅方向に交互に上下反転状態に立設することにより共用化し、平面視で左右対称形状となして配置し、しかも後方へ伸延する両側折返し片(40b)が後側の流路形成柱部(31)の折返し片(31b)と突出片(31c)との中間に位置し、同折返し片(31b)が両側折返し片(40b、40b)の中間に位置すると共に、前方へ伸延する一側折返し片(40c)が前側の流路形成柱部(30)の折返し片(30b、30b)の中間に位置するように配置したことを特徴とする請求項1記載のがらり構造。
▲4▼最後の拒絶理由通知に対応して提出された手続補正書(平成9年11月11日付け)の特許請求の範囲の請求項2の記載
最後の拒絶理由通知は、請求項2に係る発明が、請求項1を引用する形式になっているため、請求項1と請求項2との対応関係に齟齬が生じていることを指摘したもので、これに対応して提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2には、前記「II.本件特許」の項で示したとおりのものが記載されている。
(イ)拒絶理由通知、意見書
本件特許の審査段階での第1回拒絶理由通知(平成9年5月29日起案日)には、特開昭53-21847号公報、実公昭15-8299号公報、実願昭61-98892号(実開昭63-5189号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム及び実願昭51-142613号(実開昭53-59547号公報)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルムが引用例1〜4として記載されている。
それに対して、平成9年8月7日付けで、意見書、手続補正書が提出されている。
同意見書によると、『〔1〕本願発明(以下甲という)は引用文献(1)〜(4)と対比して次の通り異なる。出願人は、本意見書と同時に手続補正書を提出して、甲の要旨を次のようにした。すなわち、請求項1では、流路形成柱部30,31のうち、特に「後側に位置する流路形成柱部31」の中央部に「突出片31c」を設けた点と、「左右一対の補強リブ30c、30c、31d、31d」を各柱部本体30a,31aの前面又は後面中途部より後方へ突出させて形成した点とに要旨を有する。まず、「突出片31c」により流路は複雑で屈曲しやすく、特に左右に振分けられて分流し、かつ他の折返し状流路32から流入した分流外気を合流して、後側外気流入口19を通過することができ、しかも合流した際にエジェクタ効果により効率良く後側外気気流入口19に流入して換気口9の通気性を良好に確保できる。』(同1/2頁1〜12行参照のこと)との記載と、
「〔2〕更には、請求項2では、請求項1の構成に加えて前側の各折返し片30b、30bと、後側の各折返し片31b、31bとの中間位置に中間の流路形成柱部40を配置した点に要旨がある。この中間の流路形成部40によって、折返し状流路32が形成され、この折返し状流路32始端部から流入した外気は左右に振分け状に分流され、中途でさらに前後に振分け状に分流され、折曲状に流動した後に、他の折返し状流路32から流入した分流外気と合流して後側外気流入口19を通過することになる。従って、外気は、複数の折返し状流路32内でそれぞれ二段階に分流された後に、他の折返し状流路32で分流された分流外気と二段階に合流するために、エジェクタ効果により効率良く後側外気流入口19に流入して換気口9の通気性を良好に確保することができる。」(同1/2頁16〜26行参照のこと)との記載がある。
(ウ)本件特許の明細書の記載
本件特許の明細書の【0049】段落には、「請求項2記載の本発明では、前側の流路形成柱部30,30と中間の流路形成柱部40と後側の流路形成柱部31とにより折返し状流路32を形成し、前側の流路形成.柱部30,30に形成される複数の折返し状流路32の始端部から流入した外気aは、左右に振分け状に分流され、各分流外気a1,a1は中途でさらに前後に振分け状に分流され、各分流外気a2,a2はそれぞれ折曲状に流動した後、他の折返し状流路32から流入した分流外気a2と合流して、後側外気流入口19を通過する。従って、外気aは、複数の折返し状流路32内でそれぞれ二段階に分流された後、他の折返し流路32で分流された分流外気a2と二段階に合流するために、エジェクタ効果により効率良く後側外気流入口19に流入して、換気口9の通気性を良好に確保することができると共に、通気時の騒音、いわゆる風切り音の発生を防止することができ、しかも、雨水等が室内に浸入するのを確実に防止することができる効果がある。」との記載がある。
(エ)検討
前記の各記載、及び経緯のうち、特に、前記(イ)の第1回目拒絶理由通知に対する意見書中の「請求項2では、請求項1の構成に加えて前側の各折返し片30b、30bと、後側の各折返し片31b、31bとの中間位置に中間の流路形成柱部40を配置した点に要旨がある。この中間の流路形成部40によって、折返し状流路32が形成され、この折返し状流路32の始端部から流入した外気は左右に振分け状に分流され、中途でさらに前後に振分け状に分流され、折曲状に流動した後に、他の折返し状流路32から流入した分流外気と合流して後側外気流入口19を通過することになる。従って、外気は、複数の折返し状流路32内でそれぞれ二段階に分流された後に、他の折返し状流路32で分流された分流外気と二段階に合流するために、エジェクタ効果により効率良く後側外気流入口19に流入して換気口90通気性を良好に確保することができる。」との記載、
さらに、前記(ウ)の本件特許の明細書の【0049】段落の「請求項2記載の本発明では、前側の流路形成柱部30,30と中間の流路形成柱部40と後側の流路形成柱部31とにより折返し状流路32を形成し、前側の流路形成柱部30,30に形成される複数の折返し状流路32の始端部から流入した外気aは、左右に振分け状に分流され、各分流外気a1,a1は中途でさらに前後に振分け状に分流され、各分流外気a2,a2はそれぞれ折曲状に流動した後、他の折返し流路32で分流された分流外気a2と合流して、後側外気流人口19を通過する。従って、外気aは、複数の折返し状流路32内でそれぞれ二段階に分流された後、他の折返し状流路32から流入した分流外気a2と二段階に合流するために、エジェクタ効果により効率良く後側外気流入口19に流入して、換気口9の通気性を良好に確保することができると共に、通気時の騒音、いわゆる風切り音の発生を防止することができ、しかも、雨水等が室内に浸入するのを確実に防止することができる効果がある。」との各記載を検討すると、構成要件F.,J.の「柱部本体(31a)の前面中央部より前方へ伸延させて形成した突出片(31c)」との突出長さについての限定のない突出片の構成と1後方へ伸延する両側折返し片(40b)の一方が後側の流路形成柱部(31)の折返し片(31b)と突出片(31c)の中間に位置させ」るとの構成による、「二段階に分流された後、他の折返し流路32で分流された分流外気a2と二段階に合流するために、エジェクタ効果により効率良く後側外気流入口19に流入して、換気口9の通気性を良好に確保することができると共に、通気時の騒音、いわゆる風切り音の発生を防止することができ、しかも、雨水等が室内に浸入するのを確実に防止することができる効果がある。」との作用・効果を強調するものである。
これらを考慮すれば、本件特許の請求項2に係る発明の構成要件F.,J.における「柱部本体(31a)の前面中央部より前方へ伸延させて形成した突出片(31c)」及び[後方へ伸延する両側折返し片(40b)の一方が後側の流路形成柱部(31)の折返し片(31b)と突出片(31c)の中間に位置させ」るとは、本件特許の請求項2に係る発明の必須かつ本質的な構成要件であり、第1回目拒絶理由通知に引用された引用例3記載の発明の「突出片31cが形成されていないもの」を、明らかに排除したものと解さざるを得ない。
この点に関して、イ号物件を検討すると、そのイ号図面及び先に認定した内容によれば、「柱部本体31aの後面中途部より後方へ突出させて形成した左右一対の補強リブ31dとを一体成形し、補強リブ31dの前面膨出部を31dxとし断面コ字状に形成し、補強リブ31dの前面膨出部31dxは仮想同一直線Lから距離Dだけ離れた位置で前面側に露呈するように形成し」及び「後方へ伸延する両側折返し片40bの一方が後側の流路形成柱部31の折返し片3lbと補強リブ31dの前面膨出部31dxとの間に位置し」との構成を有し、イ号物件における「補強リブ31dの前面膨出部31dx」は、イ号図面に記載された形状からみて、柱部本体31aの補強のために形成されたものであることは明らかであり、また、補強リブ31dの前面膨出部31dxが、本件特許の請求項2発明における、「柱部本体31aの前面中央部より前方に伸延させて形成した突出片(31c)」と同様な作用・効果を奏するものとは到底認められないものであるから、イ号物件は、明らかに排除したところの「突出片31cが形成されていないもの」と同様の構成を有しているものであり、イ号物件は、本件特許の請求項2に係る発明の構成要件F.,J.を具備していない。
V.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は本件特許の請求項2に係る発明の構成要件を具備しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲 別記




 
判定日 1999-08-13 
出願番号 特願平6-312004
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 幸長 保次郎
鈴木 公子
登録日 1998-02-06 
登録番号 特許第2744770号(P2744770)
発明の名称 がらり構造  
代理人 平野 一幸  
代理人 松尾 憲一郎  

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