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審決分類 審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:13  G03F
管理番号 1022257
審判番号 補正審判1997-50108  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-25 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 1997-08-04 
確定日 2000-07-19 
事件の表示 平成 5年特許願第 71385号「感光性エレメント」において、平成 9年 4月21日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成5年3月30日の出願であって、その後、平成9年2月4日付けで明細書を補正する手続補正がなされたが、この手続補正は、平成9年4月21日に決定をもって却下(以下、「原決定」という)された。
II.原決定の理由
原決定の理由は次のとおりのものである。
『平成9年2月4日付け手続補正は、【特許請求の範囲】の欄の【請求項3】において、その感光性エレメントの光硬化性層の、接着性を増強するための露光の時期を、その補正前の「ステップ(D)と同時に」から「ステップ(C)と同時にあるいはステップ(C)の後で」に変更すること、を含むものである。
しかしながら、上記補正により新たに変更された感光性エレメントの露光時期については、本願の願書に最初に添付した明細書(以下、当初明細書という)に記載されておらず、また、当初明細書の記載からみて自明な事項とも認められない。したがって、この手続補正は、当初明細書に記載した事項の範囲外のものを追加するものであり、明細書の要旨を変更するものと認められる。
よって、この手続補正は、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。』
III.請求の理由
これに対して審判請求人は、請求の理由において、平成9年2月4日付け手続補正書でした補正後の請求項3に記載された「ステップ(C)と同時にあるいはステップ(C)の後で」は、願書に最初に添付した明細書に明確に記載されており、かつ同明細書の記載からみて自明であり、この補正は明細書の要旨を変更するものではない、と主張している。
IV.願書に最初に添付した明細書の記載
上記手続補正に関連する記載として、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、以下の記載がある。
(イ)「(A)ポリマーフィルム基板に水性エマルジョンを付与し、ここで該エマルジョンは(i)反応性部分と非反応性部分とを有する有機ポリマー、または反応性部分をもつ少なくとも1つの有機ポリマーと非反応性部分をもつ少なくとも1つの有機ポリマーとの混合物のいずれか、(ii)架橋剤、および(iii)触媒、を含有するものであり;
(B)この乳剤を乾燥し、そして加熱して熱により硬化された層を形成させ;
そして
(C)ステップ(B)で形成された層上に光硬化性層を付与することからなり、
ここで熱により硬化された支持体に対する光硬化性層の接着性は、ポリマーフィルム基板を通じる活性光に感光性エレメントをステップ(D)と同時に露光することにより増強されるものである、感光性エレメントの調製方法。」(【請求項3】)
(ロ)「接着性の微-調製は支持体を通じて活性光に対して感光性エレメントを露光することにより達成される。この露光は塗布済みの支持体に対する光硬化性層の接着性を増強する。この接着性-調整露光はエレメントの画像状露光の前に行われ、画像状露光もそれ自体支持体と光硬化性層間の接着性の増強を来たすのである。」(【0042】)
(ハ)「接着性-調整露光は画像状露光ステップの直前に行うことができる。しかしながら、これは感光性エレメントの製造工程中に行うことが好ましい。光硬化性層が塗布済みの支持体に対してエクストルージョン/カレンダー法、ラミネーション法または塗布法などにより付与されるとき、エレメントは活性光を与える光源上を通過させることができる。・・・・。」(【0044】)
(ニ)「〔接着性テスト〕 各感光性エレメントはサイレルR30×40露光ユニット(デュポン社製)を使用し、塗布済みのマイラーR支持体を通じて紫外光に対して露光した。オンラインの製作工程で与えられるのと同じレベルに強度を低下させるためテッドラーフイルターを使用した。露光の時間は表1中に示すように変化させた。塗布済みのマイラーR支持体に対する光硬化性層の接着性は、インストロン4201型を使用し1インチ(2.54cm)幅の試験片を毎分10インチ(毎分25.4cm)ではがして測定した。」(【0053】)
(ホ)「〔実施例4〕 前記の組成を有する光硬化性材料を、接着性-調整材料を塗布した厚み5ミル(0.013cm)のポリエチレンテレフタレート支持体と、ポリアミド皮膜層を塗布したポリエステルカバーシート間でモールド状にプレスして、カバーシートを含まない最終全厚み112ミル(0.284cm)のものを作った。ポリマー性化合物は実施例1で述べたのと同じ、すなわちパーミュタンUE-41222である。このようにして作った感光性エレメントを前述のようにポリエステル支持体を通じて露光した。・・・・。」(【0072】)
V.当審の判断
当初明細書の、実施例4(上記(ホ)参照)には、「このようにして作った感光性エレメントを前述のようにポリエステル支持体を通じて露光した。」と、また、「前述のように・・・露光」として、「各感光性エレメントはサイレルR30×40露光ユニット(デュポン社製)を使用し、塗布済みのマイラーR支持体を通じて紫外光に対して露光した。」(上記(ニ)参照)と、記載されている。
ところで、ここでの感光性エレメントへの露光は、光硬化性層に対して行うものであり、光硬化性層の付与、すなわち、ステップ(C)時あるいはそれ以降に行うことしか常識上考えられないし、上記の「このようにして作った感光性エレメントを・・・露光した」とは、光硬化性層の付与(ステップ(C))後に露光をしたことを記載しているものと認められるから、当初明細書には、ステップ(C)の後で露光することが記載されているといえる。
また、支持体に対する光硬化性層の接着性を増強するための接着性-調整露光(上記(ロ)参照)を施す時期については、「接着性-調整露光は画像状露光ステップの直前に行うことができる。しかしながら、これは感光性エレメントの製造工程中に行うことが好ましい。光硬化性層が塗布済みの支持体に対してエクストルージョン/カレンダー法、ラミネーション法または塗布法などにより付与されるとき、エレメントは活性光を与える光源上を通過させることができる。」(上記(ハ)参照)と記載されているように、「画像状露光ステップの直前」と対比して、「感光性エレメントの製造工程中」が好ましいと明記されている。
画像状露光ステップの直前ではなく、感光性エレメントの製造工程時中で行うと記載しているのであるから、接着性-調整露光を施す時期は、光硬化性層の形成時に同時に施すと解するのが相当である。
してみると、補正後の請求項3に記載された「ステップ(C)と同時にあるいはステップ(C)の後で」という記載は、願書に最初に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
VI.むすび
したがって、上記補正は明細書の要旨を変更するものではないから、これを却下すべきものとした原決定は失当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-06-29 
出願番号 特願平5-71385
審決分類 P 1 7・ 13- W (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 禎治  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 鐘尾 みや子
六車 江一
発明の名称 感光性エレメント  
代理人 佐藤 辰男  
代理人 西村 公佑  
代理人 高木 千嘉  

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