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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1022970
審判番号 審判1999-9415  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-10 
確定日 2000-08-30 
事件の表示 平成2年特許願第213401号「清掃物品」拒絶査定に対する審判事件[平成4年3月30日出願公開、特開平4-96724]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は、平成2年8月10日の出願であって、その発明は、補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のものにあると認める。
「請求項1
繊度が0.8デニール未満である極細繊維と繊度が0.8デニール以上である繊維が不規則に混在してなり、前記繊度が0.8デニール未満である極細繊維と前記繊度が0.8デニール以上である繊維の重量比が8/2〜2/8である交絡不織布からなる、髪の毛などの大きなごみを捕集できる清掃物品。」
そして、本願発明は、願書に添付された明細書の記載によれば、
「〔従来の技術及びその課題〕
極細繊維から成る不織布が近年多数提案さている(特開平2-23922公報、特開平1-46624号公報、特開平1-47585号公報、特開平1-18179号公報等参照)。これらの不織布は極細繊維を用いることにより柔軟性に富み、薄くても強い強度があり、ダストなどの吸着性、水や油の保液力に優れた性能を発揮するので、各種フィルターや化学ぞうきん、ふきんなどのワイパー類に利用されている。
ところが、この様な不織布は繊維が繊密に交絡しており、表面の平滑性が高いという性質のために、土、ほこりなどの小さなごみや手垢等の汚れは不織布自体に付着、吸着させて除去することはできるが、髪の毛、糸くず、綿ぼこりなどの大きなごみは、繊維にからまず捕集できないか、あるいは少しの衝撃で繊維から振り落されてしまう。又、表面の平滑性が高いことは、かかる不織布と清掃面との摩擦係数を増大させ広い面やガラス窓等の垂直面を清掃する時の不織布のすべり性が悪化し、清掃効果や効率を極端に低下させる原因となる。
また、従来の清掃用の化学ぞうきんやひも状モップは髪の毛等の大きなゴミを繊維やひもでからみとる機構で捕集するものであるが、土、ほこりなどの小さなごみは繊維に保持させた油剤による凝集力によって捕集していたので、ガラス面や鏡等を拭くのには適していなかった。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らはこのような従来の清掃拭布の欠点を改良すべく鋭意研究の結果、繊度が0.8デニール未満である極細繊維とそれ以外の繊維とを特定の重量比で混在させてなる不織布を用いれば、油剤を使うことなく土、ほこりなどの小さなごみを捕集し、かつ清掃面との摩擦係数を上げずに髪の毛や大きなごみをからみとることのできる清掃物品が得られることを見出し、本発明を完成した。・・・」
というにある。

2.これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開昭63-211364号公報(以下「引用例」という。)には、「厚み感の大なる超極細繊維交絡織編物及びその製造方法」が記載されており、主として0.2デニール以下の超極細繊維からなる糸(A)と0.5〜10デニールの繊維からなる糸(B)を主体とすること、超極細繊維を織編物の片面または両面にウォータージェットパンチによって交絡させること、この超極細繊維交絡織編物は、普通デニール繊維のみ、または超極細繊維のみからなるものに比して、「厚み感に富み、・・・ワイピンク特性に富み・・・目乱れの少ない超極細繊維交絡織編物」であって、ワイピンク材として優れていることが記載されている。
これらの記載を考慮して、本願発明と引用例の発明とを対比すると、両者は、極細繊維のみからなる従来品の改善を課題とし、繊度が0.8デニール未満である極細繊維が繊度が0.8デニール以上である繊維に交絡(かつ不規則に混在)した布帛からなる清掃物品、である点で一致している。一方、以下の点で相違するものと認められる。
(相違点)
(ア)本願発明が、極細繊維と非極細繊維からなる交絡不織布であるのに対して、引用例の発明は、非極細繊維からなる織編物に極細繊維が交絡したものである点。
(イ)本願発明では、極細繊維と非極細繊維の重量比が8/2〜2/8としているのに対して、引用例には両者の重量比が明示されていない点。
(ウ)本願発明が、髪の毛などの大きなごみを捕集できる清掃物品であるのに対して、引用例には、「髪の毛などの大きなごみを捕集できる」という記載がない点。

3.そこで、それら相違点について検討する。
(1) 極細繊維を主体として構成された合成繊維シート状物からなるワイピンククロスは、本件の明細書において従来技術として例示されている特開平2-23922公報などにみられるように、本願の出願前周知のものにすぎず、該シート状物としては、不織布にしたり織編物とすることが普通に行われている(同公報の第2頁左下欄第11〜12行参照)ことにすぎない。この点を考慮すれば、不織布からなる清掃物品において、引用例のもののように、極細繊維と非極細繊維を併用することは、当業者には容易になし得ることというべきである。
(2)次に、本願発明の極細繊維と非極細繊維の重量比に関しては、「特定の重量比で」としているが、実際は「8/2〜2/8」というきわめて広範囲なものであり、極細繊維と非極細繊維を積極的に併用する引用例の発明においても、通常採択されるであろう範囲を包含しているというべきである。しかも、明細書・図面全体からみて、その数値限定に臨界的な意義があるものとは認められない。
(3)さらに、「髪の毛などの大きなごみを捕集できる」点は、布帛の表面の単繊維をからみあわせることによって、髪毛、糸くずなどが単繊維のからみの中にとり込まれて捕集されることが本願出願前に知られているので(例えば、特開平2-152430公報の第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第2頁参照)、引用例のものも超極細繊維交絡織編物であることからすれば、本願発明と同様の機能を奏するというべきである。
(4)なお、請求人は、「請求の理由」において、「実験例」として本発明品Aと比較品Aとを対比し、「原審引例のような「織編物」は、髪の毛などの大きなごみの捕集能に劣り、本願発明の意図する清掃用物品として適当ではない。」というが、比較品Aは、引用例の「超極細繊維交絡織編物」とは別異のものであり、これをもって本願発明が引用例記載の発明に比して有利な効果を奏するものであるとすることはできない。
さらに、本願発明を全体としてみても、当業者が予測できないような格別な効果を奏するものであるとはいえないので、本願発明は、周知事項を考慮すれば、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというほかない。
4.以上によれば、本願発明は、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-04-28 
結審通知日 2000-05-16 
審決日 2000-05-30 
出願番号 特願平2-213401
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩澤 克利金丸 治之  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 長崎 洋一
熊倉 強
発明の名称 清掃物品  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 馨  
代理人 持田 信二  
代理人 古谷 聡  

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