• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1023738
異議申立番号 異議1998-71421  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-24 
確定日 2000-03-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2657182号「半導体装置」の請求項1乃至3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。特許第2657182号の特許を維持する。 
理由 (1) 手続の経緯
原特許出願 昭和60年 5月 7日
本件分割出願 平成 6年 5月20日
特許権設定登録(第2657182号)
平成 9年 6月 6日
特許異議の申立て
(申立人山口雅行)
平成10年 3月24日
取消理由通知 平成10年 6月 9日
訂正請求 平成10年 8月23日
口頭審理陳述要領書(異議申立人)
平成11年 1月14日
口頭審理陳述要領書(権利者)
平成11年 1月28日
口頭審理 平成11年 1月28日
審尋(異議申立人) 平成11年 4月19日
審尋(権利者) 平成11年 4月19日
回答書(異議申立人)平成11年 7月15日
上申書(異議申立人)平成11年 7月15日
回答書(権利者) 平成11年 7月19日

(2) 訂正発明
上記訂正請求は、(訂正事項a)発明の名称を明りょうでない記載の釈明として「半導体装置」と訂正し、(訂正事項b)特許請求の範囲の請求項1、3を削除し、請求項2を新たな請求項1とするものである。
訂正事項aは明りょうでない記載の釈明に該当し、訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
そして、それらの訂正事項は実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもなく、また願書に添付された明細書記載の範囲内である。
訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下、訂正発明という)は、訂正請求の特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】水素またはハロゲン元素が添加された真性または実質的に真性なシリコンを主成分とした非単結晶半導体において、前記非単結晶半導体中にナトリュームが二次イオン質量分析(SIMS)の最低濃度領域で、1×1018cm-3以下であることを特徴とする半導体装置。」

(3) 取消理由及び異議申立の概要
異議申立人山口雅行は、甲第1号証(特開昭58-92218号公報)、甲第2号証(SIA Surface and Interfac Analysis vol.4,no.6 December 1982, P253-256)、甲第3号証(特開昭58-92217号公報)、甲第4号証(日経エレクトロニクス(1982)、12-20,No.306 p113-122,p163-179)を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証と甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項2、3に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明であり、または甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1ないし3に係る特許は取り消されるべきと主張している。
また、請求項1ないし3には次の点で特許法第36条第4項に違反すると主張している。
「1.請求項1のBの構成には石英部材の加熱温度が1000℃ないし1250℃と規定されているが、発明の詳細な説明において臨界的意義が記載されておらず、また実証もされていない。
2.上記の構成は反応条件であり時間の因子についての説明がなく、無効部分を含む。
3.請求項2の前段の記載は非単結晶半導体であり、特徴項の記載は装置であり、発明が不明である。
4.請求項2にはナトリュームの上限が示されているが1×1018cm-3以下とすることの臨界的意義が不明である。
5.請求項3には「請求項2の絶縁基板」と記載されているが請求項2には当該記載がなく、また発明の詳細な説明の欄においても記載がなく不明である。」
上記取消理由は、「請求項1は甲第1号証記載の発明から容易に発明できたものである。請求項2は甲第1、2、3号証記載の発明と同一である。請求項1、3には、不明確な記載がある」から、取り消されるべきであるというものである。

(4) 異議申立人の口頭審理及び陳述要領書での主張の概要
異議申立人提出の参考資料2(Characterization of Solid Surfaces ,Plenum Press(1974))の630頁の「NaのSiO2薄膜中の濃度プロファイルがFig.22-2に表示されている。このNaの分析は、プラナーエッチング法を利用して行われており、その感度(sensitivity)は2×109Na atoms/cm2とされている。」のことから、3/2乗してatoms/cm3に換算して、2.8×1013.5の値を出し、1013〜1014程度の分析はできたと主張している。

(5)甲号証記載の発明
甲第1号証には、「プラズマ気相法により反応炉内に設けられた基板上に」「少なくともひとつの接合を有する半導体装置において、反応炉の内壁プラズマ原子または反応性気体が衝突する内壁より不純物特に酸素、アルカリ金属原子が放出されることを防ぐため、これらの表面に予め真性または実質的に真性の半導体層例えば非単結晶珪素を形成する。」とし、「この水素プラズマ発生に対しては、水素中に1〜5%の濃度でHClまたはClを添加して行うと、塩素ラジカルが同時に発生し、このラジカルが石英等ホルダーの内側に存在しているナトリユームの如きアルカリ金属を吸い出す効果を有する。このためバックグラウンドレベルでのナトリユーム、水分、酸素の濃度を形成された被膜中にて1014cm-3以下にすることができ、」と記載されている。
甲第2号証には、「水素化されたアモロファスシリコン(a-Si:H)薄膜は、太陽電池、電子写真光受容体、薄膜トランジスタ表示装置、ビジコン等のような大面積電子装置に多大の関心が寄せられている。・・これらの欠陥の最も重要な点は、水素によって補償される不飽和シリコン共役サイト(ダングリングボンド)に基づくものである、他の源としては、電気的に活性な不純物、特に金属的性質を有するこれらの不純物が挙げられる。」と示され、表1には、金属製不純物としてNa、K元素が示され、表2にはSIMS/LTE法により測定したa-Si:H中の金属製不純物の代表的数値が示され、SIMS/LTEによりNaは2ppmwであると示されている。
甲第3号証には、「プラズマ気相法により反応炉内に設けられた基板上にP型およびN型半導体層を有する第1の半導体装置を形成した後、この半導体装置のNまたはP型不純物が次に作られるPまたはN型半導体層中に反応装置の内壁または基板のホルダーより再放出され、混入されてしまうことを防ぐため」、「これらの表面に付着した反応性気体をプラズマ化することにより除去し、予め真性または実質的に真性の半導体層例えば非単結晶珪素を形成する。」とし、「この水素プラズマ発生に対しては、水素中に1〜5%の濃度でHClまたはClを添加して行うと、塩素ラジカルが同時に発生し、このラジカルが石英等ホルダーの内側に存在しているナトリユームの如きアルカリ金属を吸い出す効果を有する。このためバックグラウンドレベルでのナトリユーム、水分、酸素の濃度を形成された被膜中にて1014cm-3以下にすることができ、」と記載されている。
甲第4号証には、「離陸したアモーファスSi太陽電池と再現性が向上した最近のアモーファス・シリコン製造技術」に関することが記載されている。
(6)権利者の主張
権利者は、異議意見書において、引用例1及び引用例3に関し、資料2「半導体ハンドブック(第2版)」オーム社昭和52年11月30日発行10〜11頁、資料3「応用物理」第50巻第4号(1981)浜川圭弘”アモルファスSi太陽電池の進歩”342〜349頁、資料4「半導体プロセス材料実務便覧」サイエエンスフォーラム社、昭和58年4月25日発行89〜104頁を提出し、次のように主張している。
「資料3に記載された、a-Si:Hとa-Si:Fに関し、(引用例公開当時の)原料ガスの純度(Purity of host gas)は0.999、0.96しかなかった。すなわち、それぞれ0.1%(1000ppm)、4%(40000ppm)の不純物が原料ガスに含有されていた。資料4の「2.1半導体ガスの品質の現状」における表-3(95頁)には、米国からの輸入原料であるSiH4の純度が、最も高いグレード:C.C.DorNitrideであっても、O2=5ppm、CO+CO2=5ppm、H2O=1ppm、CH4=5ppmというものである。同じく資料4の表-7(97頁)には、米国SENI Standardsとして定められた11品目の半導体用ガスの品質基準について記載されているが、O2=10ppm、H2O=3ppm、CO+CO2=10ppm、THC(CH4)=5ppmというもので、最も高純度のものですら99.9417%の純度しかない。
引用例1,引用例3の発行当時の上記技術常識からして、これら原料ガスを用いて被膜を作製しても同程度の不純物が混入してしまい、酸素、水分の量が1014cm-3(0.002ppmに相当する)以下などという値は達成し得なかった。」と主張している。(異議意見書第4頁〜第5頁)
更に、「このように、引用例1の80頁左上欄、引用例3の70頁左上欄の「・・・このためバックグラウンドレベルでのナトリューム、水分、酸素の濃度を形成された被膜中にて1014cm-3以下にすることができ、きわめて重要な前処理工程であった。」との記載は、単なる願望であり、架空の事項にすぎない。従って、引用例1の80頁左上欄、引用例3の70頁左上欄の記載に何の実体もないから、引用例にはなり得ないものです。」(同第5頁)と主張している。
その証拠として、更に引用例1,引用例3の発明者である山崎舜平氏の資料5「釈明書」を提出し、該釈明書で「上記両公報に係る発明を完成した当時、半導体中のナトリュームには何か得体の知れないものがありそうな予感がして、技術的異議は不明のまま、とにかくナトリューム、水分、酸素の濃度を極微少量へ下げてみたいということで実験を続けていました。両公報の上記記載はこの願望を記載してしまったものです。」と釈明している。
そして、更に証拠として、上記回答書添付の乙第8号証(大見忠弘氏「鑑定書」)を提出し、該鑑定書において、大見氏は「上記資料は、当時の原料ガスの純度を示す一例ですが、当時シリコン半導体形成に用いられる原料ガスの不純物濃度は、何れも上記例のようなレベルであったことは間違いありません。シリコン中の不純物濃度1014cm-3は約0.002ppmに相当しますが、少なくとも原料ガス中の酸素、水分の濃度はこの値より数千倍高いものでありました。
4.17号公報、18号公報記載の技術は、成膜室の前処理により反応室内壁等からの不純物の拡散を抑えることにより、同反応室で形成される被膜中への当該不純物の混入を低減するというものです。
しかしながら17号公報、18号公報では被膜形成に使用される原料ガス中の不純物は考慮されておらず、従来の原料ガスをそのまま使用しておりますので、原料ガス中の不純物が被膜中に取りこまれてしまいます。
形成される被膜中の不純物濃度は原料ガス中の不純物濃度と同等かそれ以上の濃度となります(酸素はシリコンと積極的に反応するため、ガス中の濃度に対し、形成される被膜中に取りこまれる濃度は数百倍から数干倍になります)。例えば、原料ガスとして、資料2のC.C.Dor Nitride を用いたとすると、ガス中の不純物としてO2=5ppmのみが関与した場合でも膜膿中の酸素濃度は少なくとも1017cm-3以上となります。このほか、CO+CO2=5ppm、H2O=1ppm等の不純物に起因する酸素濃度の増加もあります。
すなわち、17号公報、18号公報記載に記載のナトリウム、水分、酸素の濃度を形成された被膜中にて1014cm-3以下にするなどということは1983年当時全く実現不可能でありました。」
と鑑定している。
更に、「引用例1,引用例3の出願当時、1014cm-3以下というような値は、SIMSによっても、前記・・いずれの測定方法によって測定不可能であった。」(異議意見書第5頁)とも主張している。上記大見氏は「5.当時の原料ガスを使用する以上、含有される不純物を1014cm-3以下にすることは実現不可解であったことは前述した通りですが、1014cm-3という濃度の不純物濃度測定自身も当時は不可能でした。」と鑑定している。
次に引用例2に関して、権利者は上記回答書にて、次のように主張している。
「甲第2号証(引用例2のこと)の表2に記載されているSSMS分析で測定した資料は、次のステップに従って調整されたものである。
(1)「薄いアルミニウム箔基板上に約300mgのa-Si:Hを堆積」し、
(2)「10%のHCl溶液を使ってそのアルミニウム箔基材を溶解し」、
(3)「こうして生成した小片を集めてNucleoporeの濾過装置を使って完全に洗浄」し、
(4)試料に「カバーをかけ、試料を110℃の炉の中で一晩乾燥し、」
(5)「a-Si:H粉末を半導体グレードの高純度グラファイトと混合」した。
シリコン表面に対してHCl処理を行うと、1011Na+/cm2レベルまで表面のNa+が除去されるという大きな影響を受ける(乙第10号証(精密洗浄装置と最新応用技術(1991年111月8日、工業試料センター発行、高橋清監修)p25-43)のp.28右欄1〜13行)。そして、甲第2号証における上記(2)及び(3)のステップ、すなわちHCl処理及び濾過装置による完全洗浄によって、アルミニウム箔基材が溶解され、その溶解によってa-Si:Hは微粒子となり、HClが全ての微粒子の全表面に接触し且つそれらの微粒子が洗浄される。したがって、a-Si:HのNa濃度は、上記(1)で薄いアルミニウム箔基材上に堆積したa-Si:HのNa濃度に比べて、まるで異なるものになっている。従って、このようなNa除去処理がなされたa-Si:H微粒子のNa濃度が、甲第2号証の表2に示すSSMS分析において、例え1ppmwであったとしても、その微粒子のNa濃度をもって半導体装置中の半導体におけるNa濃度と同一視することはできない。」

(7)両主張の検討
引用例1及び引用例3について、大見氏の鑑定書によれば、シリコン中の不純物濃度1014cm-3は約0.002ppmに相当し、少なくとも原料ガス中の酸素、水分の濃度はこの値より数千倍高いものであり、従来の原料ガスをそのまま使用しておりますので、原料ガス中の不純物が被膜中に取りこまれてしまい、形成される被膜中の不純物濃度は原料ガス中の不純物濃度と同等かそれ以上の濃度となり、水分、酸素の濃度を形成された被膜中にて1014cm-3以下にするなどということは、1983年当時全く実現不可能であったと認められる。
ナトリウムの不純物濃度を直接示す証拠はないが、ナトリウムだけが1014cm-3以下にできるとの証拠は、異議申立人からも提出されていない。してみると、ナトリウムについても1014cm-3以下にするということは、1983年当時実現不可能であったと判断することが妥当であると認められ、引用例1及び引用例3の「バックグラウンドレベルでのナトリユーム、水分、酸素の濃度を形成された被膜中にて1014cm-3以下にすることができ」るという記載は根拠がない記載であると認められる。
したがって、引用例1及び引用例3には、訂正発明の構成である「非単結晶半導体中にナトリュームが二次イオン質量分析(SIMS)の最低濃度領域で、1×1018cm-3以下であること」を示すものはなく、訂正発明が引用例1または引用例3と同一であるとも、それらから容易に発明できたものであるともいえない。
引用例2について、表2のSSMSにおけるNa濃度が1ppmwであることについて検討するに、権利者の主張するとおり、HCl処理及び濾過装置による完全洗浄によって、アルミニウム箔基材が溶解され、その溶解によってa-Si:Hは微粒子となり、HClが全ての微粒子の全表面に接触し且つそれらの微粒子が洗浄されるので、a-Si:HのNa濃度は、薄いアルミニウム箔基材上に堆積したa-Si:HのNa濃度に比べて、まるで異なるものになっており、測定値は小さい値となると認められる。してみると、異議申立人が、ppmwをppmに換算した、1017cm-3程度の値であるとすることができない。
また、表2のSIMS/LTEにおけるNa濃度が2ppmwであることについて検討するに、引用例2(甲第2号証)の訳文第7頁第1行〜8行に次のことが記載されている。
「a-Si:HのSIMS/LTE分析において、試料から発生する信号、及び真空中で試料表面に衝突する残留ガスの寄与による信号は簡単には分離されないので水素は無視した。計器を10-6トルの圧力で運転すると、残留ガスから発生する水素信号はかなり大きい。この問題を最近発表したが、次の刊行物の主題とする予定である。しかしながら、本報文の目的に対しては、重量ppm値の変動はこれらの試料中の水素濃度の範囲全体にわたって微々たるものでなので、原子ppm値ではなく重量ppm値を考える場合、試料中にある水素を無視しても最終結果にさほど大きい影響を及ぼさない。」
上記記載によれば、重量ppm値を求めるときは水素を無視できるが、原子ppm値のときは無視することができないものであり、重量ppm値を原子ppm値に換算することはできないものと認められる。してみると、SIMS/LTEにおけるNa濃度が2ppmwが、原子ppm値としていくらになるかは不明であり、ひいては、Na濃度を原子ppm値で示すことができない。よって、引用例2は2ppmwを原子ppm値に換算することはできないものであるので、引用例となれない。
なお、異議申立人は、上記上申書にSIMSの測定精度に関する技術文献を添付しているが、引用例1及び3の公開当時の原料ガスにおける不純物が多いこと、及び引用例2の数値については、原子ppm値として比較できないことには、直接関連がないので、検討しない。
また、特許法第36条違反について検討すると、旧請求項1及び3は削除されており、違反はなくなった。また訂正発明(旧請求項2)については、「…半導体において、…半導体装置」としても格別不明確ということはできないし、1×1018cm-3以下とすることの臨界的意義の記載の有無が、第36条違反になるともいえないので、第36条違反であるとはいえない。

(9)独立特許要件のまとめ
よって、訂正発明は、甲第1、2、3号証記載の発明と同一ともいえず、また甲第1号証乃至甲第3号証を組み合わせて容易に発明をすることができたとすることもできないし、不明りょうな記載があるともいえない。
また他に独立して特許を受けることができないともいえないので、上記訂正発明は、独立して特許を受けることができるものである。

(10)訂正の可否のまとめ
よって、上記平成10年8月23日付け訂正請求を認める。

(11)異議申立理由について
上記(5)甲号証記載の発明〜上記(9)独立特許要件についてで検討したように、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明の特許を取り消すことはできない。

(12) まとめ
また、他に本件発明に係わる特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素またはハロゲン元素が添加された真性または実質的に真性なシリコンを主成分とした非単結晶半導体において、前記非単結晶半導体中にナトリュームが二次イオン質量分析(SIMS)の最低濃度領域で、1×1018cm-3以下であることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ナトリュームを極低濃度にした超高純度の半導体材料、およびかかる材料を用いてPIN接合を少なくとも1つ有する半導体装置作成方法、および半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ナトリュームは、半導体、たとえば単結晶シリコン半導体中に、室温ないし300℃の雰囲気で、拡散されないとされていた。また、ナトリュームは、MOS型集積回路に設ける絶縁物の酸化珪素に対してのみ混入し、Si-SiO2界面を有する素子の不安定性を誘発するものとしてよく知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本出願人は、シリコン半導体がかかる「単結晶」ではなく「水素またはハロゲン元素を含む非単結晶半導体、特にアモルファス半導体」において、ナトリュームが150℃ないし400℃の温度できわめて容易にこの非単結晶半導体中に拡散し、かつNa+のイオンになるに加えて、Na-O結合、Si-Na結合、Si-O-Na結合等の結合が構成されるということに問題点を見出した。その結果、本出願人は、これらナトリューム、およびその周辺の結合、特にSi-O-Na結合と、このナトリューム、またはその結合、特に近接する珪素の不対結合手が相互作用をし合い、光の照射、熱アニールにより可逆的な変化、いわゆるステブラ・ロンスキ効果を誘発しているという問題を見出した。
【0004】
このステブラ・ロンスキ効果の発生は、以下の可逆的な化学反応によるものと推定される。
【化1】

上記化学反応から判るように、熱アニール処理を施す前、「・Si」は、不対結合手が余って、水素、酸素、あるいはナトリュームと結合し得る状態になっている。また、熱アニール処理が施された後、珪素とナトリュームとは、その不対結合手によって相互作用をし合う状態となる。そして、「・Si」は、光アニール処理を施すことによって、元の状態に戻る。すなわち、熱アニール処理は、ナトリュームと珪素とを相互作用し合うことにより、再結合中心中和用の水素が珪素と結合できなくなる。そこで、本出願人は、珪素が水素と結合できるように、ナトリュームを除去するための処理を施せばよいことに気が付いた。そして、本出願人は、脱ナトリューム化処理を予め気相反応装置内における石英ジグ、その他の石英部品、およびガラス基板に対して行なえば良いことに着目した。
【0005】
さらに、本出願人は、酸素がNa-O、Na2Oの結合に加えて、Si-O-Siの結合を珪素と共に作るため、キャリア、特にホールのライフタイムを減少させてしまうことに気付いた。そこで、本出願人は、気相反応装置をそのまま利用して、水素またはハロゲン元素を非単結晶半導体に添加して水素またはハロゲン元素と珪素とが結合するようにした。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、気相反応装置をそのまま利用して、非単結晶半導体中にナトリュームを入れないようにした半導体装置作成方法および半導体装置を提供することを目的とする。本発明は、光アニールおよび熱アニールによって発生する可逆的な劣化を防止する半導体装置作成方法および半導体装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の半導体装置作成方法は、真性または実質的に真性なシリコンを主成分とした非単結晶半導体を作成するものであり、気相反応装置における被膜形成領域近傍の石英部材に対し、1000℃ないし1250℃の温度に加熱し、塩素を含む雰囲気に曝すことにより、脱ナトリューム化処理を施す工程と、脱ナトリューム化処理を施した前記石英部材に設けられた前記気相反応装置にガラス基板を配設する工程と、前記気相反応装置を用いて水素またはハロゲン元素が添加された非単結晶半導体を形成する工程とを一つの気相反応装置によって、処理することを特徴とする。本発明の半導体装置は、水素またはハロゲン元素が添加された真性または実質的に真性なシリコンを主成分とした非単結晶半導体中にナトリュームが二次イオン質量分析(SIMS)の最低濃度領域で、1×1018cm-3以下であることを特徴とする。本発明の半導体装置における絶縁基板は、多くとも0.004PPMのナトリュームが含有されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明は、真性または実質的に真性なシリコンを主成分とした非単結晶半導体を一つの気相反応装置によって処理できる半導体装置作成方法で、気相反応装置の被膜形成領域近傍における石英部材に対し、1000℃ないし1250℃の温度に加熱し、かつ塩素を含む雰囲気に曝すことにより、脱ナトリューム化処理を半導体装置を作成するに先立って施した。さらに、同じ気相反応装置において、本発明は、白板ガラスを用いず、合成石英、または脱ナトリューム化処理を施した溶融石英を用いた。さらに、本発明は、好ましくは合成石英を用い、その中のナトリュームを十分に脱ナトリューム化処理を施すことにより、ナトリュームが形成される半導体中に混入しないようにした。
【0009】
特に、この活性半導体層である1層において、そのナトリューム濃度は、その最低濃度領域で、従来の2ないし4×1020cm-3より5×1018cm-3以下、好ましくは1×1018ないし1×1014cm-3、さらに好ましくはスピン密度以下にまで低める。さらに、半導体中に存在する酸素の濃度を5×1018cm-3以下、好ましくは1×1018ないし1×1016cm-3にまで下げることにより、水素またはハロゲン元素が添加された半導体(以下単に半導体という)、たとえば、シリコン半導体中の再結合中心の密度を1×1018cm-3より1×1017cm-3以下、好ましくは概略5×1016cm-3にまで下げるのに成功した。また、本発明は、光照射により光伝導度が劣化するいわゆるステブラ・ロンスキ効果の変化量をAM1(100mW/cm2)2時間の条件下において、1/2以下に軽減または除去することを特徴としている。ナトリュームのような不純物が除去されたシリコン半導体は、珪素と再結合中心中和用に必要な水素または弗素とを主成分とし、さらにフェルミレベルをシフトさせるための3価または5価の不純物が(1014ないし3×1017cm-3)添加されていることを特徴としている。
【0010】
かくして、本発明の方法により形成された非単結晶半導体を用いた光電変換装置において、AM1にて変換効率を10%以上保証すると共に、AM1(100mW/cm2)を照射して10%の劣化のみとするために、その1層中の最低濃度領域に、ナトリュ-ムおよび酸素は、共に5×1018cm-3以下とし、好ましくは1×1018cm-3以下であることがきわめて重要である。本発明の半導体装置作成方法は、かかる半導体の高純度化によって達成される。本発明は、光照射により光起電力を発生する活性半導体層である真性または実質的に真性(PまたはN型用不純物を1×1014ないし5×1017cm-3の濃度に人為的に混入させた、またはバックグラウンドレベルで混入した〉半導体に対し、特にイオンドリフト性、または光劣化特性を誘発するナトリュームを5×1018cm-3以下好ましくは1×1018cm-3以下の極低濃度にしている。
【0011】
【実施例】
図1は本発明の一実施例である半導体装置作成用のプラズマ気相反応炉の概要を示す図である。図1において、反応炉(1)〈溶融石英製直径45mmφ)は、当該反応炉(1)を外部から加熱する外部加熱炉(11)と、反応炉(1)の外部に設けられた高周波発振器(2)(たとえば13.56MHzまたは100MHz)と、当該高周波発振器(2)の電極である一対の電極(3)、(3’)とから構成されている。そして、反応炉(1)の内部には、石英製基板ホルダ(10’)に石英基板(10)が保持されている。
【0012】
本実施例における脱ナトリューム化処理は、以下のごとくに行った。すなわち、99.99%(4ナイン)以上の酸素は、図1に示す導入口(15)より2リットル/分で反応炉(1)内に加えられ、反応炉(1)内を大気圧とした。さらに、99.99%(4ナイン)以上の純度の塩化水素は、50cc/分の流量で、導入口(16)より反応炉(1)内に混合された。この反応炉(1)は、外部加熱炉(11)により1150℃に加熱された。この時被膜が形成されるべき石英基板(10)、および石英基板(10)を保持する石英基板ホルダ(10’)は、同時に加熱された。この加熱処理は、少なくとも24時間行なわれた。すると、この石英ジグ等の内部に残存するナトリュームは、導入口(16)から導入された塩化水素と結合し、NaClとして石英ジグ等の表面より脱気した。すなわち、石英ジグ等は、完全にナトリュ-ムフリ-の状態(ナトリュームによって影響がない状態)を期待することができる。
【0013】
この後、酸素、塩化水素を止めて冷却した後、反応炉(1)は、その内部が真空引きされた。反応性気体には、キャリアガスたとえば酸素、水の不純物を0.1PPM以下、好ましくは1PPBにまで下げた水素を導入口(7)から導入された。
また、珪素膜を形成させようとする場合、超高純度に精製した珪化物気体であるシランは、導入口(4)から導入された。また、P型用不純物であるジボランは、導入口(6)からシランによって500PPMないし5000PPMに希釈させて導入された。また、N型不純物であるフォスヒンは、シランによって5000PPMに希釈されて導入口(6)から導入された。排気系は、ターボ分子ポンプ(22)、およびコントロールバルブ(25)、ストップバルブ(24)、真空ポンプ(23)を経て排気された。反応炉(1)内の圧力は、コントロールバルブ(25〉により0.001torrないし10torr、代表的には0.05torrないし0.1torrに制御された。
【0014】
図2は電気伝導度の測定用系の縦断面図(A)および本発明の一実施例である光電変換装置(B)を示す図である。図2(A)において、ガラス基板(10)上には、一対の電極(ここではクロムを使用)(12)、(12’)が形成され、この上面を覆って真性または実質的に真性のアモルファス半導体(13)が形成される。さらに、上記ガラス基板(10)は、光(14)が下側より照射される。
【0015】
図3は本実施例で得られた半導体の電気特性および従来の半導体の真性半導体の電気特性を示す図である。図3において、基板温度250℃、反応炉(1)内の圧力を0.1torrとした時、曲線(27)は、従来より公知の基板(通常の板ガラス)光伝導度、曲線(27’)は、同じく暗伝導度を示す。また、図3に示す曲線(28)は、前記と同様な条件における脱ナトリューム化処理を施さない石英ガラスの光伝導度で、曲線(28’)は、同じく暗伝導度を示す。さらに、曲線(29)は、前記と同様な条件における低ナトリューム化石英の光伝導度で、曲線(29’)は、同じく暗伝導度を示す。なお、上記光伝導度および暗伝導度は、ガラス基板(10)上に非単結晶シリコン半導体層が0.6μmの厚さに形成された場合のものである。
【0016】
図1において、基板を通常のガラス板を用いた場合、ガラス基板(10)内からの不純物、特にナトリュームが半導体層内に入る。そして、その時の雰囲気が250℃の高温であるため、半導体の内部全体に十分拡散し、イオン伝導と光劣化特性を顕著に示す原因を誘発した。通常の板ガラスに含有される各成分(単位重量%)を以下の表に示す。

但し、Aは日本板ガラスNSG1515
Bは旭ガラス製板ガラス
以上に示す如く、通常の板ガラス中には、多量のナトリュームが混入されていることがわかる。このため、図3に示すような光伝導度曲線(27)、および暗伝導度曲線(27’)か得られた。すなわち、初期状態の高周波出力において、光伝導度(27-1)、暗伝導度(27’-1)が示されている。これらはともに大きく、この1型半導体層は、N型化しており、ナトリュームイオンがドナーとして働いていることが推定される。
【0017】
さらに、ここにAM1(100mW/cm2)の光を室温で2時間照射すると、光伝導度(27-2)は、暗伝導度(27’-2)に変化する。この後、150℃2時間の大気中の照射を行なうことにより、再び初期と同様の値(27-3)、(27’-3)が示めされている。すなわち、光照射および加熱処理によって、板ガラス基板は、可逆性を有する。この特性がステブラ・ロンスキ効果として知られる。さらに、かかる板ガラス基板を用いるのではなく、脱ナトリューム化処理を施していない石英基板を用いてその上に0.6μmの厚さにアモルファスシリコン膜が形成された。すると、図3に示すように、その電気特性として光伝導度(28)、暗伝導度(28’)が得られた。
【0018】
この石英ガラスは、板ガラス基板に比べ、ナトリュームの量が以下の表に示すように、1/1000以下であることが知られている。この特性は、日本石英製透明石英ガラスの成分(単位PPM)を示す。

これより明らかな如く、溶融石英中には、2PPMものナトリュームが混入している。しかし、これを合成石英とすると、その量をさらに1/500にまで下げることができることが判明した。
【0019】
この溶融石英を用いた場合、初期値の光伝導度(28-1)は、板ガラスによる光伝導度(27-1)に比べて小さい。また、溶融石英の暗伝導度(28’-1)は、板ガラスによる暗伝導度(27’-1)と比べて少ない。しかし、光感度幅(フォトセンシティビティ、すなわち光伝導度-暗伝導度)は、5桁以上を有し、板ガラスの場合の4桁しかない場合に比べて1桁以上大きくなっている。しかし、溶融石英における光伝導度は、この状態でSIMS(二次イオン質量分析)、SNMS(二次中性子質量分析)で調べたところ、イオン強度において、板ガラス基板を用いた場合の曲線(27)に比べ、1/10以下の量を低減できていることがわかる。
【0020】
図4は従来例および本発明における半導体の深さのナトリューム分布特性を示す図である。図4において、曲線(37)は、図3曲線(27)、(27’)に対応し、また、曲線(38)は、図3曲線(28)、(28’)にそれぞれ対応して示した深さ分布特性である。この場合においても、基板側(図面右端に高濃度分布を有し、ナトリュームは、歪エネルギーの集中している表面および界面近傍)に高濃度に存在し、全体としてU型(ユ-シェイプ)をしていることがわかる。かくして、半導体表面およびガラス基板表面に大きくパイルアップしていることがわかる。また、図3において、合成石英または脱ナトリューム化処理を施した溶融石英を用い、さらに被膜形成系においても石英ジグ等に関し脱ナトリューム化処理を施した。そして、かかるナトリュームフリーの条件下でアモルファス半導体を形成し、ナトリュ-ムの効果を調べた。もちろんこの場合、シランは、純化精製をし、被膜形成前の排圧を10-10torrの高真空とし、被膜形成中の排気系からの逆流を防ぐため、広域ターボ分子ポンプが用いられた。
【0021】
かくして得られた合成石英基板上の半導体膜の電気伝導度は、図3曲線(29)、(29’)に示されている。上記測定条件は、前述の曲線(27)、(27’)と同様である。しかし、図面から明らかな如く、光伝導度特性の変化がきわめて少なく、また暗伝導度特性においても、ほとんど変化のないものを得ることができた。かかるナトリュームフリーの被膜をSIMSでイオン強度を測定したところ、図4曲線(39)を得た。そして、その最低濃度領域(41)において、イオン強度2×102カウントを有していた。標準サンプルにより較正した結果、9×1017cm-3であることが判明した。このことによりナトリュームの半導体中の濃度は、5×1018cm-3以下、好ましくは1×1018cm-3以下であることが望ましい。そして、この濃度がより少なければ少ないほどすぐれていることがわかる。
【0022】
図2(B)は、図1の製造装置を用いて形成したもので、反応系に対し脱ナトリュ-ム化処理を施した合成石英ガラス基板(32)上にSnO2膜の透明導電膜(33)、さらにP型炭化珪素(SixC1-x0<X<1)(たとえばX=0.8)、またはP型珪素半導体(32)により100=の厚さに形成された。さらに、この後、図1に示す如く、この反応系をターボ分子ポンプ(22)にて、十分(10-8torr以下)真空引きをした後、精製したシランにより真性半導体層(31)が0.6μmの厚さに形成された。さらに、再び真空引きをしてN型半導体層(35)は、シランにメタンを混入してSixCx=0.9とし、さらにフォスヒンを1%の濃度に混入して200Åの厚さに形成された。この後、反射性電極たとえば公知の銀またはアルミニューム(36)が真空蒸着して設けられた。
【0023】
I型半導体層の形成条件は、高周波出力は5W、基板温度210℃とした。すると変換効率11.8%を得ることができた。図5は従来の光電変換装置の定エネルギー分光特性を示す図である。図6は本実施例の光電変換装置の定エネルギー分光特性を示す図である。図5、図6は従来例および本実施例の半導体を用いた光電変換装置の信頼性を考慮した時にきわめて重要な信頼性特性の評価をしたものである。図5における従来例において、図面は定エネルギー分光特性の測定の際、試料に加えるフォトン数を1×1015/cm2とした初期曲線(50)を示す。縦軸は最大点を「1」に規格化量子効率(効率)を示した。この装置にAM1(100mW/cm2)の光を2時間照射する。その後、光感特性曲線(51)のごとく変化し、350mmないし500nmの光に対しその特性がきわめて劣化・低化してしまうことがわかった。
これを150℃で2時間熱アニール処理を加えると曲線(52)となり、特性は350mmないし500mmの短波長光では、曲線(50)に回復し、また600mmないし800nmの長波長光は回復しない。このことよりかかる光照射-熱アニールの処理にて劣化しない、すなわち、ステブラ・ロンスキ効果のない高信頼性の光電変換装置が求められていた。
【0024】
図6は本発明の半導体をI型半導体とし、その中のナトリューム濃度1×1018cm-3の場合の光電変換装置の特性を示す。初期状態の曲線(50)に対し光照射(AM1)を2時間行なうと、かえって特性が向上ぎみの曲線(51)が得られた。さらに、150℃、2時間の熱アニールを行うと曲線(52)がわずかに変化したにすぎなかった。このことにより、I型半導体層中の不純物としてのナトリュームの濃度を減少させることが酸素の濃度を減少させることに加えて、きわめて特性安定(劣化防止)化に重要であることが判明した。加えて、その酸素濃度は、5×1018cm-3またはそれ以下においてきわめて劣化が少ないことが判明した。さらに、この光照射効果(ステブラ・ロンスキ効果)は、そのナトリューム濃度をさらに少なくすることにより、より高信頼性を得ることができ得る。
【0025】
以上のごとく、本発明は、ナトリュームおよび酸素濃度特に不純物としてのナトリュームを少なくしていけばいくほど光電変換装置としての変換効率の低下を防ぐことができる。そして、本発明は、信頼性も向上すると共に、その実用的なナトリューム、および酸素の不純物が5×1018cm-3以下、好ましくは1×1018cm-3以下であることを見いだしたものである。以上の説明において、脱ナトリューム化処理としては同一反応炉を用いて実施した。しかし、ステンレスまたはアルミニュームの反応炉であって、縦型反応炉、またはプラズマ反応、または光励起反応を行なう領域はその近傍に石英が用いられている場合、これらのジグまたは石英部品を6インチの石英の拡散炉内に挿着し、1150℃ないし1175℃とし、この中で塩素を1体積%ないし5体積%添加した酸素雰囲気中で加熱し、脱ナトリューム化処理を2時間以上たとえば1週間行なうことにより、実行してもよい。
【0026】
かくして脱ナトリュ-ム化処理を施した石英ジグ部品をステンレスまたはアルミニューム反応炉に挿着し、被膜形成をすることは有効である。もちろん、とくに半導体にとって最もナトリュームの混入する状態は、加熱されている基板それ自体である。そのため、ごく近傍のホルダ等に限っても、それなりにステブラ・ロンスキ効果を減少させるのに有効である。本発明において形成される被膜は、アモルファスシリコン半導体を主として示した。しかし、SixC1-×(0<X<1)、SixGe1-x(0<X<1)、SixN4-x(0<X<4)、SiO2x(0<X<2)を用いてもよいことはいうまでもない。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、一つの気相反応装置によって処理できる半導体装置作成方法で、被膜形成に先立ち、被膜形成領域近傍の石英部材に対して、1000℃ないし1250℃の温度に加熱し、かっ塩素を含む雰囲気に曝すことにより、脱ナトリューム化処理を行ない、ナトリュームを極低濃度とすると共に、水素またはハロゲン元素が添加された真性または実質的に真性なシリコンを主成分とした非単結晶半導体を作成することができる。本発明によれば、上記のような低ナトリューム含有の上記非単結晶半導体を得ることによって、光照射、あるいは熱アニールによって発生する可逆的な変化(ステブラ・ロンスキ効果)を減少させることができる。本発明によれば、半導体装置に含まれるナトリュームの含有量を1×1018cm-3以下と極低濃度とすることによって、光による劣化特性を防止すると共に、再結合中心の密度を下げることができる。本発明によれば、脱ナトリューム化処理、被膜形成処理、再結合中心を中和する処理を一つの気相反応装置を利用して順次行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例である半導体装置作成用のプラズマ気相反応炉の概要を示す図である。
【図2】
電気伝導度の測定用系の縦断面図(A)および本発明の一実施例である光電変換装置(B)を示す図である。
【図3】
本実施例で得られた半導体の電気特性および従来の半導体の真性半導体の電気特性を示す図である。
【図4】
従来例および本実施例における半導体の深さのナトリューム分布特性を示す図である。
図5】
従来の光電変換装置の定エネルギー分光特性を示す図である。
【図6】
本実施例の光電変換装置の定エネルギー分光特性を示す図である。
【符号の説明】
1・・・反応炉
2・・・高周波発振器
3、3’・・・電極
4、5、6、7、15、16・・・導入口
10・・・ガラス基板
10’・・・石英基板ホルダ
11・・・加熱炉
22・・・ターボ分子ポンプ
23・・・真空ポンプ
24・・・ストップバルブ
25・・・コントロールバルブ
【図面】






 
訂正の要旨 1.訂正事項a
発明の名称を明りょうでない記載の釈明を目的として、「半導体装置」と訂正する。
2.訂正事項b
特許請求の範囲を減縮する目的で、請求項1及び3を削除し、請求項2を請求項1に訂正する。
異議決定日 2000-01-28 
出願番号 特願平6-129851
審決分類 P 1 651・ 532- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 一正  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 内野 春喜
張谷 雅人
登録日 1997-06-06 
登録番号 特許第2657182号(P2657182)
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所
発明の名称 半導体装置  
代理人 渡邉 順之  
代理人 渡邉 順之  
代理人 加茂 裕邦  
代理人 加茂 裕邦  
代理人 小池 信夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ