• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G08B
管理番号 1023895
異議申立番号 異議1999-71826  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-10 
確定日 2000-05-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2823961号「警報受信機」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2823961号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第2823961号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成2年12月1日に特許出願され、平成10年9月4日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人佐竹シヅイにより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年2月7日に訂正請求がなされたものである。

(2)訂正の適否についての判断
ア)訂正明細書の請求項1乃至3に係る発明
訂正明細書の請求項1乃至3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】
操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機に於いて、
前記制御手段は、
電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする警報受信機。
【請求項2】
請求項1記載の警報受信機に於いて、前記制御手段は、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止することを特徴とする警報受信機。
【請求項3】
請求項1記載の警報受信機に於いて、前記非連動スイッチは、受信機内部に設けられていることを特徴とする警報受信機。」

イ)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
訂正事項(a) 請求項1の
「電源入力による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを設定して監視処理に移行する制御手段を備えた警報受信機に於いて、
前記制御手段は、電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、非連動モードを設定し、前記外部出力モードに基づく外部への信号出力を強制的に禁止して監視処理に移行することを特徴とする警報受信機。」を
「操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機に於いて、
前記制御手段は、
電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする警報受信機。」と訂正する。
訂正事項(b) 請求項2の
「請求項1記載の警報受信機に於いて、前記制御手段は、前記非連動モードを設定することで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止することを特徴とする警報受信機。」を
「請求項1記載の警報受信機に於いて、前記制御手段は、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止することを特徴とする警報受信機。」と訂正する。
訂正事項(c) 明細書段落番号【0005】を
「まず本発明は、操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードをスイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機を対象とする。
このような警報受信機につき本発明にあっては、電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする。具体的には、制御手段は、スイッチテーブルに登録している起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデ-タを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止する。また、非連動設定スイッチは、受信機内部に設けられる。」と訂正する。
訂正事項(d) 明細書段落番号【0027】の
「更に図1の実施例にあっては、図2に示したように非連動スイッチ6の操作で起動遮断スイッチと移報停止スイッチのスイッチデータを強制的に書き替える場合を例にとるものであったが、非連動スイッチ6の操作で作動する非連動リレーを設け、このリレー接点を連動制御回路7および移報回路8に各々設け、リレー接点の解放で強制的に連動制御出力及び移報出力を禁止させるようにしてもよい。」を削除する。
訂正事項(e) 明細書段落番号【0028】【0029】を【0027】【0028】と訂正する。
上記訂正事項(a)及び(b)に関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の発明の詳細な説明には、「スイッチテーブル3bは例えば図2に示すテーブル構造をもち、例えば移報停止スイッチや連動制御を解除する起動遮断スイッチ等に対応してスイッチ設定状態を示すオン、オフデータを格納しており、1で機能設定状態、0で機能設定解除状態となる。そしてCPU1は火災信号を受信した際にマトリクステーブル3a及びスイッチテーブル3bを参照して必要な制御を行うことになる。」(段落番号【0009】)、「再び図1を参照するに、本発明にあっては、CPU1に対し新たな外部出力を禁止するための手段として非連動スイッチ6を設けている。CPU1は、電源投入による立ち上げ時に、非連動スイッチ6の操作状態を検知することで、火災受信時に連動して外部に信号を出力する連動制御モード及び移報出力モードの設定及び解除を行うスイッチの状態を強制的に制御する機能を有する。例えば連動制御を禁止する起動遮断スイッチについては、非連動スイッチ6を操作した状態で、電源投入を行うことで、起動遮断スイッチが設定解除状態にあってもスイッチ設定状態を強制的に有効とし、火災受信に対する外部機器200 の連動制御を禁止させることができる。具体的には、図2に示す起動遮断スイッチのオン、オフデータがオフデータ0であっても、非連動スイッチ6を操作した状態で電源投入を行うことでオンデ-タ1に強制的に書き替えることになる。」(段落番号【0010】)、「この点は移報停止スイッチについても同じであり、移報停止スイッチが操作されずにオン、オフデータがオフデータ0であっても、非連動スイッチ6を操作した状態で電源投入を行うことでオンデ-タ1に強制的に書き替えることになる。」、「非連動スイッチ6がオンであればS2に進んで非連動モードを設定する。具体的には、スイッチテーブル3bの起動遮断スイッチ及び移報停止スイッチをオンデ-タ1にセットする。」(段落番号【0011】)、「電源立ち上げ時には非連動スイッチ6の操作により強制的に移報停止中となっているのでS4の移報リレーのオンは行われない。」(段落番号【0012】)、「本発明の電源投入による立ち上げ時には非連動スイッチ6の操作により起動遮断スイッチのスイッチデータはオンデ-タ1に強制的にセットされるため、S8の連動制御出力は行われない。」(段落番号【0013】)と記載され、上記訂正事項(a)及び(b)は、特許明細書に記載された事項の範囲内のものと認められ、また訂正事項(a)及び(b)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項(c)及び(d)は、特許請求の範囲を訂正することに伴って訂正するものであり、また訂正事項(e)は、訂正事項(d)に伴い段落番号を繰り上げ訂正するものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、上記訂正事項は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に該当するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ)独立特許要件
(引用刊行物)
訂正明細書の請求項1乃至3に係る発明の特許に対し、当審が平成11年11月16日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1(実願昭62-155823号(実開平1-61798号)のマイクロフィルム)には、
「第1図において、11は受信機であり、従来と同様に表示部12、鳴動部13、信号処理回路14、受信部15、連動部16が設けられ、受信部15から引き出された感知器回線には火災感知器、例えば煙感知器F1〜Fnが接続され、また鳴動部13から引き出されたベル回線には複数の地区ベル18が接続され、更に連動部16から引き出された制御線には防排煙機器16a及び消火栓設備16bが接続されている。
受信機11に電源を投入した監視状態で感知器回線に接続した煙感知器F1〜Fnのいずれかが発報して発報信号が送出されると、受信部15で発報信号を受信して信号処理回路14に受信信号を出力し、信号処理回路14で火災発生地区を識別して表示部12にどの警戒地区で火災が発生したかを表示し、また、鳴動部13により地区ベル18を鳴動して居住者に火災発生を報知する。更に、連動モードが設定されていれば、信号処理回路14は連動部16に制御信号を出力し、防排煙機器16a及び消火栓設備16bが連動制御される。」(第9頁5行〜第10頁7行)こと、「このような受信機11の構成に加えて本考案にあっては、各種の操作スイッチ1〜10の他に保守点検スイッチ19が新たに設けられ、この保守点検スイッチ19に対応して保守点検モード設定回路20が設けられる。」(第10頁17行〜第11頁3行)こと、「保守点検スイッチ19は火災報知設備の保守点検を行なう際に操作することで、保守点検モード設定回路20に予め工場出荷時等に設定された保守点検モードを信号処理回路14に設定する。即ち、保守点検の際には防排煙機器16a及び消火栓設備16bを連動させる必要がなく、また主ベル17及び地区ベル18を鳴動させる必要がなく、更に試験発報した感知器が復旧したときに受信機11の受信動作を自動的に解除させる必要があることから、保守点検モード設定回路20に対しては例えば次の5つの操作スイッチを切換操作したことに相当する保守点検モードを設定する。
(a)消火栓連動スイッチ2の操作による消火栓連動解除モード;
(b)防排煙連動スイッチ3の操作による防排煙連動解除モード;
(c)主音響停止スイッチ8による主ベル停止モード;
(d)地区音響停止スイッチ9による地区ベル停止モード;
(e)試験復旧スイッチ10による試験復旧モード;
従って、保守点検の際には、このような5つのモード設定が予め行なわれた保守点検モード設定回路20に対し保守点検スイッチ19を保守点検モードに切換操作することによるスイッチ信号を与えることで、信号処理回路14に対し前記(a)〜(e)の各モード設定が一括して行なわれ、消火栓連動スイッチ2、防排煙連動スイッチ3、主音響停止スイッチ8、地区音響停止スイッチ9及び試験復旧スイッチ10を操作する必要はない。」(第11頁4行〜第12頁16行)ことが、また図面第1図には火災報知受信機のブロック図が、記載されている。
同じく引用した刊行物2(特開平1-205300号公報)には、
「各監視区域に備え付けられた複数の火災感知器と、該複数の火災感知器をグループ分けし、該グループ毎の火災感知器からの検出信号に基づいて火災発生の判断処理を行い、判断結果に基づいて防排煙機器等の防災機器を制御し、それぞれ電源装置を備えた複数の中継器と、該複数の中継器を循環的に呼び出して返送データを要求し、該返送データから全体の火災発生の監視、及び上記防災機器の制御を行う中央監視制御装置とから構成される火災監視制御装置において、上記中央監視制御装置には操作入力に基づいて上記中継器の連動停止解除信号を送出する手段と、上記中継器には電源投入から上記連動停止解除信号を受信するまでは上記防災機器の連動制御を禁止する手段とを具備したことを特徴とした火災監視制御装置。」(特許請求の範囲)であって、「この発明は、火災監視制御装置に監視、特に電源投入時の防災機器の誤動作を防止したものである。」(第1頁右下欄2行〜4行)こと、「各中継器2に制御線路7を介し接続された端末器4は中継器2の中央処理装置20の判断によって制御される場合と、中央監視制御装置1からの指令に基づいてされる場合とがある。何れの場合も火災発生と判断されたときに防災機器を動作させるためである。各中継器2の中央処理装置20は電源投入時には端末器4の制御が出来ないようにされている。すなわち連動停止状態になっている。したがって、火災感知器3から火災発生と判断するような検出データがあっても端末器4は制御されない。これは施工時等のように火災感知器3の不良や取り付け不良、また感度の未調整等により誤発報しても防火戸や防排煙装置が動作しないようにして危険を防止している。」(第2頁右下欄4行〜17行)こと、「この発明は中継器毎に端末器を連動制御する火災監視制御装置において電源投入時の防災機器の誤動作を防止したものであるから施工時等のシステム調整時に防火戸や防排煙装置が不用意に動作することが無く所定の調整及び機能チェックを済ました後に連動可能状態にることができシステム調整上極めて有益である。」(第3頁右下欄14行〜20行)ことが、図面第1図には火災監視制御装置の全体を示すブロック図が、第2図には同装置の中央制御装置が実行する処理プログラムの一例を示すフローチャートが、第3図及び第4図は同装置の中継器が実行する処理プログラムの一例を示すフローチャートが、記載されている。
同じく引用した刊行物3(特開平2-14400号公報)には、
「本発明は、各種状態を検出するセンサからの検出信号に応じて警報発生、他への移報等の動作を行なう警報装置に関する。」(第1頁左下欄18行〜20行)こと、「警報装置は、このようなセンサからの検出信号に応じて警報発生等の動作を行なう連動機能を備えている。警報装置における連動には、警報発生のほか、他への移報、防排煙機器や消火設備への作動指令等が含まれる。現在使用されている警報装置は、動作試験や点検の際には不必要な警報発生を避けるため、操作員がスイッチ操作で連動機能を一時的に停止できる連動停止機能も備えている。」(第1頁右下欄12行〜20行)こと、「第1図に示す警報装置1は、1又は2以上の伝送ライン2を介して各種状態を検出するセンサ3と接続し、各センサ3からの検出信号に応じて警報発生、他の装置(例えばビル管理装置)への移報等の動作を行なう連動機能と、その連動機能を連動停止スイッチの操作により一時的に停止する連動停止機能とを備えている。このような警報装置としては、防災システムにおける自動火災報知盤、或は防犯システムにおける防犯管理装置等があり、それぞれ所定の場所、例えばビルの警備室に設置される。」(第2頁左下欄12行〜右下欄2行)ことが、記載されている。
同じく引用した刊行物4(実公昭57-38792号公報)には、
「異常検出信号を受信したときに鳴動する警報器を備えた受信機の筺体内に、異常検出信号を受信しても上記警報器の鳴動を停止させるように操作するロック式の操作スイッチを設け、上記受信機の前面パネルには、………ノンロック式の操作スイッチを設けたことを特徴とする警報受信機の警報鳴動停止装置。」(実用新案登録請求の範囲)であって、「本考案は、火災感知器、盗難検出器、又はガス漏れ検出器等を用いた警報設備で用いられる受信機の警報器の鳴動停止装置に関」する(第1頁1欄25行〜27行)こと、「保守点検時に使用する操作スイッチは、異常検出信号を受信しても警報器を作動しないようにするロック式のスイッチとし、且つ点検時にしか使用しないことから、このスイッチは受信機筺体内に設け」る(第1頁2欄33行〜37行)ことが、記載されている。
(対比、判断)
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件請求項1に係る発明」という。)と刊行物1及び2記載のものとを対比すると、刊行物1及び2のいずれにも本件請求項1に係る発明の構成要件である、『外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行する』こと、及び『電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行する』ことが、記載されておらず、またこの構成を示唆する記載も認められない。さらに、刊行物3には、「警報装置において、センサ(火災感知器)からの検出信号に応じて警報発生等の動作を行なう連動機能を有すること、また、この連動には、警報発生のほか、他への移報、防排煙機器や消化設備への作動指令が含まれること、さらにはその連動機能を連動停止スイッチの操作により一時的に停止する連動停止機能を備えること」は記載されているが、上記本件請求項1に係る発明の構成要件については記載も示唆もないものであり、また、刊行物4には、「警報受信機(火災報知機)において、異常検出信号を受信しても警報器の鳴動を停止させる操作スイッチを受信器の筺体内に設けること、すなわち該操作スイッチを受信器内部に設けること」は記載されているが、上記本件請求項1に係る発明の構成要件については記載も示唆もないものである。
そうしてみると、本件請求項1に係る発明は、刊行物1乃至4記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、訂正明細書の請求項2及び3に係る発明(以下、「本件請求項2及び3に係る発明」という。)は、請求項1を引用したものであって、請求項1の構成をそのまま具備するから、本件請求項2及び3に係る発明も刊行物1乃至4記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件請求項1乃至3に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

エ)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項で準用する第126条第2項〜第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

(3)特許異議の申立てについての判断
ア)本件発明
本件請求項1乃至3に係る発明は、上記「(2)ア)」で認定したとおりの特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたものである。

イ)申立て理由の概要
特許異議申立人佐竹シヅイは、
甲第1号証:特開平1-205300号公報
甲第2号証:特開昭64-27971号公報
甲第3号証:特開昭59-123689号公報
甲第4号証:特開平2-14400号公報
甲第5号証:実開平1-61798号公報及びそのマイクロフィルム
甲第6号証:実公昭57-38792号公報
を提出し、本件請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に該当し、本件請求項1乃至3に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである、と主張している。
ウ)判断
甲第1号証は刊行物2に、甲第4号証は刊行物3に、甲第5号証は刊行物1に、甲第6号証は刊行物4に、それぞれ対応し、甲第1号証、甲第4号証乃至甲第6号証には、上記「(2)ウ)」に記載した発明が記載されている。
また、甲第2号証には、「従来より、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサその他の情報処理装置などのホスト装置に接続して用いる各種の記録装置が知られている。このような装置では、記録速度、記録文字ピッチ、記録桁数、記録品位などの多数の動作モードを有し、それらを選択して使用できるようになっているものが多い。」(第1頁右下欄3行〜9行)こと、「標準的な動作モードを設定するため、装置の内部あるいはDIP(ディップ)スイッチを設け、このDIPスイッチによって電源を起動した直後の動作モードを設定するようにした装置も知られている。」(第1頁右下欄15行〜19行)ことが、甲第3号証には、「電源投入直後にオン・ライン又はオフ・ラインに設定されるプリンタであって、オン・ライン キーおよびオフ・ライン キーを備えたものにおいて、電源投入直後のライン状態をオン・ライン又はオフ・ラインに初期固定するように予め任意に選択させる切換スイッチを設けたことを特徴とするプリンタ。」(特許請求の範囲)が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲第1号証乃至甲第6号証には、いずれにも上記本件請求項1乃至3に係る発明の構成要件であるところの、『外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行する』こと、及び『電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行する』ことが記載されておらず、またこの構成を示唆するところもないものである。
したがって、本件請求項1乃至3に係る発明が、甲第1号証乃至甲第6号証記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1乃至3に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1乃至3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
警報受信機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機に於いて、
前記制御手段は、
電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする警報受信機。
【請求項2】
請求項1記載の警報受信機に於いて、前記制御手段は、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止することを特徴とする警報受信機。
【請求項3】
請求項1記載の警報受信機に於いて、前記非連動設定スイッチは、受信機内部に設けられていることを特徴とする警報受信機。
【0001】
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は、火災等の異常検出に連動して外部の機器を制御したり移報信号を送出する警報受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば火災受信機にあっては、火災検出信号の受信警報に連動して外部に設置された防火戸等の機器を作動させる制御機能や、消防署等に火災発生を自動通報するための移報信号の出力機能等が設けられている。これらの外部機器の連動制御及び移報出力は、スイッチ操作により設定され、また設定を解除することができ、管理責任者の判断により必要に応じて連動制御モード及び移報出力モードの設定或いは解除が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の警報受信機にあっては、建物等に対する火災警報設備の設置工事が完全に済んでいない状態、例えば受信機により連動制御される現場の防火戸レリーズ等の機器の設置が済んでいない状態で、設置が完了した受信機の電源を投入して調整確認等を行う場合がある。この時、受信機から感知器までの信号線及び防火戸、レリーズ、シャッター等の機器から受信機までの確認線等が誤配線されている可能性があり、この誤配戦による火災受信により、もし連動制御モードや移報出力モードの設定状態にあったとすると、誤って外部機器の連動制御や移報出力が行われてしまい、例えば防火戸、レリーズ、シャッター等が急に連動制御されてしまうと、人身事故につながる恐れがある。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、電源投入による立ち上げ時に連動制御モードや移報出力モードの設定状態にあっても、受信機から外部に対する信号出力を確実に防止できるようにした警報受信機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
まず本発明は、操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機を対象とする。
このような警報受信機につき本発明にあっては、電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする。具体的には、制御手段は、スイッチテーブルに登録している移報停止スイッチと起動遮断スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止する。また、非連動設定スイッチは、受信機内部に設ける。
【0006】
【作用】
このような構成を備えた本発明の警報受信機によれば、電源投入による立ち上げ時に、例えば非連動設定スイッチを操作しておくことで、もし連動制御モードや移報出力モードが設定されていたとしても強制的にこれらの外部出力モードによる動作を禁止し、端末機器の取付、調整等を行っていても不意に作動したりすることによる事故等を防止でき、安全に取扱うことができる。
【0007】
【実施例】
図1は火災警報設備を例にとって本発明の一実施例を示した実施例構成図である。
図1において、10は火災受信機であり、制御手段としてCPU1を内蔵しており、CPU1に対しては、火災受信機回路2、メモリ部3、表示部4、操作部5、連動制御回路7、移報回路8および外部機器動作確認回路9を設けている。火災受信回路2に対しては信号線L1を介して火災感知器100が接続される。また連動制御回路7には制御線L2を介して防火戸ラッチレリーズ等の防災機器が外部機器200として接続される。又、外部機器動作確認回路9は、確認線L4を介して外部機器200が接続される。更に移報回路8の出力は信号線L3により電話回線を利用した自動通報装置等に与えられる。
【0008】
メモリ部3には連動制御に使用するマトリクステーブル3aと、操作部5に設けた各種のスイッチ操作によるスイッチ設定モードを登録するスイッチテーブル3bが格納される。マトリクステーブル3aは、例えば感知器回線で決まる火災発生場所に対する連動制御の対象となる外部機器200との対応関係が予め設定されており、火災発生場所をアドレスポインタとして連動対象となる外部機器を読出し、連動制御回路7により外部機器200に対し制御信号を出力する連動制御を行う。
【0009】
スイッチテーブル3bは例えば図2に示すテーブル構造をもち、例えば移報停止スイッチや連動制御を解除する起動遮断スイッチ等に対応してスイッチ設定状態を示すオン、オフデータを格納しており、1で機器設定状態、0で機器設定解除状態となる。そしてCPU1は火災信号を受信した際に、マトリクステーブル3a及びスイッチテーブル3bを参照して必要な制御を行うことになる。
【0010】
再び図1を参照するに、本発明にあっては、CPU1に対し新たに外部出力を禁止するための手段として非連動スイッチ6を設けている。非連動スイッチ6は、火災受信時に外部に信号を出力する連動制御モード及び移報出力モードの設定及び解除を行うスイッチの状態を強制的に制御する機能を有する。
例えば連動制御を禁止する起動遮断スイッチについては、非連動スイッチ6を操作しておくことで、起動遮断スイッチが設定解除状態にあってもスイッチ設定状態を強制的に有効とし、火災受信に対する外部機器200の連動制御を禁止させることができる。具体的には、図2に示す起動遮断スイッチのオン、オフデータがオフデータ0であっても、非連動スイッチ6の操作でオンデータ1に強制的に書き替えることになる。
【0011】
この点は移報停止スイッチについても同じであり、移報停止スイッチが操作されずにオン、オフデータがオフデータ0であっても、非連動スイッチ6の操作でオンデータ1に書き替える。
図3は図1のCPU1による電源投入による立ち上げ時の制御処理を示したフローチャートである。火災受信機10の電源を投入して立ち上げると、パワーオンスタートによりCPU1が処理を開始し、まずステップ(以下「ステップ」は省略)S1で非連動スイッチ6がオンか否かチェックする。非連動スイッチ6がオンであればS2に進んで非連動モードを設定する。具体的にはスイッチテーブル3bの起動遮断スイッチ及び移報停止スイッチをオンデータ1にセットする。このためS3の正常監視処理に移行した状態で、火災感知器100からの火災信号を受けても、起動遮断スイッチ及び移報停止スイッチの設定モードが有効になっているため、外部機器に対する連動制御及び移報出力は行われない。
【0012】
図4は図3の正常監視処理の内容を示したフローチャートである。図4において、まずS1で火災受信の有無を監視しており、火災を受信するとS2に進んでマトリクステーブル3aからマトリクスデータを読込み、火災発生場所に対応して連動対象となる外部制御機器を特定する。続いてS3で移報停止中か否かチェックし、移報停止中でなければS4で移報回路8に設けている移報リレーをオンするが、電源立ち上げ時には非連動スイッチ6の操作により強制的に移報停止中となっているのでS4の移報リレーのオンは行われない。
【0013】
続いてS5で主音響停止中か否かチェックし、主音響停止スイッチのスイッチデータがオフデータ0であればS6で主音響を鳴動し、オンデータ1であればS7に進む。
S7では連動解除のための起動遮断スイッチがオンか否かチェックし、オフであればS8に進んで連動制御出力を生ずるが、本発明の電源投入による立ち上げ時には非連動スイッチ6の操作により起動遮断スイッチのスイッチデータはオンデータ1に強制的にセットされているため、S8の連動制御出力は行われない。
【0014】
図5は図1火災受信機10の外観説明図である。図5において、火災受信機10のパネル画面には上部より機能表示部12、地区表示部14が設けられ、機能表示部12には火災警報表示を含む受信機の全体的な機能表示を代表的に行なう。また地区表示部14には感知器回線毎に定められた地区名が銘板表示され、火災受信時には対応する地区灯を表示する。
【0015】
地区表示部14に続いては、操作部16が設けられ、この操作部16には、地区ベルの鳴動を停止する地区音響停止スイッチ、地区ベルの停止状態を解除する地区音響停止解除スイッチ、受信機の主音響を停止する音響停止スイッチ(但し、停止後に再度火災信号が受信されれば、主音響は鳴動する)等を設けている。
操作部16の下側にはスイッチ扉18を備えた操作部20が設けられ、この実施例にあっては第2操作部20について本発明の操作装置を設けている。更に図1の非連動スイッチ6については、火災受信機10内部に設置されており、前面パネルを開いて非連動スイッチ6を操作するようになる。
【0016】
図6は図5の操作部20を取出して示したもので、操作部20は操作部22と表示部24の2つに分かれている。操作部22には選択アップスイッチ26、選択ダウンスイッチ28、実行スイッチ30及び解除スイッチ32の4つが設けられている。また表示部24にはこの実施例にあっては9つの表示部36-1〜36-9を設けており、各表示部36-1〜36-9の右側に表示部による設定機能の項目表示が行なわれている。具体的には、蓄積解除、障害音響停止、移報停止、起動遮断、試験復旧、火災試験、予備電源試験、主音響停止(火報)及び主音響停止(防排煙)の9つの操作機能が表示されている。これら9つの操作機能を更に詳細に説明すると次のようになる。
(1)蓄積解除
受信機の蓄積機能を解除し、即時に火災受信表示を行なえる状態とする。
(2)障害音響停止
障害音響を完全に停止する。停止後に再度障害信号を受信しても再鳴動は行なわない。
(3)移報停止
外部に対する移報信号の出力を遮断する。
(4)起動遮断
防排煙機器等の連動機器への作動信号を遮断する。
(5)試験復旧
試験中に火災作動状態になると約2秒後に一度復旧動作を行なう。
(6)火災試験
火災信号を受信した際に受信機が正常に火災作動できるかどうかを試験する。感知器回線を自動的に選択して行なう自動火災試験の他に特定回線を指定した火災試験もできる。
(7)予備電源試験
予備電源の電源容量を確認する。
(8)主音響停止(火報)
火災監視用の感知器からの発報により鳴動する受信機の主音響を停止する。
(9)主音響停止(防排煙)
制御用の火災感知器からの発報信号による受信機の主音響を停止する。
【0017】
図7は図6の操作部20のスイッチ制御回路を示した実施例回路図である。
図7において、40は選択回路であり、選択回路40に対しては図6に示した選択アップスイッチ26、選択ダウンスイッチ28、実行スイッチ30及び解除スイッチ32のそれぞれが設けられる。選択回路40はカウントデコーダ42を有し、選択アップスイッチ26はカウントデコーダ42のアップ動作を指定するUP端子に与えられ、また選択ダウンスイッチ28の出力はカウントデコーダ42のダウン動作を指定するDOWN端子に与えられる。
【0018】
更に選択アップスイッチ26と選択ダウンスイッチ28の出力はORゲート44を介してカウントデコーダ42のカウント動作用のクロック端子CLKに与えられる。カウントデコーダ42はORゲート44からのカウントクロックのダウンカウントまたはアップカウントを行なうカウンタと、カウンタの2進出力をデコードして図6に示した複数の表示部に対応した出力端子に順次選択出力を生ずるデコーダとで構成される。
【0019】
この実施例において、カウントデコーダ42はデコーダ端子D1〜Dnに順次ビット1となる選択出力を生ずる。カウントデコーダ42の出力はANDゲート46-1〜46-nとANDゲート48-1〜48-nの各々に入力される。ANDゲート46-1〜46-nの他方の入力には実行スイッチ30の出力が接続される。またANDゲート48-1〜48-nの他方の入力には解除スイッチ32の出力が接続される。
【0020】
ANDゲート46-1〜46-nの出力は機能設定回路50-1〜50-nにネーブル信号として与えられ、またANDゲート48-1〜48-nの出力は機能設定回路50-1〜50-nに対しディスネーブル信号として与えられる。
機能設定回路50-1〜50-nには、例えば図6の表示部24に示したような操作項目に対応した機能を設定する回路手段が設けられており、ネーブル信号を受けると予め設定された機能を有効とし、ディスネーブル信号を受けると設定している機能を解除する。
【0021】
更に選択回路40に設けたカウントデコーダ42の出力は、表示器36-1〜36-nに与えられており、デコーダ出力がビット1で表示器は点灯、ビット0で消灯する。
次に図7の実施例の動作を図8の動作フロー図を参照して説明する。
まず初期状態にあっては、各回路部は停止状態にあり、操作部22に設けた選択アップスイッチ26あるいは選択ダウンスイッチ28のいずれか一方をオン操作すると、このオン操作がステップS1で判別されて動作がスタートし、ステップS2で初期設定としてカウントデコーダ42のカウント値NをN=1にセットする。N=1の時、カウントデコーダ42の出力D1がビット1となり、従って動作スタートでまず表示部36-1が点灯する。
【0022】
次に選択アップスイッチ26を操作したとすると、選択アップスイッチ26の操作がステップS3で判別され、選択アップスイッチ26の一回の操作でNが1つインクリメントされ、従ってカウントデコーダ42の出力はD1からD2に移り表示部36-2の点灯表示に切り替わる。
一方、選択ダウンスイッチ28を操作すれば選択ダウンスイッチ28の操作がステップS5で判別されてステップS6に進み、Nを1つ少なくし初期状態でのカウントデコーダ42の出力はD2から最後のDnに移り、表示器36-nの点灯状態に切り替わる。
【0023】
このような選択アップスイッチ26または選択ダウンスイッチ28の操作により図3の表示部24に示されるような複数の操作機能の中の対象とする操作機能の表示部を点灯状態とする表示切り替えを行なったならば、選択された機能を設定するため実行スイッチ30を操作する。
実行スイッチ30の操作は、ステップS7で判別され、ステップS8に進んで対応する機能設定が行なわれる。例えば選択アップスイッチ26の操作によりカウントデコーダ42の出力D2がビット1となっていた場合、実行スイッチ30の操作によりANDゲート46-2が許容状態となり、機能設定回路50-2にネーブル信号が与えられ、機能設定回路50-2に予め設定されている操作機能を有効とする。この機能設定回路50-1〜50-nは図1に示したスイッチテーブル3bの内容に基づいた制御機能を実現する。
【0024】
一方、既に設定されている機能を解除したい場合には、同様に選択アップスイッチ26または選択ダウンスイッチ28により解除対象となる機能の表示部を選択した状態で解除スイッチ32を操作すると、解除スイッチ32の操作がステップS9で判別され、ステップS10に進んで選択された機能の設定状態を解除する。
【0025】
ステップS8の機能設定あるいはステップS10の設定解除が終了するとステップS11に進み、操作終了か否か判別し、終了でなければ再びステップS3に戻って次の操作に備え、操作終了を判別すれば一連を処理を終了する。
このステップS11における終了判別は、一定時間以上実行スイッチ30及び解除スイッチ32が操作されない状態を判別してもよいし、選択アップスイッチ26と選択ダウンスイッチ28の同時操作から終了を判別するようにしてもよい。
【0026】
尚、図7の実施例にあっては、選択アップスイッチ26と選択ダウンスイッチ28で成る2つの選択スイッチを設けているが、表示部の選択方向を一方向とすることで選択スイッチを1つにしてもよい。
また、選択アップスイッチ26または選択ダウンスイッチ28のいずれかの操作で動作をスタートさせているが、特にスイッチの種別を限定せず、選択アップスイッチ26、選択ダウンスイッチ28、実行スイッチ30または解除スイッチ32のいずれかの操作で動作をスタートさせてもよい。この点はタイマで動作停止を行なう場合も同様であり、4つのスイッチのいずれも一定時間内に操作されない時には動作を停止させる。
【0027】
また上記の実施例は火災受信機を例にとるものであったが、盗難受信機等の適宜の警報受信機にそのまま適用できる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、警報受信機の電源投入による立ち上げ時に、非連動スイッチを操作しておくことで、連動制御や移報出力等の外部出力を確実に防止することができ、防火戸、レリーズ、シャッター及び火災時消防機関に通報する自動通報装置等の誤制御を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例構成図
【図2】
本発明の火災受信機に設けたスイッチテーブルの説明図
【図3】
図1の電源立ち上げ時の動作フロー図
【図4】
図3の正常監視処理を示した動作フロー図
【図5】
本発明の火災受信機の外観説明図
【図6】
図6図の扉が付いた操作部の説明図
【図7】
図6の操作部のスイッチ制御回路図
【図8】
図7のスイッチ制御回路の動作フロー図
【符号の説明】
1:CPU
2:火災受信回路
3:メモリ部
3a:マトリクステーブル
3b.:スイッチテーブル
4:表示部
5:操作部
6:非連動スイッチ
7:連動制御回路
8:移報回路
9:外部機器動作確認回路
10:火災受信機
12:機能表示部
14:地区表示部
16,20,22:操作部
18:スイッチ扉
24:表示部
26:選択アップスイッチ
28:選択ダウンスイッチ
30:実行スイッチ
32:解除スイッチ
36-1〜36-n:表示器
40:選択回路
42:カウントデコーダ
44:ORゲート
46-1〜46-n,48-1〜48-n:ANDゲート
50-1〜50-n:機能設定回路
100:火災感知器
200:外部機器
 
訂正の要旨 本件訂正請求の要旨は、特許第2823961号の明細書を本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正するもので、その訂正の内容は、下記訂正事項(a)〜(e)のとおりである。
訂正事項(a)特許請求の範囲の請求項1の
「電源入力による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを設定して監視処理に移行する制御手段を備えた警報受信機に於いて、
前記制御手段は、電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、非連動モードを設定し、前記外部出力モードに基づく外部への信号出力を強制的に禁止して監視処理に移行することを特徴とする警報受信機。」の記載を、
「操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードを前記スイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機に於いて、
前記制御手段は、
電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする警報受信機。」と訂正する。
訂正事項(b)特許請求の範囲の請求項2の
「請求項1記載の警報受信機に於いて、前記制御手段は、前記非連動モードを設定することで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止することを特徴とする警報受信機。」の記載を、
「請求項1記載の警報受信機に於いて、前記制御手段は、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止することを特徴とする警報受信機。」と訂正する。
訂正事項(c) 明細書段落番号【0005】の記載を、
「まず本発明は、操作部に設けた外部への信号出力を停止させる起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を有効とするオンデータ又は停止機能を解除するオフデータを登録したスイッチテーブルをメモリ部に格納し、電源投入による立ち上げ時に、火災検出に連動して外部に出力信号を出力する外部出力モードをスイッチテーブルのオンデータ又はオフデータに従い設定して監視処理に移行するCPUで構成される制御手段を備えた警報受信機を対象とする。
このような警報受信機につき本発明にあっては、電源投入による立ち上げ時に、非連動設定スイッチの操作を検知した場合には、前記スイッチテーブルに登録している前記起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能が有効となるオンデータに強制的に書き替えて監視処理に移行することを特徴とする。具体的には、制御手段は、スイッチテーブルに登録している起動遮断スイッチと移報停止スイッチの停止機能を解除するオフデータを停止機能を有効とするオンデータに強制的に書き替えることで、連動制御モードの設定に基づく外部機器の連動制御及び移報出力モードの設定に基づく移報出力を強制的に禁止する。また、非連動設定スイッチは、受信機内部に設けられる。」と訂正する。
訂正事項(d)明細書段落番号【0027】の
「更に図1の実施例にあっては、図2に示したように非連動スイッチ6の操作で起動遮断スイッチと移報停止スイッチのスイッチデータを強制的に書き替える場合を例にとるものであったが、非連動スイッチ6の操作で作動する非連動リレーを設け、このリレー接点を連動制御回路7および移報回路8に各々設け、リレー接点の解放で強制的に連動制御出力及び移報出力を禁止させるようにしてもよい。」の記載を削除する。
訂正事項(e)明細書段落番号【0028】【0029】を【0027】【0028】と訂正する。
異議決定日 2000-04-07 
出願番号 特願平2-400053
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長 由紀子辻 徹二古屋野 浩志  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 櫻井 康平
岡本 昌直
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823961号(P2823961)
権利者 ホーチキ株式会社
発明の名称 警報受信機  
代理人 竹内 進  
代理人 竹内 進  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ