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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F |
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管理番号 | 1024331 |
異議申立番号 | 異議1997-71435 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-10-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-04-01 |
確定日 | 2000-08-16 |
異議申立件数 | 4 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2540451号「ポリオレフィン重合用触媒成分」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2540451号の特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 特許第2540451号に係る発明についての出願は、昭和59年6月6日に特許出願(優先権主張 1983年6月6日 米国)された特願昭59-116342号の一部を新たな特許出願とし、平成10年6月12日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、片山晴子、吉川喜一郎、ヘキスト・アクチェンゲゼルシャフト及びチッソ株式会社より特許異議の申立がなされ、平成9年9月29日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年4月14日付けで訂正請求(その後取り下げ)がなされ、再度平成11年7月22日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年2月17日付けで訂正請求なされたものである。なお、訂正請求書に対し補正指令がなされたところ、その指定期間内である平成12年7月12日付けで、訂正請求書の補正がなされた。 II.訂正について 1.訂正の内容 訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。 (1)訂正事項a:請求項1の「ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基」を、 「ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのとき R″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基」と訂正し、 (2)訂正事項b:段落【0014】の「R″は炭素素数1〜4のアルキレン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはジアルキルケイ素、又は(C5R′m)環2個を結合する」を、 「R″は(C5R′m)環2個を結合する炭素素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、」に訂正し、 (3)訂正事項c:段落【0016】の「ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基」を、 「ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基」と訂正し、 (4)訂正事項d:段落【0026】の「R″は炭素素数1〜4のアルキレン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはジアルキルケイ素、又は(C5R′m)環2個を結合する」を、 「R″は(C5R′m)環2個を結合する炭素素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、」と訂正し、 (5)訂正事項e:段落【0033】の「Cp2Zr=CH2P(C6H5)2CH3」を、 「Cp2Zr=CH2P(C6H5)2CH3」と訂正し、 (6)訂正事項f:段落【0035】の「ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどのハフノセン誘導体」を、 「ハフニウムジメチルなどのハフノセン誘導体、及びビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド」と訂正し、 (7)訂正事項g:段落【0037】の「ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基であり、MeがHfのときR“は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基」を、 「ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基」と訂正し、 (8)訂正事項h:段落【0056】表1の下の注釈の「C*:ビス(β-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド」を、 「C*:ビス(β-フェニルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド」と訂正し、 (9)訂正事項i:段落【0060】の「ジメチルシリルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド」を、 「ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド」と訂正する。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、訂正前の明細書に「・・・R″は炭素数1〜4のアルキレン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはジアルキルケイ素、又は(C5R′m)環2個を結合するアルキルホスフィンもしくはアルキルアミン基であり・・・」(特許公報第7欄第15行〜第18行)なる記載があるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、 訂正事項e,f,h,iは、誤記の訂正を目的とするものであり、 訂正事項b,c,d,gは、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、前記訂正事項a〜iは願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。 (2)独立特許要件について 訂正後の請求項1に係る発明は、後記IV.に示すように独立して特許を受けることができることは明らかである。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.本件発明 訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(以下、本件発明という)。 「下記の二つの一般式のいずれかで表されるオレフィン重合用触媒成分。 (C5R′4)R″(C5R′4)MeQ2 又は R″(C5R′4)2MeQ′ 式中、MeはZr又はHfであり、 (C5R′4)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R′は同一もしくは異なるもので、水素及び炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基からなる群から選択したものであるか、或いは2つの隣接するR′置換基が一体となって4乃至6員縮合環を形成したものであり、MeがZrのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けするジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのとき R″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、各Qは同一もしくは異なるもので、炭素数1〜20のアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基又はハロゲンであり、Q′は炭素数1〜20のアルキリデン基である。」 IV.異議申立について 1.異議申立人の主張の概要 (1)特許異議申立人 片山晴子は、甲第1号証(特公昭34-642号公報;刊行物1)、甲第2号証(米国特許第4404344号明細書;刊行物2)、甲第3号証(Zeitschrift Fur Naturforschung 第38b、第3号、1983年、第321頁〜第325頁;刊行物3)を提出し、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、また、訂正前の明細書の記載に不備があるため、訂正前の請求項1に係る明の特許は、特許法第36条第4項及び第5項の規定を満足しない特許出願に対してされたものであるから、請求項1に係る発明の特許は取り消すべき旨、 (2)特許異議申立人 吉川喜一郎は、甲第1号証(刊行物3と同一)、甲第2号証(特開昭58-19309号公報;刊行物4)、甲第3号証(Makromol.Chem.,Rapid Commun.4,417-421、1983年;刊行物5)、甲第4号証(米国特許第3242099号明細書;刊行物6)、甲第5号証(Polymer Bulletin,9,(8/9),March、1983年;刊行物7)を提出し、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、また、訂正前の明細書の記載に不備があるため、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第36条第4項及び第5項の規定を満足しない特許出願に対してされたものであるから、請求項1に係る発明の特許は取り消すべき旨、 (なお、特許異議申立人・吉川喜一郎の特許異議申立書には、「本願は、特許法第36条第6項(第113条第1項第4号)の規定により取り消されるべきものである。」と記載されているが、これは明らかな誤記である。) (3)特許異議申立人・ヘキスト・アクチェンゲゼルシャフトは、甲第1号証(Tetrahedron Letters, No.28,pp.2497〜2499,1970年;刊行物8)、甲第2号証(J.Am.Chem.Soc.,95:9,pp.2934-2939,May 2,1973;刊行物9)、甲第3号証(刊行物4と同一)、甲第4号証(DIPLOMARBEIT UNTERSUCHUNGEN UBER HOMOGENE,CHLORHALTIGE ZIEGLER-KATALYSATOREN vorgelegt von Klaus Kulper;これをKlaus Kulper論文という。)、甲第5号証(Organometallic Chemistry of Titanium,Zirconium and Hafnium,Academic Press,1974年;刊行物10)、甲第6号証( Monatshefte fur Chemie 112,887〜897,1981年;刊行物11)、甲第7号証(刊行物3と同一)、甲第8号証(Nikolaos Klourasの論文、1977年;刊行物12)、甲第9号証(Renke MottweilerのDissertation(学位論文)1975年;刊行物13)、甲第10号証(Prof.Dr.Walter Kaminskyの証明書)、甲第11号証(ハンブルグ大学化学図書館員の証明書)、甲第12号証(ハンブルグ大学化学図書館の”Diplomarbeiten”)、甲第13号証(ハンブルグ大学年報、1981)、甲第14号証(Maria Buschermohleの論文)、甲第15号証(Regina Spiehlの論文)を提出し、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る発明の特許は取り消すべき旨、 (4)特許異議申立人・チッソ株式会社は、甲第1号証の1(Klaus Kulper論文である)、甲第1号証の2(ハンブルグ大学化学科図書館に係る証明書)、甲第1号証の3(ハンブルグ大学化学科図書館に係る証明書)、甲第2号証(刊行物4と同一)、甲第3号証(Olefinpolymerization mit loslichen,insbesondere halogenfreien Zieglar-Katalysatoren unter Verwendung von oligomerem Metylalumoxan als Aluminiumalkylkomponente,JENS HERWIG 1979.7.13;刊行物14)及び参考資料1〜3を提出し、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、さらに、訂正前の明細書の記載に不備があるため、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第36条第4項及び第5項の規定を満足しない特許出願に対してされたものであるから、請求項1に係る発明の特許は取り消すべき旨を主張をしている。 2.異議申立についての判断 (1)特許法第29条第1項及び同法第29条第2項違反について (i)刊行物等の記載事実: 刊行物1には次の記載がなされている。 「ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム塩類、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム塩類、並にビス(シクロペンタジエニル)バナジウム塩類からなる群から選ばれ、しかもシクロペンタジエニル分がシクロペンタジエニル及びアルキルシクロペンタジエニル基からなる群から選ばれた化合物と周期律表の第I-A族、第II-A族、第II-B族、 第III-A族の金属からなる群から選ばれた金属のアルキル金属化合物とを混合して作られた触媒にエチレンを接触させることを特徴とするエチレンの重合方法。」(特許請求の範囲) 刊行物2には、(シクロペンタジエニル)nMeYn(但し、Me=ジルコニウム、n=1〜4、Y=H、C1〜C5アルキル、C1〜C5メチルアルキル)で表わされるジルコニウム化合物と、(R-Al-O)m(m=1〜20、R=C1〜C5アルキル)で表わされるアルモキサン化合物とからなるエチレン等のオレフィン重合触媒(クレーム1)が記載されている。 刊行物3には、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライドのような架橋メタロセン(第323頁表I)の合成方法が記載されている。 刊行物4には次の記載がなされている。 「Rが水素原子であるか又はC1〜C10-アルキル基である式CH2CHRで示されるオレフィンを単独で又は混合物の形で、場合によりC4 〜C12-α,ω-ジオレフィンとの混合物の形で、溶剤、液状単量体又は気相中で、-50℃と200℃との間で、可溶性のハロゲン含有遷移金属化合物及びアルミノオキサンを使用して重合することによってポリオレフィンを製造する方法にして、次の成分:(a)一般式 (シクロペンタジエニル)2MeRHal (式中Rはシクロペンタジエニル又はC1〜C6-アルキル基又はハロゲン、特に塩素であり、Meは遷移金属、特にジルコニウムであり、Halはハロゲン、特に塩素である)で示される遷移金属含有化合物 (b)線上アルミノオキサンの一般式Al2CR4(Al(R)-O)n及び環状アルミノオキサンの一般式(Al(R)-O)n+2(式中nは4から20までの数でありRはメチル-又はエチル基、殊にメチル基である)を有するアルミノオキサン型のアルミニウム含有化合物 から成る触媒系の存在下で重合を行うことを特徴とする方法。」(特許請求の範囲第1項) 刊行物5には、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムを含む触媒及びそれを使用するオレフィンの重合について記載されており、表3(第419頁)には、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムの具体例としてCp2Zr(CH3)2 等が記載されている。 刊行物6には、オレフィン重合触媒成分に関する発明が記載されており、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド、ジシクロペンタジエニルチタニウムフロリド、ジシクロペンタジエニルバナジウムジクロリドが例示され、更に次の記載がなされている。 「・・・最も好ましい範囲は、ハイドロカルビルアルミニウム化合物のモル当たりの水が約0.95モルから約1.05モルであることが更に判った。触媒組成物の第二成分として使用することができる第IVA族、第VA族、第VIA属の遷移金属のうち、本発明において有用なものは、金属チタン・・・の化合物である。」(第3欄第13行〜第20行) 刊行物7には、ビスシクロペンタジエニルジメチルチタニウムから得られるチーグラー型触媒について記載され、更に次の記載がなされている。 「溶解性のハロゲン不含のチーグラー触媒は、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルチタニウムとメチルアルモキサンとを共に使用したときに得ることができる。」 (第464頁「SUMMARY」第2〜4行) 「バナジウム化合物は、最も高活性な一群をなすものである。アルモキサンは、バナジウムの活性酸化数を安定させると共に、アルキル化合物として機能し、また部分的には周知の再活性剤の代替物として機能する。」(第468頁下から5行〜末行) 「Cp2Ti(CH3)2のCp配位子がより大きなCH3-Cp-配位子に変わると、製造ポリプロピレンの同一立体規則性を保ったまま活性が減少する。」(第468頁下から11行〜下から6行) 刊行物8には、メチレン架橋ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドをエチレンの重合における触媒成分として用いることが記載されている。 刊行物9には、メチレン架橋ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドをエチレンの重合における触媒成分として用いることが記載されている。 Klaus Kulper論文には、 「Cp2ZrCl2ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルミノキサンからなる触媒及び(CpMe5)2ZrCl2 ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルミノキサンからなる触媒系によりエチレンを重合すること」(第24頁第1行〜第32頁第18行)が記載されている。 Klaus Kulper論文には、また、置換シクロペンタジエニルリガンドは既に、Ti、Zr及びHfコンプレックス合成のために使用されていたことが「文献65〜73」を挙げて説明されている。(第20頁第1行〜第10行) 更に、Klaus Kulper論文には、「文献65」が「P.C.Wailes,Organometallic Chemistry of Ti,Zi, Hf Academic Press 1974,N.Y.,London」即ち、後記刊行物10であることが示されている。(第90頁第21頁〜第22頁) 刊行物10には、式[(π-C5H4)2(CH2)3]ZrCl2 及び[(π-C5H4)2(CH2)3]HfCl2等の化合物(第IV章、表IV-4、第119頁)が記載され、また、Cp2ZrCl2+NaC5H11、LiC4H9、Mg(C2H5)2又はAl(C2H5)3 からなる可溶性触媒システムによってエチレンを重合すること、及び Cp2ZrCl2+ZrCl3+Naからなる可溶性触媒システムによってプロピレンを重合すること(第V章、表V-3、第193頁)が記載されている。 刊行物11には、シクロペンタジエニル環がジメチルシリル基で架橋されているチタノセン化合物が記載されている。 刊行物12には、各種の架橋メタロセンが記載され、中心原子を伴うある種の化合物の中では、1,1′-メチレンチタノセンジクロリドだけが知られており、窒素化剤としてもエチレンの重合用触媒としても試験されたこと(第8頁第12行〜第15行)が記載されている。 刊行物13には、メチレン基でシクロペンタジエニル環が架橋されたチタノセン化合物(第83頁第3段落〜第84頁第1段落)が記載され、更に、チタノセン化合物をエチレン重合触媒として用いること(第87頁〜第99頁、第130頁〜第141頁)が記載されている。 刊行物14には、メチルアルミノキサンとビス(シクロペンタジエニル)ジメチルチタン触媒を用いてエチレンの重合を行うこと(第28頁、表4)及び、シクロペンタジエニル基の5つの水素原子の1つをメチル基で置換したビスメチルシクロペンタジエニルチタンジメチルとメチルアルミノキサンからなる触媒を用いてエチレン及びプロピレンの重合を行うこと(第65頁、表11)が記載されている。 (ii)本件発明が前記刊行物に記載された発明と同一であるか否か、また、前記刊行物から容易に成し得るものであるか否かについて検討する。 刊行物1には、エチレンの重合方法の発明と共に、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム塩類からなるエチレン重合用触媒成分の発明が記載されている。 Klaus Kulper論文には、エチレンの重合方法の発明と共に、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドからなるエチレン重合用触媒成分及びビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルミノキサンからなるエチレン重合用触媒成分の発明が記載されている。 本件発明と刊行物1記載のエチレン重合用触媒成分の発明(以下、刊行物1記載の発明という。)及びKlaus Kulper論文記載のエチレン重合用触媒成分の発明(以下、Klaus Kulper論文記載の発明という。)とを対比する。 これらの発明は、2個のシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル環を有するジルコニウム化合物からなるオレフィン重合用触媒成分の発明である点で軌を一にするものであるが、本件発明では、ジルコニウム化合物の2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環がジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされ、ハフニウム化合物の2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環が炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされているのに対して、刊行物1記載の発明及びKlaus Kulper論文記載の発明では、2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環が橋架けされていない点で相違する。 刊行物2、4、5、6及び7には、2個のシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル環を有するジルコニウム化合物からなるオレフィン重合用触媒成分は記載されているが、2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環がジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされたジルコニウム化合物及び2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環が炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされたハフニウム化合物は記載されていない。 刊行物3には、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライドのような架橋メタロセンについて記載されているが、そのようなメタロセン化合物をオレフィン重合用触媒成分として用いることは記載されていない。 刊行物8、9、11、12、13及び14には、2個のシクロペンタジエニル環がメチレン基等で橋架けされたチタニウム化合物からなるオレフィン重合用触媒成分が記載されているが、2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環がジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされたジルコニウム化合物及び2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環が炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされたハフニウム化合物は記載されていない。 刊行物10には、式 [(π-C5H4)2(CH2)3]ZrCl2 及び[(π-C5H4)2(CH2)3]HfCl2等の化合物の性質及びCp2ZrCl2+NaC5H11、LiC4H9、Mg(C2H5)2又はAl(C2H5)3 からなる可溶性触媒システムによってエチレンを重合することが独立して記載されているだけで、 [(π-C5H4)2(CH2)3]ZrCl2及び[(π-C5H4)2(CH2)3]HfCl2等の化合物をオレフィン重合用触媒成分として用いることは示唆されていない。 Klaus Kulper論文にも、文献65、即ち刊行物10に、置換シクロペンタジエニルリガンドが既に、Ti、Zr及びHfコンプレックス合成のために使用されていた旨の説明がなされているにすぎない。 結局、上記刊行物の記載を併せ検討しても、架橋ジルコノセン及び架橋ハフノセンが架橋チタノセンよりも触媒活性が高いこと、及びそのそのような高い活性を維持しながら、ポリマー生成の分子量を、シクロペンタジエニル環上の置換基の選択、メタロセンに対する配位子の選択によって制御できること、及び、コモノマー組込率も制御できることが示唆されているとは言えない。 そして、本件発明は、請求項1記載の構成を採用することにより、訂正明細書記載の格別の効果を奏したものと認められる。 したがって、本件発明は、前記Klaus Kulper論文にも、刊行物4にも刊行物14にも記載されたものではないし、さらに、2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環がジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされたジルコニウム化合物又は2個のシクロペンタジエニル環又は置換シクロペンタジエニル環が炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基で橋架けされたハフニウム化合物をオレフィン重合用触媒成分とすることは、前記各刊行物及びKlaus Kulper論文さらに参考資料に記載されたものから当業者が容易に想到し得たということはできない。 また、特許異議申立人・ヘキスト・アクチェンゲゼルシャフトが提出した甲第10号証〜甲第15号証及び特許異議申立人・チッソ株式会社が提出した甲第1号証の2〜甲第1号証の3により、Klaus Kulper論文が本件特許の出願前に外国において頒布された刊行物であることが立証されたとしても、本件発明は、前記各刊行物及びKlaus Kulper論文には記載されていないから、本件発明が特許法第29条第1項又は同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとすることはできない。 (2)特許法第36条第4項及び第5項違反について 明細書の記載事項について: 明細書の発明の詳細な説明には次の記載がなされている。 「本発明は、オレフィン重合用の新規メタロセン触媒成分を提供するが、このメタロセン触媒成分をアルモキサン助触媒成分と組み合わせると、分子量・密度及び末端不飽和に関して優れた特性をもったオレフィン重合生成物を与えしかも高温で有利に使用することのできる新規シクロペンタジエニル金属/アルモキサン触媒系が得られる。」(段落0012) そして、明細書の実施例10には、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライドとアルモキサンとを組み合わせた触媒系によってエチレンを重合することが記載されている。 明細書のこれらの記載によれば、特許請求の範囲に記載されたオレフィン重合用触媒成分は、アルモキサン助触媒成分と組み合わせることによってオレフィン重合用触媒系となることは明らかである。 してみれば、特許請求の範囲にアルモキサン助触媒成分と組み合わせることが記載されていなくても、特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないとすることはできない。 また、実施例に記載されたものがジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライドを触媒成分として用いてエチレンを重合する場合だけであるとしても、実施例は、出願人が最良の結果をもたらすと思うものを記載したのであるから、特許請求の範囲をこれらに限定すべきものとすることはできない。 したがって、明細書の記載が特許法第36条第4項及び第5項の規定に違反しているとすることはできない。 V.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張および挙証によっては本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ポリオレフィン重合用触媒成分 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記の二つの一般式のいずれかで表されるオレフィン重合用触媒成分。 (C5R′4)R″(C5R′4)MeQ2 又は R″(C5R′4)2MeQ′ 式中、MeはZr又はHfであり、(C5R′4)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R′は同一もしくは異なるもので、水素及び炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基からなる群から選択したものであるか、或いは2つの隣接するR′置換基が一体となって4乃至6員縮合環を形成したものであり、MeがZrのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けするジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、各Qは同一もしくは異なるもので、炭素数1〜20のアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基又はハロゲンであり、Q′は炭素数1〜20のアルキリデン基である。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、分子量の制御されたポリオレフィンの製造に用いられる触媒成分に関する。本発明の触媒成分は、オレフィンを重合するための改良法、より詳細には製造されるポリオレフィンの分子量及び/又は密度を所望の範囲に制御する方法に用いられる。本発明の触媒成分は、特に、コモノマーの存在下もしくは不存在下でエチレンを所望の分子量及び/又は密度のポリエチレンに重合する方法に用いられる。 【0002】 【従来技術】 米国特許第3,051,690号明細書には、重合系への水素の添加量を調節することによって、分子量の制御された(重合体粘度によって示される)高分子量ポリオレフィンを得るオレフィン重合法が記載されている。その記載によれば、分子量の制御は、第IVB、VB、VIB及びVIII族の金属の化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属又は亜鉛又は希土類金属の有機金属化合物との反応生成物を含んでなる炭化水素不溶性の触媒系を用いる場合に有効である。上記明細書には、重合プロセス中に水素使用量を増加させると生成重合体の粘度が減少する結果が得られることが教示されている。 【0003】 ビス(シクロペンタジエニル)チタン(又はジルコニウム)ジアルキルなどのある種のメタロセンとアルミニウムアルキル/水助触媒との組合わせが、エチレン重合用の均一触媒系を形成することも公知である。 【0004】 独国特許出願第2,608,863号には、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルキルとアルミニウムトリアルキルと水からなる触媒系をエチレンの重合に用いることが開示されている。 【0005】 独国特許出願第2,608,933号には、一般式:(シクロペンタジエニル)nZrY4-nで表されるジルコニウムメタロセン[上記式中、nは1〜4の数、YはR、CH2AlR2、CH2CH2AlR2及びCH2CH(AlR2)2であり、Rはアルキル又は金属アルキルである]と、アルミニウムトリアルキル助触媒と水からなるエチレン重合用の触媒系が開示されている。 【0006】 欧州特許第35242号明細書には、ハロゲンを含まないチーグラー触媒系にして、(1)式:(シクロペンタジエニル)nMeY4-nで表されるシクロペンタジエニル化合物[上記式中、nは1〜4の整数、Meは遷移金属(特にジルコニウム)、Yは水素、炭素数1〜5のアルキルもしくはアルキル金属、又は一般式:CH2AlR2、CH2CH2AlR2及びCH2CH(AlR2)2(式中、Rは炭素数1〜5のアルキルもしくはアルキル金属を表す)で表される基である]、及び(2)アルモキサンからなる触媒系の存在下で、エチレン重合体及びアタクチックなプロピレン重合体を製造する方法が開示されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 これらの特許に開示された均一触媒を用いる重合プロセスにおいても、分子量制御に関してはやはり水素に敏感である。 【0008】 シクロペンタジエニル金属/アルモキサン触媒系の利点は、エチレン重合に対する活性が極めて高いことである。もう一つの顕著な利点は、かかる均一触媒の存在下で製造した重合体には、従来の不均一チーグラー触媒の存在下で製造されたオレフィン重合体とは異なり、末端不飽和が存在することである。ただし、かかる均一触媒に対して分子量制御のために水素を使用すると不都合が生じる。末端不飽和が飽和されて、オレフィン重合体中に官能基を導入することのできる部位がなくなるからである。 【0009】 欧州特許第35242号明細書には、比較的低分子量の重合体は高い重合温度で得られ、比較的高分子量の重合体は低い重合温度で得られることが記載されている。 【0010】 当業者には周知の通り、高い重合活性を実現し、かつエネルギー効率面での操業コストを低減させるためには、重合温度をできるだけ高くすることが望ましい。従って、欧州特許第35242号明細書に開示された触媒は、高分子量・高密度樹脂の製造には不都合である。何故なら、このような高分子量・高密度重合体を欧州特許第35242号明細書記載の触媒で製造するには低温で操作する必要があり、そのため操業コストが増大し、触媒活性が低下するからである。 【0011】 従来の重合温度で高分子量の重合体を製造することができ、しかも温度制御にも水素濃度にも頼らずに重合体の分子量及び密度を制御できるような均一触媒を提供することができれば非常に望ましい。 【0012】 【課題を解決するための手段】 本発明は、オレフィン重合用の新規メタロセン触媒成分を提供するが、このメタロセン触媒成分をアルモキサン助触媒成分と組み合わせると、分子量・密度及び末端不飽和に関して優れた特性をもったオレフィン重合生成物を与えしかも高温で有利に使用することのできる新規シクロペンタジエニル金属/アルモキサン触媒系が得られる。 【0013】 今回、シクロペンタジエニル環上の置換基並びにメタロセンに対する配位子を注意深く選択すると、重合体分子量の調節が可能となることが判明した。さらに、メタロセンを注意深く選択することによって、コモノマー含有量を制御できることも発見した。従って、触媒成分の選択によって、所望の分子量及び密度の重合体を製造することができる。 【0014】 エチレン並びにα-オレフィンの重合に有利に使用でき、ポリエチレン単独重合体並びにエチレン-α-オレフィン共重合体を与える触媒は、新規メタロセンとアルモキサンとを含んでなる。かかるメタロセンは、広義には、有機金属配位化合物、即ち周期律表の第4b、5b、6b族の金属のシクロペンタジエニル誘導体で、該遷移金属のモノ-,ジ-,及びトリ-シクロペンタジエニル並びにその誘導体が含まれる。当該メタロセンとしては、一般式:(C5R′m)pR″s(C5R′m)MeQ3-p又はR″s(C5R′m)2MeQ′で表されるものが含まれるが、上記式中、Meは周期律表(「ケミカル・ラバー・カンパニーズ・ハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジクス(Chemical Rubber Company′s Handbook of Chemistry & Physics)」第48版に従う)の第4b、5b、6b族の金属であり、(C5R′m)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R′は同一もしくは異なるもので、水素、又は炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルなど)、又は2つの隣接する炭素原子が結合して4乃至6員縮合環を形成したものであり、R″は(C5R′m)環2個を結合する炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィンもしくはアルキルアミン基であり、Qは炭素数1〜20の炭化水素基(アリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール又はアリールアルキルなど)又はハロゲンで、同一でも異なるものであってもよく、Q′は炭素数1〜20のアルキリデン基であり、sは0又は1で、pは0、1又は2であって、pが0のときsは0であり、sが1のときmは4であり、sが0のときmは5であり、かつQがアルキル基のとき少なくともR′の1個は炭化水素基である。 【0015】 本発明のメタロセン触媒成分は、上記のうち、下記の二つの一般式のいずれかで表される新規なジルコニウム又はハフニウムのジシクロペンタジエニル誘導体である。 【0016】 (C5R′4)R″(C5R′4)MeQ2 又は R″(C5R′4)2MeQ′ 式中、MeはZr又はHfであり、(C5R′4)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R′は同一もしくは異なるもので、水素及び炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基からなる群がら選択したものであるか、或いは2つの隣接するR′置換基が一体となって4乃至6員縮合環を形成したものであり、MeがZrのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けするジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、各Qは同一もしくは異なるもので、炭素数1〜20のアリール、アルキル、アルケニル、アルキルァリールもしくはアリールアルキル基又はハロゲンであり、Q′は炭素数1〜20のアルキリデン基である。 【0017】 生成重合体の分子量はさらに、アルモキサン成分のメタロセン成分に対する比を変化させることによっても調節できる。 【0018】 本発明のメタロセン触媒成分をアルモキサン助触媒と組み合わせると、高分子量ポリエチレンを比較的高温で製造することができる。この方法は、上記触媒系の存在下で、エチレンを単独もしくは少量の高級α-オレフィン存在下で重合することことからなる。 【0019】 本発明の利点は、メタロセンに対してシクロペンタジエニル環誘導体及び/又はその他の配位子を使用することによって得られ、それによって重合体分子量及び/又はコモノマー含有量を所望通りに調節できる。 【0020】 発明の具体的態様 本発明は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)並びに高密度ポリエチレン(HDPE)などの高分子量ポリエチレンを製造するためのオレフィン(特にエチレン)重合触媒系並びに触媒重合法に関するものである。これらの重合体は、押出し、射出成形、熱成形、回転成形などで二次加工するためのものである。本発明の重合体は、特に、エチレンの単独重合体、及びエチレンと炭素数3〜約10(好ましくは炭素数4〜8)の高級α-オレフィンとの共重合体である。かかるα-オレフィンの例としては、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1などが挙げられる。 【0021】 本発明の方法においては、1種類以上のメタロセンとアルモキサンを含んでなる触媒系の存在下で、エチレンを(単独もしくは炭素数3以上のα-オレフィンと共に)重合させる。 【0022】 本発明によれば、オレフィン共重合体、特にエチレン及び炭素数3〜18の高級α-オレフィンの共重合体を製造することもできる。上述の通り、触媒の一成分たるメタロセンを選択することによって、コモノマー含有量を調節できる。 【0023】 アルモキサンは高分子アルミニウム化合物であり、一般式:(R-Al-O)n[環状化合物]或いはR(R-Al-O)nAlR2[線状化合物]で表すことができる。上記一般式において、Rは炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなど)であり、nは1〜約20の整数である。最も好ましくは、Rはメチルで、nは約4である。一般に、例えばアルミニウムトリメチルと水からのアルモキサンの製造においては、環状化合物と線状化合物の混合物が得られる。 【0024】 アルモキサンは各種の方法で製造することができる。好ましくは、適当な有機溶媒(ベンゼン、脂肪族炭化水素など)中のアルミニウムトリアルキル(トリメチルアルミニウムなど)の溶液を、水に接触させることによって製造する。例えば、溶媒に湿気として含まれる水でアルミニウムアルキルを処理する。別法として、アルミニウムトリメチルのようなアルミニウムアルキルを、水和硫酸銅のような含水塩と接触させてもよい。 【0025】 好ましくは、アルモキサンは水和硫酸銅存在下で製造する。この方法は、溶媒として例えばトルエンを用いたトリメチルアルミニウムの稀薄溶液を、硫酸銅(CuSO4・5H2O)で処理するものである。硫酸銅のアルミニウムトリメチルに対する比は、望ましくは、硫酸銅約1モルに対してアルミニウムトリメチル約4〜5モルである。この反応はメタンの発生によって確認できる。 【0026】 有用なメタロセン化合物は、モノ-,ジ-及びトリ-シクロペンタジエニルもしくは置換シクロペンタジエニル金属化合物である。このメタロセンは一般式:(C5R′m)pR″s(C5R′m)MeQ3-p又はR″s(C5R′m)2MeQ′で表される。上記式中、Meは第4b、5b、6b族の金属であり、(C5R′m)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R′は同一もしくは異なるもので、水素、又は炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル、アルケニル、アリール、アルキルァリール又はアリールアルキルなど)、又は2つの隣接する炭素原子が結合して4乃至6員環を形成したものであり、R″は(C5R′m)環2個を結合する炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィンもしくはアルキルアミン基であり、Qは炭素数1〜20の炭化水素基(アリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール又はアリールアルキルなど)又はハロゲンで、同一でも異なるものであってもよく、Q′は炭素数1〜20のアルキリデン基であり、sは0又は1で、pは0、1又は2であって、pが0のときsは0であり、sが1のときmは4であり、sが0のときmは5であり、かつQがアルキル基のとき少なくともR′の1個は炭化水素基である。 【0027】 炭化水素基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、イソブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、セチル、2-エチルヘキシル、フェニルなどが挙げられる。 【0028】 アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。 【0029】 ハロゲンの例としては、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられるが、これらのハロゲン原子の中では塩素が好ましい。 【0030】 アルキリデン基の例としては、メチリデン、エチリデン及びプロピリデンが挙げられる。 【0031】 メタロセンの中では、ジルコノセンが最も好ましい。メタロセンの例としては、(1)モノシクロペンタジエニルチタノセン類、例えばシクロペンタジエニルチタントリクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライドなど;(2)ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニル;(3)式Cp2Ti=CH2・Al(CH3)2Clで表されるカルベンとその誘導体、例えばCp2Ti=CH2・Al(CH3)3、(Cp2TiCH2)2、 【0032】 【化1】 Cp2Ti=CH2・AlR″′2Clなど(ただし式中のCpはシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、R″′は炭素数1〜18のアルキル、アリール又はアルキルアリール基である);(4)置換ビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)化合物、例えばビス(インデニル)チタンジフェニルもしくはジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタン-ジフェニルもしくは-ジハライド又はその他のジハライド錯体など;(5)ジアルキル-,トリアルキル-,テトラアルキル-及びペンタアルキル-シクロペンタジエニルチタン化合物、例えば、ビス(1,2-ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニルもしくはジクロライド、ビス(1,2-ジエチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニルもしくはジクロライド又はその他のジハライド錯体など;(6)ケイ素、ホスフィン、アミンもしくは炭素で橋掛けされたシクロペンタジエン錯体、例えばジメチルシリルジシクロペンタジエニルチタン-ジフェニルもしくは-ジクロライド、メチルホスフィンジシクロペンタジエニルチタン-ジフェニルもしくは-ジクロライド、メチレンジシクロペンタジエニルチタン-ジフェニルもしくは-ジクロライド又はその他のジハライド錯体など、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 【0033】 ジルコノセンの例としては、(1)シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;(2)アルキル置換シクロペンタジエニル類、例えばビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(β-フェニルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル及びこれらのジハライド錯体など;(3)ジアルキル-,トリアルキル-,テトラアルキル-及びペンタアルキル-シクロペンタジエニル類、例えばビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,2-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,3-ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル及びこれらのジハライド錯体など;(4)ケイ素、リンもしくは炭素で橋掛けされたシクロペンタジエン錯体、例えばジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウム-ジメチルもしくは-ジハライド、メチルホスフィンジシクロペンタジエニルジルコニウム-ジメチルもしくは-ジハライド、及びメチレンジシクロペンタジエニルジルコニウム-ジメチルもしくは-ジハライドなど;(5)式Cp2Zr=CH2P(C6H5)2CH3で表されるカルベンとその誘導体、例えば 【0034】 【化2】 など、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本願発明の触媒成分としては、これらのジルコノセンのうち、橋掛けシクロペンタジエン錯体が用いられる。 【0035】 その他のメタロセンの例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチルなどのハフノセン誘導体、及びビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドが挙げられる。 【0036】 本発明のメタロセン触媒成分は、下記の二つの一般式のいずれかで表される新規なジルコニウム又はハフニウムのジシクロペンタジエニル誘導体である。 【0037】 (C5R′4)R″(C5R′4)MeQ2 又は R″(C5R′4)2MeQ′ 式中、MeはZr又はHfであり、(C5R′4)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R′は同一もしくは異なるもので、水素及び炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基からなる群から選択したものであるか、或いは2つの隣接するR′置換基が一体となって4乃至6員縮合環を形成したものであり、MeがZrのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けするジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、各Qは同一もしくは異なるもので、炭素数1〜20のアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアリールアルキル基又はハロゲンであり、Q′は炭素数1〜20のアルキリデン基である。 【0038】 メタロセン中に含まれる全金属量に対するアルモキサン中に含まれるアルミニウムの比は、約0.5:1〜約10000:1、好ましくは約5:1〜約1000:1の範囲内であればよい。 【0039】 触媒系の調製に用いる溶媒は不活性炭化水素、特に、触媒系に対して不活性である炭化水素である。かかる溶媒は周知であり、例えば、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。 【0040】 アルモキサン濃度を変化させて、重合体の分子量をさらに細かく制御・調整することもできる。触媒系のアルモキサン濃度を高めると、高分子量の重合体が生ずる。 【0041】 本発明においては、比較的高温で高粘度の重合体を製造することができるので、先行技術のメタロセン/アルモキサン触媒と異なり、温度は制限因子とはならない。従って、本発明の触媒系は、広い範囲の温度及び圧力下での、溶液重合、スラリー重合もしくは気相重合法によるオレフィンの重合に適している。例えば、温度は約-60℃〜約280℃の範囲、特に約50℃〜約160℃の範囲に設定することができる。本発明の方法で用いる圧力は周知のレベルに設定でき、例えぱ約1〜約500気圧の範囲もしくはそれ以上とすることができる。 【0042】 溶液重合の場合、アルモキサンは好ましくは適当な溶媒(典型的には、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素)中に約5×10-3Mのモル濃度で溶解させる。ただし、この濃度に限定されるわけではなく、この濃度より高くても低くても構わない。 【0043】 可溶性メタロセンは、代表的担体(例えばシリカ、アルミナ、ポリエチレンなど)に該メタロセンを含浸させることによって担持不均一触媒へと変換させることもできる。かかる固体触媒をアルモキサンと組合わせると、スラリー法並びに気相法によるオレフィンの重合に有用に用いることができる。 【0044】 重合して触媒を不活性化した後、周知の方法で不活性化触媒と溶液を除去することによって生成重合体を回収することができる。溶媒は重合体溶液からフラッシュ除去でき、得られた重合体は水中に押出して、ペレットもしくはその他の適当な形に切断することができる。重合体には、顔料、酸化防止剤並びにその他公知の添加剤を加えてもよい。 【0045】 本発明で得られる重合体は、約1400000〜約500、好ましくは約500000〜約1000の範囲内に重量平均分子量を有する。 【0046】 Mw/Mnで表される多分散度(分子量分布)は典型的には1.5〜4.0である。重合体は1分子当り1.0の鎖末端不飽和を含んでいる。2種類以上の金属シクロペンタジエニルを特開昭60-35008号公報に記載されたアルモキサンと組合わせて用いることによって、Mw幅を広げることができる。 【0047】 本発明の方法で製造される重合体は、エチレンの単独重合体並びにエチレン/高級α-オレフィン共重合体に関して知られている通り、多種多様の製品に加工することができる。本発明を以下の実施例でさらに詳細に説明する。 【0048】 【実施例】 以下の例において、分子量はウォー夕ーズ・アソシェイツ(Water′s Associates)社製のモデルNo.150C GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定した。この測定は、重合体試料を熱トリクロロベンゼン(TCB)中に溶解し、濾過して行った。GPC測定は、パーキン・エルマー社(Perkin Elmer Inc.)製の内径9.4mmのショーデックス(Shodex)A80M/Sゲルカラム2本を用いて、TCB中145℃で流速毎 分1・5mlとして操作した。TCB中に溶解した3.1%の重合体溶液300mlを注入し、感度-64、スケール65でクロマトグラフィーの流れをモニターした。個々の試料について2度測定を繰り返した。ウォー夕ーズ・アソシェイヅ社のデータ・モジュールで積分パラメーターを得た。すべての試料に酸化防止剤としてN-フェニル-2-ナフチルアミンを添加した。 【0049】 以下の例において、アルモキサンは以下のようにして調製した。 【0050】 窒素気流下のジッパークレーブ反応器中でトルエン200ccを激しく撹拌しながら、これに、ヘプタン中に溶解した14.5%のトリメチルアルミニウム(TMA)溶液600ccを5分間隔で30ccづつ添加して、100℃に維持した。TMAの添加毎に水を0.3ccづつ加えた。各添加毎に反応器からメタンを脱気した。添加完了後、温度を100℃に保ちながら反応器を6時間撹拌した。可溶性アルモキサンと少量の不溶性アルミナを含む反応混合物を放冷して室温に戻し、沈降させた。可溶性アルモキサンを含む透明溶液を、デカンテーションで固形物から分離した。 【0051】 上記ウォー夕ーズ150C GPC上での145℃におけるゲル浸透クロマトグラフィーで分子量を決定した。 【0052】 例1 傾斜翼撹拌機、温度調節用外部水ジャケット、セプタム式注入口及び排気用配管系、及び供給量の調節可能な乾燥エチレン及び窒素供給器を備えた1リットルステンレス製圧力容器を、窒素気流で乾燥しかつ脱酸素した。脱気した乾燥トルエン500ccをこの圧力容器に直接導入し、混合物を、ゲージ圧0kg/cm2(0psig)の窒素気流下、80℃で5分間1200rpmで撹拌した。セプタム式注入口から容器内に、0.785M(総アルミニウム量)のアルモキサン10.0ccをガスタイト・シリンジを用いて注入した。2.0mlの乾燥蒸留トルエン中に溶解した0.091mgのビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを、セプタム式注入口を通して容器内に注入した。1分後に、温度を80℃に維持しながら、ゲージ圧4.2kg/cm2(60psig)のエチレンを30分間反応容器に通した。しかる後に急速に脱気・冷却して反応を止めた。13.6gの白色粉末状ポリエチレンを得たが、このポリエチレンはMnが39500、Mwが140000で、分子量分布は3.5であった。 【0053】 例2 傾斜翼撹拌機、温度調節用外部水ジャケット、セプタム式注入口及び排気用配管系、及び供給量の調節可能な乾燥エチレン及び窒素供給器を備えた1リットルステンレス製圧力容器を、窒素気流で乾燥しかつ脱酸素した。脱気した乾燥トルエン400ccをこの圧力容器に直接導入した。セプタム式注入口から容器内に、20.0ccのアルモキサン(総アルミニウム量:0.785ミリモル)をガスタイトシリンジを用いて注入し、混合物を、ゲージ圧0kg/cm2の窒素気流下、80℃で5分間1200rpmで撹拌した。2.0mlの乾燥蒸留トルエン中に溶解した0・2101mgのビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを、セプタム式注入口を通して容器内に注入し、Al/Zr比を24×103とした。1分後に、温度を80℃に維持し、ゲージ圧4.2kg/cm2(60psig)のエチレンを30分間反応容器に通した。しかる後に急速に脱気・冷却して反応を止めた。28.6gの白色粉末状ポリエチレンを得たが、このポリエチレンはMnが55900、Mwが212000で、分子量分布は3.8、活性は467(kg/gM・時・気圧)であった。 【0054】 例3〜5 例3〜5は例2と同様にして行った。ただし、例2で用いたメタロセンを表1に示すメタロセンに置き換えた。結果を表1に示す。 【0055】 例6〜8 例6〜8は例2と同様にして行った。ただし、表2に示すメタロセン0.2mgとアルモキサン9.0ccを用いて、Al/Zr比を8×103とした。結果を表2に示す。 【0056】 【表1】 【0057】 【表2】 【0058】 ポリエチレンの物理的性状は、その分子量と密度に大きく左右される。上記の例から明らかなように、配位子効果を通してポリエチレンの分子量を調節することができる。エチレン共重合体などを共重合する際、同様の配位子効果によって重合体密度が制御できることを以下の例で示す。また、以下の例における重合体密度の調節は固定した反応条件下で達成されたもので、密度調節が配位子効果(触媒反応性比に対する)によるものであることを示している。 【0059】 例9 傾斜翼撹拌機、温度調節用外部水ジャケット、セプタム式注入口及び排気用配管系、及び供給量の調節可能な乾燥エチレン及び窒素の供給器を備えた1リットルステンレス製圧力容器を、窒素気流で乾燥しかつ脱酸素した。脱気した乾燥トルエン400ccをこの圧力容器に直接導入した。セプタム式注入口から容器内に、10.0ccのアルモキサン溶液(総アルミニウム量:0.8モル)をガスタイトシリンジを用いて注入し、混合物を、ゲージ圧0kg/cm2の窒素気流下、50℃で5分間1200rpmで撹拌した。次いで、25℃の液体プロピレン200ccを加えた。その結果、圧力は8.87kg/cm2(126.2psig)となった。トルエン10ml中に溶解した0.113mgのビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルを、セプタム式注入口を通して容器内に注入した。ゲージ圧10.7kg/cm2(152.1psig)のエチレンを反応容器に導入して、温度を50℃に保った。エチレンを30分間反応容器に通し、しかる後に急速に脱気・冷却して反応を止めた。固有粘度数0.74のコポリマー66.0gが単離されたが、これはプロピレンを31モル%含有していた。コポリマーの密度は23℃で0.854g/ccであった。 【0060】 例10(実施例) 傾斜翼撹拌機、温度調節用外部水ジャケット、セプタム式注入口及び排気用配管系、及び供給量の調節可能な乾燥エチレン及び窒素の供給器を備えた1リットルステンレス製圧力容器を、窒素気流で乾燥しかつ脱酸素した。脱気した乾燥トルエン400ccをこの圧力容器に直接導入した。セプタム式注入口から容器内に、10.0ccのアルモキサン溶液(総アルミニウム量:0.8モル)をガスタイトシリンジを用いて注入し、混合物を、ゲージ圧0kg/cm2の窒素気流下、50℃で5分間1200rpmで撹拌した。次いで、25℃の液体プロピレン200ccを加えた。その結果、圧力は8.87kg/cm2(126.2psig)となった。トルエン10ml中に溶解した0.102mgのジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド:(H3C)2SiCp2ZrCl2を、セプタム式注入口を通して容器内に注入した。ゲージ圧10.7kg/cm2(152.4psig)のエチレンを反応容器に導入して、温度を50℃に保った。エチレンを30分間反応容器に通し、しかる後に急速に脱気・冷却して反応を止めた。固有粘度数0.52のコポリマー12.0gが単離されたが、これはプロピレンを43モル%含有していた。コポリマーの密度は23℃で0.854g/ccであった。 【0061】 例11 傾斜翼撹拌機、温度調節用外部水ジャケット、セプタム式注入口及び排気用配管系、及び供給量の調節可能な乾燥エチレン及び窒素の供給器を備えた1リットルステンレス製圧力容器を、窒素気流で乾燥しかつ脱酸素した。脱気した乾燥トルエン400ccをこの圧力容器に直接導入した。セプタム式注入口から容器内に・10・0ccのアルモキサン溶液(総アルミニウム量:0.8モル)をガスタイトシリンジを用いて注入し、混合物を、ゲージ圧0kg/cm2の窒素気流下、50℃で5分間1200rpmで撹拌した。次いで、25℃の液体プロピレン200ccを加えた。その結果、圧力は8.87kg/cm2(126.2psig)となった。トルエン10ml中に溶解した0.417mgのビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルを、セプタム式注入口を通して容器内に注入した。ゲージ圧10.7kg/cm2(151.5psig)のエチレンを反応容器に導入して、温度を50℃に保った。エチレンを30分間反応容器に通し、しかる後に急速に脱気・冷却して反応を止めた。固有粘度数0.81のコポリマー30.5gが単離されたが、これはプロピレンを3.6モル%含有していた。コポリマーの密度は23℃で0.934g/ccであった。 【図面の簡単な説明】 本発明の触媒成分からのオレフィン重合触媒の調製工程を示すフローチャート図 |
訂正の要旨 |
1.訂正の内容 訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。 (1)訂正事項a:請求項1の「ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基」を、特許請求の範囲の減縮を目的に 「ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのとき R″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基」と訂正する。 (2)訂正事項b:段落【0014】の「R″は炭素素数1〜4のアルキレン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはジアルキルケイ素、又は(C5R′m)環2個を結合する」を、明瞭でない記載の釈明を目的として 「R″は(C5R′m)環2個を結合する炭素素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、」と訂正する。 (3)訂正事項c:段落【0016】の「ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基」を、明瞭でない記載の釈明を目的として 「ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基」と訂正する。 (4)訂正事項d:段落【0026】の「R″は炭素素数1〜4のアルキレン基、ジアルキルゲルマニウムもしくはジアルキルケイ素、又は(C5R′m)環2個を結合する」を、明瞭でない記載の釈明を目的として 「R″は(C5R′m)環2個を結合する炭素素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、」と訂正する。 (5)訂正事項e:段落【0033】の「Cp2Zr=CH2P(C6H5)2CH3」を、誤記の訂正を目的として 「Cp2Zr=CH2P(C6H5)2CH3」と訂正する。 (6)訂正事項f:段落【0035】の「ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどのハフノセン誘導体」を、誤記の訂正を目的として 「ハフニウムジメチルなどのハフノセン誘導体、及びビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド」と訂正する。 (7)訂正事項g:段落【0037】の「ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基であり、MeがHfのときR“は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ゲルマニウム、ケイ素又はホスフィン又はアミン基」を、明瞭でない記載の釈明を目的として 「ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基であり、MeがHfのときR″は2つの(C5R′4)環を橋架けする炭素数1〜4のアルキレン、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキルケイ素、アルキルホスフィン又はアルキルアミン基」と訂正する。 (8)訂正事項h:段落【0056】表1の下の注釈の「C*:ビス(β-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド」を、誤記の訂正を目的として 「C*:ビス(β-フェニルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド」と訂正する。 (9)訂正事項i:段落【0060】の「ジメチルシリルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド」を、誤記の訂正を目的として 「ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-07-27 |
出願番号 | 特願平6-257563 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(C08F)
P 1 651・ 121- YA (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 杉原 進、高原 慎太郎、原田 隆興 |
特許庁審判長 |
三浦 均 |
特許庁審判官 |
谷口 浩行 柿沢 紀世雄 |
登録日 | 1996-07-08 |
登録番号 | 特許第2540451号(P2540451) |
権利者 | エクソン・リサ―チ・アンド・エンジニアリング・カンパニ― |
発明の名称 | ポリオレフィン重合用触媒成分 |
代理人 | 佐藤 辰男 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 細川 伸哉 |
代理人 | 庄子 幸男 |
代理人 | 山崎 行造 |
代理人 | 山崎 行造 |