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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G11B
管理番号 1024436
異議申立番号 異議2000-70729  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-11-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-23 
確定日 2000-09-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第2937299号「記憶機能付き音楽再生装置およびそのシステム」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2937299号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2937299号の発明についての出願は、平成2年3月2日に出願され、平成11年6月11日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、工藤直一より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされたものである。

2.本件発明
本件特許第2937299号の請求項1ないし請求項2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1ないし請求項2に記載された次のとおりのものである。
「(1)音楽情報及び映像情報を記憶したメディアと、
このメディアより音楽情報を読み出し曲を演奏する音響再生手段と、
このメディアより映像情報を読み出し映像を再生する映像再生手段と、
演奏された曲の名称またはそれに類するデータおよび演奏された日時を記憶する記憶手段と、
この記憶手段により記憶されたデータ類を統計的に処理する処理手段と、
この処理手段により統計処理されたデータ類と前記映像再生手段により再生された映像とを表示可能な表示手段と、
前記音響再生手段による音楽情報の演奏中には、前記処理手段により統計処理されたデータ類を前記表示手段に表示しないように制御する表示制御手段と
を備えたことを特徴とする記憶機能付き音楽再生装置。
(2)音楽情報及び映像情報を記憶したメディアと、このメディアより音楽情報を読み出し曲を演奏する音響再生手段と、このメディアより映像情報を読み出し映像を再生する映像再生手段と、演奏された曲の名称またはそれに類するデータおよび演奏された日時を記憶する記憶手段とを有する複数の音楽再生装置と、
これら各音楽再生装置を接続可能な通信手段と、
この通信手段を介して各音楽再生装置の記憶手段に記憶されているデータ類を集めてシステム全体として統計的に処理する処理手段と
によりネットワークを構築すると共に、
前記各音楽再生装置には、
前記処理手段により統計処理されたデータ類と前記映像再生手段により再生された映像とを表示可能な表示手段と、
前記音響再生手段による音楽情報の演奏中には、前記処理手段により統計処理されたデータ類を前記表示手段に表示しないように制御する表示制御手段とを更に設けたことを特徴とする音楽再生システム。」

3.取消理由通知についての判断
(1)引用刊行物
当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭62-291776号公報)、刊行物2(実願昭60-72076号(実開昭61-189679号)のマイクロフィルム)、刊行物3(特開昭63-14590号公報)、刊行物4(特開昭62-113295号公報)には、次のことが記載されている。

ア.刊行物1(特開昭62-291776号公報)
刊行物1には、カラオケ装置に関し、
「本発明によるカラオケ装置はまた、表示装置を具備し、入力結果、演算結果、システムの状態などを表示することができる。」(1頁右欄8行ないし11行)
「オートチェンジャー付きCDカラオケ装置本体」(2頁右上欄20行ないし左下欄1行)
「表示部6は小型CRTや液晶その他で形成され、キーボード入力やCPUからの演算結果などを表示する。」(2頁左下欄15行ないし18行)
「CPUの利用により、曲の利用度(人気度)、ジャンル別の利用データを演算させたり、プリンタを装備して、各種データのハードコピーを得ることも可能である。」(4頁左欄15行ないし18行)
と記載されている。
すなわち、刊行物1は、カラオケ装置に関し、データを統計的に処理し、表示手段に表示させることが示されている。

イ.刊行物2(実願昭60-72076号(実開昭61-189679号)のマイクロフィルム)
刊行物2には、カラオケ装置に関し、
「モニタテレビのブラウン管(CRT)等に表示された背景画像を見ながら伴奏曲に合わせて歌を歌うようにした遊戯用テレビジョン装置、いわゆるビデオカラオケ装置の改良に関するもの」(2頁7行ないし10行)
「店のメニュー、定休日、営業時間、催しものその他の営業案内や客へのサービスのための種々のPR情報を表示するためのプログラム」(5頁19行ないし6頁1行)
「ビデオカラオケ機1の作動中又は停止中において、店のPR情報を映像としてモニタテレビ14に表示しまたは音声としてスピーカ15を鳴らす。これによって、ビデオカラオケ機1を使用していないとき、または使用していても一層の映像効果を得るためや緊急時など、必要に応じて所要の情報を客に伝えることができ、客へのサービスや火災などの非常時における避難誘導などを効果的に行うことができる。」(9頁3行ないし11行)
と記載されている。
すなわち、刊行物2には、カラオケ装置が作動していない時にほかの情報を表示することが示されている。

ウ.刊行物3(特開昭63-14590号公報)
刊行物3には、
「この料金情報は制御部31がステップS4でタイマー装置41から読み出した日付、時刻情報と統合され、料金情報制御装置38に入力される。
料金情報装置38はステップS5において入力された料金情報を料金情報メモリ39に所定の記録形式で格納する。」(3頁左上欄17行ないし右上欄3行)
「必要であれば表の最後に料金の累計額を出力するようにしてもよい。」(3頁左下欄20行ないし右下欄1行)
「以上の実施例によれば、利用料金に関する情報を所望の回数、ないし時間毎の単位で知ることができるから、予算に応じてアクセス回数を調整するなどの計画的な運用が可能である。また、日付、時刻データも記録されるからビデオテックス網に対する経歴も容易に知ることができる。」(3頁右下欄2行ないし8行)
と記載されている。
すなわち、刊行物3には、日時データを記憶し、累計を出力することが示されている。

エ.刊行物4(特開昭62-113295号公報)
刊行物4には、
「記憶手段に記憶された複数のソフトウェア中より顧客が選択したソフトウェアを所定の外部記憶媒体にダビングするソフトウェア販売機が、通信回線を介して複数接続されたソフトウェア販売機の管理装置であって、上記通信回線を介して、上記複数のソフトウェア販売機と情報を通信する通信手段と、1以上のソフトウェアを記憶したソフトウェア記憶手段と、上記通信回線を介して、上記各ソフトウェア販売機におけるソフトウェア毎のダビング頻度検出するダビング頻度回線手段と、上記通信回線を介して、上記各ソフトウェア販売機の記憶手段に記憶された複数のソフトウェアの中より所定時間内における上記ダビング頻度に基づいて選択されたソフトウェアを、上記ソフトウェア記憶手段に記憶されたソフトウェアに更新するソフトウェア更新手段と、を備えたソフトウェア販売機の管理装置。」(1頁左欄5行ないし右欄3行)
「ダビング回数、即ち売上は、通信回線TLを介して管理装置HCにより管理されるのである。」(3頁左上欄5行ないし7行)
「管理装置HCは、種々の制御を実行するが、総てのソフトウェア販売機Sより送信される1日の売上情報が揃うと、第4図(B)に示す更新登録制御ルーチンを実行する。
まず、ステップ200では、各ソフトウェア販売機Sより送信された1日分の売上情報を用い、前もってハードディスク65に記憶してある前日までの売上情報と併わせて、現在販売中のソフトウェアについて、ソフトウェア毎の過去1ヶ月間の売上本数、即ちダビング頻度を算出する処理を行う。続くステップ210では、ステップ200で算出した売上本数や予めソフトウェア毎にハードディスク65に記憶してあるその登録日やハードディスク占有量等に基づき販売用の全ソフトウェアを順位付けして評価する処理を行う。」(4頁右下欄6行ないし20行)
すなわち、刊行物4には、通信手段を有すること及びネットワークを構築し、統計処理することが示されている。

(2)対比・判断
本件の請求項1ないし請求項2に係る発明と刊行物1ないし刊行物4に記載された発明と対比すると、刊行物1ないし刊行物4のいずれにも本件の請求項1ないし請求項2に係る発明における「演奏された曲の名称またはそれに類するデータおよび演奏された日時を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶されたデータ類を統計的に処理する処理手段と、前記音響再生手段による音楽情報の演奏中には、前記処理手段により統計処理されたデータ類を前記表示手段に表示しないように制御する表示制御手段」(以下「主要事項」という。)を備えることは、記載されておらず、示唆する記載もない。
そして、刊行物1ないし刊行物4に記載された発明をいかに組み合わしても上記主要事項は得られない。
本件の請求項1に係る発明は、上記主要事項により、演奏された曲の名称や日時を記憶しているので、その記憶された日時のデータに基づき月毎の集計などの期間を区切った統計的処理も可能となり、また、統計処理されたデータ類を表示させることで、本装置を使用するカラオケ店等におけるカラオケ動向等を客等に情報提供することかでき、更に、記憶されている日時のデータから演奏された間隔が、通常の曲の長さより短い場合は、何等かの機器の異常があると判断でき、機器の整備に利用することもできるという明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件の請求項1に係る発明が、刊行物1ないし4に基いて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
本件の請求項2に係る発明は、上記主要事項により、さらに、システム全体を管理するオーナーは勿論のこと、各音楽再生装置を端末として使用するユーザにおいても、全国又は特定の地域における現在の世の中のカラオケ実態動向を正確な情報として容易に知ることができるという明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件の請求項2に係る発明が、刊行物1ないし4に基いて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

4.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人工藤直一は、証拠として甲第1号証(特開昭62-291776号公報)、甲第2号証(特開昭59-128884号公報)、甲第3号証(特開昭63-6984号公報)、甲第4号証(特開昭60-126937号公報)を提出し、請求項1ないし2に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。

(2)申立人が提出した甲各号証記載の発明
ア.甲第1号証(特開昭62-291776号公報)
甲第1号証は、上記刊行物1であり、3.(1)ア.に記載のとおりである。

イ.甲第2号証(特開昭59-128884号公報)
甲第2号証には、
「端末装置は有料番組を一定時間無料で視聴させた後、有料を告知する特定チャンネルへ強制的に切り換え、視聴者が特定の手続を行ったときのみ、前記有料番組へ切り換える双方向CATVシステムの有料番組サービス方式である。」(2頁右上欄16行ないし20行)
「該チャンネルがまだ課金されていなければ、端末制御部514は一定時間(以下この時間をトライタイムと称する。)経過した後、第7図に示すようなテロップを常時放映しているチャンネルへ切り換えるように電子チューナー512に対し指示を出す。これにより有料であることが告知されると同時に、手続、つまり有料キー525を押下しない限り継続して視聴することができないようになる。」(4頁左下欄11行ないし19行)
「第7図のテロップが出ている間だけ、有料キー525の入力が受け付けられ、このとき有料キー526が押下されると、端末制御部514は、メモリ518内の該当チャンネルの課金済フラグをリセットし、次回からは課金手続に関する処理がされないようにした上で、電子チューナー512に該当チェンネルへ再び切換えるよう指示を出す。」(4頁右下欄5行ないし11行)
と記載されている。

ウ.甲第3号証(特開昭63-6984号公報)
甲第3号証には、
「一演会場に一台の映像付カラオケ再生装置ではなくて、映像付カラオケ再生装置を一ケ所に集中させ共同聴視回路網を使用して、各演奏会場のテレビ端子に端末制御装置を接続して、映像付カラオケを演奏する。」(1頁右欄13行ないし17行)
と記載されている。

エ.甲第4号証(特開昭60-126937号公報)
甲第4号証には、
「中央制御部50では、受信制御部10からの有料テレビ番組の視聴の有無、チャンネル番号等のデータ信号(MODEM(A)14により変換された信号)を受け、これをMODEM(B)52により復調した後、コンピュータ(CPU)(B)を経てホストコンピュータ60に入力して、各種データ処理を行いホストコンピュータ60のディスプレー上に表示する。すなわち、有料テレビ放送の受信状況(視聴率)や料金等を表示する。」(5頁右上欄16行ないし左下欄5行)
と記載されている。

(3)対比・判断
本件の請求項1ないし2に係る発明と甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明と対比すると、甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも上記主要事項は、記載されておらず、示唆する記載もない。
そして、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明をいかに組み合わしても上記主要事項は得られない。
本件の請求項1に係る発明は、上記主要事項により、演奏された曲の名称や日時を記憶しているので、その記憶された日時のデータに基づき月毎の集計などの期間を区切った統計的処理も可能となり、また、統計処理されたデータ類を表示させることで、本装置を使用するカラオケ店等におけるカラオケ動向等を客等に情報提供することかでき、更に、記憶されている日時のデータから演奏された間隔が、通常の曲の長さより短い場合は、何等かの機器の異常があると判断でき、機器の整備に利用することもできるという明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件の請求項1に係る発明が、刊行物1ないし4に基いて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。
本件の請求項2に係る発明は、上記主要事項により、さらに、システム全体を管理するオーナーは勿論のこと、各音楽再生装置を端末として使用するユーザにおいても、全国又は特定の地域における現在の世の中のカラオケ実態動向を正確な情報として容易に知ることができるという明細書記載の顕著な効果を奏するものであるから、本件の請求項2に係る発明が、甲第1号証ないし甲第4号証に基いて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立て理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし請求項2に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし請求項2に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-06 
出願番号 特願平2-52462
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G11B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 小池 正彦
石川 伸一
登録日 1999-06-11 
登録番号 特許第2937299号(P2937299)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 記憶機能付き音楽再生装置およびそのシステム  
代理人 奥田 誠  
代理人 飯田 圭  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 小川 信夫  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 山中 郁生  
代理人 富澤 孝  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 今城 俊夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 村社 厚夫  
代理人 竹内 英人  

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