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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B28B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B28B |
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管理番号 | 1024546 |
異議申立番号 | 異議2000-70916 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-04-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-03-03 |
確定日 | 2000-09-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2945278号「建築板製造用の型板」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2945278号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2945278号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成6年9月10日に出願され、平成11年6月25日にその発明について特許の設定の登録がなされ、本件特許公報が平成11年9月6日に発行されたところ、平成12年3月3日に大平章から特許異議の申立てがなされ、当審より取消の理由の通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月27日に訂正請求がなされた。 II.訂正の適否 1.訂正事項 a.特許請求の範囲の請求項1に「装飾形成用凹凸部より低くない保護用凸 部を、」とあるのを、「装飾形成用凹凸部より高い保護用凸部を、」と訂 正する。 b.特許請求の範囲の請求項3に「型板の裏面に」とあるのを、「搬送板の 上に載置されて搬送板と一緒に搬送される型板の裏面に」と訂正する。 c.明細書段落番号【0008】中に「装飾形成用凹凸部より低くない保護 用凸部を、」とあるのを、「装飾形成用凹凸部より高い保護用凸部を、」 と訂正する。 d.明細書段落番号【0010】中に「型板の裏面に」とあるのを、「搬送 板の上に載置されて搬送板と一緒に搬送される型板の裏面に」と訂正する 。 e.明細書段落番号【0011】中に「装飾形成用凹凸部より低くない保護 用凸部を、」とあるのを、「装飾形成用凹凸部より高い保護用凸部を、」 と訂正する。 f.明細書段落番号【0013】中に「型板の裏面に」とあるのを、「搬送 板の上に載置されて搬送板と一緒に搬送される型板の裏面に」と訂正する 。 g.明細書段落番号【0015】中に「本例の型板1は、」とあるのを、「 先ず、参照例について説明する。参照例の型板1は、」と訂正する。 h.明細書段落番号【0023】中に「〈変形例〉実施例においては、装飾 形成用凹凸部の一部である格子形状の突条部2と保護用凸部とは、同じ高 さであったが、保護用凸部より低くする。」とあるのを、「上記の参照例 においては、装飾形成用凹凸部の一部である格子形状の突条部2と保護用 凸部とは、同じ高さであったが、実施例においては、参考例を変形し、保 護用凸部4は、装飾形成用凹凸部の一部である格子状の突条部2より高く する。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 上記訂正事項aは、装飾形成用凹凸部より低くない、即ち、装飾形成用凹凸部と同じ高さか、あるいは装飾形成用凹凸部より高い、としていたところを、装飾形成用凹凸部と同じ高さであるものを削除し、装飾形成用凹凸部より高いものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。そして、装飾形成用凹凸部より高い保護用凸部を設けた例は、願書に添付した明細書の段落番号【0023】に変形例として記載されていたものであるから、該訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。 また、上記訂正事項bは、搬送板の説明を追加して明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。そして、該搬送板の説明については、願書に添付した明細書の段落番号【0003】に記載されていたものであるから、該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。 さらに訂正事項c〜hは、上記訂正に伴なって発明の詳細な説明の記載部分に生じた不整合な記載を訂正して、特許請求の範囲の記載との整合を図るものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものであって、これらの訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについての判断 1.特許異議申立の理由の概要 特許異議申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第3号証を提出し、訂正前の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、あるいは、訂正前の請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。 記 甲第1号証:特開昭63-209901号公報 甲第2号証:実願昭49-47693号(実開昭50-140069号)の マイクロフィルム 甲第3号証:特開平60-239208号公報 2.本件発明 本件発明は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲に記載された、以下のとおりである。 「【請求項1】原料を型板の上にマット状に散布し、型板上の原料を圧締して製板すると共に板の表面に装飾用凹凸を成形し、圧締状態の成形板を養生して脱型し、建築板を製造する際に用いる型板において、 表面の中央部に、装飾用凹凸を成形する装飾用凹凸部を形成する一方、表面の周辺部に、装飾用凹凸部より高い保護用凸部を、装飾用凹凸部を取り囲む位置に形成したことを特徴とする建築板製造よう型板。 【請求項2】保護用凸部は、各部が同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の建築板製造用型板。 【請求項3】搬送板の上に載置されてr搬送板と一緒に搬送される型板の裏面に搬送板の表面を接着して、型板に搬送板を一体化したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建築板製造用型板。」 3.対比・判断 (1)請求項1に係る発明について 本件の請求項1に係る発明は、「建築板製造用の型板は、保管時に、搬送板と一緒に積み重ねると、表面の中央部に形成した装飾形成用凹凸部の頂上に上段の搬送板が強く当たって、装飾形成用凹凸部の頂上が傷付き易い。耐久性が高くない。また、型板は、上段の搬送板が当たる装飾形成用凹凸部の頂上が同じ高さでないときは、積み重ねると水平にならず、多段に積み上げることができない。積み上げ段数が減少して、保管用の広い場所を要する。」といった従来技術における課題を解決することを目的とするものであって、その課題を、「装飾形成用凹凸部表面の周辺部に、装飾用凹凸部より高い保護用凸部を、装飾用凹凸部を取り囲む位置に形成する」ことにより解決するものである。 これに対し、甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも、該技術課題及びその解決手段については、何ら示唆する記載もない。 即ち、刊行物1には、目地溝と装飾用凹部又は凸部を形成した建築板を製造する方法に関し、「第1図乃至第3図に示すように、成形面に目地溝用の大きい突条2を格子状に形成し、突条2に囲まれた矩形条の各成形面にそれぞれ装飾凹部用の多数の小さい凸部3を分散して形成している。」(第2頁右上欄第6〜9行、第1図乃至第3図)こと、及び「この建築板4は、第4図に示すように、型板1に当接していた表面に、目地溝が格子状に形成され、目地溝に囲まれた矩形状の各面にそれぞれ多数の小さい装飾凹部6が分散して形成されている。」(第2頁左下欄第11〜14行、第4図)ことが図面とともに記載されているが、該刊行物記載の型板は、本件明細書に参照例として記載された型板1、すなわち、保護用突部4を格子形状の突条部2と同じ高さに形成している型板に相当するものあって、前記従来技術の課題、及びそれを解決するために、表面の周辺部に、装飾用凹凸部より高い保護用凸部を、装飾用凹凸部を取り囲む位置に形成する点については、何ら示唆する記載もない。 また甲第2号証には、「石綿抄造板を未硬化状態にあるうちにプレスによりエンボス加工を行なうに使われる金型であって、四方を凸条壁により閉鎖状に囲まれた凹部の隅に水及び空気抜きを設けてなる石綿抄造板プレス用金型」(実用新案登録請求の範囲)に関し、第1、2図には、表面中央部に装飾用凹凸を形成する凹部1及び凸条2が形成されており、該表面中央部の凸は四方に設けられた凸条壁と同じ高さに形成されていることが図示されているだけで、前記従来技術の課題、及びそれを解決するために、表面の周辺部に、装飾用凹凸部より高い保護用凸部を、装飾用凹凸部を取り囲む位置に形成する点については、何ら示唆する記載もない。 さらに甲第3号証には、建物のコンクリート構造部の表面に凹凸模様を形成する場合等に利用される模様型枠に関し、「発泡板1の裏面には、・・・補強板9が接着されている。・・・補強板9を設けることにより、本模様型枠の反復使用寿命を延ばすことができる。」と記載されているだけで、前記従来技術の課題、及びそれを解決するために、表面の周辺部に、装飾用凹凸部より高い保護用凸部を、装飾用凹凸部を取り囲む位置に形成する点については、何ら示唆する記載もない。 よって、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でもなく、また、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (2)請求項2及び3に係る発明について 本件の請求項2及び3に係る発明は、同請求項1を引用する形式、或いはさらにそれを引用する形式で記載されており、いずれも同請求項1に記載された要件に加えて、更に別の要件を付加するものであるから、前項に述べたように、本件の請求項1に係る発明が、甲第1号証に記載された発明である、あるいは甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものである、とすることができない以上、本件の請求項2及び3に係る発明も、同じ理由により、甲第1号証に記載された発明である、あるいは甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものである、とすることができない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし3に係る特許は、特許異議申立人の主張及び提出された証拠方法によっては、取り消すことができない。 また、他に、本件の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-09-05 |
出願番号 | 特願平6-223134 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(B28B)
P 1 651・ 113- YA (B28B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 徳永 英男 |
特許庁審判長 |
江藤 保子 |
特許庁審判官 |
野田 直人 西村 和美 |
登録日 | 1999-06-25 |
登録番号 | 特許第2945278号(P2945278) |
権利者 | ニチハ株式会社 |
発明の名称 | 建築板製造用の型板 |
代理人 | 水野 桂 |