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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07D
管理番号 1024632
異議申立番号 異議2000-71095  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-03-13 
確定日 2000-09-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2963651号「チアゾール酢酸アンモニウム塩誘導体およびその製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2963651号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2963651号発明は、平成8年1月8日に特許出願され、平成11年8月6日にその特許の設定登録がなされた後、その特許について塩野義製薬株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。
2.特許異議申立てについて
ア.本件発明
特許第2963651号の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】下記一般式(I)


(但し、R1はアミノ基の保護基であり、R2は、アラルキル基またはアシル基であり、B+は3級アンモニウムカチオンを示す。)で示されるチアゾール酢酸アンモニウム塩誘導体。
【請求項2】一般式(II)


(但し、R1は上記一般式(I)と同じ。)で示される化合物と、一般式(III)
R2-X (III)
(但し、R2はアラルキル基またはアシル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で示される化合物を3級アミン存在下で反応させることを特徴とする、請求項第1項記載のチアゾール酢酸アンモニウム塩誘導体の製造方法。
イ.申立ての理由の概要
特許異議申立人塩野義製薬株式会社は、甲第1号証(THE JOURNAL OF ANTIBIOTICS, VOL.46,NO.1(1993)、第177〜192頁)及び甲第2号証(THE JOURNAL OF ANTIBIOTICS, VOL.XLI,NO.10(1988)、第1374〜1394頁)を提出し、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができず、また、請求項2に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって、本件特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明の特許は特許法113条第1項第2号の規定に該当するので取り消されるべきであると主張する。
ウ.甲第1及び2号証に記載の発明
甲第1号証はセファロスポリン誘導体に関するものであるが、その第178頁、Scheme2および第184頁第4パラグラフには、チアゾール酢酸誘導体である化合物2(名称:(Z)-2-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノチアゾール-4-イル)-2-トリフェニルメトキシイミノ酢酸)と7-アミノセフェム誘導体である化合物4とを縮合させてセフェム化合物6を得る反応が記載されている。
甲第2号証もセファロスポリン誘導体に関するものであるが、その第1377頁、Scheme2及び第1392頁第3パラグラフには、エチル 2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-(Z)-ヒドロキシイミノアセテート(VIa)にトリチルクロライド(=トリフェニルメチルクロライド)をトリエチルアミン存在下に反応させた後、反応液を塩酸/水で洗浄してトリエチルアミンを水層に除去した後、有機層に含まれるエチルエステル体を水酸化ナトリウムで加水分解してナトリウム塩を単離し、ついで、このナトリウム塩を塩酸で処理して、2-(2-トリチルアミノチアゾール-4-イル)-2-(Z)-トリチルオキシイミノ酢酸(Vf)を得る反応が記載されている。
エ.対比・判断
(請求項1に係る発明について)
甲第1号証には、本件特許請求の範囲の請求項1に係る化合物を直接開示する記載はないところ、特許異議申立人は、甲第1号証には化合物2(86mmol)、化合物4(75mmol)、及びN-メチルモルホリン(250mmol)を含有するメチレンクロライドの懸濁液を調製し、-30℃で数分間撹拌した後、該懸濁液にフェニルホスホリルジクロライドを加えて化合物2を混合酸無水物に変換してから化合物4と縮合させており、上記数分間の撹拌の間に化合物2とN-メチルモルホリンの一部が酸・塩基反応により化合物2のN-メチルモルホリン塩(以下,「NMM塩」ともいう。)が形成されるのであり、このNMM塩は請求項1に係る化合物に包含されるものであるから、単離こそされていないものの、当業者であれば周知の方法により、反応液から容易に単離することが可能であり、したがって甲第1号証には、請求項1に係る化合物発明が記載されているに等しいと主張する。
そこで検討すると、特許異議申立人は、上記撹拌の間に酸の一種である化合物2と塩基の一種であるN-メチルモルホリンの一部が酸・塩基反応してNMM塩が反応系において生成していると単に主張するのみで実験的にその生成を確認したわけではないのであり、しかも、甲第1号証に記載された系では、上記数分間の撹拌の後に反応性の高いフェニルホスホリルジクロライドを添加するものであるから、そもそも甲第1号証においてはNMM塩を単離することなど考慮の外の事項であるから、甲第1号証にNMM塩が記載されているに等しい、という特許異議申立人の主張は妥当でない。
(請求項2に係る発明について)
特許異議申立人は、本件請求項2に係る製造方法により得られる本件請求項1に係る化合物が公知化合物であることを前提に、本件請求項2に係る発明は甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである、と主張するが、前記のとおり、本件請求項1に係る化合物は公知化合物ではないものと認められるので、特許異議申立人の主張はその前提においてすでに妥当でない。
しかも、本件請求項2に係る製造方法により得られる目的化合物たる、本件請求項1に係る化合物は、従来用いられていたカルボン酸型のチアゾール酢酸誘導体が嵩比重が0.22g/cm3と小さい微粉状の結晶であるため反応容器へ投入の際、粉塵が舞い上がり、作業環境を著しく悪化させていたのと比較して、その粉状でかつ0.42g/cm3と高い嵩密度という性状により、このような欠点がなく、しかも保存中の安定性が優れている、などの明細書に記載されたとおりの顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項2に係る発明が、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるという特許異議申立人の主張も妥当でない。
以上の通りであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1及び2に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-08-17 
出願番号 特願平8-1064
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C07D)
P 1 651・ 113- Y (C07D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 深津 弘
宮本 和子
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2963651号(P2963651)
権利者 株式会社トクヤマ
発明の名称 チアゾール酢酸アンモニウム塩誘導体およびその製造方法  
代理人 山内 秀晃  
代理人 杉田 健一  

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