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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F04C |
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管理番号 | 1027497 |
異議申立番号 | 異議1999-70364 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-12-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-29 |
確定日 | 2000-04-20 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 特許第2784437号「圧縮機用ベーン」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2784437号の特許を取り消す。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第2784437号は、昭和62年8月7日に出願された特願昭62-196168号の一部を特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願としたものであり、平成10年5月29日に特許権の設定登録がなされ、その後、日本ピストンリング株式会社、相田典子、株式会社不二越より特許異議の申立てがなされ、平成11年5月25日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月13日付けで訂正請求書及び意見書が提出され、この訂正請求について平成11年9月16日付けで訂正拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内である平成11年12月10日付けで前記訂正請求についての手続補正書及び意見書が提出されたものである。 第2.訂正の適否 1.訂正の要旨 上記手続補正は、訂正請求書に添付した明細書の特許請求の範囲及び段落【0005】の「該ベーンの外周面又は外周面と側面とがイオンプレーティング層を有し、」を、「該ベーンの外周面及び両側面とがイオンプレーティング層を有し、」と補正するものと認められる。そして、当該補正は、訂正請求書に添付した明細書の特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものとは認められない。 したがって、上記訂正請求の要旨は、上記訂正請求書及び上記手続補正書の記載からみて、 a.願書に添付した明細書の特許請求の範囲の「密閉された容器内に圧縮機構が配され、該圧縮機構にて気体を圧縮するベーン型圧縮機に使用するベーンにおいて、前記ベーンは、相手部材とその外周面と側面とで摺接するとともに、半径方向に出没自在であり、該ベーンの外周面又は外周面と側面とがイオンプレーティング層を有し、イオンプレーティング層が金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる層であることを特徴とする圧縮機用ベーン。」を、 「密閉された容器内に圧縮機構が配され、該圧縮機構にて気体を圧縮するベーン型圧縮機に使用するベーンにおいて、前記ベーンは、相手部材とその外周面と側面とで摺接するとともに、半径方向に出没自在であり、該ベーンの外周面及び両側面とがイオンプレーティング層を有し、イオンプレーティング層が金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる1〜20μmの厚みの層であることを特徴とする圧縮機用ベーン。」(以下、「本件訂正請求書の発明」という。)と訂正し、 b.願書に添付した明細書の段落【0005】の「該ベーンの外周面又は外周面と側面とがイオンプレーティング層を有し、イオンプレーティング層が金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる層である」を、 「該ベーンの外周面及び両側面とがイオンプレーティング層を有し、イオンプレーティング層が金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる1〜20μmの厚みの層である」と訂正することを求めるものと認められる。 2.独立特許要件について 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 したがって、本件訂正請求書の発明の独立特許要件について検討する。 (1)引用例 上記平成11年9月16日付けで通知した訂正拒絶理由において引用した刊行物である特開昭59-128992号公報(以下「刊行物1」という。)及び特開昭61-87950号公報(以下「刊行物2」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されているものと認める。 (i)上記刊行物1には、 a.「回転式圧縮機等のベーン先端部を、化学蒸着もしくは物理蒸着によるチタンナイトランド、チタンカーバイト等のセラミックコーテングしたことを特徴とする回転式圧縮機等のベーン。」(第1頁下左欄第5〜8行)、 b.「第1図は回転式圧縮機を示し、1は密閉容器、2は回転軸、3は電動機部、4は圧縮機部である。」(第2頁上左欄第16〜18行)、 c.「シリンダ5にはベーン8がスプリング9に弾性的に付勢されていて、ベーン8の先端部は上記ローラ7の周面に圧接する。すなわち、ベーン8はシリンダ室6を二分し、かつローラ7の偏心回転にともなってシリンダ室6への突出量が異なる。」(第2頁上右欄第2〜7行) d.「上記物理蒸着・・・原料を蒸発、イオン化して、負のバイアス電圧を印加し、基体表面に蒸着させるイオンプレーティングなどがある。」(第2頁下左欄第9〜17行)、 e.「セラミックコーテングの厚さは数μmであるが、その融点は極めて高く、また摩擦係数が低いこともあって、油膜切れによって生じる相手部材との融着(焼付き)現象がない。」(第2頁下右欄第12〜15行) f.「ベーンおよび相手部材の耐摩耗性が飛躍的に向上し、長期に亘り信頼性の保持を得る。」(第3頁上左欄第9〜11行)、 g.「上記実施例においては回転式圧縮機に用いられるベーン8について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば第4図に示すように2枚のベーン80,80を備えたスライデングベーンタイプの回転式圧縮機の場合でも同様である。なお図中50はシリンダ、70は偏心ローラである。」(第2頁下右欄第16行〜第3頁上左欄第2行) との記載があり、また、 h.図面第1図を参照すると、前記圧縮機部4は密閉容器1内に配された点 が、示されているものと認められる。 そして、前述のとおり「上記実施例においては回転式圧縮機に用いられるベーン8について説明したが、これに限定されるものではなく、たとえば第4図に示すように2枚のベーン80,80を備えたスライデングベーンタイプの回転式圧縮機の場合でも同様である。」との記載があることから、上記刊行物1には、実質上、 “気体を圧縮するスライディングベーンタイプの圧縮機に使用するベーン80において、前記ベーン80は、シリンダ50とその先端面で摺接するとともに、偏心ローラ70に対して出没自在であって、偏心ローラ70とその側面で摺接し、該ベーン80の前記先端面がイオンプレーテングによるチタンナイトランド、チタンカーバイト等のセラミックコーテング層を有する圧縮機用ベーン.” が記載されているものと認められる。 (ii)上記刊行物2には、 a.「この発明は、……過酷な使用条件下においても充分な耐摩耗耐焼き付き特性を示すピストンリングを提供することを目的としてなされたものである。……この発明は、ピストンリングの摺動面に、金属クロムと窒化クロムとが超微細に混合してなる被覆層を形成させることにより、前記の目的を達成する。」(第2頁上左欄第9〜17行)、 b.「本発明のピストンリングの被覆層は、PVD法、好ましくは減圧された窒素ガス雰囲気中で金属クロムを蒸着させる反応性イオンプレーティング法を利用し、金属クロムの蒸着過程で該金属クロムの一部を窒化クロムに転換させることにより金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相とすることにより形成することができる。」(第2頁上右欄第4〜10行)、 c.「本発明のピストンリングは、耐焼き付き特性が良好で且つ耐摩耗特性に優れており、過酷な運転条件下で使用される内燃機関に使用する場合に特にその効果が顕著である。」(第4頁下右欄第12〜15行) との記載があり、これらの記載等を参照すると、刊行物2には、 “ピストンリングの摺動面に、イオンプレーティング法により、金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層を形成して、ピストンリングの耐焼き付き特性及び耐摩耗特性を向上させる点” が記載されているものと認められる。 (2)対比・判断 (i)上記刊行物1に記載されたものにおいて、前記ベーン80は、前記先端面においてシリンダ50と摺接し、また、両端面においてシリンダ50の両側を塞ぐサイドプレートと摺接し、更に両側面において偏心ローラ70とも摺接するから、ベーン80は相手部材と外周面と側面とで摺接するものと認められる。 そして、本件訂正請求書の発明と上記刊行物1に記載されたものとを対比すると、 両者は、 気体を圧縮するベーン型圧縮機に使用するベーンにおいて、前記ベーンは、相手部材とその外周面と側面とで摺接するとともに、出没自在であり、該ベーンの前記外周面の先端面がイオンプレーティング層を有する圧縮機用ベーン. である点で一致し、 a.本件訂正請求書の発明は、ベーン型圧縮機が、「密閉された容器内に圧縮機構が配され、該圧縮機構にて気体を圧縮する」のに対して、刊行物1に記載されたベーン型圧縮機(スライディングベーンタイプの圧縮機)については、密閉された容器内に配されることが明記されたものでない点(以下、「相違点a」という。)、 b.本件訂正請求書の発明は、ベーンが「半径方向」に出没自在であるのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、ベーンの出没方向が「半径方向」かどうか明瞭でない点(以下、「相違点b」という。)、 c.本件訂正請求書の発明は、イオンプレーティング層が「金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる1〜20μmの厚みの層」であるのに対して、刊行物1に記載されたものは、チタンナイトランド、チタンカーバイト等のイオンプレーティングによるセラミックコーティング層である点(以下、「相違点c」という。)、 d.本件訂正請求書の発明は、ベーンの「外周面及び両側面」とがイオンプレーティング層を有するのに対して、刊行物1に記載されたものは、ベーンの外周面のうちの先端面のみにイオンプレーティング層を有する点(以下、「相違点d」という)、 で相違する。 (ii)先ず、上記相違点aについて検討する。 上記刊行物1の図面第1図を参照すると、圧縮機部4が密閉容器1内に配された点が記載されているから、スライディングベーンタイプの圧縮機においても、密閉された容器内に圧縮機構を配し、該圧縮機構にて気体を圧縮することは、上記刊行物1の記載から当業者が容易に想到し得るものであるので、相違点aにおける本件訂正請求書の発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。 (iii)上記相違点bについて検討すると、ベーンを「半径方向」に出没自在とするベーン型圧縮機は本件特許の出願前に周知のものであり、この相違点bにおける本件訂正請求書の発明の構成は、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (iv)次に、上記相違点cについて検討する。 本件訂正請求書の発明におけるイオンプレーティング層は、訂正明細書の【発明が解決しようとする課題】等の記載から見て、摺接面間の耐摩耗性及び耐焼き付き性を得ることを目的とするものと認められ、また、上記刊行物1に記載されたもののイオンプレーティングによるセラミックコーティング層も、刊行物1に「セラミックコーテングの厚さは数μmであるが、その融点は極めて高く、また摩擦係数が低いこともあって、油膜切れによって生じる相手部材との融着(焼付き)現象がない。」(第2頁下右欄第12〜15行)、「ベーンおよび相手部材の耐摩耗性が飛躍的に向上し、長期に亘り信頼性の保持を得る。」(第3頁上左欄第9〜11行)と記載されるように、摺接面間の耐摩耗性及び耐焼き付き性を得るものと認められるから、本件訂正請求書の発明と刊行物1に記載されたものにおいて、イオンプレーティング層を設ける技術的意義が特に異なるものとは認められない。そして、上記刊行物2には、摺接面にイオンプレーティングにより金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層を形成する点が記載され、この金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層も、本件訂正請求書の発明及び刊行物1に記載されたものとは、適用する対象物が相違しているものの、摺接面間の耐摩耗性及び耐焼き付き性を得るものである点で共通する技術であるから、刊行物2に記載された金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層を上記刊行物1に記載されたもののイオンプレーティング層に適用するよう試みることが困難とは認められないので、刊行物1に記載されたものにおいて、イオンプレーティング層を金属クロムと窒化クロムとの超微細な混合相よりなるイオンプレーティング層に置き換えることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、一般に使用条件を考慮して摺接面の前記特性や耐久性等について確認する試験を行うことが通常であるから、「1〜20μmの厚み」とすることは、使用条件に応じた試験等を実施して適宜決定し得る程度の事項と認められ、当業者が容易に決定し得た事項とするのが相当である。 したがって、上記相違点cにおける本件訂正請求書の発明の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のものである。 (v)また、上記相違点dについて検討すると、摺接する面全体にわたって良好な耐摩耗性及び耐焼き付き性が得られることが望ましいことは当業者にとって自明な事項であるから、ベーンの摺動面となる外周面及び両側面に耐摩耗性及び耐焼き付き性の良いイオンプレーティング層を形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求書の発明は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の4第3項の規定により準用する同法第126条第4項に違反し、拒絶されるべきものである。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件発明の要旨 本件特許第2784437号の発明の要旨は、上記訂正請求が成り立たないことから、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「密閉された容器内に圧縮機構が配され、該圧縮機構にて気体を圧縮するベーン型圧縮機に使用するベーンにおいて、前記ベーンは、相手部材とその外周面と側面とで摺接するとともに、半径方向に出没自在であり、該ベーンの外周面又は外周面と側面とがイオンプレーティング層を有し、イオンプレーティング層が金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる層であることを特徴とする圧縮機用ベーン。」(以下「本件発明」という。) 2.引用例 これに対して、上記平成11年5月25日付けで通知した取消理由において引用した刊行物である特開昭59-128992号公報(上記刊行物1。以下、同様に「刊行物1」という。)及び特開昭61-87950号公報(上記刊行物2。以下、同様に「刊行物2」という。)には、それぞれ、上記「第2.訂正の適否」の「2.独立特許要件について」の「(1)引用例」の「(i)」及び「(ii)」に記載したとおりのものが記載されているものと認める。 3.対比・判断 (i)本件発明と上記刊行物1に記載されたものとを対比すると、 両者は、 気体を圧縮するベーン型圧縮機に使用するベーンにおいて、前記ベーンは、相手部材とその外周面と側面とで摺接するとともに、出没自在であり、該ベーンの前記外周面の先端面がイオンプレーティング層を有する圧縮機用ベーン. である点で一致し、 a.本件発明は、ベーン型圧縮機が、「密閉された容器内に圧縮機構が配され、該圧縮機構にて気体を圧縮する」のに対して、刊行物1に記載されたベーン型圧縮機(スライディングベーンタイプの圧縮機)については、密閉された容器内に配されることが明記されたものでない点(以下、「相違点A」という。)、 b.本件発明は、ベーンが「半径方向」に出没自在であるのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、ベーンの出没方向が「半径方向」かどうか明瞭でない点(以下、「相違点B」という。)、 c.本件発明は、イオンプレーティング層が「金属クロムと窒化クロムとの微細な混合相からなる層」であるのに対して、刊行物1に記載されたものは、チタンナイトランド、チタンカーバイト等のイオンプレーティングによるセラミックコーティング層である点(以下、「相違点C」という。)、 d.本件発明は、ベーンの「外周面又は外周面と側面」とがイオンプレーティング層を有するのに対して、刊行物1に記載されたものは、ベーンの外周面のうちの先端面のみにイオンプレーティング層を有する点(以下、「相違点D」という)、 で相違する。 (ii)上記相違点A及びBについては、それぞれ、前記「第2.訂正の適否」の「2.独立特許要件について」の「(2)対比・判断」の「(ii)」及び「(iii)」に記載した理由と同様の理由により、各相違点A及びBにおける本件発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。 (iii)次に、上記相違点Cについて検討する。 本件発明におけるイオンプレーティング層は、願書に添付した明細書の【発明が解決しようとする課題】等の記載から見て、摺接面間の耐摩耗性及び耐焼き付き性を得ることを目的とするものと認められ、また上記刊行物1に記載されたもののイオンプレーティングによるセラミックコーティング層も、刊行物1に「セラミックコーテングの厚さは数μmであるが、その融点は極めて高く、また摩擦係数が低いこともあって、油膜切れによって生じる相手部材との融着(焼付き)現象がない。」(第2頁下右欄第12〜15行)、「ベーンおよび相手部材の耐摩耗性が飛躍的に向上し、長期に亘り信頼性の保持を得る。」(第3頁上左欄第9〜11行)と記載されるように、摺接面間の耐摩耗性及び耐焼き付き性を得るものと認められるから、本件発明と刊行物1に記載されたものにおいて、イオンプレーティング層を設ける技術的意義が特に異なるものとは認められない。そして、上記刊行物2には、摺接面にイオンプレーティングにより金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層を形成する点が記載され、この金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層も、本件発明及び刊行物1に記載されたものとは、適用する対象物が相違しているものの、摺接面間の耐摩耗性及び耐焼き付き性を得るものである点で共通する技術であるから、刊行物2に記載された金属クロム相と窒化クロム相との超微細な混合相よりなる被覆層を上記刊行物1に記載されたもののイオンプレーティング層に適用するよう試みることが困難とは認められないので、刊行物1に記載されたものにおいて、イオンプレーティング層を金属クロムと窒化クロムとの超微細な混合相よりなるイオンプレーティング層に置き換えることは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、上記相違点Cにおける本件発明の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のものである。 (iv)また、上記相違点Dについて検討すると、摺接する面全体にわたって良好な耐摩耗性及び耐焼き付き性が得られることが望ましいことは当業者にとって自明な事項であり、一方、ベーンは、相手部材とその外周面と側面とで摺接するものであるから、これらの摺接する面から耐摩耗性及び耐焼き付き性の良いイオンプレーティング層を形成する面を選択することは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記相違点Dにおける本件発明の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のものである。 (v)したがって、本件発明は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものと認められる。 第4.むすび 以上のとおりであるから、本件特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、上記結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-02-22 |
出願番号 | 特願平6-23619 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(F04C)
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最終処分 | 取消 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
飯塚 直樹 西野 健二 |
登録日 | 1998-05-29 |
登録番号 | 特許第2784437号(P2784437) |
権利者 | 株式会社リケン |
発明の名称 | 圧縮機用ベーン |
代理人 | 桑原 英明 |
代理人 | 石川 泰男 |
代理人 | 河内 潤二 |